ゲーム出身の一般アークスが、オラリオでダンジョンアタックするのは無理がある 作:柳沢紀雪
捜索を始めると言っても私はそれほどこの街には明るくないので、もっぱらアリーゼさん達の指示に従うしかないのだが、アリーゼさんはあえて私を自由に動き回らせ、とにかくレーダーでリューさんを引っかける作戦に出たようだ。
アリーゼさん達はとにかく心当たりのある場所をしらみつぶしにして、常に連絡を取り合うということだ。
私が調べたところとアリーゼさん達が調べたところが被らないようにして効率を上げようと言うことみたいだね。
『それにしても、とんでもねぇなこれ。フィンのやつががこれを知ったらただじゃおかねぇと思うぜ』
おそらくライラさんはこの通信機のことを言っているのだろう。確かに、声にしなくても言葉を遠隔地に送受信できるのは、こちらの人から見たらカルチャーショック(?)だろうね。
『フィンさんですか? 冷静を失うような人には思えませんけど』
フィンさんと言えば、ロキファミリアの団長を務めておられる、冷静沈着でしかもちっちゃくてかわいい上にカッコイイという、女子の理想の塊みたいなお方だから、あんまりガツガツするイメージが無いなぁ。私ですら一回ぐらいデートしてほしいと思うぐらいだから、かなり競争率は高いだろう。
『あれで結構熱いやつなんだよ。いくらたたきつけてくるか楽しみだ』
ライラさんは、フィンさんのお嫁さんを狙っているとは公言しているみたいだけど、何というか悪友で済ませるぐらいが一番バランスがいいんじゃないかって思うけどね(勝手な妄想)。
ただ、フィンさんはお嫁さんは同族から選ぶという噂を聞いているので、エルティナもワンチャンあるかもしれない(余計なお世話)。
『代わりのものがないので絶対に譲りませんけどね』
ここにエルティナがいなかったら私の雑念を咎めていただろうけど、今はいないので妄想しほうだいだ。
『なにやら騒がしいようだな。何があった』
『あ、しまった。リザさんのラインを閉じてなかった』
『なるほど、オメェらが通じてたのはこれが原因だったわけだ』
アリーゼさんには説明したが、そういえばライラさんには伝えていなかったな。ちょうどいいだろう。
『ふむ。あのときの娘か』
『リザ……だったか? またいつか落ち着いて話がしてぇもんだな』
『ごめんなさいリザさん。ちょっと立て込んでるので、いったん切りますね』
『承知した』
私はリザさんのおかげで雑念を捨て、リザさんへのラインをいったん切ってエルティナに状況を確認した。
『エルティナ。そちらの状況はどう?』
『再度の襲撃はありませんが、一部の物品の盗難が生じているとのことです』
『連中、火事場泥棒しやがって。絶対許さねぇ』
『まあまあ、人的被害は少なかったのでよしとしましょうよ』
『なあ、エルティナ。こんなことを頼める立場じゃねぇんだけど……アストレア様も頼む。……これは、あたし個人の貸しでいいから』
『分かっていますよライラ』
うーん、エルティナとライラさんが急速に仲良くなって、ちょっとジェラシーだ(嘘)。
◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇
捜索はあまり芳しくない。私は当然、ほとんど当てもなく街をさまよっているだけだから、これで発見できたらラッキーでしかないだろう。
『ここもハズレか』
『いえ、血の跡があるわ……間に合わなかったようね』
『どうしましたか?』
モニターを表示しない会議モードに設定したのか、アリーゼさんの声も届いた。ということは、私の通信も周囲の人にも聞こえるようになったということだ。
三人分の声が聞こえるのに、そこには二人しかいないという怪談が生まれそうだけど、こっちにも
『
いくつかの扉を開いた音の先には、ピチャピチャという足音が響く部屋に行き着いたようだ。声だけでよかったと本当に思う。
『私じゃリオンの心を救えなかったということなのかしら。団長失格ね……』
『オメェがそれじゃ誰があいつを助けるんだよ。とにかく動こうぜ。まだ始まったばっかだ』
『そうね、行きましょう』
会議モードは終了し再びアリーゼさんの声は届かなくなった。
『ねえ、ライラさん』
私はいったん通信をライラさんだけに声が届くように設定してからそう呼びかけた。
『どうした?
『この通信は、ライラさんだけが聞こえるようになってます。エルティナやワカヒルメ様達には聞こえないようになってるのできくんですけど』
『なんだ? 内緒話か?』
『そうですね。それで聞きたいんですけど、リューさんの復讐は止めなくちゃいけないんでしょうか? 原因は何であれ、悪が滅びることは悪いことじゃないと思うんです。リューさんの無念がそれで晴れるのならそれも一つの選択なんじゃないかって』
『悪を滅ぼすだけが正義じゃねぇよ。少なくともアタシはそう思う。だから、止める。あいつは一番大切なところを忘れちまった。ぶん殴ってでも連れて帰るだけだ』
ライラさんの声は決意に満ちている。ライラさんも、いつもはやさぐれているように振る舞っているけど、根っこのところは正義のファミリアの眷属に相応しい想いが宿っているようだ。
『そうですか。私にはまだ分からないことですね』
私にとっての正義はダーカーを根絶することだ。ダーカーがフォトナーの生み出した宇宙の癌であり絶対悪であるのなら、それを駆除することは絶対的な正義になり得る。
『子供にゃ難しいかもな。大人になってからだなこの辺のことは』
『私、子供じゃないんですけどね。ちゃんとおっぱいもありますし』
この手のひらにぴったりと収まる感じの房は、大きさといい形といい一種の芸術品と言ってもいいだろうというぐらい自慢のモノだ。
『そうだな、立派なもんをお持ちだよオメェは』
なんか、舐められているようなそうでないような微妙なところだ。
『話してくれてありがとうございました。それじゃ、通信を普通に戻しますね』
『分かったよ』
ライラさんとのホットラインをいったん終了し、エルティナへの回線を開いた。一応、向こうの声は届くようにはしていたので、緊急時にはちゃんと対応は出来るようにしていた。
『お嬢様、ライラ、緊急連絡です』
ライラさんと秘匿回線を使用していることはエルティナのHUDには表示されていたはずなので、タイミングをちゃんと見計らってくれていたということだろう。もちろん、内容はちゃんと秘密になっている。
『どうしたの?』
『なんだ? 連中が戻ってきやがったか?』
私は走る足を少し緩めてエルティナの言葉に傾注した。エルティナの言葉には誇張も矮小もないありのままのものだ。だから、エルティナがいう緊急とはまさしくその通りの事態が迫っているということの証しなのだ。
『たった今ギルドから通告がありました。ギルドマスターの署名が入った正式のものです。読み上げます。「アストレアファミリア並びにワカヒルメファミリアには別命あるまでホームにて待機を命じる」以上です』
命令か、なかなか大きく出たねギルドは。
『だとさ、どうする? 団長』
ライラさんは側にいるアリーゼさんに問いかけた。
『そうね、ギルドがそう言うなら従うしかないわ』
『私は、リューさんを探しますよ。ギルドの命令なんてクソ食らえです』
意外にもアリーゼさんはギルドの命令に従うつもりらしいけど、私は冗談じゃない。このまま手を引くなんてをするなんてアークスがすることじゃない。
『ええそうね、
『ああ、そういうことですか。ごめんなさい、アリーゼさんを誤解してしまいました』
『ふふん、仲間を救いつつギルドの指示にもしっかりと従う理由をすぐさま思いつく。さすが私ね!』
うん、やっぱりアリーゼさんはそうあるべきだ。だからこそ、でこぼこな正義の人達を率いてやっていけるのだろう。
『まあ、そういうことにしといてやるよ。どうせ責任は団長にあるからな』
『あ、じゃあ、私もアストレアファミリアの指示に従ったってことにしといてください』
『ちょ、ちょっとライラ。こういうのは連帯責任ってものでしょう?』
『遊んでいる場合ではありませんよ皆様。ギルドから追加の通知文がございます。「ギルドはロキファミリアとガネーシャファミリアに、本件の原因であるルドラファミリアの討伐を命じ、神ルドラの送還を決定した。両ファミリア以外の冒険者は手出し無用のことを厳命する」以上です』
ロキファミリアとガネーシャファミリアはオラリオを代表する秩序側のファミリアだ。噂で聞くところの大抗争では
『それじゃ、私はちょっとテンポを上げます。オラリオの屋根を飛び回りますけど、いいですよね?』
『まあ、仕方ねぇだろうな。緊急時にはよくやることだ』
『じゃあ、そういうことで発見し次第連絡します。そちらの位置は常にこちらから把握できますので、状況の報告だけお願いします』
『マジか。持ち逃げできねぇじゃん』
『その場合は地の果てまで追いかけますので、ご承知ください、ライラ』
『冗談だよエルティナ。まあ、譲ってくれる気になったら最優先で声をかけてくれよ』
うーん。オラクル船団と連絡が取れればそれもやぶさかじゃないんだけどね。今は私とエルティナの2台と予備で持っている2台しかなくて、しかも予備のものもワカヒルメ様とリザさんの二人に渡してしまっているので本当に余裕がないのだ。
『ねえ、エルティナ。無制限の通信機じゃなくて、音声だけの無線機とかなら何とかならないかな。出来れば魔力なり魔石を使ってとかいうの。通話距離は10 kmもあれば十分かな?』
私はエルティナにホットラインをつなげて、確認してみた。今後、いろいろな人との交流が広がっていくなら、そういう人達と遠隔で情報共有するには必須に思える。アリーゼさん達が使っていた
『この場では判断いたしかねます』
『そうだよね。ちょっと検討しておいて、優先度は低くていいから』
『了解しました』
雑談はここまでにしよう。私は自分を強化するフォトンの一部をレーダーの出力に回して若干捜索範囲を広げた。その分跳躍できる距離が短くなってしまったが、しかたの無いことだ。
「それにして、オラリオは広いね。回りきる前に全部が終わっちゃうよ」
私はこの周辺でひときわ大きな館の尖塔部分に片足を置いて、一度深呼吸をして全力でフォトンを照射した。あらゆるものがフォトンを反射して私の感覚器官を刺激し、私のレーダーの解像度が飛躍的に向上していく。これは、捜索には便利だけど多用すると疲れるんだよね。
「あれ? 知ってる人の反応……って、ここ、ロキファミリアのホームじゃん。やっちゃったなぁ」
ロキファミリアはこれからルドラファミリアを討伐しに行く仕事があって、他のファミリアは手出し無用ということで、しかも私達へホームに待機命令が出ていることも多分知っているだろう。
「そうだ。どうせ、あの人達が向かってるところもリューさんが探しているところと一緒なんだから、こっそり着いてけばいいんだ」
『マスター。そちらの状況を報告してください。先ほどのフォトン照射は褒められたものではありませんでした』
来るだろうなとは思ったけど、案の定エルティナが私にホットラインをつないで苦言を呈してきた。
『ごめんね、エルティナ。だけど、得るものはあったよ。ロキファミリアの討伐隊を発見したんだ。こっそりついて行けばきっとリューさんと同じ場所に行き着くはずだよね』
『合理的ではありますが。発覚した場合は大変な問題になり得ます』
『その時は……一緒に謝ろう』
『しかたの無いマスターですね。分かりました、お任せします』
エルティナに呆れられるのは今に始まったことじゃない。だけど、私は本当に頼りにしてるんだよエルティナ。
「偉そうには言ったけど、私こういう
とりあえず、どんどん離れていくロキファミリアの集団をレーダーの端に映るように距離を調整しないといけない。
さっきはフォトンを照射してかなりの距離の探査を行ったから、普通のレーダーでは範囲外になってしまうので急いで移動しないと反応が消失してしまうのだ。
「ゆっくり急げってやつだね」(違う)
『ライラ、こちらエルティナです。お嬢様がロキファミリアの集団を発見し、追跡中です。お嬢様の位置を送ります』
『お? なんか、通信機に矢印が出たぞ。これが
『その通りです。お願いいたします』
『便利すぎねぇ? ますます欲しくなったぜ。なあ、アリーゼ、これにいくらまでなら出せる?』
『任務に集中してくださいライラ』
さてと、アリーゼさん達も私の方に向かってきてくれるみたいだから、私は私の仕事を全うしよう。といっても、ロキファミリアの人達はただ者じゃないから多分私の追跡なんてバレバレかもしれないけどね。
今後主人公は原作開始(数年後)までどれぐらいランクアップするか
-
レベル2
-
レベル3
-
レベル4
-
レベル5
-
レベル6
-
レベル7
-
おまかせ