ゲーム出身の一般アークスが、オラリオでダンジョンアタックするのは無理がある   作:柳沢紀雪

72 / 185


9月はちょっと頑張ろうと思います。







番外編:愚者の戦慄

 

 

 

『ともかくアストレアファミリアの後を追いかければいいのね?』

 

「ああ、それで間違いないだろう。リド達はくれぐれもレイを見失わないよう注意してくれ」

 

分かってる(わーってる)よ、任せな! いよいよってやつだな』

 

ベルディナとアリーゼの内緒話を盗み聞きしていたフェルズは、ともかく二人――討伐隊を追跡すれば自ずと新参にたどり着くだろうと確信し、眼晶(オクルス)を通じて異端児(ゼノス)にそう指示を飛ばした。

 

地上から追跡するよりも空中を自由に行き来できるセイレーンの方が安全かつ確実に追尾できるし、他の地上のメンバーはレイが飛ぶ方向を目指して進むだけで良いので、こんな簡単なことはないはずだ。

 

『なんか、あいつらジグザグに動いてないか? ホントにたどり着けるのかよ』

 

 その代わり地上を行くリドからはレイがあっちにふらふらこっちにふらふらと飛んでいる様子に疑問を呈しているようだった。

 

「信じるしかあるまい」

 

『まあ、そうなんだけどよ』

 

 飛行中に眼晶(オクルス)を使うことができないレイから状況を聞き取ることが出来ないのでフェルズとしては信じるしかない。

 さらにいえば、この階層は最近闇派閥(イヴィルス)の活動も報告されているので、異端児(ゼノス)達も自分もあまり派手に動くわけにも行かないこともある。

 

 異端児(ゼノス)は皆強化種であり知性を持つが故に他のモンスターと比べて飛躍的に高い戦闘力を持つ。もしも闇派閥(イヴィルス)がそこに目をつけ腕のいいテイマーによって異端児(ゼノス)が捕獲されて彼の戦力になってしまえば目も当てられないことになる。それだけは絶対に防がなくてはならない。

 

 特に、今追っている推定驚異度レベル5のリザが闇派閥(イヴィルス)の手に落ちたなら、連中の戦力が飛躍的に向上してしまうことになる。第一級冒険者の存在とはそれほど重いものなのだ。

 

「アストレアファミリアか……」

 

 通信を切ったところでフェルズはそうつぶやいた。ここに来る前にギルドの祭壇でされたウラノスの話を思い出す。

 ウラノスはアストレアファミリアをこちら側に引き込もうとしている。その時のフェルズは全くそんなことは馬鹿げていると断じたが、新参を何とか守ろうとしているベルディナとそれに理解を示したアリーゼの存在がその考えを揺るがしている。

 

(団員はともかく、紅の正花(スカーレット・ハーネル)だけなら、あるいはこちらの考えに理解をしめすかもしれんが……)

 

 そう、思索に入りかけたところで状況が変化したようだ。

 

 空中を飛行していたレイがひときわ高く飛び上がって八の字に旋回し始めた。

 

『合図だ。合流したみたいだぜ』

 

 事前の打ち合わせでは発見した際には空中で八の字に旋回して、その交点の直下が目的地ということだ。

 

「私もすぐに向かう。合流するまで様子見を頼むぞ」

 

『危ないようなら介入するからな』

 

「できる限り自重してくれ」

 

 空中のレイなら状況をすでに把握しているだろう。

 

「飛行中にも使える眼晶(オクルス)の開発を検討してみるか」

 

 合流してしまえば何とかなる、フェルズも異端児(ゼノス)もそれを信じて疑わなかった。たとえ、アストレアファミリアの理解を得られなくても、最低限新参(リザ)を回収してしまえば最低限の目的を果たすことが出来る。

 

 アストレアファミリアには任務失敗の汚名を着せることになるが、それに代わるほどの報酬の用意は出来ている。そして、その後改めてワカヒルメファミリアとアリーゼを呼び出し、異端児(ゼノス)についての説明を行い理解を求めれば全ては丸く収まるだろう。

 

 異端児(ゼノス)は新たな仲間を迎え入れ、アストレアファミリアは十分な報酬を手に入れて、自分たちは心強い理解者を得るのだ。

 

 おそらく、フェルズも油断していた。終わりが見えたその瞬間、人の心は最も緩むということなのだろう。ここまで多くのイレギュラーを乗り越えてきたのだから、さすがにもうなにも起こりえないだろうと。

 

 しかし、その感情はちょうどレイが指し示した目的地から発生した大規模な爆発によって遮られた。

 

「まだ、足りないというのか……ウラノスよ。私達はどれほどの試練が課せられるというのだ……」

 

 

 

 

 

 

 







フェルズは割と書いてて楽しいキャラなので、お気に入りです。




  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。