ゲーム出身の一般アークスが、オラリオでダンジョンアタックするのは無理がある   作:柳沢紀雪

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お祭り会場だってさ

 

 ティオナとティオネさん姉妹との騒動から早いもので半月ほど経過した。風の噂ではあの後ロキファミリアの幹部にぶっ飛ばされて見事二人はロキファミリアに入団したらしい。いわゆるメスガキ分からせ

 

 収まるところに収まった感じだねこれは。同じ冒険者なんだから、ダンジョンに潜っていればいずれは再会できるだろうと高をくくっていたが、ダンジョンの広さを忘れていた。特定の人と偶然出会うなんてほとんど不可能だということをエルティナに言われるまで気がつかなかったのだ(脳筋(バカ))。

 

「ひょっとして、まだ24階層まで降りてこれてないのかもね」

 

 今日は24階層で集中的に狩りをしていたところだ。18階層を拠点にして一週間ほどダンジョンに滞在する訓練も兼ねていて、ついでに16階層と24階層でどの程度収入に差があるか、到達難易度と移動時間諸々含めるとパフォーマンスはどちらが高いのかを検証もしている。

 

「なんとなくだけど、16階層の方が宴が起こりやすい気がするね」

 

 狭い通路と広間の連続の階層だから、モンスターが集中しやすいのかもしれない。逆にここは樹海だからモンスターが拡散しやすいというのもあるかもしれないね。

 

「あとは、身の程知らずの下級冒険者の押しつけ(パスパレード)も原因と思われます」

 

 エルティナの口調は結構辛辣だ。これが昔のMMORPGだったらルート権の奪い合いで狩り場の独占とも言われていただろうけど、こっちではむしろ人助けになってるのだからよく分からないよね。

 

「人助けにもなって、経験値にドロップも貰えるんだからお得だなぁって思うけどね」

 

 パスパレードと聞いて良い顔をする冒険者は見たことがないが、私みたいなのも一人ぐらいはいてもいいだろう。まあ、そのせいで、最近はリヴィラを中心に「祭り会場(フェスティバル・サイト)」と呼ばれるようになっちゃったんだけどね。

 

 お祭りがやりたいんだったら、リヴィラでやれって思う。もちろん、ぼったくりなしでね。そうしたら、地底人も少しは見直してあげるのに(偉そう)。

 

「さてと、素材はどう? 必要分は手に入った?」

 

 私は一旦巨剣をマウント部分に繋止して水筒から水を飲みつつエルティナに問いかけた。

 

「そうですね。必要数はクリアしました」

 

「そっか。何とか間に合ったかな」

 

 今回のダンジョンアタックの目的はドロップ品の取得にも重きを置いていたので、何とか予定期間内に必要数を確保できて良かったと私は肩を下ろした。

 

 

◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇

 

 

 今回の中層滞在の大きな目標の一つにモンスター由来の素材を確保するということが上げられる。その原因は、先日エルティナから報告された内容に深く関わっていた。

 

 その報告について、私はすっかり忘れていたため、エルティナがモニターを用いて一つ一つ丁寧に説明してくれたおかげで、ようやくその内容を思い出すことが出来たのだ。

 

「ひとまずこちらが基本設計となります」

 

「ありがとうエルティナ。だけどね、これを見せられても私にはちっとも理解できないんだよ」

 

 手元のモニターに映し出されたのは、私がエルティナにちょっと考えて貰うように頼んでいた、簡易的な通信機の設計図だ。

 

「主には魔石とモンスターの素材を解析した結果から作成可能な素子を用いた回路となります」

 

 過去に飛ばされる前にリュミドラから渡された簡易クラフト装置で、エルティナは時間を見つけては魔石やモンスターのドロップ品を解析し、その活用方法を検討し続けてきたようで、その活用の場を私に与えられたということで少し張り切ってしまったようなのだ。

 

「えっと、魔石とマンモス・フールの象牙を組み合わせてダーク・ファンガスの胞子も多少加えてるんだね。これで……なにこれ?」

 

 なんか、いろいろ難しいことが書かれていてちょっと混乱する。魔力の伝達がどうのこうのうとか、スイッチングうんたらかんたらと書かれているみたいだ。

 

「簡単にいえば、魔石とモンスターの素材を組み合わせることでトランジスタのようなものを作成可能であることが分かりました。それを用いて無線通信装置が作成可能との判断に至りました」

 

「おー、トランジスタなら知ってる。アレでしょ? 半導体ってやつだ」

 

 半導体があれば大体の電子機器が作れるってことだろう。それを魔力で再現できるってことは……すごいことなんじゃないかな?

 

「それで、そのトランジスタをクラフターで作成できるって事だよね?」

 

「モンスター素材の追加調達が必要となりますが、必要量の作成は可能です」

 

「なるほど。じゃあ、まずは素材の調達からかな」

 

「承知しました」

 

 マンモス・フールの象牙も、ダーク・ファンガスの胞子も中層で拾得可能であるから今回は中層をメインに、24階層での探索を重点的に行っているわけだ。

 

 

◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇

 

 

「さてと、時間はどうかな? エルティナ」

 

 回想はこれぐらいにして、私はエルティナに現在の時間を問うた。

 

「そろそろです」

 

 今回は18階層をメインとして中層に一週間ほど滞在する訓練を行っていてその最終日が今日だったということ。

 

「そう……じゃあ、今日はこれぐらいで上がろうか」

 

 一応今日は地上に戻る予定だからそろそろ撤収しようかとしていたその時だった。

 

「お嬢様、敵性存在(モンスター)がこちらへ多数接近中です」

 

「終わろうってところでこれか。戻りはちょっと遅くなりそうだね」

 

「そのようです。迎え撃ちますか?」

 

「もちろん。誰か追っかけられてるんでしょう?」

 

 こういう状況だと、身の程知らずの冒険者が大量に発生したモンスターから逃げてる状況がほとんどだ。中層ではよく起こることだから覚えておくといいよ。

 

「そのようです。冒険者らしき反応がうかがえます」

 

 なんか、パターンになりつつあるなぁ。まあ、祭り会場(フェスティバル・サイト)ここにありと示してやればいいことか。

 

「敵対ファミリアからの意図的な攻撃とかも言われるけど……まあ、やることは変わらないね」

 

 何であろうと仲間は助けるし敵は叩き潰すだけだ。難しく考える必要はない。

 

『ワカヒルメ様、今お話しできますか?』

 

『いいよ。どうしたの?』

 

『すみません、ちょっとイレギュラーが舞い込んでしまいまして、戻りが遅くなります。ひょっとしたら18階層でもう一泊するかもです』

 

『わかった。気をつけてね』

 

『ありがとうございます』

 

 念のためワカヒルメ様にも予定が変わりそうだということを伝えておいて、エルティナと共にモンスターの集団へと突撃していった。

 

 

◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇

 

 

 HUDに表示されたマップでは敵性存在の赤い光点が重なりすぎてまるで一つの巨大な紅円となってしまっている。なかなかこれほどの数の敵とお目にかかることは、ダンジョンでは初めてのことだ。

 

「なんか、土煙たってない?」

 

 木々の向こう側からもうもうと立ち上がる土色の煙と地響きが、尋常ではないことが起こっていることを証明している。まるで、サバンナのガゼルだよあれは。

 

「マスター。冒険者らしき反応が2つ観測されました。接触まで残り30秒ほどです」

 

 大体予測通りに事は運んでいるようだ。こちらは祭り会場(フェスティバル・サイト)として積極的に押しつけ(パスパレード)を受け付けてその分の経験値とドロップを横取りしてやるだけだ。簡単なことだね。

 

「実は一人はおぶられていて実際は3人とかあり得るね。エルティナは先方の保護をお願い」

 

「了解しました」

 

 この一週間ほどで何回かそういう状況を経験しているので、念のためエルティナには戦闘に参加せず逃げている人達の治療と護衛を頼んでおく。エルティナは私みたいに縛りプレイをする必要がないから、任せてしまっても何の問題もない。

 

「――――これ、いつまで続くのさぁ!!」

 

 おっと、かなり接近したせいか逃げている人達の声が聞こえ始めてきた。

 

「うっさいわね、しゃべる暇があったら走りなさいよ!」

 

 声の感じは女性だけど、なんとなく子供っぽいと言うか幼そうと言うか、最近どこかで聞いたことがある声だ。というか、私のシステムに登録されていた声紋からその二人の画像がHUDの隅に表示されて、「妙な縁があるもんだなぁ」とちょっと感心すらした。

 

「やぁやぁ、お久しぶりだねティオナとティオネさん。こんなところで会えるなんてすっごい偶然」

 

 HUDに顔が表示された途端に視界が開けて、ギャグマンガみたいな表情を浮かべて必死こいて走り続ける二人の間抜けな顔の向こうにこれまた見たことがないほどの大量のモンスターの大群が迫り来ていた。

 

「モンスターの津波ですね」

 

 エルティナの感想はまさにその通りだ。

 

「あー!! ベルディナ!!! おっひさしぶりー。逃げて!」

 

 足下のちょっと大きめの岩を軽々と飛び越えて、頭上の太めの枝に掴まったと思ったら鉄棒競技みたいに勢いを付けてさらに跳躍し、空中で一回転して私の頭上を飛び越えたのは、この状況でも笑みを絶やさないティオナだった。

 

「なんでこんなところにいるのよ。さっさと逃げなさいってば!」

 

「……ごめんね、ティオネ……私のせいで……」

 

 その点ティオネさんはもう一人の、私達と同年代に見える女の子をおぶって走っているようだ。

 

「エルティナ、お願い」

 

「承知しました。先方と並走いたします」

 

「また後でね」

 

「できる限り早く合流します」

 

 私はティオネさんとおぶられている金の美しい長髪の女の子が横を抜けて走り去り、それを殿のように後ろから追いかけるエルティナを見届けると、腰に繋止していた巨剣を引き抜き、両手で握ってゆっくりと後ろに回した。見た目はクラス:ハンター(ソード)の抜刀状態そのものだ。

 

「さてと、これだけの集団戦でどれぐらい立ち回れるのか試してみようじゃないか」

 

 私は予備動作なく虚空跳躍(ネクストジャンプ)を発動させ、ただの一歩で最高速に達して地面を這うような低空でかっ飛んで行き、大集団と接敵するころにはチーターでも追いつけないぐらいの速度に達していた。

 

 この加速を生身でやった日には足が木っ端みじんになっていただろうけど、そこはフォトンの身体強化をちょっと強めに駆けるというズルをしたので問題ない。まあ、入る経験値がちょっと減るかもしれないけどやむなしだ。

 

「喰らえ、なんちゃってツイストザッパーだ!!」

 

 私はそう叫びつつ背中まで引いていた巨剣を虚空跳躍(ネクストジャンプ)の踏み込みの勢いを利用して思い切りスイングしてその勢いを高速回転に変換しつつ大群に向かって突進していった。

 

 ハンターのPAとは違って、攻守一体(ガードポイント)も都度適用されるので、攻撃と防御を同時に行う、割とよい攻撃方法ではあるはずなのだ。

 

 先頭集団は私の攻撃によって突進を阻害されて足を止め、あるいは大地に倒れ込みそれらが壁となって後続集団を妨害し、それらが連鎖的に発生して、私の攻撃よりも仲間の勢いに押しつぶされて絶命した個体が、みるみるうちに灰の山となって積み上がった。

 

「いやー、大漁大漁。これで進行は止まったみたいだね」

 

 殲滅できたのは全体の3割程度といったところだろうか。前列が壁になってしまったのでそれに続く集団もそれに阻まれて突進できなくなってしまっていた。

 

『連中の進行は止めたから、とりあえずの安全は確保できたと思う』

 

『承知しました。こちらも一旦停止し負傷者の救護に入ります』

 

『よろしくね。おんぶされてた女の子、かなり重症に見えたけど、大丈夫?』

 

『確かに外傷は幾らかあるようですが……どちらかと言えばマインドダウンに近い状態かと思われます。マジックポーションの使用を許可していただけますか?』

 

『いいよ。エルティナの判断に任せる』

 

『分かりました。ではまた後ほど』

 

 街を徘徊していた男神(ミアハ)様がなぜかくれた精神力回復用のポーションだったが全く使い道がなかったため死蔵されていたやつだ。タダで貰ったものだから売るのも忍びないので、使う機会が出来て良かったと思う。

 

『おっと、あちらさんも体勢を立て直したみたいだね』

 

 灰になった仲間の壁を乱暴にかき分けて後詰めの連中がようやく姿を現してきた。すでに走る欲求はなくなっているようで、とにかく目の前の私を蹂躙することしか考えていなさそうだ。

 

 改めてよく見るとこいつは雄鹿型のモンスターで名前をソード・スタッグというやつらだ。立派な角を剣のように振り回してくる厄介な連中だが、実際それさえ気をつければなんてことはないと思う。防御力もそれほど大したこともないしね。

 

「ホントはね、あんまり鹿は倒したくないんだよね。奈良公園とか好きだったからさ……」

 

 確か初めて見たのは幼少期に両親妹と一緒に日帰り旅行に行ったときだったか。よく覚えていないけど、鹿に頭突きをされて尻餅をついた記憶はある。妹が手を叩いて爆笑していたことに腹が立ったのが一番印象的だったような気がするね。

 

 よく考えたらあんまりいい思い出じゃなかったかも。

 

「それじゃ、準備の出来た子からかかってきてよ。逃げたければどうぞご自由に。むしろそっちを推奨しますよ」

 

 私は巨剣を片手で構え直し、一度だけ勢いを付けて袈裟懸けに切り下ろしそのままクラス:ヒーロー(ソード)の抜刀状態で状況を見守った。

 

 目の前の数体が私の行動を挑発と受け取ったのか、鋭くも甲高い咆哮を上げ、頭を深くこちらに突き出す形で角を私に向けて、何度か前足で土をかいて他の個体とタイミングを合わせたと思うと一気にかけ出して向かってきた。

 

「馬鹿の一つ覚えだね。っていっても、君たちはそれぐらいしか出来ないか……」

 

 リザさんなら仲間とタイミングをずらして波状攻撃みたいな状態を作り出すだろう。

 

「あなたたちもリザさんみたいに心を持てればいいのに」

 

 私は直撃コースの一体に集中し、その角が当たるタイミングを見計らって剣を振り攻守一体(ガードポイント)の発動をもってその攻撃をキャンセルし、同時にその頭部を天高く切り飛ばした。

 

 勢いがそらされた首なしの身体は隣の雄鹿と接触し、後はもう全てが崩壊するのを待つばかりだ。

 

 さてと、後はもう消化試合だろう。この状態になって再び連中が徒党を組んで怒濤の鹿となって襲いかかってくることはないだろう。数による暴力は脅威だ、それが自ら各個撃破されてくれるのなら脅威は去ったと認識してもいいだろう。

 

『マスター。こちらは体勢を立て直しました。マジックポーションを処方したアイズ様の経過は順調です』

 

『アイズさんっていうんだね。分かった、こっちももう消化試合だから慌てなくていいからね』

 

『お三方はマスターを助けに行こうとされていますがいかがいたしましょう』

 

『まあ、いいけどね。無理はしないでって言っておいて』

 

『承知しました』

 

 ということで、エルティナの方も大丈夫のようなのでこちらもサクッと終わらせてしまおう。

 

 

 

 

 





多数の高評価に感謝いたします。ありがとうございました。
結果的に、評価を催促するような書き込みになってしまい申し訳なく思います。気を引き締めて執筆していこうと思いますので、応援をよろしくお願いします。

今後主人公は原作開始(数年後)までどれぐらいランクアップするか

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