ゲーム出身の一般アークスが、オラリオでダンジョンアタックするのは無理がある   作:柳沢紀雪

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番外編:アンクーシャ

 

 私は強くあらねばならないと何度思ったことか、とガネーシャファミリアの団長シャクティ・ヴァルマはギルドからの通達を眺めて、今一度心に強く思う。

 

「俺がガネーシャだ!」

 

 という自分たちの主神が、いつもの言葉で執務室に入ってきたと思えばどこから貰ってきたのか、ギルドの通知文を自ら手渡してきたときには目眩がしそうになったものだ。

 

「ガネーシャ様。そういうことは私たちに任せてくださいとどれほど……」

 

 秘書のような、雑用係のような団員がガネーシャにそう問い詰めるが、当の主神は「すまん!」と全く反省していない様子だった。

 

「次からは気をつけてください、ガネーシャ様。で、ギルドはなんと?」

 

 シャクティは秘書に文章を受け取らせて自分の机に持ってこさせた。

 

「じゃ、俺はパトロールがあるから!!」

 

 逃げたとしか思えない早足でガネーシャはそそくさと執務室を後にした。

 

「これ、絶対ガネーシャ様がヘマやって何か言質取られて厄介ごとを押しつけられたやつですよ」

 

 秘書もそろそろそういうことが分かってきたようで少し心強く思うシャクティだが、同時にこれで純粋な団員をまた一人失ってしまったことに心の内に涙を流した。

 

「あまり神をあしざまに言うな。あれでも私達の主神だ」

 

 お調子者で、面倒なこともたくさん持ってくる主神だが、民衆の神としての正義への崇拝は絶えることはない。

 

「団長も、人のことは言えないと思いますけどね」

 

 そういう秘書も分かっているのだろうから、そうやって肩を落として「やれやれしかたが無い」と振る舞うのだろう。それでも主神への崇拝を忘れることの出来ない自分への自嘲も混じっているかもしれないが。

 

「反論はしない」

 

 そうしてギルドの通達文を受け取りそこに書かれた内容にまたもや頭を抱えることになる。

 

「ギルドめ、このタイミングでまた厄介なことを……そこまでして税金をふんだくりたいのかあの豚(ロイマン)め……」

 

 ギルド長のロイマンがエルフであるにもかかわらず金と名誉を何よりも崇拝する俗物であることはオラリオの全ての冒険者の常識だ。そのために同族であるエルフからも蔑まれることも多いとのことだが、そのヘイトをさらに深めることになってしまったようだ。

 

「団長、口調……」

 

「すまない……幹部を招集してくれ。厄介ごとだと」

 

「分かりました……それにしてもギルドの強制任務(ミッション)ですか……何年ぶりですかね?」

 

 大抗争以降は自重していたようだが、闇派閥(イヴィルス)も沈静化していよいよと言ったところだろう。シャクティは一応は覚悟していたことではあるが、その内容があまりにもギルドに都合の良いものになっていて腹が立つばかりだ。

 

 ガネーシャファミリアはオラリオにおいても上位に入るファミリアだ。その分所属する冒険者のレベルも高く、今となっては第一級冒険者の数も10を超えるほどにもなった。ロキファミリアやフレイヤファミリアのようにレベル6を越える冒険者はいないにせよ、それに匹敵するほどの戦力を有することは疑いようがない。

 

「しかし、踏破階層の更新命令か……よりにもよって一番厄介な内容だ」

 

 そのため、ギルドとしてはできる限り討伐階層を更新させ、取り立てる税金を高くしていきたいのだろう。もちろん、その税金が闇派閥(イヴィルス)によってボロボロにされたオラリオの街の復興のために使われるのであればガネーシャファミリアとしては文句はないが、理性では納得できても感情までも納得させるのは難しい。

 

「地上警備のローテーションに全く余裕がないことをギルドも知っているはずなのだがな」

 

紅の正花(スカーレット・ハーネル)もまだまだ本調子じゃないって聞きますね」

 

 アストレアファミリアが現在活動を小休止中で再開の目処もなかなか立たないため、地上の警備はガネーシャファミリアが一手に引き受けている状態だ。もちろんリュー・リオンの助力もあるがやはり警備というのは人手があってなんぼなのでシャクティ達の負担は自動的に大きくなりがちだ。

 

「この際、方々に貸した借りを返してもらいに行くか……まずは、ヘファイストスファミリアだな。鍛冶師を何名か借りよう」

 

 ガネーシャファミリアは闇派閥(イヴィルス)との抗争において最前線で戦い多くの犠牲を払ってきた民衆の盾だ。故にその間にもあらゆるファミリアに様々に貸しを作っていた。

 

「アストレアファミリアは無理だろう。ロキファミリアには私達不在の時に街の警備に多少人員を回して貰うよう依頼するとして、フレイヤファミリアは……聞く耳を持つかも分からんな。他には……」

 

 意外に頼れるファミリアがいないことは寂しいものだとシャクティは思う。

 

「後は……ディアンケヒトファミリアか。もしも戦場の聖女(デア・セイント)を借りることが出来れば犠牲を出さないですむかもしれん。そして……」

 

 ふと、シャクティは執務机の隅に置かれた一通の手紙に目を落とした。それは少し前にガネーシャに書かされた依頼書に対する返答で、内容を要約すると「いつでも声をかけてください」という答えだった。

 

「ワカヒルメファミリアか……そういえばアリーゼが言っていたな……賭けてみるか」

 

 満身創痍でダンジョンから戻ったアリーゼを友人として労っているうちに彼女が漏らした言葉が印象的だった。ワカヒルメファミリアへの依頼がなかったら、自分たちは戻ってこられなかったかもしれないと。

 

 あのアリーゼがそう言うのだ。信頼しても良いだろうとシャクティは思い、羽ペンを取り上げて文章の作成に取りかかった。

 

 そしてその数日後、ギルドの掲示板に以下の告知がなされ、オラリオがにわかに活気だった。

 

強制任務(ミッション) 対象:ガネーシャ・ファミリア

 

 ギルドより上記ファミリアへダンジョン50階層到達の任務を与えたことをここに通知する。 以上』

 

 これもまたオラリオが再び盛り上がるための呼び水として期待されるのであった。

 

 

 






次章はガネーシャ+αです。

ベルディナ達もいよいよ(お手伝いで)深層に向かいます。マジで?

※現在鋭意執筆中
 一通り書き上がったら、手直ししつつ一気に投稿する予定です。
  →無理でした(25/1/29)





今後主人公は原作開始(数年後)までどれぐらいランクアップするか

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