ゲーム出身の一般アークスが、オラリオでダンジョンアタックするのは無理がある   作:柳沢紀雪

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野良共闘は戦場の花だよ

野良共闘は戦場の花だよ

 

 私の剣のことで、結局ヘファイストス・ファミリアの団長まで出張ってきて、なんだか大きな話になってしまった感がある。

 

 話し合いの結果、一応の方針が決まって一安心だが、私がちゃんとヴァリスを稼げないと頓挫する話なので、私の責任は重い。ちなみに、ゴライアスの素材はまだ手放せていない。

 

 その後日、スィデロさんとアーマーについて相談し、細部を詰めて、何とか発注までこぎ着けることが出来た。まあ予算2万ヴァリスだと、かなり最低限のものになるけど、そもそも私は身体が小さい分使う材料が少なくてよくて、しかも、動きを阻害しないため、アーマー部分は最小限でというオーダーなので、それなりに品質の良いものは作れそうだと言って貰えた。OL時代もそうだったっけど、発注書にサインをするときは緊張するね。

 

 その結果できあがったのが、頑丈な布製のインナー(全身を覆うタイツみたいな感じ)を服の下に着込んで、胸、前腕部、腰部、膝からふくらはぎにかけて金属のアーマーを取り付けた、典型的なライトアーマーだ。これで2万とか安くない? いい買い物だったと思う、ビキニアーマーみたいな露出もないし、むしろ強化布のインナーのお蔭で、むしろ露出度が下がったと思う。スカートがめくれてもショーツが見えなくなったしね。下着のラインはバッチリだけど

 

 アーマーのお蔭で以前みたいな怪我をすることはなくなって、エルティナも最近は割とご機嫌だ。エルティナにしょっちゅうレスタをかけて貰う必要も無いし、お肌にもよい。ただ、ちょっと蒸れるのが難点だ、谷間とか。

 

 

 長くなったけど、私の冒険者としてあり方は、徐々に一般的なものになりつつあるわけだ。

 

 

◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇

 

 

「さてと。24階層の周回もだいぶこなれてきたね」

 

「マップの更新もずいぶん進みました」

 

「だけど、結構未踏破領域ってあるんだね。やっぱり、広いんだねぇ」

 

 周りを見ると、巨大な木々がまるで壁のようにそびえ立ち、それが行く手を阻むように乱立してまるで先が見えない。

 

「まるで、巨木の迷宮だねこれは。岩とか土じゃなくて、木で出来たダンジョンみたいな感じ」

 

「上下にも複雑な地形がマッピングを困難にしているようですね」

 

 そこら中に太い木の根がせり出していて、走るのも困難な地形が連続している。こんなところで大量のモンスターの襲撃受ければあっという間に包囲されて殲滅されてしまうだろう。

 もちろん、その地形を利用してモンスターを足止めして有利な状況を生み出すことも出来るので、善し悪しはその時の状況によりけりともいえるけどね。

 

「このあたりは、私達のシステムの勝利か。マッピングはちゃんと出来てるよね?」

 

「問題ありません」

 

 そういって、エルティナは、私達にしか見えないように設定して、目の前に少し大きめの3Dマップを表示させた。

 

「うーん。複雑すぎてよくわかんないね」

 

「システムが最適通路を検出しますので、ナビに従っていただければよろしいかと」

 

 エルティナは3Dマップを閉じてそのまま先導して歩く。

 

「まあ、そうなんだけどね」

 

 HUD上に記されているマップには、入り口と出口の方角が常に矢印で示されていて、今は目的地への順路がカーナビみたいに表示されている。私はちょっと方向音痴の傾向があるが、これだけ丁寧にナビしてくれるのなら、迷子になる可能性はかなり低いだろう(ならない保証はない)。

 

「それにして、この辺は暗いな。なんか、緑の光がちょっと不気味かも」

 

 場所によっては多少開かれた地形で、巨大な渓谷が連なる場所すらあって、結構おもしろいのだ。

 

「うーん。何というか、冒険してるって感じ。今日は、この辺でキャンプになるのかな?」

 

「いえ、問題なく今日中に帰還できるでしょう」

 

「そうなんだ。じゃあ、目的地はもうすぐそこかな?」

 

「目の前の樹木の向こう側、100メートル地点が今回の目的地となります」

 

「お、やっと到着か」

 

 今日は、モンスターの討伐が目的ではなく、地上で冒険者依頼を受けて回復薬やいろいろな(合法的な)薬の原料になる薬草を採取するためにここに来ている。PSO2でいえば、クライアントオーダーってやつだ。主にフランカさん系列の。

 

「薬草って言うと、やっぱりポーションの材料になるのかな?」

 

「そのようですね。今回は中級ポーションの材料とのことですので、それなりの報酬が期待できます」

 

 たしか、ディアンケヒトファミリアの依頼だったと思う。神会から戻ったワカヒルメ様が、ボロボロにやつれた雰囲気で、

 

「次、中層行くときは、ディアンケヒトのところで依頼を受けてあげてほしい。あと、いろいろ依頼を持ってきたから、暇なときに確認して貰えるかな……本当に、暇なときでいいからね……。私は、ちょっと寝るから……」

 

 と言って、いくつかの紹介状を持ってきてくれたのだ。そこには今回受けてきたディアンケヒトファミリアのほか、ロキファミリアやフレイヤファミリア、ガネーシャファミリアなど、まさに天頂の大手ファミリアの名が連続していてちょっとビビった。

 

 まだ、ディアンケヒトファミリアのしか確認していない(エルティナが管理している)ので、他のファミリアの依頼がどのようなものなのかは不明だが、全部こなせばかなり早い段階で50万ぐらい貯まるんじゃないだろうか。

 

 ちなみに、ワカヒルメ様はそのままご就寝あらせられて、朝早くバイトに行かれてしまったので、結局私達の二つ名が何に決まったのか知らされていないのだ。うーん、恥ずかしいやつになったのかな? 『終極(しゅうごく)無限輝手(むげんきしゅ)』みたいな。

 

 お金が必要な眷属に、他のファミリアからの依頼を持ってきてくれるなんて、本当に素晴らしい主神様を得て、私はうれしい。エルティナはちょっと微妙な顔をしていたが、理由は教えてくれなかった。なんでや?

 

「到着しました。こちらが目的の素材のようです」

 

 エルティナは立ち止まり、腕を伸ばしてその先にはびこるちょっと特徴的な草むらを指さした。

 

「これがそうなんだ。私にはよく分からないけど」

 

 一応、私もディアンケヒトの担当者である、アミッドさんから素材についての説明うけて、スケッチも見せてもらっていたが、果たしてこれが依頼されているものと同じかどうかよく分からないのが正直なところだ。

 

「こちらで問題ありませんので、採取を開始します」

 

「よろしくね。私は周りを警戒しておくよ」

 

 素材収集はサポートパートナーの大切な仕事の一つだ。オラクル船団でも、いろいろ素材収集を任せて、エルティナもいろいろな惑星を探査して回っていたものだ。

 

「お嬢様。周辺にモンスターの反応が多数出現しました」

 

「うん、みたいだね。ちょっと距離は離れてるけど……ああ、人がいるのか」

 

 マップに映ったのは一気に大量に発生したモンスターの反応と、それに包囲されている冒険者らしき三つの反応だ。

 

「いかがいたしましょう?」

 

 エルティナはいったん作業を止めて私に判断を仰ぐ。

 

「そうだね。エルティナは採取をお願い。私は、ちょっと様子を見てくる。余裕があるようだったら放っておいたらいいし。もしも危ないみたいならいつも通り、獲物の横取りをしてくるよ」

 

「承知しました。可能な限り早く終了させますので」

 

「よろしくね!」

 

 私はそう言って、モンスターの大量発生現場へと急行した。木々の間をすり抜けて、ネクストジャンプを多用して、太い枝に何度も降りたって、ようやく見え始めた現場を望遠モードで観察しすることにした。

 

「えーっと、モンスター大量に、冒険者は男二人に女一人か……いいね、恋のバトルが始まりそう……」

 

 なんでも恋愛に結びつけるやつはこれだからたちが悪いと言われそうだが、そういうのが好きなんだから仕方が無い。他のファミリアについてはノータッチが原則だが、あまりにも危険そうなら助けてもいいんじゃないかと思って、割と積極的に助けるようにはしているが……あ、女の子にいいの入った。あちゃー、気を失って……二人が周りを囲むけど、めちゃくちゃ血出てるし、回復にも手が回らない感じか……こりゃダメだね、助けよう。

 

「それじゃ、その獲物、横取りさせて貰いますよっと!!」

 

 そう言って、HUDの望遠モードを解除してそのまま高く飛び上がって、ネクストジャンプを何度か発動させて高度と速度を稼ぎ、今にも瀕死の女の子を男の人とまとめて襲いかかろうとするマンモスみたいな形のモンスター(マンモス・フール)を上空から逆に襲撃してドタマをかち割って灰にしてやった。図体だけなら立派なものだけど、装甲とかは全然だね。多分、攻撃特化型のやつだったんだろう。

 

「今のうちに回復してあげて」

 

 私はかっこよく一人の男の人に、アイテムパックの肥やしになっていた中級ポーションを渡して、後ろ向きに襲いかかってくるリザさんによく似たモンスターに剣を振って真っ二つにしてやる。リザさんならもっと強い! 理性を獲得してから出直せ!!

 

 ちなみにリザさんは最近は25階層の周辺を巡回していて、冒険者との接触も大分少なくなっているらしい。やっぱり、下層に行ける冒険者は全体からするとかなりの上澄みってことだ。

 

 スィデロさんの剣も、椿さんにちょっとだけ手入れして貰い、何となく切れ味が良くなった気がする。まあ、スィデロさんは自分の作品をいじられるのがすごく嫌みたいだったけどね。

 

 どこからともなく突進してきたイノシシのモンスターに、上手いこと攻撃を合わせて、同時に発生したスキル:ガードポイントでこっちは無傷で、あっちは急所に一撃貰って絶命した。便利すぎ。

 

「そっちは大丈夫ですか?」

 

 私は自分の前のモンスターを殲滅するのに手一杯なので、背後で戦っている三人まで手が回らない。マップ上の反応では三人ともしっかりと動けているので、ポーションはちゃんと使えたようだ。

 

「何とかね! ポーションありがとう!!」

 

 と、女性の力強い声がしたから、おそらく大丈夫だ。でっかい鹿のモンスターが、なぜか頭上から降ってきたので、とりあえずガードポイントで吹っ飛ばして、他のモンスターを巻き込んでひっくり返し……追撃はしない。できる限り三人の側にいて、今の状況を保つことが大切だ。

 

「畜生! 全然モンスターが減らねぇ! どうすんだよ、トム!!」

 

「まだだ、何とか安定はしている。状況を保て、絶対に何とかなる」

 

 向こうのリーダーはトムさんと言うらしい。結構冷静でいられているようで、安心だ。多分、エルティナと合流できたら一瞬で終わるだろうから、もうちょっとの我慢だよ。

 

「レイアはどうだ? 精神力はもつのか?」

 

「私のことは心配しないで。それよりも、そろそろマーカスを回復してあげないと」

 

「俺はまだ大丈夫だ。トムのやつを見てやってくれ」

 

 魔法使いの女の子はレイアさんで、鎧を着て斧を振る重戦士はマーカスさんというらしい。三人ともお互いを気遣い合う、いいパーティーだね。

 

『マスター、採取が終了しましたので、現在向かっているところです』

 

 マンモス型のモンスターが集団で突撃をかましてきたのを、直撃コースの奴らを何とかガードポイントで吹き飛ばしつつ、ネクストジャンプを駆使して速度を稼いで一体ずつ丁寧に殲滅しているところでエルティナから連絡が入った。ずいぶん長く戦っているように思えるが、実際はまだ十分程度しか立っていなかった。

 

『分かった、待ってるよ』

 

 これで、もうあと少しだね。

 

「お兄さん達、もう少しで私の仲間がこっちに来るから、それまで頑張って! 絶対に助かるからね」

 

 返事を聞かず、また襲いかかってきたリザードマンの心臓あたりをその勢いのままに突き刺して、すぐに蹴っ飛ばして距離を離させる。このまま覆い被さられてはたこ殴りにされるからやばい。

 

「これほど途切れない宴も珍しいな」

 

 エルティナと二人きりなら「いえーい、パーティータイムだ」と言えるぐらいの余裕はあるが(エルティナはそんなこと言わない)。

 

「お待たせしました、お嬢様。いったん全員を回復します…………レスタ!!」

 

 一瞬で光のフォトンが優しく広がり、私の傷を一瞬で回復してくれる。

 

「なに? 回復魔法?」

 

「ありがてぇ」

 

「仲間の人かい? 感謝するよ!」

 

「ありがとう、エルティナ。後ろの三人をよろしくね!」

 

「分かりました……補助もかけておきます。……シフタ……デバンド」

 

 続けざまにいつもの補助テクニックをかけてくれて、これで私も万全となった。

 

「なんだ、この魔法……力が湧いてくる……」

 

「嘘でしょ? 魔力が上がってるような……」

 

「よし、この機会を逃すな! 一気に殲滅するぞ」

 

 三人は逃げるつもりはないようだ。あっぱれ、これぞ冒険者のやることだ。

 

 エルティナが加わってくれたお蔭で、私達が負ける要素がなくなった。後は消化試合だから、気楽に行こう。経験値も魔石もドロップアイテムもウハウハだ。戦闘後が楽しみでないね!

 

 

************

 

 

「お疲れ様でした、お嬢様」

 

「うん、エルティナもありがとうね。そちらの方がたも異常ありませんか?」

 

「すまない、命を助けられた」

 

 トムさんと呼ばれた男の人が、剣を鞘に収めてこちらに頭を下げた。

 

「油断しちまったぜ」

 

 巨大な斧を背負い直したマーカスさんが、ちょっと気まずい様子で明後日の方に目をやった。照れくさいのか、自分が情けないのか、ちょっとかわいい。

 

「だから、24階層は早いって言ったのに……、ありがとうね、お嬢さん。本当に、あなたたちがいなかったら命は無かったと思うわ」

 

 レイアさんは、私と視線を合わせるように腰を折って屈み、私の手を取って丁寧に握手をしてくれる。前屈みで強調される魅惑の谷間が実にまぶしい。よく見たら耳がとがっているので、エルフの女の人だったのか。だから、魔法が堪能だったんだね。

 

「ご無事で何よりでした」

 

 エルティナは小さな身体をペコリとかがめて、礼儀正しく挨拶をした。

 

「お疲れ様でした。ちょっと危なかったですね」

 

「それでは、皆様、魔石とドロップアイテムの回収を行いませんと」

 

「あ、そうね。こんなにあったら強化種が生まれちゃうわ」

 

 エルティナの提案に、レイアさんが真っ先に賛成してくれて、そのまま全員で仲良く魔石とアイテムの回収にいそしんだ。エルティナがサポーターなので、回収品のすべてはエルティナの大きなリュックに収められて、そのまま私達は地上へと向かう。18階層かどこか安全な場所で山分けしないとね。どれぐらいになるか、楽しみだ。

 

「ホント、命があるのが夢みたい」

 

「奇跡だったね」

 

「早くホームで酒でもかっ食らいたいぜ」

 

 私も、今日は目一杯お料理したい気分だよ。ハンバーグでも作ろうかな。

 

 

 

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