ゲーム出身の一般アークスが、オラリオでダンジョンアタックするのは無理がある   作:柳沢紀雪

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会議はなるべく短い方がいい

 さて、ステイタス更新で一悶着あったが、結局冒険者として頑張るしかないという、特に面白みのない方針が固まっただけだ。といっても、しばらくはアストレアファミリアの用心棒兼家政婦の仕事があるのでダンジョンに潜るのはもうちょっと先になりそうだけど、解禁されたら24階層で数泊してもいいかもしれない。

 

 夕食も終わり、就寝前に星屑の庭の周辺を警邏する仕事を終えたらお風呂をいただいて後は自由時間だ。

 

「明日の朝ご飯の仕込みももう終わったし、包丁の手入れもしたし、今日はもうやることもないかな」

 

 星屑の庭ではエルティナと同じ部屋を貰っているので、寝るまでは二人でおしゃべりが出来る。

 

「ライラからのお知らせです。明日は昼食後すぐに全体で会議をするとのことで私達も参加するようにとのことです」

 

 エルティナはライラさんからの業務連絡を私にも伝えてくれた。なんとなくだが、ライラさんとエルティナが両ファミリアの橋渡しみたいになってくれているみたい。ライラさんにも通信機が渡せればもっと連絡を密に出来るんだけど、無理なのはしょうがないよね。

 

「分かった。いろいろ落ち着いてきたからね。いよいよかな」

 

 ネーゼさんの容態も安定していて、そろそろ自宅療養に入れるかもと言ったところと聞いているからそれもあると思う。

 

 私は、濡れた髪をエルティナに拭いて貰いながら明日のスケジュールにそれを記載する。こうしてちゃんと書いておかないと忘れることがあるので、大切なことだ。

 

「髪の手入れが終わりましたので、就寝用にまとめます」

 

 足首まで届くほどのウルトラロングヘアーもすっかりと水気がなくなり、ついでにブラッシングと香油で艶を出してもらい、すっかりと奇麗になった。

 最低限の手入れは生命維持装置がやってくれるけど、美容レベルまでは期待できないので後は自分でやるしかないのだ。オラクル船団ならそのあたりも市販されている機器を使えば1分で終わる作業なんだけどね。やっぱり、文明というのは偉大だ。

 

「うん、ありがとうエルティナ」

 

 このまま寝転がるとシーツ並に広がってしまい収拾が付かなくなるので、寝るときはある程度まとめて貰っているのだ。

 

 髪もいい感じにまとまったのでそろそろ明かりを落として寝ようと言うことになった。エルティナはスリープモードで自己メンテを夜間に走らせることで、私に生活リズムに合わせてくれている。

 

「お休み、エルティナ」

 

「お休みなさいませ、マスター」

 

 やっぱり、寝室に自分以外の誰かがいるのは落ち着くね。私達の拠点に戻っても一緒に寝られないかもう一度頼んでみよう。

 

 

◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇

 

 

 次の日の昼は、予告通り食事後別室に集合して全体会議と言うことになった。

 

「まずはネーゼが明後日には退院してこちらに戻るわ。部屋の準備はできてる?」

 

 アリーゼさんが議長になって議題を次々と流していく。

 

「問題ない。こっちでの世話は主にアタシとリオンがやって、他のやつは手が空いてたら手伝ってくれ」

 

 ライラさんが手を上げてそう報告する。なんとなくだけど、ライラさんの負担が大きすぎる気がする。食事、掃除、洗濯諸々ライラさんが担当しているようなのでいろいろローテーションやシフトを考えるべきじゃないかって思うなぁ、私が口出しすることじゃないけどさ。

 

「私達にも出来ることがあれば言ってくださいね」

 

 せっかくなので私達も何かお手伝いしようと手を上げた。

 

「そのことなんだけど、いい加減あなたたちをここに縛り付けておくのは良くないって思うのよ。だから、ネーゼが戻ったら、後は私達で頑張っていくわ」

 

 うーん。そうだよねぇ。基本的にファミリアとは個々に独立しているものだから、あんまり一緒にいるのも示しが付かないか。

 

『どうします?』

 

『アストレアも同じ意見みたいだから、受け入れるしかないよ』

 

『私もワカヒルメ様の意見に賛成です』

 

『そっか、そうだよね。ちょっと残念だけど、仕方ないか』

 

 ここでの生活は楽しかった。久しぶりにたくさんの仲間とわいわいやれた思い出はこれからも大切に残っていくだろう。

 

「分かりました。今日明日中にお借りしていた部屋を引き払いますね。長い間ありがとうございました」

 

 と、私は席を立って深々と頭を下げた。エルティナもワカヒルメ様も私に習って席を立ち頭を下げる。

 

「そんな、頭を下げるのはこっちよ。いろいろ無理を聞いてくれてありがとう」

 

 アリーゼさんも立ち上がり、それに続いて他の人達も立ち上がって、アストレア様さえも立ち上がってお辞儀をいただいた。

 

 その後はいろいろと報酬の話になったが、アストレアファミリアは現状支払えるヴァリスがあまりないということで、その代わりにアストレアファミリアで管理しているが現状全く使っていない物件を無償譲渡するという話で決着が付いた。

 

「この見取り図だと、十分に織機を置くスペースが確保できるんじゃないですか?」

 

 私は目録代わりに貰った物件の平面図を広げてワカヒルメ様に尋ねた。

 

「うん。そうだね、私の斎服殿(いみはたどの)としては十分だ」

 

 ずっと問題だったワカヒルメ様の起業は思わぬところで一歩前進しそうだった。ただ、外壁と屋根の補修と、内装のリフォームは必要だからその資金を捻出しないとダメそうだけどね。まあ、焦らず確実にやっていこう。

 

「では最後に私から報告させてね」

 

 アストレア様がそう言って手を掲げた。

 もちろん皆口を閉じて傾注する。

 

「これは、ワカヒルメも一緒だったのだけど、先日ギルドのウラノスとの面会があったわ」

 

 ワカヒルメ様は、「そのことか」という風にうなずいた。

 

 お二人のお話をまとめると、「例の異常個体(イレギュラー)をジャガーノートと名付けること。ジャガーノートについては絶対に口外してはならない。また、リザさんのような理性のあるモンスターは異端児(ゼノス)と呼称していて、それらをウラノス様は以前から保護しているが、こちらも口外することを禁止する」とのことだった。

 

 うーん。いろいろ新しい情報が出てきて混乱してるぞ。

 

「なぜ、ジャガーノートを口外すべきではないと? むしろ、あれほど危険なモンスターであれば積極的に注意喚起をするべきではありませんか?」

 

 リューさんの疑問はもっともだが、輝夜さんは「はっ!」と嘲笑するかのように声を上げて、

 

「馬鹿め、ダンジョンを大きく破壊すれば出現するモンスターなど、敵対するファミリアを壊滅させるにはこれ以上にない手段ではないか。お前は悪の立場を知らなさすぎる」

 

 なるほどね。その発想はなかった。そもそも、ダンジョンを毀損するという発想は一般的な冒険者にはないのだから、わざわざ禁止して「なにかありますよ」と知らしめる必要もないと言うことだ。

 

 リューさんは悔しそうな視線で輝夜さんを睨むが、さすがに反論の余地はないと悟ったのか、「輝夜の言うとおりです」とつぶやき、目をそらした。

 

「すみません、その異端児(ゼノス)について何ですけど、居場所は分かるのですか? 出来ればリザさんも合流して貰いたいんですけど」

 

 リザさんは「自力で合流してみせる」と言っていたが、広いダンジョンをたった一人で探すのはやぱり無理があるんじゃ無いかと思う。

 

「今、いろいろ検討しているようだから少し待ってほしいとのことだったわ」

 

 そうか、検討して貰ってるのならおとなしく待つしかないか。

 

「それと、この件については口止め料として魔導書(グリモア)を両ファミリアに渡されてるから、それぞれ確認して貰えないかしら」

 

 魔導書(グリモア)って何だっけ? アリーゼさん達は「まじで?」という顔でテーブルに置かれた二冊の古めかしい(厨二っぽい)本をガン見している。

 

「なるほど。よっぽど口外して貰いたくないみてぇだな」

 

 ライラさんが腕組みをして「うんうん」と頷いた。

 

「これがあれば、輝夜とアスタの義手も何とかなりそうね」

 

 アリーゼさんは天の助けと言わんばかりに魔導書(グリモア)を押し頂いてテーブルに置いた。

 

「私はファミリアに対する個人的な借金にしといてくださいね」

 

「あ……えっと……じゃあ、私も……」

 

「アスタは無理しないでいいわよ」

 

「ごめん……」

 

 アストレアファミリアの人達はこの魔導書(グリモア)のおかげでいろいろな問題が解決しそうな雰囲気を醸している。

 

「大変今更なんですけど、魔導書(グリモア)ってなんですか?」

 

 私は渡された本を見回して、中身を確認しようとして「待って」と止められた。

 

「おいおい、マジで言ってんの?」

 

 と、ライラさんは心底あきれ顔だが分からないものは分からないのだから仕方ないじゃないか(逆ギレ)。

 

「下手に読まない方がよろしいですよ」

 

 と、リューさんまで言うのでとりあえずエルティナに渡しておいた。無意識でペラペラしちゃうかもしれないからね。

 

 ということで、いろいろ教えて貰い、なかなか扱いに困るものを貰ったなというのが正直な感想だ。

 

「魔法の強制発現装置って、なんかいろいろバグってません?」

 

「だから高価なんです」

 

 こっちでの魔法の習得方法はかなり面倒というか、正直なところ把握し切れていないところがある。ランクアップしたら習得できるわけでもないらしいし、エルフ族なら拾得しやすいという種族格差も存在するみたいだ。そのなかで、どんな種族でも魔法を強制的に発現させることが出来るアイテムなんて、そりゃ高いわってなるわ。

 

「アリーゼさん達は売るんですか?」

 

「そうなるわね」

 

 ホームの修繕にネーゼさんの療養費に義手の購入など、とにかく天文学的な費用がかかるのは分かる。

 

「うーん。よかったら、こちらも差し上げましょうか? 報酬でいただいた不動産はちょっと貰いすぎじゃないかなって思いますし」

 

 魔導書(グリモア)がいくらで売れるかは分からないけど、今の私達からすれば持て余すだろうから、むしろアストレアファミリアの人達で有効活用して貰った方がいいんじゃないかって思う。

 

「売却した場合はどの程度の収入が見込めるのでしょうか?」

 

 エルティナの質問に、ライラさんが、

 

「まあ、少なくとも数千万ヴァリスはくだらないだろうな。上手く売れば、一億は堅いと思うぜ」

 

 と答えてくれた。

 

 なるほど、目の色を変えるのも分かる。ワカヒルメ様は驚きのあまり目を見開いているのがよく分かる。

 

『ど、どうしよう二人とも』

 

『落ち着いてくださいワカヒルメ様』

 

 とりあえずワカヒルメ様はエルティナに任せるとして、アリーゼさんは「うーん」と悩むが、

 

「さすがにそれは受け取れないわ。これは、あなたたちの口止め料として渡されてるわけだから、ちゃんと受け取っておきなさい」

 

 と、はっきりと伝えてくれた。

 

「うーん。分かりました。けじめとして受け取っておきます」

 

 さて、これで大体の事は話し終わったようだ。この魔導書(グリモア)をどうするかは後で改めて話し合うことにしよう。

 

 その後はなんとなくお茶のお替わりが配られ、なけなしのお菓子が振る舞われ女子会みたいな感じになって楽しかった。

 

 

 

今後主人公は原作開始(数年後)までどれぐらいランクアップするか

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