マキナイトとなった元暴力団の少年、波佐見 刀利は、同じ日にマキナイトとなった拳法使いの老人とゲーマーの青年からの報告を受け眉をひそめていた。
「仮面ライダーだと?」
『そうなんだよ!』
N-フォンから聞こえて来るのは、やけに興奮したゲーマーの声。
老人の方も、くつくつと不敵に笑いつつ注意喚起する。
『連中はなかなかの手練れじゃった、それにあのまま戦っても間違いなく倒し切れんでな。お主も気をつけるんじゃぞ』
「俺はそんなヘマをしない、と言いたいところだが……お前たち二人が逃げるしかなかったとなると用心した方が良さそうだ」
刀利はそう言った後に通話を切ると、身軽に跳躍してその場を去っていく。
直後、駅に霧が立ち込め、中からチェーンソーを持つ人型の影がゆらりと姿を現す。
「この場所にいるらしいな」
シモンだ。如何にしてこの世界に潜り込んだのか、ファングレイザーを肩で担ぎ、周囲を見回している。
「今度こそ俺がダイナストを倒す……!」
そう言って外套を翻し、千種を探すアテもなく歩き出した。
「はぁ、はぁ……!」
月明かりの下、繁華街の路地裏にて人を食う
直後に急いで走って逃げ出したものの、武器を持つ彼らに何度も追いつかれそうになり、薄く切り傷が頬や肩などにできている。
「誰か助けて、誰か……ぁ!」
呼びかけるように呟きながら、紬は必死に駆け続けていく。
「助けて、お兄!!」
あわや先頭を走る蟻怪人に衣服の背を掴まれそうになる、その時だった。
「オラァッ!!」
そんな気合の込められた声と共に、打撃音が響いてデッドアントが大きく後方へ吹き飛ばされる。
紬が振り返ってみると、そこにはバイクから降り敵勢に拳を突き出しているダイナストの姿があった。
すると、彼の姿を見た蟻の兵たちは蜘蛛の子を散らしたように逃げ去っていき、その場には二人だけが残る。
「おい大丈夫か!? 怪我は!?」
ダイナストはそう言って紬の肩に手を置き、目立った大きな傷がない事を確認すると、その小さな体躯をギュッと抱き寄せた。
「良かった……お前が無事で、間に合って、本当に……」
小さく震える紬の身体を、心底安心した様子でダイナストが、千種が包み込む。
すると徐々に震えが止まっていき、彼女はうっとりとした様子で顔を上げた。
「ダイナスト様、そこまであたしの事を……」
潤んだ瞳、上気した頬。
そこで千種は自分が変身を解いていない事を思い出し、仮面の奥で慌てふためく。
「ちょ、ちょっと待て……」
「ダイナスト様ぁ……好き、好き好き大好き! ねぇ、ずっとこうしていて良い……?」
紬はそう言いながら甘えるようにダイナストの背に腕を回し、上目遣いになって顔を見つめる。
「だ、ダメだそれは! お前を安全なところに案内しなきゃならん!」
「もぉ、人をその気にさせたのはそっちなのにぃ。でも、そういうおカタいところもチャーミングかも」
完全に恋する乙女の眼差しとなった彼女は、その正体も知らずダイナストに笑顔でそう言った。
ダイナストは頭を抱えつつ、咳払いをして気を取り直し、紬に対し語りかける。
「とにかく行くぞ。多分、学校辺りなら避難するのに丁度良いはずだ」
「はーい!」
元気良く返事をし、紬が腕に絡みつく。
振り解こうにもそれができず、仕方なくそのまま周囲を警戒し、二人は目的地を目指すのであった。
※ ※ ※ ※ ※
同じ頃。
千種とは別行動中のソーマたちは、一足先に空久里学園へ到着していた。
「確かにこの広さなら、拠点とするにはうってつけかも知れないな」
案内された正門前で校舎を見上げて、得心した様子でソーマは言う。
そして地上の方に目を向けると、早速デッドアントたちの姿を視界に捉えた。
「マズいな、既に侵入されているぞ!」
「ではすぐに倒す!」
《
「変身!」
ギミックアンバーをレギウスドライバーに装填したソーマは、壁を飛び越えて颯爽と走り出す。
《
「ハァッ!!」
《
そしてベルトの操作によってその姿を仮面ライダーレギウスのものに変えると、双剣を手に取り次々にデッドアントを斬り倒し始めた。
貂と瑠璃羽はその様子を見ながら、ホッパーズバックルを手に取る。
「私たちも行こう、瑠璃羽」
「うん!」
「……いや、お二人とも待って下さい」
その二人を引き止めたのは、Vだ。
何事かと思って彼の方を振り向いてみると、その指は自分たちの後方を示している。
「見えますか? 後ろから誰かが来ます」
「む、アレは……」
薄く霧のかかった風景の向こう側に、じっとシルキィが目を凝らす。
するとそこにいたのは、警察官の集団と、黄色いパーカーに身を包んだ背の低い女の姿、さらにその隣に刑事と二人の男女が並んでいる。
安藤 宗仁と羽塚野 浅黄の二人が率いる魔祓課、そしてその協力者である才賀 武生・巴夫妻だ。
「ありゃまさか仮面ライダーか?」
「じゃあみんな、あの人に加勢しちゃってー!」
宗仁と浅黄の号令と同時に、武生たちを含む警官隊が一斉にあるものを取り出す。
それは、貂と瑠璃羽が持つのと同じ形状の変身アイテム、ホッパーズバックルだった。
読み込むためのカードにはXではなく『S』が刻印されており、ベルトを装着した後にそれを抜き取る。
「バックル用意!」
《ホッパーズバックル》
「総員、戦闘準備!」
そのままSカードをスリットに通すと、瑠璃羽たちの時と同様にスクリーンにバッタの姿が映し出されて、ゲル状のインクのような液体が身を包んでいく。
だがそこから先は異なり、黒のアンダースーツが形成された後にバックルから青いバッタ型の電子生命体が飛び出すと、それが装甲となって合着した。
《
現れたのは、青と銀のアーマーでプロテクトされたバッタに似るメカニカルな戦士。鋭角なフォルムの複眼は赤く、頭部には触覚めいた銀色のアンテナが伸びている。
両肩の装甲にはパトランプを思わせるような赤いライトが備わっており、10名近い仮面の集団が威嚇するようにその照明を瞬かせていた。
《
「Sトルーパー隊、フェーズチェンジ用意!」
武生のその掛け声と同時に、全員がバックルについた三番目のボタン、緑色のそれを入力してBOOTキーを押し込む。
《フェーズチェンジ・クラスター》
その音声が流れた直後、Sトルーパーたちの青いアーマーが暗い色彩となっていく。
ホッパーズバックルに備えられた特殊機能、フェーズチェンジシステム。
瑠璃羽のアイデアが元で生まれたバッタの『相変異』をイメージした機能で、敵味方の規模に合わせて
ソリチュードは単体の戦闘能力が高いため敵陣の切り崩しや足止めに向き、クラスターは戦闘能力が落ちる代わりに視覚共有や予測演算など多数の機能を利用した連携に向く。
「出動ォッ!!」
号令に従ってクラスターフェーズの戦闘部隊は飛び出していき、レギウスと共に一斉にデッドアントを蹂躙し始める。
巴の変身する
さらに武生の方の
《
「フッ!」
ナイフの一撃がアリの喉を両断し、さらに態勢を崩したところで何度も刺す。左胸や脇腹、人体急所への連続刺突。
幾度も攻撃を受けたデッドアントはすぐに崩れ落ち、砕け散った。
続いてΑ2が赤いボタンを二度押してBOOTキーを押すと、今度はライフルが握られる。
《
「全員、撃て!」
同じく長銃を握った他のSトルーパー隊員たちは、Α2と共に援護射撃を行い、レギウスやΑ2に不意打ちを仕掛けようとしているデッドアントを次々に撃ち抜いていく。
そして総仕上げとばかりに、Α1たちがSカードを二度スリットに通した。
《リチャージ》
「終わりよ」
「ああ」
《セキュリティ・リブレイク》
Α1が地面に向けて力強く掌打を放つと、地響きと共に残る敵戦力全てが上空に舞い上がり、さらにそれらを地上のΑ2たちの銃弾が射抜く。
こうして、校内からは完全にマキナイトの姿が消えた。
それを確認してソーマは変身を解除し、同じく変身を解いた巴たちの方に向かう。
「ありがとう、助かったよ」
言いながら頭を下げると、巴の背後から浅黄が顔を出してニッと笑った。
「そりゃこっちのセリフだよ。どこから来た人? ひょっとしてあなたが噂のダイナストなの?」
「いいや。僕の名前はソーマ・フェニックス、先程のはレギウスという姿だ」
一言自己紹介をすると、巴が学校の方に目をやり、校門をグッと開く。
「立ち話をするより、細かい話は校舎の中でしましょう。せっかく守れたんだから」
「そうだね巴姉」
巴に引っ付きながら親しげに話す浅黄を見下ろして、ソーマは僅かに首を傾げた。
「君たちは姉妹なのか……?」
「血は繋がってないんだけどね~。同じ施設で生まれ育ったから」
にへへ、と笑いながら浅黄は巴の腕に抱きつく。
そんな様子をシルキィたちが眺めていると、宗仁から声がかかった。
「悪いがお嬢ちゃんたちにも話を聞かせて貰うぜ」
「あぁ、分かっているよ」
「そこの胡散臭い仮面の男からもな」
言って次に宗仁が視線を向けた先にいたのは、Vだった。彼はくつくつと笑って肩を竦めると、警官たちの後ろについていく。
「初対面だというのに手厳しいですねぇ。私は何もしていないはずですが」
「昔お前みたいな雰囲気のヤツがいたからな、マジに世界を滅ぼそうとした極悪なヤツが」
「全く知らない極悪人と一緒にしないで頂きたいのですが……困りましたねぇ、どうすれば信用して貰えるのやら」
大袈裟に頭を押さえて、Vが嘆かわしそうに言う。
すると、瑠璃羽がおずおずとしながらも声を上げた。
「この人も私たちと一緒に戦ってくれているんです。どうか、信じて貰えませんか……?」
「うぅ~ん……正直怪しすぎて仕方ねぇんだが、まぁ嬢ちゃんがそこまで言うならしょうがねぇな」
宗仁は渋々といった様子で承諾し、一行は校内に入っていく。
そして体育館まで到着すると、ソーマとシルキィは魔祓課の面々に様々な事情を明かした。ブラムストーク王国のことも、マキナイトのことも。
ただし、千種のことやダイナストの正体についてだけは隠し通して。
「え、つまりそりゃなんだ? あんたら本当は宇宙人だってぇのか!?」
「みんな驚くねぇこの話」
「いや驚くに決まってるだろそんなもん! っつーかあの怪人どももそうだったのかよ、見た事ねぇわけだな……」
面倒な事になって来た、と額を押さえて唸り天井を仰ぐ宗仁。
さらに吸血鬼のように日光に弱くUVライトも弱点になり得る事を知ると、浅黄は良い事を聞いたとばかりに頷いた。
「だったら朝になるまで粘れば、ウチらの勝ちだね!」
「屋外にいる分はそうなる。中で隠れてるヤツらも追い出さねぇとよぉ」
「じゃあバルサンでも焚いちゃう?」
「いや本物の虫じゃねぇんだからよ……」
浅黄の言動に呆れた様子の宗仁。
ともかく魔祓課の一行は、住民の避難誘導を行うグループとUVライトを仕入れるグループに分かれる事になった。
「とりあえず、私たちで空久里の住民を探してここに集めましょう」
「ソーマだったか、アンタは残っておいてくれ。いざという時、その仮面ライダーの力が切り札になる。体力を温存するために休んでくれ」
その言葉に頷くと、ソーマはふらりとよろめきつつも用意された椅子にもたれかかる。
「お言葉に甘えるとしようかな……流石に疲れてしまった」
「では、見張りは私にお任せを」
Vが率先して名乗り出て、仮面を着けたまま体育館の入口に陣取った。
その様子を横目に見ながら、浅黄がこっそりとシルキィに声をかける。
「ところでシルキィっち。あの時ウチの手伝いしてくれたけど、ひょっとして設計図盗み見て再現したりしたんじゃないの?」
「えっ!? な、なんで分かったんだい!?」
「やっぱりね。ウチだったら絶対そうするから、やってると思ったよ。どうせだからさ~、他にも何か協力させてよ! 何作ってんの?」
興味津々といった様子で浅黄が言い、二人はその場から去っていった。
残ったのは貂と瑠璃羽、そしてその貂が彼女の袖をクイクイと引っ張る。
「少し調べたい事があるの、図書室までついて来てくれないかしら?」
「図書室に? うん、良いけど……」
促されるまま、瑠璃羽は貂と共に図書室に向かい、何事もなく到着。
瑠璃羽は椅子に腰掛け、早速用向きを尋ねる。
「それで、調べたい事ってなに?」
「ソーマさんが言ってた、ジャーメインって名前。私さ、それ最近どこかで聞いた……というか見た覚えがあるのよね」
「えっ?」
ジャーメインとは、ソーマの先祖であるS・V・ヘルシングの手記に書かれている人物。
その名前がどういうワケか、
「……何かの勘違いとかじゃなくて? 本当にこっちの世界で聞いたの?」
「まぁ間違ってる可能性もあるわよね。でも、上手く言えないけどなーんか引っかかるのよ」
むぅ、と唸りながら貂が言い、パチンと両手を打って瑠璃羽に向き直る。
「とにかくこの一ヶ月くらいで借りた事のある本から当たってみるから、纏めて持ってきてくれない?」
「わ、分かった!」
これは大変な作業になりそうだ。そんな予感がよぎりつつも、二人は行動を開始した。
ひたすらに指定された本を運び出し、目を通していく。それをただ繰り返す。
だが一向にそれらしい記述が見つからない。何度ページをめくっても、必死に文字を追っても。
やはりただの勘違いだったのだろうか。二人がそう思った、その時。
地面を揺らさんばかりの激しい破砕音が、校内に鳴り響いた。
「えっ!?」
「な、なに!? グラウンドの方からみたいだけど……!」
明確な異常を察知し、二人は本を放置してドライバーを片手に飛び出す。
その後、校舎の外で見たものは――。
※ ※ ※ ※ ※
時を僅かに遡り、空久里アクアシティ内のモノレール駅にて。
「……よし、あるな」
深い霧の向こう側から姿を現したギースレーリンは、モノレールを見てそう呟くと、返り血に染まった大きな麻袋をドサリと地面に置いた。
その直後に、屋根伝いに上から人影がひとつ素早く飛び込んでくる。
「何やってんの?」
「ジルか。面白いものを見つけたからな、一度領土に戻って
ギースレーリンがそう言いながら、麻袋の口を開ける。
するとそこにいたのは、全裸にされて手足を拘束されている、口を縫い合わされた大柄な男。
ジルたちは知る由もないが、追放された元X-ROSSの一員であるスピエルドルフだ。
「素材ってコレが? ただの汚いオッサンじゃん」
「あぁ、前に線路の近くを歩いていたヤツでな。これがいわゆる
「どうやって?」
「見ていろ、こうして特製の機甲虫を……」
言いながら彼女が鉄パイプのように長いムカデ型の機械を背骨に突き立てると、スピエルドルフは裂けんばかりに目を見開き、口から血を垂れながら呻く。
そして運転席へと無理矢理蹴り入れられると同時に、全身から血の霧が噴き出してモノレール車両全体を包み込んだ。
数刻の後に血煙が晴れるとそこには、ムカデのような形状となったモノレールと、運転席の中で操縦機器と同化し、白目を剥いて血涙を流すスピエルドルフの姿があった。
「アッハハハハハハ! なにこれすっげ! 面白~!」
血の蒸気を吐くムカデ型のモノレールを見て、ジルは手を叩いてはしゃぐ。
「そっかぁ~、街にある機関車ってこうやって作ってんだねぇ!」
「本来なら車両自体を専用のものにチューニングする手順を踏むが、生憎こいつにかける時間も機材もない……まぁ、今夜には自壊するだろうな」
中にいるスピエルドルフを見ながら冷静に呟くと、ギースレーリンはそのまま指示を下す。
「オッ、オ゛ォォォッ、オ゛ゥーッ」
「では行け。なるべく人の集まりそうな場所を破壊し、人間たちの逃げ場をなくしてやれ」
「ヴ、ゥルガガガガガァァァァァーッ!!」
無数の脚が生えた巨大車両は天に向かって咆哮すると、そのまま地面に亀裂を作りながら走り出した。
※ ※ ※ ※ ※
そして現在。
大蛇の如き機械のムカデは、空久里学園の校門を破壊し、運動場で夜天を仰いで咆哮していた。
「オ゛ォォォォォーッ!!」
早速現場に駆けつけた貂と瑠璃羽は、その巨影を前に戦慄する。
「ウソでしょ……あんなのと戦うの!?」
怯える貂の声へ追い打ちをかけるように、続け様にモノレールのドアが開く。
その中から姿を現したのは、デッドアントを含む無数のマキナイトの集団だった。
「そ、そんな!?」
「この上に数が増えるなんて……」
続々とモノレールから出てくるマキナイトたちに恐れを抱きつつも、瑠璃羽は震える手を戒めるように腰へドライバーを押し当てる。
戦うしかない。しかし、勝つ必要もない。
味方が到着するまで、特にソーマが目を覚ましてこの場に辿り着くまでの間、時間稼ぎをすれば良いのだ。
勇気を奮い立たせ、瑠璃羽は隣に立つ友に呼びかける。
「やろう、貂ちゃん!」
「……そうね!」
《
二人のXレイダーが並び立ち、即座にボタンに指が伸びた。
《
「まずは……武器!」
「うん!」
《
《
瑠璃羽のX-Α1が赤いボタンを三度、貂のX-Α2が青いボタンを一度押すと、その手にそれぞれリボルバータイプの大型グレネードランチャーと光の刀身を持つロングソードが握られる。
X-Α2が取った剣、フラッシュセイバーの一太刀をデッドアントに浴びせれば、太陽にも似たその光の刃は真っ二つに蟻の戦士を溶断せしめた。
「行ける……!」
バッタのような脚力で素早く踏み込みつつ、敵を斬り伏せていくX-Α2。
だがその頭上から、機械の大百足が頭から喰らおうと牙を剥く。
「やばっ!?」
「貂ちゃん伏せて!」
X-Α1の叫び声に応え、彼女は咄嗟に身を屈める。
直後、轟音と共にグレネードランチャーから一発の擲弾が発射され、巨大ムカデの側頭部にヒット。それが弾けて眩い閃光が迸り、グラウンドを埋め尽くす。
しかし、近くから迫っていた周囲のマキナイトは倒す事ができたものの、大型の機械ムカデの方は顔が少し溶けた程度のダメージしかなかった。
「どうして!? 大して効いてない!?」
瑠璃羽は失念していた。
このムカデやバイオリンビートルのような巨大マキナイトは、その質量故か擬似太陽光であるUVライトがほとんど通用しないという事を。
おまけに車両からは常に血の蒸気が噴き出しているため、光をある程度は遮断してしまうのだ。
「オン、ナ……オンナァ……血ヲ……ォ」
スピエルドルフが車内で呻く声が響き、その身体から注射針のようなものが付いた無数の触手が伸びる。
それがX-Α1の四肢を拘束し、首にも巻き付いた。
「い、いや、やめて……!!」
「瑠璃羽! この……!?」
X-Α2の方は生き残っているデッドアントとノミなどのマキナイトが羽交い締めにし、一斉に動きを封じる。
そして血に飢えたスピエルドルフの魔の手が、触手の先端の針が、二人の肢体に伸びていき――。
刺さる寸前に、数度の銃声が響いて触手全てが千切れ飛び、地上のマキナイトたちは全員凍りついた。
「悪ィ、待たせたな」
その言葉と同時に降り立つ、三つの影。
そこにいたのは、紬と共に空久里学園に辿り着いたダイナストと、体育館から出て来てすぐ変身したレギウス、そして彼に同行したVであった。