ゲーム出身の一般アークスが、オラリオでダンジョンアタックするのは無理がある   作:柳沢紀雪

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アストレアファミリアの団員のキャラクターをまだつかみきれていません。キャラの解釈違いもあるかもしれないので、ご容赦を。

あと、ネーゼやマリューを初めとした他の眷属についての描写は、作者自体の技量不足もあり、かなり控えめになります。多分、会話はほぼ無し(全くなしかも?)、地の文で多少言及するかも程度になってしまいます。



番外編:アストレア・ファミリア

 正義とは何か。その答えはまだ出せていない。

 

 正義は巡ると、天に還った彼女(アーディ)は言っていた。慈悲こそが正義だと彼女は自らをもってして現し、そして逝った。

 

 正義とは無償の奉仕であり、決して悪を許さず、何者の犠牲も容認しないことをこそいうのだという、彼女(リオン)の考えとは対立するものだったが、それでも彼女(アーディ)はそれを正しいと思いつつも、やはり情けをかけるべきだと、彼女(アーディ)彼女(リオン)の手を取って踊ったのだ。

 

 何事も自分の思ったとおりにならない。たとえ、誰も殺したくないと思うものであっても、あらゆる状況がそろってしまえば100人も1000人も殺してしまうのが人間である。

 

 正義を志すも不正義に陥り、それをかえりみずに自らが正しいとおごり高ぶるが、あるときにはそれを思い至って涙しつつも、その涙を拭ってしまえば快楽に身を委ねて正邪の分別を捨てて修羅となるのもまた人間である。

 

「だからこそ、私は潰えぬ強き心を持ちたい。決して犠牲を許さない、強固な心を持つことこそ正義には必要ではないのか」

 

「馬鹿め。ならば、今この時点で流される無辜の民の血をどうする。強い心、犠牲を許さぬ。ああ、誠に結構なことだろう。では、そうなっていない現状をどう考えるのだ未熟者」

 

 アストレアファミリアの眷属の二人、リュー・リオンとゴジョウノ輝夜(かぐや)が議論という名の口げんかを繰り広げることは日常的だ。むしろ平和的だとさえ他の眷属達からは思われている。

 

「なあ、あれ。今月で何回目だ?」

 

 短髪で目つきが鋭い小人族の女性……ライラが肩をすくめる。

 はっきり言うと輝夜の言葉は揚げ足取りで、リューの主張に対する答えにはなっていないとライラは思う。しかし、そうしてリューを煽ることで怒らせて、議論をうやむやにするにはよい方法とも言える。

 

「リオンもさ、そういうのが理解できりゃ、もうちょっとまともに口げんかできんのにな」

 

 口げんかなどは、究極的に言えば相手を黙らせた方が勝ちだ。たとえ、どれほど論理矛盾していたとしても、相手が答えに窮して黙り込んで、一方的に勝利宣言すれば勝利した感を得ることが出来るわけだ。

 

「今日も、輝夜の勝ちかしらね」

 

「なんだ、いたのかよ団長」

 

「最初からいたわよ!」

 

 少し困った用な笑みを口に浮かべ、アストレア・ファミリアの団長を務めるアリーゼ・ローヴェルは、わざとらしいぐらい大げさに手を叩き、皆の注目を集めた。

 

「はいはい! 仲良しの二人もちょっとこっち向いてね!」

 

「「誰が仲良しだ!」」

 

 と、リューと輝夜は同時に振り向き、同時に叫んで、同時ににらみ合った。

 

「仲良しかよ……」

 

 ライラは肩をすくめて、近くにあった椅子に飛び乗って腰を落ち着けた。

 

 リューと輝夜は渋々議論をやめて、輝夜はそのままソファに座ったまま、リューはあえて彼女から離れて、ライラが座る席の側に立った。

 

 広間に集まった自分以外の10人の団員の目がすべて自分に集まったことを確認したアリーゼは、そのまま不敵に胸を張って口を開いた。

 

「さてと、今日は報告が数点。まずは、ギルドからね。27階層の階層主(アンフィスバエナ)の次産時期まであと二週間ほどだけど、今回はロキ・ファミリアに討伐を依頼するから、出現しても手を出さないようにとのことだわ」

 

「確か、前回はガネーシャファミリアでしたか」

 

「そうね。私達は多分、ロキファミリアの次ぐらいになるんじゃないかしら?」

 

「戦力は上げてかねぇとなぁ」

 

 大抗争から2年が経過した。闇派閥(イヴィルス)との最大級と言える戦争によってオラリオの冒険者は一段強くなったが、その分、払われた犠牲も多く、ギルドは戦力向上に躍起になっている。闇派閥(イヴィルス)との再戦もそうだが、他国の侵攻に対する抑止力を早急に確立させなければならないという思惑だが、それに付き合わされる冒険者はたまったものではない。

 

「浮き足立ってますなぁ。ギルドも、大手の方がたも」

 

 輝夜(かぐや)の言うとおり、なんとなくだがここ最近のオラリオはいろいろなことを急いてしまっていて、土台固めをおろそかにしているのではないかとアリーゼも思う。

 

「だからこそ、私達が堅固であるべきではないのですか。浮き足立っているというのなら、むしろ私達が揺るがぬ姿勢を貫き通すことで、人々も安心していられると思います」

 

 リューは胸を張った。「若い」「甘い」という言葉が輝夜の脳裏に去来するが、あえて口には出さなかった。実際問題、自分たちのような中堅どころがしっかりしておかないと大手ファミリアも毅然と動くことが出来ないのも事実だからだ。

 

「次にガネーシャファミリアとロキファミリアの連名の通達よ。これは、他のファミリアには極秘の内容ってことでよろしくね」

 

「なんか、物騒ですなぁ」

 

 大抵そういう通達にはろくなものがないのだ。そして同時に、大抵そういうのはどこかかしらに漏れているものだと考えておかなければならない。

 

「そうね。だけど、多分それは想像よりも一層物騒だと思うわ。闇派閥(イヴィルス)が下層でなにかをしようとしているらしいという話よ」

 

闇派閥(イヴィルス)が!?」

 

 リューは思わず一歩進み出ようとしてライラに止められ、腰に差していた木剣【アルヴス・ルミナ】に手を置いて一度深く息をついた。

 あの日逝ってしまった彼女(アーディ)が遺してくれた大切な大聖樹より作られ、星の光の名前を与えられたそれは、果たして今でも正義の輝きを絶やしていないのだろうか。そう、心の中で念じることで平静を取り戻すことができる。

 

「何かってなんだよ」

 

「分からない。それを調べることもおそらく私達の役目なんだと思うわ。だけど、問題が一つ。これは、ガネーシャファミリアからの不確定情報ね。中層の24階層から下層の27階層周辺に武装したリザードマンが確認されたらしいわ」

 

「24から27階層でリザードマンとは、珍しいですね。魚人兵(マーマン)の見間違えでは?」

 

 輝夜はつまらなさそうに一笑するが、アリーゼは笑っていなかった。

 

「そうだとこっちも楽なんだけどね。残念ながら、相手はれっきとしたダンジョンリザードで、冒険者が使う立派な片手剣に強固な肩アーマーで武装していて、レベル4を含む上級冒険者のパーティーを軽くあしらって逃げたらしいわ。これは、まだ確定情報じゃないけど、どうもギルドは私達に調査と討伐の強制任務(ミッション)を発令するつもりらしいわね」

 

「来る決戦に向けたつゆ払いをアタシ達にさせようってことか。どう考えてもそれ、強化種じゃねぇか」

 

「しかも、レベル4をあしらうほどとなれば、第一級にも匹敵するのではありませんか?」

 

「それは大げさだろ、青二才……と言いたいところですが、楽観は出来ませんねぇ」

 

「しかし、逃げたというのが納得できません。それほどの力があるのであれば、モンスターであるなら、会敵した冒険者はタダではすまないはずです」

 

 リューの疑問ももっともだ。モンスターには殺すか死ぬかしかない。例外はあるだろうが、格下を相手に逃げるなどと言う選択肢はそもそもない。

 

「イレギュラーってことでしょうね。だけど、こうも考えられない? そのモンスターはきっと、情けということを知ったのよ。戦う必要がない、殺す必要も無い相手には手を下さない。まさに武人の心意気ね!」

 

「なあ、うちの団長なんかバカなこといってっけど、大丈夫か?」

 

「今更というやつですねぇ」

 

「モンスターにさえ慈悲を想うアリーゼは素晴らしいと私は思います……思いたいですが……」

 

 自己陶酔する自分たちの団長を眺めて、眷属達はただ当惑するばかりだ。モンスターに理を見いだすなど、狂人と等しい感覚であるがため、これはアリーゼのいつものアレだと団員達は判断せざるを得なかった。

 

「ふふん、みんな、私の素晴らしい慈悲の心に陶酔して言葉を失っているわね。さすが私!!」

 

「「「イラッ☆」」」

 

 いつも通りの鉄板をカマしつつ、フンスと鼻息荒く胸を張るアリーゼだが、

 

「もう、会議は終わったかしら?」

 

 と、柔らかな声で足を踏み入れた主神には居住まいを正すしかなかった。

 

「団長様が変なこと言い始めたもので。まだ終わってませんね」

 

「あ、輝夜。ばらさないでよ!」

 

自業自得(じごーじとく)だろが」

 

 ライラも割と辛辣だ。

 

「ア、アリーゼ。他に連絡はありませんか?」

 

 リューは何とか話を戻そうとする。さすがは真面目なエルフだ。

 

「えーっと……連絡は以上ね。今後は、武装したリザードマンの調査と討伐のために動くことになるわね。ロキファミリアの強制任務(ミッション)が始まるまでには何とかしたいわね」

 

「期限は2週間かよ。余裕があるような、ないような微妙なところだな」

 

「ライラはとにかく情報を探って。ギルドに問い合わせたら、そのリザードマンに遭遇したファミリアの名前ぐらいは教えてくれるでしょ」

 

「わーったよ」

 

「強化種がどれほどのものか、想像が付きません。今回は総力戦ということになりませんか?」

 

「足を引っ張るなよ、小娘」

 

「ぬかせ、輝夜。私とて、いつまでも未熟ではない」

 

「いいわね! 本番もそうやって仲良く息を合わせるのよ!」

 

「「だれが仲良しか!」」

 

「仲がいいわね、二人とも。安心したわ」

 

 主神のアストレアにさえそう言われてしまえば、どうも収まりが悪くなる。喧嘩しなかったらいいのにと皆思うが、そう簡単な話ではないのだろう、たぶん。

 

「ねえ、アリーゼ。少しいいかしら」

 

「なんですか、アストレア様」

 

 皆がおのおのの役割を果たすため解散した後、アストレアはそっとアリーゼに耳打ちして、いったんアストレアの部屋に行くことにした。

 

「内緒の話ですか?」

 

 主神の部屋につき、アリーゼはアストレアを座らせて、自分は棚からティーセットを取り出して沸いていたお湯でお茶を入れた。

 

「それほど秘密ということではないのだけど。今回のこと、強化種と闇派閥(イヴィルス)の件、出来れば保険をかけておきたいと思うの」

 

「保険? なにか心当たりがあるんですか?」

 

「あなたは知っているかしら。つい最近、ランクアップの最速更新した(レコードホルダーの)二人のこと」

 

「そりゃぁ、みんな興味津々ですけど。ワカヒルメ様の眷属でしたよね?」

 

「ええそうね。先日、その二人の二つ名をあたえる神会があったのだけど。その際にワカヒルメに冒険者依頼(クエスト)を渡しておいたのよ」

 

 それについてはアリーゼも認識している。なにせ、その文章を作成し、封蝋を施したのは応に彼女なのだから、知らないはずがない。

 

「それって、具体的に何を依頼するかは、改めて話し合いましょうっていう、めちゃくちゃ曖昧な内容でしたよね?」

 

「そうね。だからこそ、今回の件で助けて貰おうと思うの」

 

 エルティナがいれば、回復については心配する必要がなくなる。そして、彼女の護衛としてベルディナを付けておけば、最悪二人だけで逃げてもらうことも出来るだろう。

 眷属(子供達)の力を疑っているのではない、大切だからこそ、確実に生きて戻ってほしいという親心だ。強化種と闇派閥(イヴィルス)、もしもその二つが同時に襲ってきた場合、何が起こるのか想像が付かない。だからこそ、保険はかけてかけ過ぎということは無い。

 

「うん……いいと思います。ですが、渡りはアストレア様にお任せしてもよろしいですか?」

 

「ええ、任せてちょうだい」

 

 最速更新した小人族のエルティナについては、冒険者の間では結構な話題となっている。回復、補助、攻撃のすべての魔法を使いこなし、しかもそのすべてが速攻魔法、あるいは超短文詠唱であり、しかも使用する魔法も3種類以上という九魔姫(ナイン・ヘル)にも匹敵する魔導士だというのだから大したものだ。

 

 それほどの傑物が小人族から現れたということで、当然勇者(ブレイバー)は注目をしていて、ライラがそれに嫉妬しているというところまでアリーゼは認識している。

 

「ライラがやっかまないか心配だけど。うん、大丈夫。みんなが一緒なら何とかなるわ」

 

 

――運命の時まであとわずか――

 

 

 




輝夜の台詞って、文字に書き起こすとただの丁寧語になりがちなので、声優さんの演技がいかにすごいか分かりますね。

と言うわけで、ようやく、みんな大好きアストレアファミリアの登場です。
次章からアストレアファミリアのエピソードに入っていく予定ですが、大変難航しています。情報がなさ過ぎて、想像が追いつかないのがかなりの足かせとなっています。

書けたところから投稿していこうと思うので、不定期になるかもしれません。

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