ゲーム出身の一般アークスが、オラリオでダンジョンアタックするのは無理がある 作:柳沢紀雪
あの戦いを一生忘れることはないだろうとフェルズはそれを思い出す度につぶやく。
「ではお前達には特に被害はなかったということでいいな?」
『ああ、さすがにやべぇって思って逃げちまった。情けねぇことだけどな』
「いや、先に逃げるように伝えたのは私の方だ。すまない、お前達には新参を見捨てるようなことをさせてしまった」
此度の任務にはイレギュラーが多すぎた。予期せぬマーマンの闘技場の発生とその殲滅に、
『で、新入りはまたどっか行っちまったのか?』
「そのようだ。ガネーシャファミリアの保護も提案されたようだが、断ったようだな」
(アストレアファミリアには口止め料も含めて別の報酬を用意する必要があるな)
フェルズはこの後のことを少し考え心を落ち着かせる。
「新参――リザの捜索は引き続き行ってほしい。こちらは地上でできる限りのことはする」
『ああ、よろしく頼むぜ』
「では、私は地上に戻る。そちらも警戒してほしい。今はあらゆるイレギュラーが発生する可能性がある」
『わーってるよ』
「最初の
最初の
「あれは、
死者復活はフェルズですらまだ成功させたことがない、人智を越えた奇跡と言える大魔法だ。それを、わずかな儀式も必要とせず成し遂げたとなれば、あの
そして、その後に発生した
大規模火山の噴火を思わせるような爆発が何度も発生し、天を覆い尽くす星のごとく火球が絶え間なく降り注ぐ様は、モンスター一体で深層のさらに深い場所の地獄を再現させているとしか思えない。アレを放置してしまえば、下層領域を閉鎖するしか無かっただろう。
フレイヤファミリア、ロキファミリアが全力で討伐すればおそらく殲滅することは可能だろう。しかし、それによってどれほどの犠牲が出るのか想像が付かない。
「
たった一人で、目立った損傷もすることなく殲滅したベルディナは
「不死身……いやすでに
フェルズは、ベルディナがエルティナによって操られている命無き人形であるかのような妄想を振り払い、アストレアファミリアが28階層に到達した知らせを受けて自身も撤収することにした。
「ウラノスには……見たままのことを報告するしかないか」
自分でも信じられないことを他者に報告するのは憂鬱だと、フェルズは重い足を何とか動かせた。
◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇
「隠蔽だと? 正気かウラノス。あれほどの危険な存在はすぐにギルドに報告し警戒を促すべきだ」
地上に戻り、間髪入れずにウラノスの祭壇を訪れたフェルズは一通り報告した後にウラノスから告げられた内容に非難の声を上げた。
「冷静になれフェルズ。あれは――
「あえてダンジョンを破壊し、例の
「その通りだ。アストレア、ワカヒルメファミリアにも口止めをせねばならんだろう」
幸いなことにアストレアファミリアは一連の事件による混乱から立ち直るために時間が取られ、ギルドへの報告が後回しにされている状態だ。最低限、下層領域の安全確保と討伐対象の殲滅失敗だけは速報として伝えられているが詳しい内容もギルドが再三問い合わせているにもかかわらず回答が無いとのこととフェルズも把握している。
「いいだろうウラノス。口止めの件は私が何とかする。
「後日、アストレア、ワカヒルメをここに招待し説明するつもりだ。招待状はすでに作成にかかっている」
「承知した。では、私は失礼する」
フェルズは祭壇の部屋から退出し、暗がりには再び静寂が訪れた。
「夢は未だ覚めず……しかし、希望が存在することは分かった。今はこれでいい」
ウラノスの言葉は闇に溶けて消えた。
エルティナが過大評価されています。大変ですね。
ベルディナは……、まあ、ドンマイ。