夕刻、空久里アクアシティの繁華街にて。
才賀 紬は一人、買い物袋を手に下げてとぼとぼと歩いていた。
「いつになったらダイナスト様は、また私の前に来てくれるのかなぁ……」
再びの溜め息と共に、ぽつりとひとりごちる。
かつて仮面ライダーに助けられてからというもの、彼女の中にあるダイナストへの想いは日に日に膨らんでいた。
当時を思い出しては何度も胸をときめかせ、仮面の奥の顔を妄想し、もう一度逢う時を待ち焦がれている。
その正体が、実の兄とは知らぬまま。
「ん?」
そんな折。
家までの帰り道を歩いていると、ふと彼女の鼻孔を、錆びた鉄のような臭いが刺激する。
何事かと思い、視線を泳がせつつ歩いていると、路地裏のすぐ手前の方で、蟻のような姿をした怪人の集団が女の死体を貪っている姿が目に入った。
「あ、え……!?」
思わず声を上げてしまう紬。それを聞いて、蟻の兵隊たちが振り向く。
そして、蟻怪人たちは武器を手に紬へ飛びかからんとする――。
「ふ~んふふ~ん♪ んんっん~♪」
空久里アクアシティの港にある倉庫で起きた、三人の伯爵による惨殺事件と同日の夜。
その事件を引き起こした張本人のジルは、鼻歌交じりに衣服を着替えていた。
今までのやや薄汚れたシャツやズボンから一転、身に纏うのは高級な白スーツとターコイズグリーンのワイシャツ、黄色いキリン柄のネクタイに赤い丸レンズのサングラスという出で立ちになっている。
当然ながら購入したものではない。倉庫の荷物から奪ったり、内部の人間を殺して所持品を漁るなどして、盗み取ったものだ。
「俺チャンってばカッコいいから何着ても似合っちゃうなぁ」
ジルはそう言いながら、さらにファーのついた黒いコートを羽織る。季節感を完全に無視しているが、それを気にする様子はない。
アルベリヒとギースレーリンもそれそれ武器の手入れや食事を摂って、時間を潰している。
しばらくの後、そんな三人の元へと一人の少年が現れた。
元半グレ集団の一員の波佐見 刀利。左手の甲にBOAを宿した彼は、ジルたちの目の前で跪く。
「トウリィ~。どう、調子は?」
「最高です。今ならやりたかった
「そりゃ良かった!」
両手を叩いて大笑いするジル。
刀利はそんな狂気に満ちた男にお辞儀をした後、質問を投げた。
「ところで、こいつらは?」
視線の先には、ジルの背後で無数の人間たちが、老若男女問わず死骸のように寝そべっている。
ジルは彼らを興味なさげに眺めつつ、欠伸とともに回答した。
「補充した手駒だよ。君みたいに才能のある人間は何人か強めのマキナイトにできたけどねぇ、大概はこんな感じで性能の低い
「戦闘員ってことか……」
「つまんないんだよねぇこいつら。俺の代わりに働いてくれるのは良いけど、斥候タイプじゃないから喋らないしさ」
そんな退屈そうなジルとは対照的に、アルベリヒとギースレーリンはしっかりデッドアントたちへ指示を送っている。
さらに新たに戦力として加えたマキナイトたちにも、持ち場と兵を与えた。
「夜は儂らの時間だ。思う存分暴れるが良い」
「そしてこの星の人間どもにも思い知らせてやれ、誰が真の支配階級なのかを……」
そう告げると、尖兵たちは颯爽と夜の街へ向かっていく。
三人の伯爵たちも、万が一に備えこの場を去るために準備を進め始めた。
そんな折、アルベリヒはジルに問いかける。
「してジルよ、本当に良かったのか」
「んん? 何が?」
「毒風卿に無断で地球を我らの領地にする事だ」
四傑伯という特別な立ち場とは言え、侵略予定の土地を上の階級の者たちへの報告もなしに己のものにするのは問題行動なのではないか。
アルベリヒはそのような懸念から質問したが、ジルは頭を振った。
「良いっしょ許可なんて取らなくて。ブラッドフォーミングが成功しても、この星に俺たち自身の領地をすぐ貰える保証はない」
「ならば調査という名目で先手を打ち、今の間に豊かな土地を占領するべきだということか」
「そもそも現場で動いてるの俺たちだしさ。怖がる事ないよ、これくらいは当然の権利。誰にも文句は言わせない」
そう言って盗んだソファをその場においてもたれかかりながら、刀利の方を向いて指示を出す。
「トウリも遊んで来て良いよ。手に入れた力、存分に使いな」
「了解」
頷いた刀利は、その脚で駆け出し空久里の街へ向かっていく。
「この星にも機関車のような交通網があるかも知れない……私はそこを落としに行く」
「では、儂は太陽の光が決して入らないような侵略用拠点を確保しよう。ジル、お前はどうする」
「適当に彷徨いておくよ、いつも通りにね」
こうして三人の伯爵も各々の気の向くままに動き出し、倉庫で動くものはなくなった。
※ ※ ※ ※ ※
時をやや遡り、ヴァリエテの街にて。
Vから『残った四傑伯の三人が空久里に向かった』という衝撃の報告を受けた千種は、すぐさまパスを繋いで瑠璃羽・貂と共に地球に戻ろうとしていた。
だが、その行為は傍にいたシルキィによって妨げられる。
「待って助手くん! 君ひとりで三人の伯爵と戦うつもりかい!?」
「やるしかねぇんだよ、向こうには俺の家族がいるんだ!」
腕に抱きつくシルキィを、焦った様子で振り解こうとする千種。
すると、今度は正面に周り込んだVが口を開く。
「ハッキリ言いましょう。ダイナスト、君ではイザベラ・バートリーを倒す事はできても、残りの三人に勝つ事は
「やってみなきゃわかんねぇだろ!」
「占いや予言ではありませんが、やる前から見えている未来もある。特にあの青髯卿、ジル・ド・レスピナスを相手取るのにマルスアーマメントだけでは力不足です。アレは強すぎる」
Vは断固として言い放つが、実際にそのジルと会った事も見た事もない千種は当然納得しない。
しばらく睨み合いが続く中、次に沈黙を破ったのはソーマだった。
「そこまで言うからには何か方法や作戦でもあるのか?」
言われてVは「そうですね」と呟き考えた後、顔を上げてソーマを指差す。
「まず、向かうなら仮面ライダーレギウス、そして私も同行すること。これは絶対です」
「ちょっと待て、またここの守りを完全に空けるのか!? 流石に二度目はリスクが大きすぎるぞ!! 前回は運良くラレーヌとやらが来たらしいが、もう一度来てくれるとは……」
「彼女は来ますよ、必ずね。それに」
続いてVが視線をやったのは、シルキィの方だ。
「バベッジ博士は既に、秘密兵器のひとつを完成させているのではありませんか?」
それを聞くとシルキィは、仲間たちの驚く視線を受けながら、ゆっくりと首肯する。
「確かに、バートリー戦には間に合わなかったけど少し前から用意していたものは完成した。でも……V、どうしてキミがそれを……」
「その話は今は良いでしょう。それで、完成品はもうあるんですね?」
「……うん。アレなら、伯爵級の相手はできなくても男爵・子爵辺りならなんとか彼ら抜きでも戦えるはずだ。ここの守りを固めるのに最適だろうね」
と言いつつも、シルキィは眉をしかめながら首を左右に振った。
「それを踏まえても、やはり四傑伯を二人だけで相手にするのは無理だよ! 自分で言っていただろう!」
「現状のままでは、という話です。ですが新たに強力なギミックアンバーを作ればどうでしょう? というか、あなたの方も既にそこに着手しているのでは?」
再びシルキィが目を見張る。
今のは千種だけでなく瑠璃羽でさえ初耳の情報であり、Vに完全に手の内を見透かされている事が、一行にとって驚くべき事態であった。
「確かに作り始めているよ。だけどそれも、ワタシ一人では短期間で完成させる事なんてできないね。誰かが手を貸してくれるなら、話は別だけどさ」
「それは私の力を借りたいという事でよろしいですか?」
「……正直かなり不本意だけど、もうそうするしかないだろう」
深い溜め息を吐いたシルキィは、そう返事をする。
もしかしたら彼の掌の上でに転がされているなのかも知れないが、それでも今はこの状況でやるべき事をするしかない。
そう思いながら、彼女はソーマに声を掛ける。
「念の為ワタシも二つ持って行くが、腕の立つ戦闘要員に『敵が現れたら武器庫に新しく保管してある兵器を使う』ように言っておいてくれ、マニュアルも用意したから必ず読んでおくようにね」
「了解した」
「それから……ソーマ、さっき話していたものとは別に新しいギミックアンバーを用意してある。キミが持っておいた方が良いだろう」
シルキィはそう言って、機甲虫が内蔵されたブラウンカラーの琥珀を渡す。
「よし。みんな、準備が終わり次第出発しよう」
受け取ったソーマがそう締め括り、一行は地球へ赴く準備を始めた。
そして身支度が終わった後、再び集合する。
「では、戻りましょうか」
Vの言葉と共に地球の空久里アクアシティへのパスが繋がり、六人は霧の中へと足を進めるのであった。
そして、現在。
一行は無事地球へ到着し、すぐ街の異変に気付く。
「マズいぞ……もう日が完全に沈んでる!」
「それだけじゃねぇ、見ろ!」
狼狽するソーマが千種の声を聞き、彼の指差した上空の方を見上げた。
そこにいたのは翅のついた無数のデッドアントたち。地上でも同じように、武装した人食いアリの部隊が人間を襲っている。
敵は既に行動を開始している。その事実を認識し、戦えない三人をVに任せて千種とソーマはすぐにドライバーを手に取り、ギミックアンバーを装填した。
《
『変身!』
《
《
空久里の街に並び立つ赤いカブトと青いクワガタ。
その姿を見るなり、デッドアントたちは空から地上から同時に襲いかかる。
「おっと!」
「随分元気じゃないか……!」
武器はいつも通りのフォークやナイフを模した槍に剣。
ダイナストとレギウスはいつも通りにそれを避けようとするが、その寸前に発砲音が響き、別の方向からの銃撃が二人の胴を捉えて動きを止めさせた。
「ぐおっ!?」
「なに……!!」
よろめくダイナストたち。
弾丸が飛んで来た方を見れば、そこには二体のマキナイトがいる。
一体は薄羽を背に生やした強靭な牙が特徴な怪人、もう一体は四肢を含む全身が細長い緑色のマキナイト。
銃を持っているのは、薄羽の方だ。
「アレはアブと……ナナフシ?」
一目見て、瑠璃羽はそのように呟く。そして男たちの足元に視線を落として、短い悲鳴を上げた。
そこにあったのは、身体を食われた人間の死体。デッドアントたちも、ギチギチと音を鳴らし人肉を貪っている。
「良い力だぜぇこれは、VRゲームよりずっとハイになれる! 今まで不良を怖がってたのがバカみてぇだ!」
「ワシもこれでさらなる修練を続けられそうじゃのう。食えば食うほど体が若返る気分じゃよ」
マキナイトの男たちはこともなげに言い放ち、ケラケラと笑いながら食事を続行。
そしてその口振りから、彼らが元々地球の住民であるということを、全員嫌でも理解せざるをえなかった。
中には幼い子供のものもある。ダイナストはその姿を見るなり、拳を強く握り込んで二体と対峙する。
「てめぇら……殺して食ったのか、同じ星の、同じ人間なのに……」
「殺して何が悪い? 生きていくために食うのは普通の事だろ、人間だった頃からな」
アブの騎士、ホースフライ・マキナイトはそう言って銃を抜くと、空を飛び交いながら地上の仮面ライダーたちに向かって発砲した。
直後、ダイナストが銃を抜いて怒りの声を張り上げる。
「ふざけんなァァァーッ!!」
自身が被弾するのも構わず、ホースフライに向かって三発の銃撃。
しかしさらに高く飛ばれた事によってそれを容易くかわされ、逆に集中砲火を受ける事になった。
重厚な装甲があるとは言えダメージは無視し続けられるものではなく、徐々に弾丸による傷が目立ち始める。
「ダイナスト、気持ちは分かるが少し落ち着け!」
そこへレギウスが立ちはだかって氷壁で守りつつ、ギミックアンバーを換装する。
《
「冷静になるんだ、この程度は大した相手じゃないだろう」
《ドラゴンイクイップメント!
その言葉と同時にジェットパックでホースフライよりもさらに高く飛翔し、双剣を振り下ろした。
が、それさえ見切られ、アブの騎士は空中で身を翻すと同時にレギウスへ発砲する。
「見えてんだよクワガタ野郎ォ!」
「フン!」
レギウスの方も斬撃から即座に防御へ切り替え、全ての弾丸を切り払う。
さらに出発前にシルキィが手渡したギミックアンバーを、レギウスドライバーへと装填する。
《
「アーマーアペンディクス」
《
トンボを模したバックパックが消失し、新たに装着されたのは、セミの姿を象ったバックパック。
《
「落ちろ!」
《
翅を広げると、轟音が鳴り響いてホースフライの身体を硬直させ、地面へ叩き落とした。
「ぐっへ……!?」
「なるほど、これは面白い」
言いながら着地したレギウスは、双剣を地面に突き立て背部のセミを分離。
すると、その機械蝉は斧のような刃を持つギターの形を取り、彼の手に収まった。
「奏でてやろう、貴様を討つ死のリズムを!」
「なんかソーマのテンションおかしくなってねぇか!?」
弦を弾く度に強烈な音波が、シケイダギターと共にスピーカーのようにレギウスラッシャーから発せられ、それが音の刃となってホースフライの身体を襲う。
そして態勢を崩したところで、飛べない間に斧を振り被って胴を薙いだ。
「がぁっ!? や、やべぇな……」
「一気に終わらせてやる」
言いながらレギウスがドライバーのキーをひねろうとした、その時。
「ハイィィィーヤァーッ!!」
「む!?」
ナナフシの騎士、ウォーキングスティック・マキナイトが飛びかかり、右足でキックを繰り出した。
完全に不意打ちだったものの、レギウスはギターでそれを防ぎつつ距離を取る。
そしてナナフシの方は、右掌を突き出し、着地と同時に踏み出して突撃しようとしている。
長い手足が曲者だがレギウスは充分に距離を取っており、たとえ詰められようとも反応速度の向上故に充分回避できる間合い――の、はずだった。
しかし着地の直後の瞬間、彼はその胸にウォーキングスティックの掌底を受けてしまう。
「ガハッ!?」
「レギウス!? うおっ!?」
その一撃の威力は凄まじく、後ろにいたダイナストも衝撃によって足を止め、吹き飛んで来たレギウスとぶつかった。
驚きつつもダイナストはすぐ立ち上がると、ナナフシのマキナイトの独特な所作を目にしてハッと息を呑む。
「あの構え……
通臂拳、あるいは
体内で腕が一本に繋がっている伝説上の猿の『通臂猿猴』が語源で、その猿のように両腕を伸縮させることにより、相対する者が思う以上に遠くまで力強い一撃を放つ武術。
加えてこのナナフシの姿は、套路を扱う足の長さと打撃を放つ腕の長さから、この通臂拳を扱うのに最適なBOAであると言える。
「すまんの、助けるのが遅れた。なにせ空を飛ばれると流石に手出しができんからのぅ」
「いや助かったぜ。ありがとよジイさん、ここは一旦退こう」
「そうじゃな、この力をもっと長く試したい」
くつくつと笑ってその場をデッドアントたちに任せ、二体のマキナイトは退却。
負傷が残るレギウスとダイナストは追いかけようとするが、敵の数はさらに増えており、このままではシルキィたちを守りながら戦う事ができない。
すると、シルキィが瑠璃羽と貂へあるものを手渡した。
「博士くん! 眼鏡くん! これを使いたまえ!」
一本のベルトと、それに装着するための手の平サイズの四角い機械的なバックル。
バックルには四角いスクリーンとスリットがあり、さらにベルト右腰のホルダーには『X』の字が描かれたカードキーとギミックアンバーがひとつずつマウントされている。
「先輩、今度は私がお助けします!」
「少しは自分の身を守れるようにならなくちゃ……ね!」
言いながら二人はベルトを腰に巻いた後、手に持ったバックルを合着させる。
さらにスクリーンの右側に並ぶ四種類のボタンの内、一番下にある『BOOT』と表記されている黒いものを押した。
《ホッパーズバックル》
瑠璃羽と貂は音声が流れると共にホルダーから
すると、バックルのスクリーンに緑色の昆虫の姿が映し出され、直後に中からゲル状の液体が飛び出してくる。
その液は繭のように二人の身体を包み、内部で緑色のバッタのシルエットを映すと、ピッタリ肢体に張り付くアンダースーツと装甲を形成して二人の姿を変化させた。
《
そうして完成したのは、眼部が赤い十字型のバイザーで覆われたバッタのような姿をしている、仮面ライダーに似た新たな戦士。
双方とも首からは赤いマフラーが風になびき、瑠璃羽の方は青みがかった緑、貂の方はカーキグリーンの装甲やグローブになっている。
《
「香衣と羽取が……」
「変身した!?」
ダイナストたちが驚いていると、シルキィは得意げに笑い、腕を組む。
「これがワタシの作り上げた新戦力、Xレイダーだ! 仮面ライダーほど戦闘力はないが量産が容易で、どんな人間でも扱えるし、男爵級のマキナイトなら相手にできる!」
その言葉が事実であると示すかのように、瑠璃羽の
「やっ、えぇい!」
「このぉ!」
Α1の動きはややぎこちないもののキックの威力は申し分なく、Α2は合気道の動作で素早く攻撃を受け流す技巧を見せている。
Vはそれを見て、感心した様子で頷いていた。
「なるほど、確かにやりますね。デッドアントを蹴散らしている」
「驚くのはまだ速い! 二人とも、装備を使って!」
『了解!』
その言葉と同時に二人ともバックルの一番上にある赤いボタンを一度押し、再びBOOTキーを入力。
すると、音声と共に彼女らの手に赤いスコープとタクティカルライトが付いた光線銃が握られ、すぐにデッドアントへとその銃口が向けられる。
《
トリガーを弾くと流れ星のように尾を引く光の弾丸が照射され、命中と同時にアリの兵士たちの肉体を溶解せしめた。
その様子を見て、ダイナストが声を上げる。
「あの光の弾、まさかアレもUVライトかよ!?」
「そう! 当たればどんなマキナイトであろうと確実にダメージを与えられる、ワタシの自信作だよ!」
シルキィが語っている内に、デッドアントたちはダイナストたちの活躍によって、順調に数を減らしていく。
そして残りを完全に一掃するため、再度背にシケイダギターをマウントしたレギウスが動いた。
《
「これで決めるぞ!」
「おう!」
ダイナストもドライバーを操作し、必殺技を起動。
さらに、Α1とΑ2もXキーカードをスリットに一度リードしてBOOTキーを押し込む。
「瑠璃羽、私たちも!」
「うん!」
《チャージ》
バックルから放たれた緑色の光が二人の手を通ってレイブラスターへと収束していき、ダイナストとレギウスが同時に跳躍。
そして生き残っているデッドアントたちに向かって、飛んだ二人が足を突き出した。
《マルスエレファントビートル・ダイナスティスマッシュ!》
《シケイダ・リベリオンインパクト!》
《クルセイド・バースト》
デッドアントたちへと光弾が殺到し、さらに音波によって動きを止めながらの炎を纏うキックが、全ての敵を消し飛ばす。
《
《
《
蟻の兵は夜闇に散った。しかし、脅威の全てが取り除かれたワケではない。
ダイナストは変身を解除しないまま、ダイナストームを呼び出し跨った。
「家族が心配だ、俺は一旦自分の家に戻る」
「分かった。ならこっちは安全な場所を確保しておこう、住民の避難も必要だしな」
「ああ、任せたぜ」
レギウスたちに背中で見送られながら、ダイナストは真っ暗な道を走っていく。
「父さん、母さん、紬……無事でいてくれ」
切なる願いを口から零し、魔王は一人で先を急いだ。
「まったくジルのヤツめ、私に黙って勝手な真似をするものだ」
同夜、ブラムストーク王国にて。
王都の屋敷を歩きながら、エミディオは内容に反してニヤリと笑いながら呟く。
地球の存在とブラッドフォーミング計画はジル以外の四傑伯には話していなかった、いわば秘中の秘。
それを明かした上に土地まで占領するとなれば相応の罰が必要となるのだが、それと同時にエミディオはこの状況をチャンスでもあると捉えていた。
彼の推測通りに内通者が紛れ込んでいるとするなら、この状況で動かないはずがないのだ。確実に地球で何らかの行動を起こしているはず。
この考えの元、エミディオは裏切り者を見つけるべくスモーキーの協力を仰ごうと彼を探しているのだ。
しかし中々本人が見つからなかったので、近場にいる従者のマキナイトの一人に声をかける。
「君、スモーキーを見なかったかね?」
「ヴァーニー卿の事ですか? あのお方なら『四傑伯が落ちた以上いつ反乱が起きてもおかしくない』との事で、自分の領土に戻っていきましたよ」
「そうか……毎度ながら、神出鬼没だな」
言いながら、エミディオは自領の状況を気に掛けるスモーキーに感心していた。
実際のところ、混乱に乗じてレジスタンスが決起する可能性は低くない。
一言礼を述べた後、エミディオ自身は調査のために動き出す。
「どこの誰か知らんが、必ず見つけてやるぞ……反逆者めが」