ゲーム出身の一般アークスが、オラリオでダンジョンアタックするのは無理がある 作:柳沢紀雪
いよいよ出発です。
ダンジョンに遠征する場合は大人数になりやすいからある程度分散してダンジョンに入って途中で全体で合流するのがよくあることらしい。
特にガネーシャファミリアは街の警備も担当しているほどで、その規模はオラリオ屈指だから、それこそチームを四つぐらいに分けてダンジョンに入る必要があるらしい。
「私達はアミッドさんと一緒みたいだね」
ダンジョンに入る順番の書かれたリストには私のチームは最後でアミッドさんも一緒のようだ。
「
「いいね。ヒーローは最後に現れるってやつだ」
地上での集合時間まで後二十分ぐらいでボチボチ人が集まってきて、半分ぐらいは像のマスクをしている変な集団になっている。
こういうのって、本人達はカッコイイって思ってやってるのかな?
「お疲れ様です、
そうしてボーッとしていると、後ろから若い女性の声がかけられた。
「おはようございます、アミッドさん。今日は気合い入ってますね」
アミッドさんは店番の時の仕事着然とした服装とは違い、所々にアーマー代わりのプレートを備えた安全性も考えられた装備になっている。おそらく、繊維も特別なものが使われているに違いない。
これがいわゆる
機能性はもちろんのこと、見た目もじつに華やかでかわいいのがよいね。
アークスも、一応制服はあるが、それぞれ好みの服装で戦って良いという習慣があったのでとても好ましいと思う。マトイちゃんみたいなちょっとえっちな服を着ている人はアマゾネス以外にはほとんどいないみたいだけどね。
「ありがとうございます。あなたの服装も、その……よいと思います」
「そうですか? 嬉しいです」
私はこの遠征のためにちゃんと仕上げてきた”深層探索コーデ(マイファッション名)”を褒められて嬉しくなり、ついついその場でクルクルと回って見せびらかしてしまった。
スカートがふわふわとまくれ上がってしまうが、ちゃんと見られても恥ずかしくない下着(N-幻創聖母礼装[In]:ピンクにカラチェン済み)を設定しているのでなにも問題ない。
今回はシュヴァルノワールのマントを外した状態をベースにしているので、ミニスカ女騎士って感じのコーデに仕上がっているはずだ。軽装に見えて所々にアーマーがあしらわれているので防御力が高く見えるだろう。髪型こそN-ナイトメアヘアーと変わらないが、いつもならツインテールの付け根にフワダンゴエクステを一つずつ付けてちょっとボリューミーに見せていたが、今日はスウィートメルトリボンで髪を結んでいるように配置して、両耳には青のフォージピアスを付けて、髪には花をあしらったディオーレカチュームを付けて、さらにはボディペイントとして思い切ってウェディングガーターにコチョウストッキングを重ねて、さらにスノーガーターリングで全体的にゴージャスな感じを出している(長文乙)。
「皆様と比べますと、少し装飾過多とは思われますが」
「別にいいじゃん。戦闘の邪魔になるわけじゃないし」
堅いことは言いっこなしだよエルティナ。アークスならウェディングドレスを着ていても問題なく戦えるのだから、格好なんて自分の好きにしていいんだよ(暴論)。
「出発まではもう少し時間がありそうですね」
シャクティさんが先発の部隊に訓示を垂れている様子が見受けられるので、まだもう少し待機していなくてはならない様子だ。ちょっと暇だな。
「よう! 今回はよろしく頼むぜ、
割と野太い男の声が響き渡った。この声はもう確認するまでもないな。
「おはようございます、スィデロさん。スィデロさん達もこっちなんですね」
「まあな。一応サポート部隊ってことになってる。先輩共々な」
スィデロさんが後ろ手で指さしたところにはヘファイストスファミリアと思われる鍛冶師達が他のサポート部隊の人達と雑談のような打ち合わせのようなものをしている様子が見えた。スィデロさんは加わらなくていいのかな?
「スィデロさんもあっちの打ち合わせに加わらなくていいんですか? 私なんかよりもガネーシャ人達の方が重要だと思いますけど」
私の武器は基本的に壊れないのだから、ダンジョン内でのメンテナンスはそれほど重要視されるものではないだろうと思う。それよりも、一般的な武装をしている人達の方が鍛冶師さんとしては仕事が多いと思うのだけどね。
「俺はいいんだよ。あっちはあっちの繋がりがあるからよ」
ふーむ。お得意さんとか専属とかそういうことなのだろうか? 確かに、あちらの鍛冶師さんとガネーシャの人は割とフランクな、友達みたいな感じで話し合っているような感じはするけどね。
「そういうことですか、スィデロさんの繋がりは私達ってことですね」
私なんて、包丁の研ぎ直しとか、巨剣のメンテぐらいしか頼めていないからお客さんとしてはそれほど大したものじゃないと思っていたけど、こうして気にかけて貰っていると思うと嬉しいと思う。
「そういえば、エルティナのハンマーの調子はどうですか? 肩に馴染む感じはありますかね?」
スィデロさんが深層でも使える武器を探していたところ、ちょうどエルティナのサブ武器がいい感じじゃないかということで貸し出したのだ。
「ああ、こいつはいいな。扱いやすい」
そう言ってスィデロさんは背負っていたハンマー――ディオクレスディガーを取り出して頭上でブンブンと振り回して見せた。
「いいですね」
そんなスィデロさんの子供みたいなはしゃぎっぷりに、ついニコニコしてしまう。
「その武器は……あなたのものですか?」
アミッドさんはスィデロさんが振り回すハンマーを見て、エルティナにそっと問いかけた。
「私の予備の武装ですが、今では使用しないものを貸し出しました。お嬢様の判断です」
エルティナはやはり今回の武器の貸し出しには納得していないようだ。それはそうだ。本来ならこれは、私の私物とは言ってもオラクル船団の備品には違いないのだから、それを現地民に貸し出すこと自体があり得ないのだからね。だけどさ、知り合いが困ってるなら何とかして助けてあげたいって思うのが人情ってもんじゃないかな。
そうしてスィデロさんといろいろ話しているうちにシャクティさんがこちらにやってきてまもなく出発だとの連絡を受けた。
「私達が最後なんですね」
「そうだな。よろしく頼むぞ、
「頑張ります!」
私はワクワクが止まらない。なぜなら、私達だけでは到底行けないような深層領域に連れて行って貰えるのだから、どのような冒険が待ち受けるのか楽しみでしかたが無い。あとは経験値、これ重要。
「よし、頃合いだな。まずは18階層のリヴィラに向かい、そこで一度補給を行う。その後改めて先発隊と合流し、さらに部隊を二つに分ける予定だ。
「承知しました」
アミッドさんは背筋を伸ばし、杖をしっかりと握りしめた。
シャクティさんの号令により部隊が整然として動き始めた。さすがに秩序を重んじるガネーシャファミリアの眷属だ、面構えが違うなぁと私は思う。もちろん、アークスだって負けちゃいないけどね。
「サポート部隊は私達の中心を歩いてくれ。戦闘は他の者が行う。今は温存していてほしい」
シャクティさんの支持に、私達サポート部隊は静かにうなずいて、輪形陣展開する部隊の真ん中に集合していった。
「それじゃ、スィデロさん、18階層までよろしくお願いしますね。モンスターが襲ってきても私が倒しますので、安心してください」
「お……おう! 頼んだぜ、
といっても、モンスターの殆どはガネーシャの人達が倒してしまうだろうけどね。
「アミッドさんも、できる限り私かエルティナの背後に回るように努めてください。私達はサポート部隊の直衛みたいな感じですので。それでいいよね? エルティナ」
「お嬢様の指示に従います」
うーん。エルティナはちょっと不満のようだけど、最終的には私達は前線部隊のサポートに回るんだから、サポート部隊の支援が出来るのは今だけの貴重なタイミングであるはずなんだけどなぁ。こういうのはご縁というものだから大切にしないとって思うんだけどね。
「できる限りおとなしくしていてくれ、
シャクティさんはそう言うが、私としては少し不満だ。
「うーん。私達のことはもっと雑に扱って貰っていいですよ? 基本的に私達は消耗しないので」
アークスにとってフォトンは空気中に満ちあふれているものだから、テクニックやPAで消費したフォトンはそのまま呼吸をするように補給すれば元通りだ。
だけど、冒険者の使う魔法で消費される精神力はそうもいかないと言うらしい。だったら、一番大切なところまでアミッドさん他の魔導士の魔力を温存するのが一番正しい運用だと思うんだよね。
「自重してくれ、
しかしシャクティさんは頑ななようで、私は「分かりました」と返すしかなかった。
しかたが無い、しばらくはおとなしくしてよう。
good-bye ヒロ・アライ
Forever ヒロ・アライ
あなたは偉大なナビゲーターだった