ゲーム出身の一般アークスが、オラリオでダンジョンアタックするのは無理がある 作:柳沢紀雪
やっとここまでこれた……長かった……
戦闘不能状態から復活した直後には肉体と魂の間にわずかなズレを感じる。それをアッシュ達仲間に伝えたとき、ずいぶん怪訝な顔をされたことをよく覚えている。
私の魂は前世のド底辺OLのもので、ベルディナの肉体に本来備わっていた魂とは異なると自覚させられた瞬間だった。
「覚醒レベル80%を突破。情報の共有を開始します」
なかなか焦点の合わない視界にようやくぼんやりと浮かび上がってきたのは、冷静な表情を崩さないエルティナの姿だった。
「うん。ありがとう、エルティナ。ずいぶん、大変だったみたいだね」
エルティナの戦闘情報システムから私のシステムに情報が供給され、私が戦闘不能状態だった時に起こった状況が私の記憶に直接書き込まれていく。
リザさんも剣を持たない腕を飛ばされてしまい、すでに戦闘は不可能に思えた。
他の眷属も大小様々の負傷をして、唯一無傷なのはリューさんぐらいだ。
リザさんの助けもあり、絶望的ではあるがまだ挽回の余地はある。そして、私が復活したからにはもう何の問題も無い。
「エルティナはみんなの補助を。回復と撤退をメインに動いて。あいつは私が殲滅する」
情けないことに巨剣はあいつの攻撃を受けた時に取り落としてしまった。だから、私には他の選択肢はない。
「了解しました。直ちに撤退準備に入ります」
ようやく身体の感覚も取り戻せたようで、ちょっとふらつきつつも私は立ち上がり、武器スロットからフェリシテエーデルをかぶせたフルクシオタラッサを出現させ、マグとユニット全てを有効化した。
エルティナが向かう先には六人の少女達が互いに身を寄せ合って最後の話をしていた。
脇腹を貫かれ、肺にも損傷を受けた様子のアリーゼさん。片腕を失いつつもまだ戦意を燃やし続けている輝夜さんに、視覚の大部分を失いつつも切り札を残している様子のライラさん。そして、目立った負傷がないにも関わらず地に伏してただ絶望のまなこを浮かべるばかりのリューさんに、それを何とか立ち上がらせようとしているネーゼさんとアスタさん。
半分の命が失われてしまった。もう、これ以上は私が許さない。彼女たちは私が絶対に救ってみせる。
「ごめんなさい、輝夜、ライラ、ネーゼ、アスタ。あなたたちの命をちょうだい。私は、リオンを助けたい。それと、モンスターのあなたも、頼める立場じゃないでしょうけどどうか助けてほしい」
アリーゼさんの絶望的な声がここまで届いた。
輝夜さんは一度だけ天井を仰いで「選択すべき時が来たということだ」とつぶやきリューさんに向き直った。
リザさんも「承知した。恩人が救おうとした人間だ。私もそれに続こう」と最後の決戦を覚悟していた。
「はは……まさか、モンスターと共同戦線を張るとは思わなんだな」
輝夜さんは自嘲気味に笑いカタナを持つ手を強く握りしめた。
「まったくだ。生きてりゃいろんなことあるな」
ライラさんは片目を何とか開きながら皮肉げに笑った。
絶望を希望に変える。あの人達が最後の特攻を加えれば、おそらくはリューさんだけは助かるだろう。だけど、それは私が許さない。
「戦闘システム
【『非戦闘状態』を解除/『通常戦闘状態』にて再起動まで残り1秒…………起動確認】
一瞬途切れたHUDが直ちに再起動を行い、非戦闘状態として最低限まで落とされていたフォトン出力が解除されていく。
大地を踏みしめ、アリーゼさん達にとどめを刺さんとする
「だめです……逃げて……」
それをつぶやいたのはリューさんだったのか、私には分からない。だけど、私はあなたたちを助けると決めた。
だから……
「かかってこい
私は雪のように輝く銀の切っ先をそれに向けてから、挑発するように剣身を肩に乗せた。
爆発的な跳躍から繰り出される最速の巨爪の一撃は、生身で食らえばチリも残さずに消滅してしまうだろう。
巨爪が私の身体に接触する寸前に軽く後ろ足を蹴ってわずかに前に進み出た。本当なら私の心臓を貫いてなおあまりある巨爪が私の身体をすり抜けて、ただ虚空をなぎ払うばかりだった。
「アークスはね、こうでもしないと生き残れないぐらい理不尽な連中と戦い続けてきてるんだよ」
ステップ回避は攻撃が当たるという事象を、フォトンによって攻撃が当たらない可能性に改ざんすることでダメージを無効化する技術だ。事象を書き換えることで発生する莫大な反作用をフォトンによって方向性を操作して、カウンターとして相手にぶつけることがアークスにとって重要なダメージソースにもなる。
その分、素の防御力が低くなっちゃうけど、しかたの無いことだ。
私の武器が輝き、そのエネルギーをそのまま背後に抜けていった
【!!!!!】
苦痛を感じたのだろうか。大きく宙に舞う巨大な骨の尻尾は地に落ちるまでもなく黒い霧となって霧散し、ようやく
「今はあなたを倒すことよりも、仲間の命を救うことの方が大切なんだ。このまま撤退してくれたら追跡はしない。どうかな?」
リザさんのような理性を持たないモンスターに言葉をかけても無駄なのだろう。しかし、それを繰り返すことで、いずれリザさんのような言葉を交わすことの出来るモンスターに出会えるかもしれない。私はそれを諦めない。
そして、
「無駄だよ。あなたは私に当てることは出来ない」
知性を持たない故に攻撃がワンパターになってしまっている。
私は巨爪を再びステップで回避して今度はカウンターを当てずにそのまま相手の巨体の腹部に潜り込んでスタイルパージを敢行した。
フルクシオタラッサに設定された炎の属性が解除され、武器属性を強制的に無属性にすることでフォトンの爆発を引き起こし、狭い範囲ではあるが莫大なダメージを相手に与えるラスターの切り札の一つだ。本来なら、威力コンボの終盤に組み入れるのが正しい運用方法だが、今はこれでいい。
光の奔流によって巨体が吹き飛ばされた
「攻撃力と機動力に全振りして、防御力が低いタイプのエネミーだったのかな? アークスに似てるね」
PPを消費しないエンハンスシュートはギアゲージを消費して放たれ。今ちょうどギアゲージが枯渇したため射撃が強制終了となった。
スタイルパージの効果も終了し、武器に元の属性が回復され、後はすでに死に体となった
アストレアファミリアの生存者もエルティナのサポートによって何とか動ける状態にまでは回復したようで、これから撤退となるだろう。
『マスター。こちらは撤退準備完了。いつでも行けます』
『分かった。リザさんもサポートをお願いしていいですか?』
『無論だ』
『じゃあ、私がアレのとどめを刺したらすぐに出発しましょう』
油断は最後に訪れるのはいつものこと。すでに私は勝利を確信してしまっていたから、すぐには動けなかった。
【コードD発令】【空間許容限界を突破】
新光歴238年、私にはトラウマだ。その警報が初めてナベリウスに降りたったときに発動した時の記憶はまだ昨日のように思い出せる。多くの仲間が目の前でダーカーに惨殺されてしまい、アッシュとアフィンと共に命からがら逃げ出した時のことを今でも夢に見る。
ルピカ、スゥ、ギリアム。訓練校では特に仲の良かった友人達も戻ってこなかった。
「やっぱり、逃げられないのか」
虫の息で横たわる
「モンスターを
『マスター、ダーカー因子の汚染レベルが
『下手したら超化まで行くか……生きて帰れるか、微妙になってきたなぁ』
脅威度
いよいよダーカーの闇が具現化して受肉し立ち上がり長い尻尾が生えて首が伸びていく。
「首が三本? まさか……ありえない……」
背中には巨大な一対のツバサが出現しコウモリのような薄い膜を張って拡大していく。
一本と思えた長い首は途中で三つに分岐して分かれていき、いよいよ三本首のドラゴンの様相を示してきた。
闇が晴れ、ひときわ巨大な咆吼をあたりにまき散らせてそびえ立つそれは、アークスになってからは見たことがないが、アークスになる前には何度も戦っては強くなっていくそれに喝采を上げていたものだ。
「間違いない、あれはネクス・エアリオのボスエネミーのネクス・ヴェラのおそらくは原種。しかもダーカー因子で汚染されて超化して……
NGSのネクス・エアリオは本来ならリサージェントアークスが生み出した
「
超化された絶望が今まさに生み出されたのだ。
※高評価ありがとうございました! はげみになります
超化ギガンティクスなんてソロ討伐しようって方が無茶ですのでやめようね。いいか、絶対だぞ?
※パクリ元※
・Return of the ARKS
→スターウォーズEp6 の原題「Return of the Jedi」より
・コード・トリプルセブン
→シンエヴァ
・喰ってる
→TV版エヴァ