型月世界の西遊記   作:筆折ルマンド

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お久しぶりです。
一週間…早い

過去編?
設定説明回ですねコレ


幼王の話

 

 地球はとても焦っていました。

 

 地球という星が、自分が宇宙と比較すればまだまだ小さな世界しか知らなかった事をこの一万年の間に嫌と言うほど思い知らされたからでした。

 

 ◇

 

 一万年前より昔は地球の表層世界は比較的安定していました。高濃度の神秘≒魔力に支えられた魔術文明は1万2千年後である西暦2000年の文明を超えていました。

 ですが、その安寧は(ソラ)からの来訪者によって軽々と破られてしまったのです。

 

 まずは1万年前

 地球は外宇宙からの侵略者との闘いで先史文明と生物の8割を失いました。

 これまで地球の物理法則の根幹を成していた魔術原理が崩壊し、神秘が穴の空いたコップの様に減衰し、神代は急速に衰退していきました。

 

 3千年前

 星と神々は神秘の衰退を食い止め、さらに次世代の知性体である人間との関係を密にしようと考えました。

 その架け橋とするべく神々は人との間に黄金の王を産み出しました。

 しかし黄金の王は逆に神々の干渉を否定し、神と人類の決別を選択してしまいました。

 結局、神秘の衰退は止まらず、この試みは失敗に終わりました。

 

 2千年前

 いつ出したか地球自身も忘れたSOS信号に引き寄せられ、どこからともなく宇宙の彼方から蜘蛛の様な姿をした別惑星の最強生物が地球に飛来し、そのまま冬眠しました。

 この宇宙生物は、少なく見積もっても1万年前に地球文明の8割を抹消し地球をボッコボコのボコにした侵略者を、更に上回る怪物でした。

 

 ここ数百年の間の話になります。

 地球と協力関係にあった月が魔力減衰によって生息していた生命体が粗方滅んでしまいました。

 遺された月の王は、地球圏で暗躍し、その動きはとてもきな臭くなっています。

 

 極め付けの100年前

 人類の中から、単独で識覚を銀河系規模まで拡大化させた超太陽系精神知性体に至った人間が現れました。

 これは神々にとって庇護対象であった人類が一つの星を越えて宇宙へ進出できる証左となり、この一件を契機に神々の多くが世界の世代交代を受け入れたのです。

 

 文字に羅列すれば以上の通り

 

 正に

 

 正に『井の中の蛙、大海を知らず』

 

 ことここに来て地球は自分が満足に身を守る手段を持たない裸の王様である事を思い知らされたのです。

 

 地球は宇宙規模の外敵を迎撃する守護者を欲しました。

 

 少なくとも今地球でゴロゴロしてる異星の蜘蛛より強い守護者がいなければ、蜘蛛の機嫌しだいでいつでも星そのものが乗っ取られてしまいます。

 

 そんな屈辱には流石に地球も耐えられない。

 

 ですので、これ以上神秘が減衰する前に空前絶後の星の化身を作成する事を決めたのでした。

 

 ちなみに地球は月と技術提携していましたが、最近地球に色々と怪しい工作仕掛けてきているので、提供された技術は使いませんでした。

 

 その代わりに参考にしたのは

 過去地球に飛来した2体の地球外超生命体の情報。

 

 敵との戦闘データを元に

 地球は純地球産の巨神の作成に踏み切ったのです。

 

 ◇

 

 核に使用するのは地母神の創り出した根源から魔力を汲み出せる無限魔力の神岩の最後の一つ。

 

 肉体には地球の与えられる機能をありったけ与え、

 

 外敵への対抗策として異星超生命体の超常的な概念礼装を地球版にチューニングした能力を付与。

 

 これで星の巨神の素体は完成。

 

 ここで地球はさらなる英断を下しました。

 

 地球最強なのですから当然の事ですが、万が一この巨神が地球に牙を剥いた場合、現存する地球の総戦力を結集させても勝ち目はありません。

 

 この巨神が必ず星の守護者に育つ保証が必要だと地球は考えました。

 

 熟考の末、地球は光の力を巨神に付与しました。

 

 1万年前、先史文明を滅ぼした侵略者を打ち破った希望の光。

 その力を巨神に概念礼装として組み込んだのです。

 

 巨神に付与された光は

『光を持つものは善なる者である』

 という概念性を含み

「この能力を持つ者は、聖者、聖騎士に限られる」

 という因果の果(結果)を予め付与する事で、この巨神が善なる神となる運命を決定的付けておいたのです。

 

 この能力付加が功を奏し、

 

 正史である汎人類史において、この巨神計画で巨神に育つ予定だった幼体の性格が……まぁ、頭妖精さんだったせいで失敗したのですが、

 

 この世界においては巨神の幼体の創造に成功したのでした。

 

 ◇

 

 岩の私

 まどろみの様な諦観。

 どこか世界と隔絶された感覚の中、

 私は自分に手を加えられるの感じていました。

 

 星の霊気が流れ込み、さながら粘土をこねるように私の姿を形作っていくのがわかりました。

 

 それは機械を組み立てる様に淡々と様々な概念や能力を私に搭載させていき、

 

 仕上げに輝く光を私に埋め込むと、私の誕生を望みました。

 

 私はただ遠くの誰かに望まれるまま、世界に産まれ落ちたのです。

 

 ◇

 

 地母神の補天石は卵の様に中空となっていました。中には私の新しい身体が入っていて、パキパキと薄氷の様に簡単に岩肌は割れ、私は世界に産声を上げました。

 

 最初に目にしたのは透き通るような青空

 次に感じたのは澄んだ空気の匂い

 手にかけた岩の殻はほんのり冷たく

 風の音が私の耳を撫でました。

 

 目。耳。触感。

 全てが始めての体験で、私はとても感動しました。

 

 産まれたその日は一日中、新たに得た感覚器官のもたらす未知の感覚を飽きを知らずに味わっていました。

 今でもあの日の感覚は鮮明に覚えています。

 

 そうして生命を体感した私は生き物としての活動を始めたのです。

 

 まず手始めに花果山に住む生き物を征しました。

 まぁ、所詮は少し通常の生物より生気の多い2〜3m程度の鳥獣ですから、シメるのは簡単でした。

 

 その獣よりは弱く肩身の狭い思いをしながらも、知性のある亜種妖精であった霊猿たちには住処と食料を与えて手懐けました。

 純朴な彼らは恩義に報い、私を自分たちの王としました。

 

 彼らは私を祭り上げ、美しく土地を統べる王という意味の『美候王』の名を捧げたのです。

 

 私は王様になりました。

 

 そうして始まる

 神様ごっこ

 王様ごっこ

 

 ええ、楽しかったです。

 連日連夜どんちゃん騒ぎ。

 

 私は赤子で、彼らは獣

 建設的な思考など持ち合わせていません。

 

 今を楽しく歌い踊れればそれが幸せ。

 私たちの世界はまだそういう単純な世界でした。

 

 本当に気楽な日々でした。

 

 細々とした面倒事は全部頭の回る臣下に押し付けて、

 私は既得権益だけを享受する。

 

 私は気まぐれに、

 ほんの少し、自分が最初から持っていた力をこぼして与えるだけ。

 

 たったそれだけで、誰も彼もが私を褒めそやす。

 

 蝶よ花よと私を愛し

 神輿の上で私はただ高笑いするだけで良い。

 

 愉快痛快! 

 

 なんて楽しいんでしょう! 

 なんて楽なんでしょう! 

 

 なんて──

 

 

 美人の顔は三日で飽きる

 

 願望を叶え尽くした人はやる事が無くなって石のように丸くなってしまう

 

 

 願望を叶える岩塊は

 

 石のように

 

 石のまま。

 

 

 ──なんてつまらないのでしょう

 

 いつのまにか

 あっというまに

 

 とても申し訳ないとは思うのです。

 

 でも

 

 私を讃える臣下のみんなの姿はすぐに色褪せて見えるようになってしまいました。

 

 花果山

 水簾洞

 豪奢な玉座に背を預け、頬杖をつく私。

 

 

 蝶よ花よ

 王よ神よ

 

 歓声が上がる。

 どうしようもなく甲高く

 どこまでもやかましく

 そして真摯な猿たちの大合唱。

 

 我らが王! 我らが神! 

 麗しの大精霊! 

 花果山に栄華あれ!! 

 美候王様に栄光あれ!! 

 

 山の主は喝采を一身に浴びて

 

 くぁ

 

 と、あくびを一つこぼしていた。

 

 私を讃える詩を紡ぐ猿のみんなの顔を見て、前までは見分けがついていたのに、今は顔で誰が誰だか一目で分からなくなってしまった自分に自己嫌悪しつつも、どうしようもなく退屈だと思ってしまう私が居ました。

 

 

 私はたった数年で花果山で猿王をやるのに飽きてしまったのです。

 

 どこかで私の退屈を察した霊基猿のみんなは手を変え品を変え私を楽しませようとしてくれますが

 

 ごめんなさい。みんな(霊猿)の顔を見るのに飽きちゃったんです、私。

 

 でも、仕方ないと思うんです。

 

 だってそうでしょう? 

 進化も変化も、必要だから起こる事象。

 

 私の作り出す楽園にただ暮らすみんなに、進化も変化も必要無い。

 彼らの仕事は楽園を過度に荒らさず、私の不況を買わず、温和な生物として生きること。

 

 彼らはその点、率いるにおいて手間のかからない良い子たちでした。

 

 ですが、そこには刺激は何もありません。刺激が無いことが彼らの美徳ですらあるのですから。

 

 彼らに可能な事象は、

 どうしても私の想像の範疇を越えられない。

 

 それは私にとって、どうしようもなくつまらない

 

 霊猿のみんなに対する

 施政者としての評価と

 私人としての評価の乖離は著しく、

 

 思えばこの時から、私の心は理性と感情で分離し始めていました。

 

 霊猿のみんなは、多少の性格の違いこそあっても、どこまでも野生に善性を加えた程度の無害な野生動物にすぎない彼らは、毒にも薬にもならない。

 ただのペットに他なりません。

 

 愛玩動物は家族にはなれても、

 友達にはなれないのです。

 

 だって、その存在は対等ではないのですから。

 

 愛でるだけの王

 讃えるだけの臣下

 

 実際の人の国のような複雑な体系を持たない世界。

 気取っただけのワイルドルール。

 

 ここは

 完璧でくだらない猿真似の王国。

 

 お猿さんたちに申し訳ありませんが、段々と私が千里眼の遠見に割く時間は増えていきました。

 





神代の衰退
神秘が弱まり神々の力が衰えていく過程。
「人の時代」の訪れともに姿を消していった。
この消失は「衰退」、「決別」、「契機」の三段階に分かれている
「衰退は白き巨神による先史文明の絶滅」
「決別はAUOによる神と人との決別」
である事が公式で判明しているが、「契機」は不明
本作では「西方の聖人が解脱」
要するに、釈迦が精神生命体に進化した事によって宇宙に進出出来る身体を手に入れた事を、神々が人類が宇宙へ旅立てる証明として受け取り、世代交代を受け入れたとしています。


ORT
(One Radiance Thing)
*『唯一 輝ける 者』
アーキタイプ・マーキュリー
現状、型月世界で最強と称されている異星の蜘蛛
型超巨大ロボット生命体。
各星における最強生物「アルテミット・ワン」のうちの一体。

水星の最強生物と言われているが
オールトの雲の向こうから来たとも言われており、
実は水星じゃなくて彗星の最強生物で、なんなら水星の最強生物喰って地球に来たんじゃね?とか言われている。

コイツと戦闘になった世界線の人類史においては、この化け物を倒すために先史文明が100億の全人類と精霊を生贄に捧げ、超絶強化された不死身のスーパー勇者王が腕と槍だけになりながらもなんとか心臓を抉った事によって静止した。
(動力が無くなったので止まっただけで死んではいない)
肉体構造はロボットと同じで全ての部位が交換可能。そのため生物的な死の概念は基本的に持たない。

それに加えて、侵食固有結界『水晶渓谷』により自身の領地に踏み込んだ生物を水晶化させて情報を取り込み自身に転用する吸収能力をも備えている。
しかも太陽風のような数千数万度の熱波を雑に放射できる。
公式から「誰かウルトラマン呼んで!」とまで称されているが、たぶん通常形態のウルトラマンなら普通に負ける程度には強い。

で、コイツは絶賛、地球の南米あたりでお昼寝中なので、起きた時の機嫌が悪かったら地球そのものが危ない。

だから、光の巨神を作る必要があったんですね
(まぁ汎人類史だと製造に失敗したけど)

美候王は地球圏ならコイツに勝てるようにデザインされているがまだまだ幼体なので勝率は未知数
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