仮面ライダーダイナスト   作:正気山脈

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GEAR.42[麗王飛翔]

 バーナクル弾が撃ち込まれた直後、空久里アクアシティにて。

 

「まったく、警戒してて正解だったねぇ」

 

 フードを被った魔法使い風のロングコートを羽織った小柄な仮面の戦士が、ブロック状に切り抜かれた無数の石塊をバーナクルにぶつけ、攻撃していた。

 その背後には、魔祓課や才賀夫妻が変身したSトルーパーが銃器を構えており、射撃によって彼女を支援している。

 これによってバーナクルはその数を大きく減らし、住民への被害も全く出ていない。

 

《ハッキングパニッシュメントコード!》

「それじゃ、そろそろ終わらせちゃおうかな!」

YEEEEEAH(イエェェェェーイ)! スーパーウィズダム・マテリアルエクサイズ!》

 

 魔法使いのような黄色い仮面ライダー、ザギークの言葉と同時に、石のブロックで周囲を固められ身動きが取れなくなったバーナクルたち。

 続く彼女のドロップキックを受け、全員身体が賽の目状になって散らばり、完全消滅した。

 周囲に他の敵影はない。念の為警戒しつつも、ザギークはその場で変身を解除する。

 

「ふふん。仮面ライダーザギークウィザード、時間外労働終了だよーん」

「いやガッツリ時間内労働だっただろ」

 

 同じく変身を解除し、武生は浅黄の頭に手をポスッと乗せた。

 そして後続を警戒して、巴と共に街の見回りを続行する。

 

「あの子が帰って来るまでは」

「俺たちがこの街を守る」

 

 そう言って頷き合う二人の後ろ姿を浅黄が見送って、自身もパトロールに向かう。

 きっと、千種たちが全てを終わらせてくれることを信じて。

 

※ ※ ※ ※ ※

 

 隙を突いてデミトリ内部に侵入し、三公爵との戦いに挑む仮面ライダーたち。

 

「ブチッ殺すゥゥゥッ!! 死ィねェェェェェ仮面ライダァァァーッ!!」

「くっ!?」

 

 ラレーヌはその公爵の一人、クドラク・ロンドのカーミラ・リップと交戦しており、ロンドのそのテッポウエビのような先端の短い大きな左ハサミが開かれる。

 すると、そこから高熱の空気の砲弾が発射され、反動で足元の床が破砕。

 間一髪で横っ飛びしてそれを避けると、ロンドは激昂しながら二本の触肢を鞭のように振り回し、鋭利な爪の付いた四本脚で乱れ突き、クモガタ特有の鋏角とその先にある牙で噛み砕かんと迫って来た。

 周囲の状況などは明らかに見えておらず、床も壁も天井も、何もかも破壊しながら一心にラレーヌへの攻撃を継続している。まるでそれこそが自身の生き甲斐だとばかりに。

 

「なんて滅茶苦茶な戦い方なの……それにあの空気砲、あんなものが一発でも当たったら確実に死ぬ……!」

 

 まだエネルギーチャージの途中なのか、今はハサミは閉じているが、狙いは常にラレーヌの方に定まっている。

 このままでは反撃もままならない。そう思ったラレーヌは、意を決して階段の方に飛び出した。

 

「どォォォこへ行くんだァァァァァーッ!! 逃ァさんぞォォォッ!!」

「くっ!?」

 

 当然、ロンドは彼女を追跡する。

 床を砕き、壁にヒビを入れ、猛烈な勢いで。

 ひたすらに距離を詰め、再び爪を開いて高熱空気弾を発射せんとする。

 

《ギミックチャージ! ジュエルビートル!》

「そこ!」

 

 だがラレーヌは振り返り様に宝石弾を放ち、跳弾を利用して攻撃。

 数発が命中した後、弾け飛んだその場で眩い閃光が迸る。

 

「グァッ!?」

 

 視界が損なわれ、手元が狂う。

 結果、反動もあって空気弾はあらぬ方向に射出され、天井を砕くのみに終わってしまった。

 再び目が慣れる頃には、もうその場にラレーヌはいない。

 

「猪口才なァァァッ!! 逃げるな卑怯者ォォォォォーッ!!」

 

 姿を消してどんどん下階に移動し続けるラレーヌを、船の床を壊すことで無理矢理に追いかけ続ける。

 

「ヴラディス様はなァ!! 貴様の先祖の淫売女に誑かされて、あのアルケーとかいうクソガキを娘にしなきゃいけなくなったんだ!!」

「ふざけたことを……!」

「黙れェ!! お前ら汚物の淫売一族さえいなければァァァァァーッ!! 私が!! 私だけが!! あのお方の寵愛を一身で受けることができたのにィィィィィーッ!!」

「……醜い嫉妬、だからそんな姿なのね」

 

 その一言を聞いて、妬心に歪んだ異形はさらに怒りを滾らせる。

 それでもラレーヌは体格差やジュエルビートルによる目潰しを活かして、激化する攻撃からどんどん逃げ続けた。

 クドラク・ロンドも、掘り、砕き、潰し続け。

 暗く冷たい鉄に囲まれた場所で、ようやく立ち止まった彼女を発見できた。

 ラレーヌの眼前には鉄の壁があり、その先が行き止まりであることが窺える。

 

「ようやく観念したかァクソメスブタがァァァーッ!! 今!! ここで!! 薄汚いクソのストーク王家の血をブッ絶やしてやァァァるゥーッ!!」

「相当冷静さを欠いているようですね。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

「はあ……?」

 

 言われてロンドは、改めて周囲を見やった。

 周囲は鉄壁。眼前にはラレーヌと、その先にも鉄の壁。

 では背後には?

 振り返った時にそこにあったのは、()()()()()()()()()()()()()()

 ――戦闘が始まる前にカーミラ自身が地球に向けて放った、バーナクル弾と同じものだ。

 

「バッ……!?」

「ドカーン♡」

 

 ラレーヌの背後で砲口が開き、蒸気と共に地球へのパスが繋がる。

 先程から彼女が逃げ続けていたのは、この場所まで誘導するためだった。

 デミトリの砲台の中。蒸気発生装置を起動した上で、砲弾で押し潰す。その策を成就させるべく、奔走していたのだとロンドは狂った脳のまま瞬時に察する。

 発射まで、もう間もなく。

 

「バカか貴様ァァァ死にたいのかァッ!?」

「死ぬのはあなた一人だけですよ!」

《ギミックチャージ! ドローンビートル!》

 

 カナブンの飛行ドローンが出現し、ラレーヌはその脚を掴んで背後に跳躍。

 そのまま砲口を通って素速く脱出しようとする。

 だが外に出たその瞬間、触肢を伸ばしてロンドが彼女の足を掴んだ。

 

「うっ!?」

「逃がすかァァァッこのままお前を引き裂いて殺すゥッ!」

 

 触肢で引っ張り、彼女に鋏角や鋭利な脚先を伸ばす異形の怪物。

 ラレーヌは苦しみながらもロッドの先端をロンドに向け、ドローンビートルと共に何度も何度も発砲する。

 

「しゃらくさいッ!!」

 

 しかし、狭い地形ながらもロンドは銃弾を全て鋏角やもう片方の触肢を使い打ち払う。

 頭部や剥き出しの背など、万が一当たると動きが止まってしまう部位だけを絞り込んで防ぎ、当たっても大して問題ない頑丈な脚部やハサミなどはそのまま受けるという方法で。

 そうこうしている内に背後で砲弾が発射され、ロンドは背を向けたまま短いハサミだけを後ろにやり、空気弾を発射。

 爆発と共に弾は砕け、鉄の礫が飛び散っていく。

 

「勝ったァ!! 邪魔なクソメスの目論見は潰えた、このままァズタズタにィィィッ!!」

 

 そして。

 空気弾の反動と大砲暴発の爆風で、()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「ア?」

「私を巻き込もうとするのは分かっていましたよ」

 

 向かう先はパスを繋いだ蒸気のカーテン。

 ただし、ラレーヌはステッキモードのラレーヌロッドで伸び切った触肢を千切り、ドローンビートルで飛び去っていく。

 

「では怪盗らしく」

「し、まっ!?」

「お時間を頂戴しますね」

「ふざけンなァァァァァーッ!!」

 

 残ったもう一本の触肢を伸ばし、自身諸共道連れにしようと目論むロンド。

 だがその行動を予測していたラレーヌは既にドローンから手を離し、ドライバーのハンドルを回して必殺の態勢に移っていた。

 

BREAK OUT(ブレイクアウト)!》

「身の程を弁えなさい、あなたの前にいるのは……この国の、正統な女王!! ヴィルヘルミナ・ストークなのですから!!」

《レディバード・シネマティックフィナーレ!》

 

 落下しながら右足を突き出し、触肢を潰して一気にクドラク・ロンドを蒸気の中へ押し込む。

 蹴り出された異形の怪物はそのまま落下していき、蒸気に飲まれて消失する。

 

「逆賊滅ぶべし!!」

EXCELLENT(エクセレント)!》

 

 蹴った勢いで跳躍して、飛んで来たドローンビートルを再び掴み、ラレーヌは一度X-ROSSの戦艦へと戻っていくのであった。

 

 

 

 一方、たった今蹴落とされたばかりのクドラク・ロンドのカーミラは。

 

「あのクソメスがァァァ、よくもォ……こうなれば、私の手で地球を滅茶苦茶に荒らしてやるゥゥゥッ!!」

 

 落下しながら憤り、着地姿勢を取る。

 策に乗せられた以上は仕方ない、ならばせめてどこへ飛ばされても五体満足でいられるようにするまで、という考えから来たものだ。

 そうして蒸気を突き抜けてロンドが辿り着いた先は、()()()()()()()()()()()()()

 

「はっ!?」

 

 空久里アクアシティからやや離れた位置の、海の真ん中。

 着地など関係ない、クドラク・ロンドの巨体ではただただ沈むだけ。

 それに加え、今はマキナイトやクドラクの弱点である太陽の出ている時間帯だ。

 しかも周囲が海では光を遮るものは何もない。そうなれば必然、彼女の身体はすぐに灰と化していく。

 

「身体が、溶け……い、いやああああああ!?」

 

 バシャバシャと波を立てながら藻掻き、自分の身体がヒビ割れて崩れ、海に消えていくのを見下ろして喉が裂けんばかりの悲鳴を上げるカーミラ。

 

「ヴラディス様、ぁぁぁ……」

 

 次第に脚も触肢も鋏角も失って、女公爵は誰に看取られることもないまま、静かにこの世から消えてなくなった。





「指す前にちょっと、質問して良いかい?」

 デミトリ内の応接室にて。
 マキナイトたちの王であるヴラディスと白黒の駒を用いた模擬戦を行っていた千種は、残りを王一騎まで追い詰められた状態でそんなことを口走った。
 今更命乞いでもするつもりか。そう思いながらも、ヴラディスは頷く。

「うむ、聞こう。なんだ?」

 何をするつもりかは知らないが、どうせこの前哨戦の勝利は見えている。
 そんな風に高を括っていると、千種は鋭く、言葉でヴラディスに切り込む。

「アンタ……()()()()()()()()?」
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