ゲーム出身の一般アークスが、オラリオでダンジョンアタックするのは無理がある   作:柳沢紀雪

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短いです





閑話:紅花と聖女

 

「またのお越しをお待ちしております」

 

「ありがとうございました、アミッドさん。遠征でもよろしくお願いしますね」

 

 小さな身体で一生懸命手を振る幼女とそれに付き従う小人族(パルゥム)の女性を見送り、アミッドは「ふぅ……」とため息をついた。

 

「…………仕事に戻りましょう…………」

 

 そう言ってアミッドは先ほど換金された24階層の素材をより分けて背後の棚に収める。

 

「こんにちは、アミッド、いる?」

 

 その声に棚を整理しつつ在庫確認をしていたアミッドが振り向いた。

 

「いらっしゃいませ、アリーゼさん。今日は何をお求めですか?」

 

「ネーゼの薬を受け取りに来たのよ」

 

「ああ――そうでした、申し訳ありません。すぐに準備いたします」

 

「ゆっくりでもいいわよ」

 

「お心遣い、感謝します」

 

 そう言ってアミッドはアリーゼに商談用においてある椅子を勧めて、自分はカウンターに用意してあったネーゼ向けのレシピを取り上げ、背後の棚から必要な品物を素早く取り出してその場で調合をし始めた。

 作り置きをしておいてもいいが、なるべく新鮮な状態で調合した方が効果があると信じる故だ。

 

 魔法的な療法はすでに終了している。後はネーゼ自身の生命力や自ら直ろうとする意思を手助けする事が重要になってくる。もう一度立ち上がり、前を向いて未来に歩く手伝いが出来ることこそが医療の最も重要なこととアミッドは確信する。

 

「真面目ねぇ。そういえば、さっきワカヒルメファミリアの二人が来てなかった? そこで見かけたんだけど。なんか、楽しそうだったわね」

 

 アミッドが美しい手際で調合を始めるその優美な背中を眺めながらアリーゼは話しかけた。

 

 アミッドの集中力を削いでしまわないかとも思うが、その程度でミスを犯すような素人ではないと思う故だ。

 

「ええ、来られていました。今度、ガネーシャファミリアの遠征に同行する予定とのことです」

 

 アミッドはエルティナの名前を聞いて一瞬調合の手を止めてしまった。

 

「あれねぇ。びっくりしたわ。ギルドも、もうちょっとタイミングを考えてくれればいいのにねぇ」

 

 調合はすぐに再開されたが、アリーゼはそれを見逃さなかった。

 

「私も同行することになりました」

 

「あら、そうなの? アミッドがいたら安心ね」

 

「そうであれば良いのですが――」

 

「なに? いつもなら、私が全てを癒やすわっ、キリッ――って感じなのに今日はなんか自信なさげね」

 

「そんなことは言いません」

 

「もっと胸を張りなさいって事よ、聖女様」

 

「いえ――私がおらずとも、世界最速小人族(レコードホルダー)がいればなにも問題はないでしょう」

 

「あー、そのことか……」

 

 珍しいとアリーゼは思う。本人は自覚していないだろうが、アミッドはエルティナにすこしコンプレックスのようなものを抱いているのだろう。

 無理もないとアリーゼは思う。最近有名になり始めているエルティナは、ことあるごとにアミッドと比較して語られる事が多い。

 

 一部には戦場の聖女(デア・セイント)を越える治療師(ヒーラー)だと吹聴する声すらあるのだからなおさらだろう。

 

 そんなものは無視すればいいが、否応なしに入ってくるのが噂というものだ。アミッドも有名な冒険者といえどもまだまだ子供と言える(難しい)年齢なのだから、気にならないはずはないだろう。

 

「そうね。あの子がいれば間違いなく犠牲者は減るわ。今まで諦めていた領域に立ち入ることだって出来るようになることも事実ね。だけど、それはあなたも同じよアミッド」

 

「ですが……」

 

「胸を張りなさい、アミッド。あなたは全てを癒やすんでしょう? そんなあなたが気落ちしてちゃ癒やせるものも癒やせないわよ」

 

「ありがとうございます」

 

「それに、あなたに癒やせてあの子に癒やせないものが確実に一つあるわ」

 

「それは、何でしょうか?」

 

「それは、自分で見つける事ね……ふふん、こうやって助言をしつつ成長を促す私、最高に輝いてるわね、さすが私」

 

「イラッ☆」

 

 ともあれ、アミッドも持ち直したようで、アリーゼはそのままネーゼのクスリを受け取って店を後にした。

 

「負けてはいられませんね」

 

 聖女の名を重荷に感じたことはない。全てを癒やすと誓い、神によってその力を得たときからただひたすらに前を向いてきた。今更後ろを向く事などあり得ないとアミッドは決意に新たにした。

 

「そうでなければあの方に顔向けできません」

 

 アミッドは自らの主神ではない一人の男神の微笑みを思い浮かべ、ぎゅっと胸の前で手を握りしめた。

 

 

 

 

 







アリーゼは何も考えていないようでいて、実は深く物事を見通しているように見えるが、実際は何も考えていないという感じのキャラを表現できたらなぁと思っています。



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