ゲーム出身の一般アークスが、オラリオでダンジョンアタックするのは無理がある   作:柳沢紀雪

95 / 185
アミッドさんと打ち合わせ

 

 アミッドさんとエルティナの役割が似ているので、遠征に出発する前に一回ぐらいは顔合わせをして軽い打ち合わせでもしておこうと言うことになった。

 

「ついでにポーションとかの消耗品の調達も頼まれたわけだけど。支払はガネーシャファミリアに掛けでいいんだよね?」

 

 シャクティさんから貰った書類を渡せば、後日ガネーシャファミリアに請求が行くということらしい。

 

「こういうのはあんまり他のファミリアに渡しちゃだめなんじゃないかなぁ」

 

 信用されてると言われれば嬉しいけどさ。もっとも、購入する際には私のサインも必要なので、不必要な物を買ったとしたら、その請求は改めて私達に来るとは思うけどね。

 

「購入する物品のリストはお持ちですか?」

 

「もちろん。データ化したからエルティナのHUDにも表示するね」

 

 と言うことで、ディアンケヒトファミリアのお店にやってきた。ここは個人的にも虎の子のエリクサーを買いに来ることもあるけど、やっぱり高品質で高級品なので足しげくという訳にはいかない。

 

「こんにちは、やってますか?」

 

「いらっしゃいませ……ああ、あなたたちでしたか。どうぞ……」

 

「こんにちは、アミッドさん。少し久しぶりですかね?」

 

「そうですね。一月ぶりといったところでしょうか」

 

 前回、アストレアファミリアの依頼から戻った際に消費したエリクサーを補充するために訪れて以来だ。といっても、虎の子の1本を消費しただけなのでそんなにお得意様面できるほど大したものではないけどね。

 

「ご無沙汰しております、戦場の聖女(デア・セイント)様」

 

「ええ、お久しぶりです小人族の聖女(リトル・セイント)。今日はどういったご用でしょうか?」

 

「えっと、今度ガネーシャファミリアの遠征のお手伝いをすることになりまして。今日は必要な回復薬とかのお使いで…………ん? いま、エルティナの事”聖女(セイント)”って呼びました?」

 

 小人族の聖女(リトル・セイント)と言われるとまさにエルティナにぴったりな呼び名だけどね。

 

「あ……申し訳ありません。私どもの主神……ディアンケヒト様がやたらあなたのことをそのように呼びたがりまして……つい……」

 

 なるほど。ディアンケヒト様はなかなかセンスが良いようだ。アミッドさんとも同じ聖女(セイント)仲間みたいでいいじゃないか。

 

「二つ名って改名できましたっけ? 私、そっちの方が好きかも」

 

「おそらく無理でしょうね」

 

「私に聖女(セイント)など分不相応です」

 

「えー? かわいいのに……」

 

 私とエルティナがわちゃわちゃやり始めたところにアミッドさんが「こほん」とわざとらしく咳払いをして、

 

「大変失礼いたしました。猫又(ツインテールキャット)一般小人族(リトル・ノーマル)。ご用件を承ります」

 

「あっ、はい……こちらの品物をお願いシマス」

 

 私は、紙に書かれた買い物リストをアミッドさんに差し出した。

 

「さすがに深層への遠征ですと数が出ますね」

 

「先方からはどの程度で納品されるかの目安を聞いてくるよう言いつかっております」

 

「ガネーシャファミリアに直接納品するとなると……一週間……いいえ、五日で何とかします」

 

「分かりました。そう伝えますね」

 

 準備期間が残り一週間弱だから、ちょっとギリギリか。間に合えばいいと思うけど、配布するにも一日はほしいだろうからなぁ……。まあ、アミッドさんが言うんだから、それが限界なんだろう。お客は私達だけじゃないし。

 

 要件の一つはすんだからもう一つの要件も済ませてしまおう。私はそう思い、背後に待機していたエルティナを呼びよせてアミッドさんの前に立たせた。

 

「それと、今回はアミッドさんと一緒だと言うことなので、ちょっとだけ打ち合わせとかした方がいいかなって思うんですけど。どうですか? 主に、エルティナとですけど」

 

「そうですね。それも必要ですか」

 

「はい、アミッドさんとエルティナは役割がある程度重なる部分があると思うので、簡単な役割分担を話し合えればなと思いまして。ちなみに私はエルティナの護衛がメインですね」

 

「分かりました。私は前線に出ることはほぼありませんので後方での回復に専念することになるでしょう」

 

 うん、まさに屈強な冒険者に守られる聖女様って事だろう。まだまだ若いのに凄まじい回復魔法が使えるというらしい。

 

「私は主に前衛に追従しての救命活動がメインですので、一定以上の重症患者は後方に導き治療をしていただくことになります」

 

 そうなんだよね、テクターは確かに他のクラスに比べれば高い回復力を持つが、それはあくまで戦線の強化と維持に特化しているから、戦闘続行が不可能になるほどの傷病(いわゆる戦闘不能(床ペロ)状態)についてはさっさと本船(アークスシップ)のメディカル送りにして、追加の人員を早急に派遣して貰う方が効率が良かったりするんだよね。だから、エルティナの役割はめちゃくちゃ治療力の高い衛生兵という受け止めで問題ないと思う。

 

 ただし、エルティナが一人いれば通常の戦闘で死者が発生することはほぼないと思ってもいいから、かなり気分的には余裕が生まれるのだ。

 ジャガーノート? あれは異常個体(イレギュラー)だから……。

 

「そうですか……」

 

 アミッドさんは短くそう言うだけでなんか会話が続かない。

 

「えっと……それで……そんな感じでいいですか?」

 

 自分でも何を言っているのか分からないが、とりあえずエルティナが前、アミッドさんが後ろで、エルティナが回復しきれない重症者をアミッドさんが後方で確実に治療するってことでいいのだろうか? アミッドさんは、さしずめ歩く野戦病院ってやつだね(意味不明)。

 

『それで問題ないかと思います』

 

『そうだよね、ありがとう』

 

 とりあえずエルティナに通信でこっそり確認して私はうなずいた。

 

「ちなみに……」

 

「はい、なんでしょう?」

 

 アミッドさんがせっかく話題を振ってくれたので私はちょっと食い気味で受け答えたけど、そのせいでアミッドさんはちょっとだけ面食らってしまったみたいだ。

 

「いえ、あなたは毒などの状態異常はどの範囲まで回復可能でしょうか?」

 

 私じゃなくてエルティナに聞いているようだった。私はエルティナに視線を向けて、「答えてあげて」と無言で指示する。

 

「状態異常でしたら、(ポイズン)麻痺(ショック)混乱(パニック)炎上(バーン)凍結(フリーズ)視覚異常(ミラージュ)、などの状態異常を解除可能な魔法(テクニック)を習得しております」

 

 何かあったらとりあえずアンティを発動しておけば問題ないって事だ。

 

「なるほど、一部の呪詛であれば解除可能ということですね。参考になりました。あと、噂で聞きましたが、あなたは攻撃のアビリティを増加させる魔法も使えると聞いておりますが……」

 

「180秒という短い間ではありますが、力、魔力といった攻撃に関係するアビリティをおよそ24%程度向上させることが可能です」

 

「二割強ですか……それはなんとも……」

 

 まあ、そうだよね。二割程度じゃあんまり「すげぇ」ってならないのは分かる(勘違い)。アミッドさんもちょっと微妙そうな顔をしているから、エルティナのためにここはちょっとだけマウントを取っておかないと(余計なお世話)。

 

「ちなみにですけど、エルティナの魔法(テクニック)はアビリティの潜在値も含めて24%上昇ですから、思った以上に強化されると思いますよ?」

 

 私がレベル2になったばかりのアビリティオール0の時もレベル1の最終段階の時程度の戦力向上を感じ取れたので、少なくともその一つ前レベルのアビリティ値を含めて強化出来ているわけだ。

 

 レベル3以上は分からないが、リューさん曰く、擬似的にランクアップしたようにも感じられたらしいから、多分潜在値全部が対象になってると思う。

 


※作者補足※

 

仮にアビリティ800ごとにランクアップしたとしてレベル5で現在のアビリティ値が500の冒険者なら

 

力or魔力 (500+(800×4))×0.246=+910(ランク一つ分のアビリティに匹敵)

 

これにシフタストライクによる与ダメ+10%にシフタクリティカルによるクリ率+20%まで付くので思った以上に強化されるということだ。

 

※補足以上※


 

「…………」(絶句)

 

 ふむ、アミッドさんも多少は驚いてくれているみたいだから、ここはもう少しエルティナのすごさを知ってもらえば完璧だろう。

 

「後は、エルティナは防御力を向上させる魔法(テクニック)も使えるので、それでかなり継戦能力は上がると思います」

 

 防御力に追加して耐久力も同時に向上させてくれるし、最終的な被ダメも割合軽減してくれるから、思った以上に負傷率は下がることだろう。冒険者にとってはむしろこっちの方が大切かもね。

 

「……そうですか……はい、……分かりました……それなら重症者も相当少なくなりますね」(棒読み)

 

「安全第一です」

 

 ぶっちゃけメディカルの出番がないのが一番なのだ。船団の看護官であるフィリアさんもそう言っていたから間違いない。

 

 その後は24階層に一週間こもったときに手に入れた素材で換金できるものがないか相談して、数点買い取って貰っていい感じの収入になった。

 

「帰りにお菓子買ってこうか、エルティナ。ワカヒルメ様にもお土産出来るね」

 

「それよりも、そろそろ補充すべき消耗品もありますので、そちらを優先しましょう」

 

「うーん。じゃあ、まずは塩と胡椒だね。この間お蕎麦を打ったから小麦粉もちょっと少なくなったね……あとは……」

 

「油もそろそろ底をつきそうです」

 

「結構あるね。まあいいや、臨時収入が入ったから全部買っちゃおう。それじゃ、アミッドさんありがとうございました!」

 

「またのお越しをお待ちしております」

 

 私はアミッドさんに手を振って店を後にする。アミッドさんは深々と頭を下げて見送ってくれた。

 

「せっかく新しい油と小麦粉を買うんだったら、今日は天ぷらでも作ろうかな。タマゴの備蓄も今日使ってしまおう」

 

「承知いたしました」

 

 そういえば、ワカヒルメ様は朝廷で天ぷらとか食べられてたのかなぁ。なんとなく和食と言えば天ぷらって感じもあるから、知らないことはないだろうけど。

 

「海老が売ってるといいけどね。大葉とミョウガはマストだよね。なすびがあったら完璧かな。(キス)があったら最高だね」

 

 海老はなぜかメレン直送の活きのいいやつが売ってたので、思い切って3尾ほど買ってしまった。(キス)はさすがに手に入らなかった。(キス)の天ぷらは別格と言うほど美味しいから、チャンスがあれば絶対に逃したくないね。

 

 

 

 







なかなか美味しい鱚の天ぷらを出す店がないのが悩みどころ。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。