ゲーム出身の一般アークスが、オラリオでダンジョンアタックするのは無理がある 作:柳沢紀雪
※誤字報告ありがとうございます。非常に助かります。
「ねえ、ワカヒルメ様。アマゾネスの子供ってなんだか珍しいですね。初めて見たかも」
「お嬢様。あまりじろじろ見るのは失礼になります」
「ごめんね、エルティナ」
気にはなったが、話しかけるほど気安くもないので一旦は料理に集中することにした。
「では、ごちそうさまでした」
私はからになったお皿に対して手を合わせて感謝を捧げる。ワカヒルメ様とエルティナも私に習って「ごちそうさま」と言ってくれた。
食後のサービスで熱い御茶をいただき、落ち着いたところでそろそろ出ようかというところで、店内が異常にざわついているのに気がついた。
「なんでしょうね? あっちに人が集まってる感じですかね?」
私は視線で二人にそれを示した。
「なんか、冒険者っぽいね。少し騒がしいな」
ワカヒルメ様がちょっと嫌そうな顔をされていた。ここはワカヒルメ様の行きつけの店だから、なんとなく自分の居場所を荒らされているように感じたのではないかと思った。
「ここは、冒険者もよく来店するのでしょうか?」
エルティナは食べ終えた食器類をひとまとめにして給仕に手渡す。
「いや、普段はこのあたりの店の従業員かぐらいだから、冒険者が来ること自体珍しいと思うけどね」
確かに、このあたりはダンジョンからもちょっと遠いし、冒険者向けの商店もほぼない、言ってしまえば一般の区画だ。こんなところにわざわざ冒険者が大挙する理由はないと言うことだ。
まったく、そろそろ店から出ようかというところなのに、入り口付近を塞がれてしまっていて動けないじゃないか。
ここが日本だったら「他のお客様に迷惑になりますので」って言ったら、よっぽど変な客でない限りはそれで終わるんだけどね。ここはオラリオだから仕方ないけどさ。
しかし、よく見ると冒険者がたむろしている場所は、先ほどアマゾネスの子供二人が食事を取っていた場所で、人だかりが少し動いてのぞかせたそこにはやはり件の二人がちょこんと椅子に座っている様子が目に見えた。
「なんか、幼女二人を屈強な男女が囲んでるの犯罪的すぎませんか? 警備を呼びます?」
「いや、なんだか様子が変だね」
屈強な男女に囲まれているにもかかわらずアマゾネスの幼女二人――たぶん、双子の姉妹――は涼しい顔でご飯をパクパク食べていて、活発そうな子は心なしか楽しそうな笑みを浮かべているほどだ。
「うーん。ねえ、エルティナ。あの人達が何をしゃべってるのか分かる?」
「解析します――どうやら、あの双子をファミリアに勧誘している様子ですね。近頃オラリオに流れ着いたばかりで――すでに二人ともレベル3とのことです」
これは少しびっくりだ。いろいろ聞いたところによると、オラリオにはダンジョンがあるから良質な経験値を得ることが出来るが、オラリオの外になると事情が異なる。モンスターの質が下がって、その分得られる経験値の質が非常に低いと言うらしい。せいぜいがレベル2でレベル3にまでなれれば大した物だと言われるみたいだ。そもそもそのオラリオであってもランクアップできない冒険者が過半数というのだから、オラリオ外でランクアップするのがどれほどすごいことなのか分かるだろう。
是非とも効率的に経験値を得る方法を教えてほしいぐらいだ。
「へぇ、あの歳でレベル3か。私達、追い抜かれちゃってるね」
しかも、まだまだ身体もできあがっていないだろう子供でありながらレベル3とはどれほどの才能があるのかと騒がれていると言うことなのだろう。そりゃ、どこもかしこも自分のファミリアに入ってくださいと言うだろうさ。
「そのようです」
年の頃は10歳ぐらいだろうか、アマゾネスらしく下着姿みたいな格好で街を練り歩くのは恥ずかしくないのかっていつも思うけど、あれぐらい幼いと別の意味で犯罪的だ。お姉さん心配です。
「それじゃ、今日も私達を倒せたらそのファミリアに入ったげる。それでいい?」
活発な子の方が勢いよく手を上げて席から飛び上がった。今日もと言っているから、しょっちゅうこんなことをしているのだろうか。所属するファミリアを探しているのなら、普通にギルドに相談したらいいのにね。もっとも、それでもダメだった私が言うことじゃないけどさ。
「なんだか心配だなぁ。変なファミリアに引っ張られたらことだよね?」
「それなりに自信があると思われますが?」
「うーん。
もっとも、その正義を裁定するのは私じゃなくてアストレア様だからそのまま入団というわけにはいかないだろうけど。
「ごめん、エルティナ。ちょっと様子を見てくるよ。変な人に引っ張られそうだったら助けに入るだけ」
「しかたがありませんね。ワカヒルメ様はいかがでしょうか?」
「いいよ。君が誰かを助けたいと思う心を私は尊重したいし。さすがにこのままじゃ私も安心して外に出られないからね」
「ありがとうございます。では、ちょっと行ってきますね。安全が確保できたら連絡しますので」
「うん。私達は中で待ってるよ。それじゃ、お茶を追加で注文しようか。エルティナは何がいい?」
「では、ほうじ茶を」
「君は渋いなぁ。私に合わせなくてもいいんだよ?」
と言うことで、ぞろぞろと外に移動し始めた集団において行かれないように駆け足でそこに合流した。
「なんだ?
そのうちの一人が私のことを知っていたようで話しかけてきたが、
「あの子達が心配なんですよ」
と言い返しておいた。
「子供が子供の心配をねぇ……」
まあ、言いたいことは分かる。まずは自分の心配をしろって言うんでしょ? 見た目だけなら私の方が年下だし、レベルも低いから仕方ないけどさ。
「それじゃ、最初は誰?」
「面倒くせぇからまとめてかかってきな」
なんやかんややっているうちに状況が進んでしまっていた。集まっている人数が多いので一人一人やっていたら日が暮れるだろうから、一気に終わらせようと言うことだろう。効率的だろうけど、大丈夫なのだろうか?
と言っても私の周りの冒険者は馬鹿にされたような憤りはなく、誰が最初に行くかで牽制し合っているようにも見えた。最初の人は基本的に貧乏くじだから積極的に行きにくいよね、だけどそんな腰抜けじゃこの双子は満足しないような気もする。と言っても、私は喧嘩に加わる気はないから傍観するだけだけど。
「つ……つぇぇ……」
まあ、心配する必要はなかったみたいだ。あれよあれよという間に一人また一人ぶっ飛ばされて、今ほど最後に残った小太りの冒険者がお姉さんの方の蹴りを腹に受けて地面に沈み込んだ。
「てめぇが弱ぇんだよ」
吐き捨てるみたいにお姉さんの方が小太りの冒険者を見下す。実際つばを吐いていたのでお下品だね。
「なんか、歯ごたえ無いね。オラリオならすっごい人たくさんいるって思ったのにね」
いや、実際すっごい人はたくさんいるけど、こういうやり方じゃチンピラしか寄ってこないと思うんだ。
「はぁ、もうここもハズレか……」
まあ、だけどここじゃない方がむしろ命の危険は少ないかもしれないから、思い切って街の外に行くのも手だと思う。
「あれ? 一人残ってた……君も挑戦者?」
「ん? 私?」
「そうそう、君……なんか強そうだね」
「なんだ、子供じゃねぇか。さっさと親のとこに帰ったら?」
お姉さんの方は憎まれ口だけど、心根は優しいね。
「孤児だから無理かなぁ」
前世でも小学校の頃には家族を亡くしていたし、今世では目覚めた時点で天涯孤独だったから、本当に家族というものに縁が無い。悲しいなぁ。
「あ、えっとゴメンね? それでどうする? 戦う?」
「うーん。まあいいか、それで気が済むならいいよ」
「加減しなさいよ」
「分かってる、じゃあ、行くよ!」
と、活発な妹さんの方が襲いかかってきた。といっても武器を持たずに素手でかかってきているので加減はしてくれているのだろう。というか、見た感じ武器を帯びていないみたいだから、格闘がメインなのかな?
「それでも、
今日はダンジョンから直でここに来てるから一応、巨剣は持ってきているけど、すでにアイテムパックに格納してしまっているので、取り出すのはちょっと躊躇する。
「しゃーない。こっちも素手でやるか……」
PSO2でもNGSでもナックルは苦手で、こっちに来ても触れてこなかったやつだからまともに戦えるとは思えないけど、一応訓練の一環で近接格闘はしっかりと履修しているからボロ負けすることはないだろう。
ひとまず両腕を顔の前に構えて頭部と顎に対する攻撃をガードし、基本的にカウンター狙いで、隙があれば姿勢を崩して投げ飛ばしてやろう。手や足での攻撃は基本的にリーチが足りないのでやらない。やっぱり、こういう戦闘は体格の優劣が如実に出るね。その点、ゲッテムハルトさんはマジで最強だった。心が壊れてさえなければ余裕で六芒均衡の後継者になってただろうに。
「よーし、じゃ、いくよ!!」
「おっと……」
私が構えると同時に妹さんは助走を付けずに飛び上がってまっすぐ蹴りを放ってきた。とても心地いいほどの思い切りだけど、ちょっと正直すぎやしないかね?
ステップ回避ですり抜けて後ろを取ってしまってもいいけど、喧嘩でやることはないね。
私は顔の前に構えた腕を少し前に突き出して、攻撃をそらせるように足を優しくなでつけて反対側の手で直角に伸びたつま先をつかみ、二の腕との接触点を支点にして思いっきりひねってあげた。
「うわぁ!!」
いきなり加わった回転運動に翻弄されたのか、妹さんは空中で思いっきり姿勢を崩しつつも無理に抵抗せずに自ら回ってひねりを逃がし、そのまま地面に倒れ込んだ――と思いきやそのまま両手をついてハンドスプリングの要領で宙返りをして……あ、空中で二分の一回転加えた……そして地面に危なげなく着地して10点満点だ。
「やー、びっくりした」
「油断しすぎ、交代する?」
着地した姿勢のままの妹さんにお姉さんが手を差し伸べて選手交代をほのめかすが、
「まだまだこれからだよ」
「あっそ」
妹さんは試合続行のようだ。
「ふぅ……やっぱり強いね、君。じゃあ、ちょっと本気出しちゃおうかな」
「勘弁してよ……」
妹さんの雰囲気がちょっと変わったように思えた。そろそろ逃げたほうがいいかな? どうしようかエルティナに相談しようと思ったが、その必要はなかった。
「いや、そこまでだ。その喧嘩は僕たちが買おうかな」
なんとなくどこかで聞いたことのあるかっこカワイイ男の子の声が響いた。
「あ、フィンさんに皆さん。お疲れ様です」
私はファイティングポーズをといて、フィンさんにペコリと挨拶をした。見た目は私よりもちっこいけど、噂ではもう十分中年のようなのがちょっと性癖が歪みそうだね。たいへんよろしい。
「なんだお前ら」
お姉さんは明らかに警戒している。なんか、全方位威嚇型の子猫みたい。尻尾があったら絶対にブワッってなってるね絶対。
「失礼、僕はロキファミリアの団長を務めているフィン・ディムナという。こっちは副団長のリヴェリア・リオス・アールヴとガレス・ランドロック。二人ともファミリアの幹部だ。そして、こちらが主神のロキだ」
この間、ルドラファミリアの騒動の時にお世話になったエルフのお姉さんだ。確か、リューさんもリヴェリア様と呼んでいたからおそらく同一人物だろう。
「この間は、ご迷惑をおかけしました、リヴェリア様」
一応、私からも頭を下げておく。
「うん? ああ、そうか……リュー・リオンの……いや、こちらも配慮が足らなかった。許してほしい」
「ありがとうございます、リヴェリア様」
うーん、なんとなくだけどついつい頭を垂れてしまうのはやっぱり、リヴェリア様に高貴な雰囲気があるからだろうか。それでいて、親しめるように考慮してくれているという感じもある、いい人だ。
「はぁはぁ……アマゾネスのロリっ子姉妹キター!! しかも、かわいいベルたんもおるやん。なあ、フィン。三人ともお持ち帰りしてもええ?」
「はぁ……ロキは少し口を閉じておいてくれ」
ロキ様は……まあ、うん、そうだよね。ちなみに、私のことをベルたんと呼ぶのはやめてほしい。なんとなく、後々ややこしいことになりそうだから。
「すみません、ロキ様。私のことはベルディナって呼んで貰えませんか?」
「うん? そーか? ベルたんってかわええやん」
「なんとなくそっちはアレなので、どうしてもでしたらディナでお願いします」
「ほーん。まあ、ええか。じゃあ、ディナたんもうちの子になりたいって事やな?」
「それは絶対に許さないよ? ロキ」
私の背後から凜々しい女性の声が響く。
「あ、ワカヒルメ様」
いつの間にかエルティナと共に店からおいでになっていたらしい。
「時間がかかりすぎですお嬢様。そろそろ向かいませんと」
「そうだね。ゴメン」
ちょっとだけ楽しんでいたのは内緒だ。
「おっと、エルティナ。君もいたのか。騒がしくしてしまい、すまなかった」
「いいえ、
うーん、やっぱりフィンさんのエルティナに向ける目はちょっと尋常じゃないよね。やっぱり、狙ってるのかな? エルティナ、モテモテで羨ましい。
「じゃあ、ここはロキ達に任せて私達はおいとまさせて貰おうか」
ワカヒルメ様はさっさとこの場を立ち去りたいようだ。
「えーー、行っちゃうの? もうちょっとだけ楽しもうよ」
と、妹さんがいうが、バトルジャンキーかな?(おまいう)
「またどこかでね」
出来れば今度は普通にお茶とかお菓子とかで済ませたいものだけどね。
「あ、そうだ。アタシ、ティオナ、んで、こっちがティオネ。よろしくね」
最後に自己紹介をして貰い、いよいよ友達みたいになってきた。
「ティオナにティオネさんか、うん、いい名前だね。私はベルディナ。こっちはエルティナと、こちらは私の主神のワカヒルメ様だよ」
一応こっちも紹介しておいてその場はお開きになった。その後ティオナとティオネさんはロキファミリアの人に連れて行かれて(意味深じゃない)、いろいろお話(意味深)をするようだ。
ロキファミリアなら信頼できるから任せてしまっても大丈夫だろう。というか、あのじゃじゃ馬を乗りこなせるのはあの人達ぐらいだろう。
「すみませんワカヒルメ様。お時間を取らせました」
「いいよ。オラリオならこういうこともつきものなんだろう」
「もうこりごりですけどね」
「やはり、ワカヒルメ様がいらっしゃるときにはある程度の護身武器は必要でしょうか? 町中ではあの巨剣を振り回すのも難しいでしょうし」
「そうだねぇ。さすがに無理があるかなぁ」
私は周りに人がいないことを確認してアイテムパックから巨剣を取り出し、片手で軽く振り回してみた。
「危ないからやめなさい。それにしてもずいぶん軽々と振り回すよね。やっぱりそんなに重くないのかい?」
ワカヒルメ様に叱られたのでとりあえず振り回すのはやめた。
「見た目よりは軽いですよ。試してみますか?」
「そうだね……いや、やめとくよ」
少し興味を引かれたようだが、エルティナの視線を感じたのか諦めたようだ。
「まあ、サイドアームについてはいろいろ考えときます。別に刃物じゃなくてもいいしね」
実際、私はウォンドとかロッドを振り回していた時期の方が長いのだ。新米の時はFo/Teだったし、マトイちゃんが入ったあとはTe/Foで、終の艦隊戦ではずっとロッドPhをたしなんでいたわけだ。
こんな経歴でよくもLuでガンスラを振り回していられるよねまったく。一応、他のクラスもそれぞれで訓練(狂想と幻創)を受けて合格したけどさ。
その後、本日のメインコンテンツの新居内見にしゃれ込んだ。
「直さないとダメなところは少なそうでしたね」
「そうだね。雨漏りもしていないみたいだし、外壁に穴もなかったから、本当に補修は最小限ですみそうだね」
「広めの部屋もありましたし、織機を置くにはちょうど良さそうですね」
「眷属も、もう2,3人は増えても問題なさそうなぐらいでしたね」
「ああ、予想以上に良かった。内側の改装が終わったらすぐに引っ越せるように準備をしておこうか」
「そうですね」
とりあえずリフォーム業者はアストレアファミリアから紹介して貰えるらしいのでそこは安心だ。日本でも悪徳業者がいたように、こっちでもそういうのがいないとも限らないからね。
今後主人公は原作開始(数年後)までどれぐらいランクアップするか
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