栄光と落日  氷菓・古典部SS   作:よねぽ

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 家には姉貴は勿論、親父もいなかった。

 姉貴の部屋に入ろうと部屋の目の前まで行き、ドアノブに手をかけたところで俺は動きを止める。

 

 あの姉貴が、自分の部屋に、それも探して分かるような場所に何か痕跡を残すだろうか?それに、まかり間違って罠のようなものを仕掛けていたとしたら。俺が侵入したと分かる不可逆的な痕跡が残ってしまったとしたらどうするのか。

 それに……流石に姉とはいえ、一個人の部屋をしらみつぶしに調べるのも、考え物だ。先ずは軽く、探す場所を絞るなど考えてもいいのではないか。

 

 気を落ち着かせる。一旦リビングに戻り、冷蔵庫にあった珈琲を電子レンジで温めて飲む。

 

「……考えをまとめるか」

 

 まず、いまからすべきこと。それは入須と姉貴がつながっている、その証拠を得ることだ。姉貴と入須は学校こそ被っていないが、お互い顔が広いこともあり、面識があってもおかしくない。……だが、俺がかまをかけても通用する相手ではないだろう。なら、どうするか。

 

 そもそも、姉貴と入須の連絡方法は何だろう。折木家のモットーとして、姉貴は携帯を持っていない、おそらく。ならば連絡方法は限られるはずだ。毎回固定電話を使うというのも考えられるが、海外から国内への電話料金は高い、姉貴はそれを嫌がるに違いない。それに家の固定電話で入須に電話するだろうか?姉貴はともかく、入須が折木家にかけてきて、俺が出たらと考えると、その線も薄いだろう。

 

 なら、メールだろうか。だが、海外でわざわざ自分宛てのメールを見るために自分のアカウントに入るというのも面倒な話だ。それに、姉貴はおそらく自分のメールアドレスをほとんど使っていないか、持っていない。メールをそれほど使うのなら、家への近況報告にまだるっこしい手紙や電話を送らなくてもいいからだ。

 

 ……そういえば。ふと、何気ない会話を思い出す。千反田と、入須は、どうやって会話していたか。あの入須の映画の件で、対面で話す気力がなくなっていた俺は千反田に、本郷のトリックをどうやって説明したのか。

 

「……そういえば」

 あの時。たしか、ログインしたことのない掲示板の最終ログイン時刻が、ついさっきになっていたような。

 あのときは推理するということひどく疎うていたため、深くは考えなかったが、まさか親父があの掲示板にログインするはずがない。ならばあのログインは、姉貴以外に考えられない。

 パソコンに駆け寄り、あの掲示板のサイトにアクセスする。自分の学籍番号と苗字名前を入力して、アカウントに入る。古いサイトだからだろうか、長いロード時間に少しいらだちを覚える。

最終ログイン時刻は、……今日の、午前4時。

 

そのとき、電話が鳴った。

 

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