投稿少し空いて申し訳ございませんでした。
「そもそもさ、ホータロー。千反田さんが今落ち込んでいる件について、ホータローはどれくらい知っているんだい」
「そうね。……ちなみにわたしはあんまり知らないわ。ただ、何となく家の事情が絡んでるんじゃないかなって思ってるけど」
「僕もだ。プライベートな内容だしね、あんまり深入りするのもどうかと思って本人にはなんにも聞かなかったんだけど」
「……俺はこの前、千反田を発見した際に少し聞いた」
話してもいいものか少し言い淀むが、事もことであるし、かいつまんでその時のことを話す。
「……というわけだ。ただ、どのような経緯で千反田父が千反田に家督を継がなくてもよいといったのか、それは不明だ」
「なるほどね。おおむねそんなことだろうと思っていたけれど、千反田さんの胸内はきっと僕たちの想像では推し量れないものがあるだろうね」
「だが、この話から千反田がどこに行ったのか探し出すのは難儀だ。まぁ、あの時の千反田の親戚の、なんといったかな、まぁ彼女の家に行ったという説もあるが……」
「うーん、流石に考えにくいね。千反田さんの親御さんだって、親戚の家なんて、いの一番に疑うにきまってる。それにその匿った親戚に迷惑がかかることを千反田さんは好まないだろうしね」
「だとすると、やっぱりひとりでどこかに行ったんじゃないかしら。もしかすると……いえ、なんでもないわ、ごめん」
事件に巻き込まれたと言おうとしたのだろうか。伊原はそんなこと、想像することすら嫌だと言うように頭を振った。
「考えすぎだよ摩耶花、ホータローに言った言葉から考えて千反田さんは計画的に旅に出たんだろう。その線に関しては心配することはない」
「だけど……」
「これ以上考えてもいたずらに悪い妄想ばかり思い浮かぶだけだよ、今日の所はここらで解散しよう。ホータローもそれでいい?」
「……ああ。そうだな」
これだけの情報では、ただ時間が無為に過ぎていくだけだ。
だから、今日の所は帰宅して、事件が動くのを待つしかない。
本当に?
「ホータロー、僕は摩耶花を送っていくよ。また何かあったら電話で連絡するから、帰っても電話には気を付けてほしいな」
「……ああ」
「それじゃ、また明日ね」
部室は俺一人になった。すぐに帰宅する気にならず、椅子に腰を下ろす。
俺は今、何をすべきなんだろうか。
答えは出ている。ひたすら待つこと、それしかないだろう。先日の件とは違ってこれは立派な事件だ。警察沙汰になっているのだから、俺が干渉する理由はない。そもそもある程度の情報を得ている警察に見つけられないのなら、開示されている情報が少ない俺に見つけられるわけがない。
結論が堂々巡りにすらなっていない。なら、俺がここから動けないのはなぜだ。ふと周りを見渡してみる。ただそこには殺風景な教室の景色があるだけだ。そこには、現在の主である俺達の痕跡はのこっていない。四人とも何かを置くわけでもないし、忘れてそのままにしておく性分でもないので、そこに残されたものは何もない。それが俺は、酷く怖いことのように感じた。
何も残らないのだ、たぶん。例えば千反田がもしこれから二度と姿を現さないとして。彼女の痕跡は、俺の手元に何も残らない。記憶に刻まれたまま、いつしかシルエットと化して、消えていくのだろう。確かなものは何も残らず、ただ仄かな桜の香り、そして聞き覚えのあるフレーズだけが。
いや、ろくでもない妄想だ。俺は頭を振る。
いくら考えてもどうしようもない。悪い妄想がよぎるばかりで精神が摩耗していくだけだ。明日にも千反田が見つかるかもしれない。こんなことを考えていたってなんになる。
「帰るか」
俺はそう、自らの行動を確かめるかのように口に出した。