ゲーム出身の一般アークスが、オラリオでダンジョンアタックするのは無理がある 作:柳沢紀雪
※高評価並びに普通評価ありがとうございました。
無理せずボチボチやっていこうと思います。ありがとうございました。
時間ギリギリまで行った遺品捜索はそれなりの成果を上げて私達は撤収を開始した。
エルティナはサポートパートナーとしての能力を存分に生かし、的確に遺品の場所を特定し掘り進め、ついには全員分の遺品を発見することが出来た。
リザさんは下層の安全地帯である28階層でいったん別れ、そのままさらに下層へと向かっていった。
まだ深層に行くほどの力は付けられていないということなのでまだ下層にとどまるとのことだが、片腕を失ってしまっているので心配だ。
しかし、ある程度魔石を摂取すれば再生することも難しくはないだろうというので信じることにした。
「絶対に最高の義手を用意してあげるからね輝夜、アスタ……ゴホゴホ」
いよいよ地上に向かって出発するところでアリーゼさんが輝夜さんとアスタさんに誓いを立てた。
「いい加減に口を閉じたらどうですか、団長? ほら、口の端に血が付いててはしたないですよ?」
「そうだよ、団長。もうちょっと休んでいく?」
「いえ、なるべく早く出発しましょう……ゴホゴホ」
肺を損傷してしまったのだろうか、アリーゼさんの咳はかなり辛そうだ。
『エルティナ、直してあげられない?』
『テクニックはあくまで応急処置です。本格的な治療は船団に戻る必要があります』
『そうだよね。ごめんね、エルティナ』
分かってはいたが、何も出来ないのが少し辛い。オラクル船団であれば、四肢を欠損しても自己細胞を培養して再生させたり、その間はキャスト技術で高性能な義手義足がすぐに手に入るから、何なら次の日から任務に出ることも出来る(普通は一週間は空ける)し、内臓の損傷も似たような手法で自己細胞で臓器を作って移植すれば元通りだ。
こちらにそのような技術があるのか分からないが、希望は捨てない。
「わりぃ、
ライラさんは魔法の爆発の余波で片目を潰してしまい、もう片方もほとんど見えていないらしい。
「承知しましたお手をどうぞ、ライラ様」
エルティナはもちろん拒否することはなくライラさんの手を取って優しく自分の肩に回して、しっかりと身体を密着させて歩行の補助を行う。ライラさんとエルティナだと身長がちょうどいいぐらいなので特に問題は無いようだ。
「お前なぁ……同族なんだからよ、いい加減他人行儀はやめろよな。かえって腹立つ」
「ですが……」
「まあ、無理は言わねぇけどよ……せめて様付けはやめろって」
「分かりました、ライラ。歩けますか?」
「ああ、十分だ。ありがとうな、エルティナ」
こんな状況だが、エルティナとライラさんはいい友達になれたのかもしれない。私も含めてだが、エルティナはこちらで気の合う友人というのがいないので、これがきっかけになってくれればなと思う。
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中層を抜けて途中18階層で休憩して、アストレアファミリアの人達は例の秘密の場所に立ち寄り、亡くなった仲間達の遺品をお墓のようにしてそこに埋葬し、私も黙祷を捧げた。
彼女たちの死は私の責任であるところが大きい。どのように償えば良いのか分からない。しかし、私はアストレアファミリアの人達には何があっても寄り添うことにしよう。今はそれしか出来ない。
いつまでたっても頭を垂れたままのリューさんをアリーゼさんは一人にさせるべく私達を含めて野営地へと向かい。私はアイテムパックに残っていた食材を全部放出して料理を作りアストレアファミリアの人達に振る舞った。
リヴィラで特別にチーズを買ってきて(むちゃくちゃ高かった)、それをホットサンドに入れて焼いてリューさんに食べてもらうことにした。
28階層で振る舞ったホットサンドで、リューさんが中にチーズを挟んでみてはどうかといっていたのを思い出したのだ。
「リューさんも、思い詰めすぎないといいんだけどね」
ホットサンドを作る準備だけして、私はパスタを茹でる準備に取りかかる。鍋いっぱいに湧いたお湯に塩を適量加えて溶かして、そこに人数分のパスタを入れてタイマーを動かした。ゆであがりは大体6分後なので、多少ストックしていたトマトソースをフライパンに入れて熱を入れる。
「ねえ、
アリーゼさんが調理に集中する私に声をかけてきた。手にはどこから採取してきたのか、新鮮なキノコが入ったざるがあってそれを私の足下に置いた。
エルティナをチラリと見ると、軽く頷いてくれたのでおそらく食材として使っても問題ないのだろう。
「いいですよ。エルティナも手伝ってあげて」
そう言って私はホットサンドメーカーとスライスパンとチーズを手渡した。本当はハムも渡したかったけど、手持ちにはレタスしかなかった。せめてタマゴを一つぐらい残しておけば良かった。
「ありがと、じゃあ、ちょっと火を借りるわね」
「怖がらずにしっかりと火を通すといいですよ。ちょっとぐらい焦げても削ればいいので」
「ありがと、やってみるわ」
「なあ、
今度はライラさんが私が熱を入れているトマトソースを指さしてそういった。
「いいですよ。最後に塩胡椒をするだけなのでお好みの塩梅に調整してください」
「すまねぇな。アタシも、何かやりたくて」
「その気持ちを大切にしてください」
私はその場を譲り、フライパンと木べらのグリップをライラさんに渡し、手元のテーブルに塩と胡椒の入った小瓶を置いておいた。
「もう調理は終わっているので、最後にまんべんなく食材に火を回す感じでお願いします。キノコは新鮮なのでしなってきたぐらいで十分ですよ」
「分かった」
「私は、片腕しか使えませんが、盛り付けぐらいは出来るかもしれませんねぇ」
輝夜さんも気持ちは同じのようだ。
「じゃあ、ゆであがったパスタをいい感じにお皿に移して貰えますか? 麺が固まらないようにオリーブオイルをまぶしておくといいですよ」
「助かりますねぇ」
私はHUDに表示されたタイマーを見てアルデンテのタイミングをしっかりと見計らう。少し周りを見回すと、ネーゼさんとアスタさんも各々お皿やカトラリーの準備をしてくれていた。
食事もできあがり、皆自分の分のお皿を持って、アリーゼさんだけは両手に皿を持ってリューさんの元へと向かっていく。
私は、先にテントの設営をしていると言ってこの場にとどまることにした。ここから先は私が立ち入るべき領域ではないと思った。水くさいとは思うけど、私は義理堅い(幼)女なんだ。
おそらくダンジョンではそれほど珍しいことではないのだろう。ダンジョンに潜って戻ってこなかった冒険者の話はそれこそ毎日聞くし、冒険者依頼の中には失踪した眷属の捜索というものもよく見受けられる。
もしも、ワカヒルメ様が新しい眷属をお迎えになって、その人と一緒にダンジョンに潜るようになったとして、それが生涯にわたって無事である保証はどこにもない。冒険者であれば、いずれ誰もが経験しなければならないことを今、彼女たちは乗り越えようとしている。
そのあり方を、私はどうしようもなく愛しく思えた。