型月世界の西遊記   作:筆折ルマンド

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お久しぶりです。
大変お待たせしました。
大変申し訳ありませんでした。


如意棒

 

「霊験あらたかな武具が欲しいのなら海に出て東海龍宮を尋ねるのが良いだろう。奴らは近々、星の内側へ引っ越すらしい。本来なら家宝にしている様な宝物も、内海には持っていけないからと譲ってもらえるかもしれないぞ」

 

 それは鉄扇公主からの伝言だった。

 花果山の民の武具は大力国で買い付けられたものの、孫悟空に持たせるに相応しい立派な宝具を見つけられていなかった美候王はその助言に大変喜んだ。

 

 星の守護者の側近を名乗るなら、それ相応、世界有数の武人でなければ名前負けと言うもの。

 当然、武器も希少で強力なものでないと格好がつかない。

 と美候王は考えていた。

 

 つまるところ彼氏を着飾らせたい彼女のような思考。

 

 ……

 

 いつ恋人関係になったって? 

 

 ……女神というものはそういう生態だから仕方ない。

 孫悟空の方もまんざらでは無い様子なのが悪い。

 

 ◇

 

「悟空くんにあげた黄金剣はちょっと消耗が激しいみたいですので、早く良い武器見つけてあげないとですね〜」

 

 花果山山頂の御殿で思案する美候王。

 

 孫悟空の現在の得物「黄金剣」

 美候王が混世魔王を倒す際に貸し与え、そのまま授けた擬似聖剣。

 

 複製品とはいえ精霊が創造し直々に与えた聖剣。

 その宝具としての格は極めて高位に位置する。

 

 だがしかし、

 その魔力を光エネルギーに変換して光の刀身を形成し、さらに魔力を消費してビームを放つという特性上、通常の宝具とは比較にならないほど燃費が悪い。

 その消費魔力量の膨大さは、安定した使用には原子炉並みのエネルギー供給能力が必要とされるほど。

 魔術的才能は平凡な仙人の孫悟空にはあまりに運用コストが重すぎた。

 

 という訳で、美候王は悟空に似合ってる格式高い魔力消費量の少なくてカッコいい武器を求めていた。

 

 そこに届いた鉄扇公主のお言葉

 

 これはもう行くしかない! 

 次こそはカッコいい武器を手に入れるぞー! 

 

 と意気込む美候王の反省を忘れた姿を目にして、悟空は「どこかに出かけるなら自分を連れて行け」と釘を刺したが、美候王はどこ吹く風と聞き流していた。

 

 やれやれ、と肩をすくめる孫悟空。

 美候王が花果山を飛び出しても分かるように結界に外に出た場合でも連絡が来る機能を追加しておいた彼だったが、本人にGPS発信機を付けなかったのが運の尽き。

 

 数日後、

 悟空の直接の監視が緩まったのを確認した美候王は、

 その日のうちに ぴょーん と花果山の中央に流れる水簾洞を覆い隠す大きく立派な滝に飛び込むと、そのまま川の流れに沿って海まで泳いでいってしまった。

 

 川は海に繋がっている。

 小さな子供でも知っている事ですね。

 

 悟空の結界はどうしたって? 

 そんなもの3秒あれば穴ぐらい開けられますとも。

 女神様ですから。

 

 ◇

 

 数時間後、美候王の脱走に気付いた孫悟空。

「あんにゃろう……」

 これ以後、彼は美候王に対して敬語を使う気が失せてしまったという。

 

 ◇◇◇

 

 さてさて、美候王が泳いで来たのは神代中国大陸の東側に広がる大海にある東海龍宮。

 そこに住むのは地球誕生初期から存在する最古の竜種のうちの一体「東海龍王」の一族。

 

 浦島太郎に出てくる龍宮城を遥かに超える豪華絢爛な城に加え、龍の宝物を集める本能によって48億年かけて貯め込まれた財宝を仕舞うための宝物庫は王城を更に上回る大きさ。

 

 東海龍宮に美候王が近づいていくと、突然、城の門が開き、大勢の龍や海の生物が人間に化けた兵士がわらわらと現れてきた。

 

 皆、一応にその顔は険しく、完全な臨戦態勢。

 

 美候王はキョトンとしているが、

 綺麗な見た目程度で気を抜かないぞ! 

 と兵士たちの士気は高い。

 

 いきなりの警戒であるが、それも仕方のない事。

 

 なにせ美候王は地球の造った対宇宙決戦兵器。

 

 生物学的には、龍宮の主である東海龍王を始めとする竜種と美候王は近縁関係にあるが、

 それはクジラと人間よりは近いというだけで、

 

 実際のところは

 クジラと平成メカゴジラほどに違う。

 

 骨格の成分こそ同じ

(中国の地母神 女禍は下半身が黒龍の女性の姿で描かれている)

 であるものの、

 戦闘に特化している美候王は生物よりも人工物に近い。

 

 東海の民からすれば、ゴジラが東京湾に出現したのと同じ。

 歩く火薬庫が街に近づいてきたとなれば、警戒されるのも当然の事だった。

 

 さて、どうしましょう? 

 と対応に悩む美候王。少しの間、思案していると、

 

 豪華な着物を着た文官らしき龍頭の男が兵士たちの間を割って現れた。

 手で武器を構えた兵士たちを制すると、美候王に対してお辞儀をした。

 

「そこのお方。敵意は無い様子ですが、その霊力。さぞ名のある霊でございましょう? そんな貴女がいったいどのような用事でこの東海へ訪れたのですか?」

 

 話のわかりそうな文官の登場に、美候王はホッと胸を撫で下ろした。

 

「初めまして。私は東勝州 花果山の美候王。今日はご相談があって訪問させていただきました」

 

「失礼ですが、ご相談とは? 東海龍王様でなくとも我々で出来る事ならばなんでも協力致します」

 

「あ、いや、その、東海龍王さんたちはもうすぐ内海に戻られると聞いたのですが、宝具を一つ、近隣のよしみをもって分けていただきたいなー……なんて、……ダメですかね?」

 

 龍王の財を狙うとは不届物め、と言いたいのはやまやまだが、相手が下手に手を出したらタダではすまなそうな大怪獣であるため、龍頭の文官は美候王を受け入れる事にした。

 

「かしこまりました。しばらくお待ち下さい」

 

 龍頭の文官が龍宮に報告に帰ると、東海竜王は多くの郎党、並びに儀伏兵の面々を従えて、宮門まで迎えに出て釆た。

 

「ようこそおいで下さいました。さあ、どうぞお入り下さい」

 

「あ、これはこれはご丁寧にどうも。あ、コレ、つまらないものですが、花果山で取れた果物です」

 

 ◇

 

 宮殿へ通されて、美候王の持ってきたフルーツと共にお茶が出ると、竜王が聞いた。

「美候王殿は我の宝物を求めているらしいが、いったいどの様な物を必要とされているのかね」

「そうですね。持ち主の魔力を無闇に使わない物で、いっちばん凄い武器、ですかね。あ、いや、分けてもらえるだけでありがたいんですけど!」

 

 豪奢な着物を纏った龍王が顎に手を当てふむと頷く。

 

「なるほど。別にかまわんよ。どうせもうすぐ見る事も無くなる代物だ。このまま宝物庫で埃をかぶるよりも使われる方が宝物も嬉しかろう。よろしい。我が東海龍宮で最古にして最大最高の宝具をお見せしよう。貴女が宝物に選ばれたのならお渡ししても良い」

 

「本当ですか! ありがとうございます!」

 

「よいよい。青娘、彼女を神珍鉄の元へ案内しなさい」

「分かりましたわ、お父様」

 ウキウキとした様子で青いドレスを着た少女に案内されて歩いていく美候王の後ろで側近が東海龍王に耳打ちする。

 

「龍王様、アレをお見せになるのですか」

「是非も無し。今の時代にアレを持ち上げられる者など存在しない。蓄財だけでも一つ最古の竜種の威厳というものを見せておかねばな」

 

「アレ、置いていかれて誰も動かせなかっただけでは……」

「フッ、神の信頼あって我に預けられたのだ」

「モノは言いようにございますね」

 

 ◇

 

 龍王一向と美候王は宝物庫の裏手に出た。

「あれ? 宝物庫の外……、ああ、アレですか!」

 

「流石、目敏いな」

 

 宝物庫の裏にパックリと口を開けた海溝の真ん中に、

 夕焼けのように真っ赤な緋色と

 朝焼けのような煌めく白光を渦巻く様に纏った巨大な柱が海溝の中心に突き刺さる様に屹立していた。

 

「あれは天河鎮定神珍鉄。天地開闢の折、原始の神が世界の形を定めるために使用した定規だ。武器ではないが、その神秘、現世に並ぶものは存在し得ないだろう」

 

 ──まぁ、流石に武器として使うなどは冗談だがね──

 

天河鎮定神珍鉄(てんがちんていしんちんてつ)

 古の時代の大神器

 海溝に突き刺さる 太さ500m 長さ2万mの鉄塔

 海溝の底を抜け、世界の内側まで突き抜ける星の楔。

 

 東海龍王からすれば、東京タワーを案内するようなものであり、ちょっとした観光案内のつもりだった。

 

 はっはっは、冗談だ。宝物庫に武器を選びに戻ろう

 と、美候王に声をかけようとしたのだが、

 

 目を輝かせた美候王はグッと腕をまくった。

 

 龍たちがキョトンとしている間に、

 やる気満々の美候王は頬をぺちんと叩くと、天河鎮定神珍鉄の所へ泳いでいってしまった。

 

「持ち上げられるわけないでしょうに」

 

「記念に触るぐらいは許そうではないか」

 

 ◇

 

 スキル『自己改造』

 自身の肉体を改造し新たな特性、形状を得る能力。

 

 美候王は再三話している通り、対敵性地球外生命体迎撃兵器。

 

 未知の脅威に対抗するため、

 その拡張性、適応能力は地球上で確保出来る最高の能力を備えている。

 

 

 地球に存在を記録された地球外生命体は軒並み巨大。

 

 討伐済み

 白き巨神 身長64m〜未計測km

 

 現在冬眠中

 アーキタイプ:マーキュリー 全長100m

 

 4千年後再接近予定

 捕食遊星ヴェルバー 仮想 最低直径50km

 

 それらに対抗するため、美候王は自身のスケールを自在に巨大化させる機能を有している。

 

 『光の巨神』(ウルテマ・ヒュージスケール)

 

 地母神の権能に由来する戦闘形態。

 

 美候王、初の戦闘モードはこんな所で初のお披露目となった。

 

 東海龍王たちの前でまるで竹の様にみるみるうちに巨大化していく美候王。

 海溝を一跨ぎするほどまで巨大化すると両手でむんずと神珍鉄を掴むと、引っこ抜くために更にニョキニョキと巨大化を再開した。

 

 巨大な鉄塔が地の底から引き抜かれていく事に、地響きと共に海底が揺れ動く。大陸プレートが脈動し、未曾有の大地震が発生した。

 

 そうして

 

 轟音と共にと美候王が天河鎮定神珍鉄を抜き切った。

 

 もうもうと湧き上がる舞い上がる砂煙に包まれながら、呆気に取られる東海龍王一族の中、おもむろに誰かがパチパチと拍手を始めると、皆、雰囲気に乗って拍手が湧き上がった。

 

 こうして美候王は天河鎮定神珍鉄を手に入れたのである。





『光の巨神』
ウルテマ・ヒュージスケール
ランクEX
地母神系の神霊の持つ成長促進能力を自身に適応させた自己改造スキルの亜種。
相手に合わせて自身の存在規模を拡大させる戦闘用のスキル。
大きな特徴として一度巨大化した後、
他の地母神系統の場合は「幼児退行」スキルのようなレベルダウンスキルで本来不可逆的な「成長」を強制的に遡って自身を退化させなければならない所を
美候王は肥大化させた自身の肉体を光エネルギーに変換して収納する事でデメリット抜きに小さくなることが出来る。

天河鎮定神珍鉄
対界宝具
ランクEX
46億年前の地球発生初期に、原始の神々が地球上の世界の構造を決める際に使用した定規。
天沼矛や創世の槍と同一視される大神器。
存在を分離し、形状を決める権能を持つ。
この権能は、
存在を分離する能力は乖離剣エアと
形状を決める能力はロンゴミニアドのソレと同種の能力であり、
両方の機能を持ち合わせている天河鎮定神珍鉄はより原始に近い神器であると言える。
原始の神がただ置いていっただけなので、抜いても世界構造に問題は無い。
しかし、画用紙に刺さった画鋲を抜くと紙がたわむ様に、抜けば今まで押さえ込まれていたエネルギーが一気に解放され大地震が発生する。
何やってんだお前ェ!!
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