ゲーム出身の一般アークスが、オラリオでダンジョンアタックするのは無理がある   作:柳沢紀雪

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遠征前は武器メンテも大切

 

 アミッドさんと打ち合わせとポーションの購入を終えたのが昨日のことで、今日はスィデロさんの工房に向かう予定をしている。ちなみにエルティナは、ホームでいろいろと在庫の確認をしたいとのことだったから別行動だ。

 

 私の武器はオリハルコン製で不壊属性(デュランダル)が付与されているとは言え切れ味が悪くなったりするから、定期的にメンテナンスをして貰う必要がある。本来ならその時期ではないのだが、深層に遠征に着いていくとなればあらゆるものを万全にして置く必要があるだろう。武器メンテには団長の椿さんにも関わっていただくので、どうしても数日はかかるが、遠征開始までまだ五日ぐらいは余裕があるので前日までには受け取れるだろうという予想だ。

 

「こんにちは、スィデロさんいますか?」

 

 スィデロさんの工房はもうお馴染みになっていて、最近ではドアノッカーを私の身長に合わせた場所にも作ってくれてより便利になっている。それまでは木のトンカチでドアをガンガン叩くしかなかったからね。

 

「そろそろお主も覚悟を決めよ。それでも男か?」

 

 中から椿さんらしき声が聞こえるのでお取り込み中かなと扉をそっと開いて中を見る。

 

「うん? 客か? なんだ、お主か……ちょうどいい。入ると良いぞ」

 

 まるで椿さんが店主みたいだね。スィデロさんはいつもの丸太椅子に座って、おっぱいの下で腕を組んで仁王立ちしている椿さんの説教を受けているようだった。相変わらずおっきいなぁ。ハリがあって全然垂れていないのが若さを感じるけど、私よりも年上らしい(21歳児)。本当かなぁ?

 

「お取り込み中でしたか?」

 

「いや、発破をかけておったところよ。そう大したことではない」

 

「そうなんですね。じゃあ、先に私の用事、いいですか?」

 

「どうした、包丁でも研ぎに来たか?」

 

 スィデロさんは心なしかほっとした表情で立ち上がった。全体的に小柄なドワーフ族だが、それでも私の方が背が低いのがなぁ……。

 

 そういえば、最近発覚したのだが、私の身長はずっと138cmだと思っていたんだけど、最近改めて測ってみたら136cmだった。これにはさすがの私もびっくりだった(作者も驚きました)。

 

 閑話休題

 

 スィデロさんは巨剣のメンテにはまだ早いので、私の包丁のメンテをしに来たのだろうと当たりを付けたようだったけど、残念、そうじゃないんだなぁ。

 

「いえ、今度ガネーシャファミリアの遠征のお手伝いをすることになったので、念のため武器のメンテをお願いしようと思いまして」

 

「ふむふむ。実はな、ウチにもその話しが来ておるのよ。せっかくだから手前が行こうかとも思ったが、主神様がダメ出ししおってな」

 

 まあ、確かに椿さんがいたら鬼に金棒だけど、曲がりなりにもヘファイストスファミリアの団長さんで、しかも貴重な第一級冒険者なんだからおいそれと貸し出すことは出来ないだろうね。私がヘファイストス様なら同じ判断をしたと思う。

 

「でも、鍛冶師さんが深層までいくのって危なくないですか? 戦闘とか専門にしておられないんでしょう?」

 

「まあな。俺も鍛冶は出来るが戦いは御免被りたい」

 

 スィデロさんも肩をすくめた。

 

「そんなだからいつまでたってもレベル1なのだお主は。いい加減、ダンジョンに潜ってランクアップしてこい、そうでないと上級鍛冶師など夢のまた夢ぞ?」

 

「鍛冶師さんもランクアップしないとダメなんですか?」

 

 鍛冶師の事はあんまり詳しくないのでちょっと意外だった。

 

「そこがなぁ、難しいところなんだよ。上級鍛冶師になるには【鍛冶】っていう発展アビリティが必要でな」

 

「なるほど、だからランクアップしないとって事なんですね。でも、鍛冶をしているだけじゃランクアップって出来ないんですか?」

 

「問題は神々が感動する偉業をいかに達成するかというところであろうな。無論、神々が感動するほどの武器を打つことが出来れば、あるいはランクアップにつながる偉業とも言えるであろうが。レベル1の鍛冶師がそれほどのものを打てるとは到底思えんよ、特にこいつは」

 

 なんか、椿さんはスィデロさんに厳しい気がする。同族のよしみならもうちょっと優しくしてあげてもいいんじゃないかな?

 

「うーん。そう考えると確かにダンジョンに潜ったほうがランクアップは近いかもしれないですね。今度一緒に行きますか? 中層がメインになっちゃいますけど」

 

 スィデロさんには何かとお世話になっているから、ランクアップのお手伝いぐらいならいくらでも受け持つよ。いわゆるパワーレベリングってやつだね。こっちでそれが有効かどうかは知らないけどさ。

 

「おい、スィデロ! 最速記録の片割れ(ベターハーフ)にここまで言われているのだぞ。男気を見せるときではあろう!」

 

「ここで断ったらガレスさんに殴られそうだな。分かった、遠征から戻ったらいっちょ頼むぜ」

 

「ええ、よろこんで。ところで、最速記録の片割れ(ベターハーフ)ってなんですか? 初めて聞いたんですけど」

 

「うん? お主は知らんのか? 最近ではこっちの呼び名も有名だぞ?」

 

 そうなの? 私の二つ名は猫又(ツインテールキャット)だから、次の二つ名が付くのは少なくともレベル3になってからじゃなかったっけ?

 

「まあ、二つ名じゃないニックネームみたいなもんだな。せっかく最速記録を出したんだからって誰かが考えたんだろう」

 

「そうなんですね。でも片割れって言うと、やっぱりエルティナが本体って感じですか?」

 

「そのようだな。一般小人族(リトル・ノーマル)世界最速小人族(レコードホルダー)と呼ばれておるようだな」

 

 なるほど、私がエルティナの添え物だと知ったらエルティナは嫌そうにするだろうけど、私としてはベターハーフの言葉の響きが好きだ、意味はよく分からないけど。

 

「すまぬ、話しが長くなったな。武器のメンテが必要なら手前が預かろう。遠征まで時間がないのだろう? 最優先で仕上げてやろう」

 

「姐さんよぉ、いい加減俺の仕事を持っていくのは止めてくれねぇか?」

 

「ふん、お主には別の仕事が与えられるからそっちを優先しろ。主神様からの命令だ。『ヘファイストスファミリアの鍛冶師としてガネーシャファミリアの遠征に同行せよ』以上だ。もちろん、お主一人ではない。上級鍛冶師にも何人か声がかかっているから安心せい」

 

「まじかよ……深層とか無茶苦茶だろ」

 

「なーに、深層もあれはあれで悪くないものよ。何か珍しい素材でも見つけたら主神様に献上するといい。では、手前は急いで仕事に取りかかるとしよう、さらばだ」

 

 サラダバーと、ありがちなジョークで返す暇もなく椿さんは私の巨剣を「おっと……相変わらず重いなこれは……」といいつつ肩に担いで持って行ってしまった。あれぐらい恵まれた体躯だと違和感がないのがちょっと羨ましい。私もいずれは大人の女と思われるようなものになりたい(無理)。

 

「あー、マジか……マジか……生きて帰れるのか俺……」

 

「ご愁傷様ですスィデロさん。まあ、大丈夫ですよ。いざとなったら私が守りますから」

 

「ありがとうよ、最速記録の片割れ(ベターハーフ)

 

「なんか、その呼び名、恥ずかしいですね。猫又(ツインテールキャット)でいいですよ。私、猫好きですし」

 

 前世では基本的にアパート住まいでペットは飼えなかったし、そんな金銭的余裕もなかったから実現できなかったけど、ずっと猫は飼いたいと思っていた。こっちではそもそも野良猫じたいあまり見ないから、動物を飼うという習慣自体がないのかもしれない。

 

 閑話休題

 

 いくら深層に行くといっても、鍛冶師さんはサポート枠だから後方で安全は確保されているとは思うからそこまで怖がる必要はないと思うけどね。

 

「深層は私も初めてなので楽しみですね」

 

「深層を楽しみに出来るやつなんて初めてお目にかかるぜ」

 

「そうですか? 経験値をたんまりいただけて、質の高い魔石に、レアなドロップアイテムとかいいことだらけだと思いますけどね?」

 

 今回の遠征のお手伝いで、もしかしたらランクアップに必要な経験値を得られる可能性もあれば、より高度な回路素子を作るための素材も手に入るかもしれないと思うと俄然やる気になるね。

 

「さてと、主神様から命じられれば準備しねぇとな。さすがにここにある武器じゃ力不足か。先輩に頭下げるしかねぇかな」

 

「武器ですか?」

 

「ああ。俺が作れるのはせ中層か、下層の浅い部分ぐらいが限界だからな。深層に行くにはさすがにな」

 

 なるほど、私が普段潜っているところがスィデロさんの武器の適正階層なんだね。

 

「深層ってなると、やっぱりアダマンタイトですか?」

 

「前線で戦うならな。さすがにサポートだったらそこまではいらねぇかな」

 

 ふーむ。確かエルティナが予備で持ってる星11武器があったはずだから、それを貸してあげてもいいかも? エルティナは今でこそ私のお下がりである星15のリバレイトシリーズを使っているけど、それ以前は星13のレイシリーズで、レイシリーズがサポートパートナーに配備される前は、星9~星11の武器を使っていたはずだ。ちなみに、殆どが私のお下がりなので、それなりのオプションを付けていたはずだ(うろ覚え)。

 

「うーん。私――というか、エルティナがスィデロさん向けの武器を持ってるかもしれないので。もしもあったら、貸してあげましょうか?」

 

世界最速小人族(レコードホルダー)が? 小人族むけだと俺には合わねぇぜ?」

 

「そこは問題ないと思いますよ。まあ、明後日までには連絡します」

 

 アークスの武器は割と便利で、サポートパートナーが使うとサポートパートナーに合った大きさにしてくれるけど、私達が扱えば元の大きさに戻ってくれるわけだ。

 

「すまねぇな」

 

「こういうのは持ちつ持たれつですから」

 

 と言うことで、用事も済んだので今日は帰ろう。今晩はエルティナと相談してスィデロさんに武器を貸してあげられるかどうか確認しないとね。

 

 

◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇

 

 

 夕食後、在庫整理も終わったエルティナにそれを相談してみたが、やっぱりよい反応をして貰えなかった。そりゃそうだ。私の私物とは言えアークスの技術で造られたものをポンポン現地民に貸し出すのはどう考えてもガイドライン違反だろう。しかし、スィデロさんには大変お世話になっている、半分身内だから何とかなるだろうと言う暴論を振りかざして、最後は「マスターの責任において」という事で納得(?)して貰えた。

 

 そこで、いろいろ選定してみたけど、予想通りエルティナは今まで私があげた武器を処分せずに全部保存していたようだった。さすがに星1~星6とかのコモン武器は返納してて、残っているのは星9以降のようだったけど。

 

「意外にこれってのがないね」

 

「スィデロ様はあくまで鍛冶師。術者ではなく戦士系に近い方ですから」

 

 サミットムーンとかマジカルウォンドとか好きで使ってたけど、スィデロさんが使うとなると罰ゲームになっちゃうからなぁ。

 ゲームではノクスとかよく出回ってたけど、こっちにはなかったから諦めざるを得ない。

 

「うーん。クレヒジョウとディオクレスディガーぐらいかなぁ」

 

「打撃武器としては適していると思われますが」

 

 クレヒジョウは片方が二枚刃の戦斧(バトルアックス)のような形状で、ディオクレスディガーはちょっとこったデザインの戦鎚(ウォーハンマー)といったところだ。どちらも、スィデロさんのような屈強なドワーフにはぴったりと言えるだろう。

 

「どっちがいいかな?」

 

「スィデロ様は鍛冶師でありますので、ディオクレスディガーが最適と思われます」

 

 確かに、鍛冶師=ハンマーってイメージはあるからこっちがいいかな。

 

「そうだね。そうしようか。じゃあ、明日スィデロさんのところに持って行くね」

 

「分かりました」

 

 レア度は星10で、クレヒジョウよりも低レアだけど現地民に貸し出すならちょうどいい具合のレア度だろう。どちらにせよ、ウォンドは法撃用武器だから、打撃に使うにはちょっと力不足ではあるけどね。

 

 と言うことで翌々日にスィデロさんにディオクレスディガーを見て貰ったが、大変気に入って貰ったのでそのまま貸し出されることになった。やっぱり、ドワーフに大きなハンマーはよく似合うね。

 

 







スィデロさんも、そろそろ活躍させたいなぁと思っていたらできあがった話しです。

どう活躍させるかは今から考えます(活躍しないかもしれない)。


ちなみに、私は赤いきつねよりも緑のたぬきの方が好き(深い意味はない)
袋麺は当然「正麺(鶏ガラ醤油)」一択




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