ゲーム出身の一般アークスが、オラリオでダンジョンアタックするのは無理がある   作:柳沢紀雪

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忙しすぎて思考停止中。






演武

 

 

 ようやくリザさんと再会できた私だが、それを大げさに喜ぶことはできず、実際はモンスターに強襲を受けた状態だからそのまま戦闘にもつれ込むことになるのは道理だ。

 

 といっても、推定脅威度レベル5のリザさんは数字の上ではこの中では一番強いのだから遠慮はいらないし、リザさんも割と乗り気みたいだからしばらくは楽しもうと思う。

 

『というわけでお手柔らかに頼みますね、リザさん』

 

『本気で行く』

 

『マスターは現在弱体化状態ですので。お二人とも、できる限りの自重を望みます』

 

 リザさんはやる気満々。エルティナは弱い私を心配しているが、私はむしろ本気で来てほしい。

 

「輝夜は後方へ、リオンは私と一緒にお願い」

 

 アリーゼさんは一瞬だけ私に目を向けるが、背中の巨剣を構えてやる気満々の私にちょっと困惑するも、通常通り状況を進めることにしたみたい。アリーゼさんにも通信機を渡したいところだけど、在庫がないんだよね残念。

 

「あなたは私の後ろに下がりなさい。強敵です」

 

 と、アリーゼさんの隣に上ってきたリューさんは私に下がれと言ってくるが冗談じゃない。むしろ一番槍をもらってやろう。

 

「先に行きますね!」

 

「なっ!? こちらの指示に従いなさい猫又(ツインテールキャット)!」

 

 リューさんは間違いなく優しい人だろうけど、ここは戦場だ。他人を気にする前にまずは自分のことを心配したほうがいい(偉そう)。

 

 私は裂帛の気勢を張るとそのまま走り出して低く跳躍し、虚空跳躍(ネクストジャンプ)で虚空を蹴とばして空中でさらに加速して、最短距離でリザさんに肉薄して巨剣を真横に振り払った。

 

 リザさんはそれを切り払うのではなく真正面から受け止めて、力で押し返してきた。さすがに力勝負になると私では100パーセント負けるのでいったん剣を引いて、虚空跳躍(ネクストジャンプ)で体勢と軌道をうまく調整してその場でくるりと回り、反対側から再度斬撃を打ち込む。

 

 リザさんからもらった反動も利用しているのでさっきよりもむしろ衝撃は重くなっているだろうが、これも受け止められてしまい今度はつばぜり合い(?)になってしまう。

 間違いなくリザさんは強くなってる。こっちに来たばかりのリザさんなら、吹き飛ばされはしないにせよ多少は後ずさりしただろうし、斬撃に対する反応ももう少し遅かったはずだ。冒険者(わたしたち)風にいうなら、この数か月で間違いなくリザさんもランクアップしたということなのだろう。

 

『よくそれほどの剣を振り回せるものだ』

 

 一瞬の均衡状態からリザさんが通信を投げてきて、私はちょっと口元に笑みを浮かべた。

 

 身の丈を遙かに超える私の巨剣は、巨体のリザさんから見てもやはり大きく、その分大ぶりでゆっくりな攻撃になるだろうと思われていたようだが、そこはアークスのやることだ、クラス:Hrほどではないが巨剣を軽々振り回す私に若干驚いてくれたようで爽快だった。

 

『見た目よりも軽いんですよ、これ』

 

『その割にはずいぶん重い衝撃に感じられるな』

 

 リザさんが一瞬強い力を入れて私を押し返したために均衡状態は解除され、その反動で私もちょっと飛ばされてしまい、二人の間に距離が生まれた。

 

 私が体勢を整える暇もなく、リザさんが尻尾の反動も使って突進し、渾身の一撃を打ち込んできた。

 

 一番の威力を最短距離での一点集中。刺突は攻撃範囲が狭く、外れたときの隙も大きいが決まれば最速の一撃で最強の威力を発揮する……らしい(ゲーム知識)。

 

 音速に匹敵するほどの速さではないが、今の状態で巨剣をその斬撃に合わせて攻守一体(ガードポイント)を発動させるのは難しそうだったので、ここは素直に巨剣の影に隠れて身を守った。これぐらい大きい剣なら盾の代わりにもなるから便利だ。

 攻防一体の武器とはこういうことだね(違う)。

 

「危ない!」

 

「リオン、回復(ノア・ヒール)の準備を」

 

 背後でリューさんとアリーゼさんの声が聞こえ、こちらにやってくる二人の気配が感じられたが私は一歩も引かない。

 

『これでいったん私は下がります』

 

『うむ。刹那ではあったが、よき闘争だった』

 

 なんか、巨躯(エルダー)みたいなことを言い出したリザさんだったが、私も同感なので黙っておく。

 

『次の二人には加減してあげてくださいね』

 

『約束はできん』

 

 まあ、そうだね。リザさんほどの人でもレベル4の二人だと手加減して何とかる相手ではないか。

 

リザさんの剣の切っ先と私の巨剣ぶつかり合って階層全体に響き渡るほどの甲高い音とともに重い衝撃が刀身をすり抜けて私の全身を通り抜けた。

 

痛みはほとんど感じなかったが巨剣の重量をもってしてもその威力を相殺は出来なかったのか、私の矮躯はあっけなく宙を舞っていたのだった。思わず巨剣を手放しそうになったが、そこはアークスの誇りにかけてぎゅっと握りしめてしばらく空中に身を預けた。

 

「うーん、強い……」

 

 少なくとも、今の私の状態では逆立ちしても勝てそうにもないことは分かった。

 

『無事ですか? マスター』

 

 エルティナがちょっとあきれ気味の様子で通信してきた。

 

『うん。致命傷はゼロ……というかほぼ無傷だね。なんだかんだ言って手加減してくれたってことかな』

 

『戦闘時間が短かったのが幸いでした。前線のカバーに入ります』

 

『うん、二人をお願い』

 

 私が無事なのは明らかなのでエルティナにはリザさんと今にも戦闘を開始しようとしているアリーゼさんとリューさんのサポートに回ってもらうことにしたんだけど……リューさんだけはあっけにとられたようにこっちを見ているけどね……目の前の敵に集中しなさいって……これだから輝夜さんから未熟者っていわれるんだよ?(偉そう)

 

「サポートいたしますのでお二人は戦闘に集中してください」

 

 エルティナがそう言って二人にシフタとデバンドをかける。

 

「リオン、行くわよ」

 

「分かりました、アリーゼ」

 

 うん、これでいいのだ。

 

 いまだに空中を舞っていた私はそろそろ巨木に激突しそうになるところで虚空跳躍(ネクストジャンプ)を何度か発動して速度を調整しつつ姿勢を180度反転させて、本来なら脳天から突き刺さっているはずのところをしっかりと両足で着地をしてそのまま跳躍して宙返りをし、かっこよく地面に三点着地を決めた。

 

 その際に丈の短いスカートが盛大にまくれ上がったが、強化布のインナースーツのおかげで下着が丸見えになってないのでセーフだ。そもそもアークスにはパンツが見えた程度で恥ずかしがるやつなどいない(諸説あり)。

 

「突っ込みすぎですねぇ、もう少しこっちとの連携を考えてほしいですねぇ」

 

 側にやってきた殿の輝夜さんが私が無傷であることを確認するとそう忠告してくれた。

 

 敵が目の前にいるのにわざわざこうして見に来てくれると言うことは、なんだかんだ言って輝夜さんは優しい。あと、ちゃんとリューさんを信用しているということだからやっぱり尊い(てぇてぇ)

 

「ごめんなさい、ちょっとはしゃぎすぎましたね」

 

「まあ、おかげでこっちも体勢を整えられましたからお互い様ってことにしといてあげます」

 

 いったん巨剣を背中のマウント部分に係止して立ち上がると、アリーゼさんとリューさんがリザさん相手にかなり丁々発止切り結んでいる光景が目に入った。

 

「互角ですね」

 

 リザさんもアリーゼさんたちも結構いい勝負をしているのではないだろうか。今から混ざりに行くのは無しかな?(やめとけ)

 

「あれが互角に見えるなら、お前もまだまだ未熟ってこった」

 

 ついでに近づいてきたライラさんもちょっとあきれるように肩をすくめた。

 

「うーん。そうなんですか?」

 

「冒険者相手に加減をする怪物(モンスター)など聞いたことがありませんが、やることは変わりませんねぇ」

 

 輝夜さんはそう言って小太刀を抜いてタイミングを計っているようだ。見ると、ほかの団員の方々もそれぞれ盾を構えたり、いつでも魔法を放てるように準備をしているようだ。

 

 リザさんもそれを理解しているのか、体力を温存しつつアリーゼさんとリューさんを盾にするように交戦を続け、エルティナがそれを見守る形で戦闘は続いている。

 

 つまりは膠着状態ということだ。これじゃ、話をすることもむつかしいからどうしようかといったところなんだよね。ぶっちゃけこの後の策なんて何もないし、とにかく流れに身を任せるしか私にはできない。

 

 だからこそ、私は油断してしまった。

 

【緊急警報:突発事象に警戒】

 

 一瞬で視覚に投影されたHUDの表示に一瞬私の思考が停止してしまった。

 

「罠です! 皆様、防御態勢を!!」

 

 エルティナの警告に私は一瞬で正気を取り戻し、そのまま無言でエルティナのもとに駆け寄ってその小さな体を抱きかかえてその場に伏せた。

 

 爆発の連鎖反応が私の視界を真っ白に染め上げ、爆音が聴覚を奪い取り、舞い上がった土砂と抉られた地面に、私の体は深く沈んでいった。

 

 

 

 

 

 








次も頑張ります…………


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