金髪金目の超絶美少女の弟に転生したと思ったらただの寄生虫だった件 作:ぶたやま
よろしくお願いします。
「おはよう。アルス」
この世に生を受けて14年。俺は未だ、その名前で呼ばれる事に強い抵抗を感じている。こうして『姉』に声を掛けられる事にも慣れない。
「どうしたの? ジャガ丸くん、食べる?」
けれど、
そして、彼ら彼女らは、殆どが何かしらの武器を所持している。もちろん、銃刀法違反には引っかからない。そんな概念がこの世界には存在しないから。
「ねえ、たまには
ここは日本ではない。
◆◆
真っ暗闇の中で意識が浮上する感覚が芽生える。
それと同時に全身の感覚器官が研ぎ澄まされていくのが分かった。まず最初に襲って来たのは、どうしようもない息苦しさである。空気を吸わなければと思ったが、金縛りにでも遭っているかの様に身体が一切動かせない。それは、呼吸さえも例外ではなかった。
やばい。死ぬ。そう直感すると同時に、頭部に衝撃を受ける。次第に『息して』『泣いて』という声も降って来て。
なんとなく、出産の光景が思い浮かんだ。
産まれたばかりの赤子は、自発的な呼吸が出来ないと聞いた事がある。だから、出産直後に泣いていない場合、叩くなどして泣かせ、無理やり息を吸って貰う必要があるらしい。勿論、俺自身まだ学生の身分なので、そう言った場面に立ち会った経験はないが、ここまで状況が類似していれば、嫌でも出産の2文字が頭を過ぎる。
しかし、同時にあり得ないとも思った。俺は今年中3になったばかりの14歳だ。間違っても産まれたての赤子ではない。
そこまで考えた時、急に体が楽になった。新鮮な空気が、体内に満ちていくのを感じる。突然の事態に驚いていると、喧しい赤子の鳴き声が鼓膜を貫いた。そして、それが自分の口から発せられている物だという事も、程なくして理解する。
俺は混乱の渦中に叩き落とされた。
本当の本気で赤子になってしまっているらしいが、マジで意味が分からない。こんな事が現実に起こり得るモノなのか? いや、起こる筈がない。コレは完璧にフィクションの領分だ。夢を見ているのだろう。余りにも感覚がリアルだが、きっと明晰夢の類いに違いない。
そう自分に言い聞かせている間にも、絶えず俺は泣き続けていた。明晰夢というのは夢の中を自在に動き回れるのではなかったのか……。現状俺に、肉体のコントロール権があるとは思えない。
結局、俺が泣き止んだのは、体感1時間以上経ってからの事だった。そして、泣き疲れたのか、急速に睡魔が襲ってくる。夢の中で寝るなど、これが現実であると認めるような物である気がして、俺は必死に重い瞼を持ち上げようとした。そのお陰かどうかは定かではないが、此方を覗き込んでいる3人の顔を視認する。
天女と見紛う程に美しい金髪の女性と、それと瓜二つの幼女。そして、漆黒の髪が印象的な長身の優男である。多分、親子だろう。位置関係的に、俺は金髪の女性に抱き抱えられているらしかった。彼女は柔和に微笑みながら此方を見つめ続けており、隠しきれない疲労の色が見て取れる。
対照的に、黒髪の男性は子供の様にはしゃいでおり、金髪の女児がかなりビックリしていた。そんな彼女は、父親に引っ付きながら宇宙人でも見るように俺の様子を窺っている。娘の視線を察したのか、金髪の女性が口を開いた。
「アイズ、あなたの弟よ」
「おとうと?」
「ええ、ほら」
首を傾げる幼女に対し、母親はズイッと俺を近づける。
彼女は恐る恐る手を伸ばし、指先で俺の頬にツンツン触れた。
「やーらかい!」
その瞬間、初めて触る赤子の肌の虜になってしまったらしい。警戒心など遠く彼方へとぶん投げ、無遠慮に両手を伸ばしてくる。ペタペタぷにぷにと、人の頬を好き放題に蹂躙している様は、ある意味で怪獣のようだった。ぶっちゃけ少し……いや、けっこう痛い。手加減というものを知らないのだ。見たところ、この子は2歳か3歳ぐらいだから仕方がないが……此方も産まれたばかりの身。あまりにも過度なおさわりはご遠慮願いたい。父親と母親がやんわりと止めに入るのと時を同じくして、喉にあの独特の感覚が滲み出て来た。ああ、やっぱり……と脱力しながら、俺は肉体が再び泣き出すのをなす術もなく待つのだった。
◇◇
どうやら俺は、マジで転生してしまったらしい。
この世に爆誕してから既に4年の歳月が流れた。流石にもう夢オチの期待は捨てている。
正直、前の世界で死んだ覚えなど無いのだが、実際こうして転生してしまっているのだから仕方がない。
今世の俺の名前は、アルス・ヴァレンシュタイン。
弱冠4歳ながら容姿はそうとうに整っていると思う。以前の世界なら子役として芸能界にスカウトされていても可笑しくはなかっただろう。そして、それは俺の家族にも言えることだった。
両親はハリウッドスターかよと思う程の
今世の俺は明らかに恵まれている。別に前世の俺の家庭環境が劣悪だったり、貧乏だったりとかではないが、家族構成が全く同じ事もあり、単純に上位互換と言って良いだろう。前世はSRで、今世ではSSRの最上位を引いた感じだ。そう考えると、俺は普通に豪運の持ち主なのかも知れない。
加えて『異世界』に『転生』した。その事実は当時の俺を大いに喜ばせた。今にして思えば早計な決めつけだったが、『異世界=魔法が使える』と脳死で思い込んでいたのだ。
ゲームのように剣と魔法を駆使してモンスターを倒し、学校にも行かずに自由気ままに生活する。そんな夢のような想像をしていた。そして当然、『転生者』なのだからと、何かしらの『チート能力』を授かっているものだと決め付けていて。裕福な家庭。優れた容姿。好き勝手できる
しかし、現実はそう甘くはない。俺は直ぐに非情な事実を突きつけられた。
違和感を覚え始めたのは生後8か月後の事である。一向に、身体を自由に動かせるようにならないのだ。最初は赤子の筋力的に無理なのだろうと軽く考えていた。けれど、自力でハイハイが出来る程度まで成長した後でその理屈は無理がある。というか、その気がないのに勝手にハイハイで移動し始める事が多々あり、止まろうと思ってもかなり力を籠めなければ止まらない。まるで、俺の他に俺の肉体を操っている奴がいる様な不思議な感覚だった……。
その感覚が正しかったと悟るのは、2歳頃の事。2歳。それは一般的に、幼児に自我が芽生えるとされている年齢である。俺はだんだん、自分の中に『別の誰か』の意識を感じるようになった。朝、俺がまだ眠いと思っていてもソイツが起きてしまえば身体が目覚める。姉と共に母の膝の上で本を読んで貰っている最中も、ソイツが飽きれば他の事して遊ぼうと大騒ぎだ。食事の好き嫌いも激しいし、勝手に姉のおもちゃを盗っては汚すし、夕方には既にお眠だし、というかそもそも単純に我儘放題すぎるしで、まったく自由の時間が無い。
俺は、この肉体に自分の意志が反映されていないことを悟った。というか、そもそも俺の身体ですらなかったのだ。てっきり元の世界で死んで、この世界の赤子に生まれ変わったのかと思っていたが、単に『アルス・ヴァレンシュタイン』という子供の内側に居候しているに過ぎなかったのである。要するに、『転生』ではなく『憑依』だ。もっと言えば、ナルトの中の九尾とか、虎杖の中の宿儺とか、そんな感じだろう。
こうなってくると、俺は今世……とは少し違うのかも知れないが、ともかく第二の人生がどうでも良くなった。だって、所詮は他人の人生なのだ。肉体の自由は無く、やりたい事は何も出来ない。仮に『アルス』がたまたま『俺』の望み通りに行動したとしても、あくまでも実際に動いたのは『
退屈だった。『魔物や現地人相手にチートで無双!』みたいな願望も消え失せていた。正直、叶う事なら元の世界に帰りたい。この世界、『異世界』だけあって文明レベルはお察しだ。スマホやゲームなんかは『友達の物を後ろから覗き見る』状態にしかならないので別に無くても構わないが、テレビが無いのはキツ過ぎる。束の間の暇つぶしさえ出来やしない。あと多分、漫画もない。小説の類はあるようだが残念ながら活字の羅列は苦手分野だ。眠気とかいう邪魔者が容赦なく瞼に重しを乗せて来る。あと単純に、アルスが小説を手に取る気がしない。俺自身が似たタイプだったから分かるのだ。こういうタイプが漫画以外の本に触れるのは、国語の授業か夏休みの読書感想文ぐらいのものだろう。
圧倒的な娯楽不足。最初こそ、煩雑さとは無縁の牧歌的な暮らしに新鮮味を感じていたが、これは到底現代人に堪えられる代物ではない。『チートを使って魔物をバッタバッタなぎ倒す!』が実現できたならまた違ったのかも知れないが、残念ながら未だチート能力には目覚めていなかった。というか、『転生』で無い以上目覚めない可能性も大いにある。仮に目覚めたとしても、
もうこれは、元の世界に戻るか、宿主の肉体を乗っ取るかの二択である。
が、前者に関しては方法がマジのガチで一切分からない為、実質一択だ。そして、後者に関しても難しい。行動や発言を邪魔するにしても、此方の望むように言動を上書きするにしてもエグイ集中力と体力が要求される。ここ一番という時に狙いを定めてなら問題なく介入できるだろうが、恒常的に乗っ取るのは現実的ではない。というか、それをしたら多分過労死する。
……裏技としてアルスと交渉し、許可を得るという手段もあるが、現状、それは無理な話だった。奴と良好な関係を築けていないからだ。それもその筈で、彼からすれば、俺は何故か産まれた時から自分の中に居る……しかも乗っ取ろうとしてくる厄介な別人格である。冷静に考えなくとも好かれる要素は何処にもない。
勿論、幼い故の認識の甘さはあり、奴の中で俺は『口うるさい説教お兄さん』という分類をされているようだ。完全に舐め腐っていて、ワザと困らせようとしている節すらある。正直、付け入る隙はありそうだが、それでも敵認定されている事実には変わりない。
これが、俺の置かれている現状だ。帰る手立ては一切不明。肉体も乗っ取れない。そもそも主人格に嫌われている。端的に言えば『詰み』である。今日も今日とて、俺はアルスの中から、アルスの傍若無人な一日を眺めるだけの日常を送っている。つまらない……。けれど、その退屈にさえ慣れ始めてしまっていて、自分の怠惰さが嫌になる。せめてもの暇つぶしに、宿主の視界に焦点を合わせていると……。
奴の目の中には、綺麗な金髪の少女がいた。姉の、アイズ・ヴァレンシュタインだ。俺と違って、彼女は大層アルスに気に入られている。きょうだいだからと言われればそれまでだが、この年頃の子供が父親はともかく母親よりも姉に懐いているというのは少し珍しいんじゃないだろうか。まあ、実際俺の目から見ても、アイズは『良いお姉ちゃん』だと思う。6歳とは思えないぐらい面倒見が良いし、優しい。
しかし、残念ながら『弟が好きだから』という理由からではないのだ。実姉がそうだったから、俺は直ぐに気づく事ができた。彼女のそれは『両親に褒められたい』という欲求から来る行動だ。弟は哀れにもそれに気付いていない。純粋に、自分が好かれていると思っている。前世の俺と同じ様に。
家の近くに立っている大きな木。瑞々しい緑葉の合間から木漏れ日が射し込む
「あそぼ! アイズ!」
『アイズお姉ちゃんだろ、クソガキ』という俺の小言は安定のスルー。断られる事を想定していないルンルンなご様子で、アルスは姉の返事を待っている。
「アルス……危ないからとびつかないでって、いつも言ってるよね? ちょっと待ってて。もうすぐ読みおわるから」
アイズはそう断りを入れて、落とした本に手を伸ばした。年齢を考えれば『今本読んでるから嫌だ』とにべもなく断っても良い場面だが、ちゃんと相手をしてくれる辺り、やはりこの子は大人だと感じる。しかし……。
「やだ! あそんで、あそんで!」
「だから、ちょっとだけ待ってって……」
「あそんであそんであそんで!!」
うるせぇ……。今日もまたアルスの癇癪が始まった。どうにも俺は、コイツの心(胸)ではなく頭部に住み着いている様で、甲高い絶叫が最短距離で鼓膜に叩き込まれる。というか、遊ぶこと自体は断られてないんだから別に良いだろうが……。そういうトコだぞ、マジで。
等と辟易していた所為で介入するのが遅れた。なんとこの大馬鹿野郎、アイズの手から本をブン取り、思い切り地面に叩きつけたのだ。直後、足で踏みつけようとさえしたが、それは何とか阻止する。
片足を振り上げた状態で邪魔をしたのでバランスを崩して転倒したが、今回ばかりはアイズもアルスに駆け寄ったりはしなかった。泣き喚く弟を尻目に、大事そうに本を拾い上げて中身を確認している。ホッとした息遣いが聞こえて来たので、それほど酷い状態にはなっていなかったのだろう。叩きつけたと言っても、所詮は4歳児の腕力だ。
けれどまあ、だからといって今のがチャラになる訳ではない。当然だが、流石にアイズも堪忍袋の緒が切れた様だった。いつもなら甲斐甲斐しく慰めにかかってくれる筈の姉が、一向に膝を曲げずに此方を見降ろしている。俺が視ることができるのは、アルスが視ているものだけだが、それでも怒気と涙を滲ませた金眼が目に浮かんだ。
「もう、アルスはいっつもそう! ……アルスなんか大っっっきらい!!」
俺が聞いている音は、アルスにも聞こえている。その声を耳にした瞬間、宿主の泣き声は一層激しくなった。普段なら『あ~あ、嫌われた~』と煽り倒してやるところだが、流石に爆音過ぎてその余裕がない。結局、騒ぎを聞きつけて出て来た母が慰めるまで、コイツは洪水のように泣き続けた。
太陽が地平線の底に沈み、星空が天を支配する。夕食の時間になった。家族4人で丸い食卓を囲んでいる。俺の視界には、母の手料理と、ツーンとしているアイズの横顔が相互に映っていた。要するに、飯を食べながらアルスが姉をチラ見しているのだ。しかし、時折視線に気づかれては都度そっぽを向かれる始末である。
結構しつこく謝罪を促しているが、アルスは中々聞き入れない。勇気が無いのと、姉が怒った衝撃が抜けきらない思いが半分ずつある様だ。ただまあ、彼女からしたらそんな心情知ったこっちゃないだろう。ただの自業自得。謝る以外に、アイズの留飲を下げる方法は存在しない。
「ほら、アイズ。いつまでも膨れてないで? 本は無事だったじゃない。なんなら、新しい物を買ってあげるわよ?」
「そうだぞ、アイズ。アルスだって反省してるんだ」
いや、してねぇよ。と、宿主にしか聞こえないと分かっていながら、俺はついついそう突っ込んでしまった。もちろん、懲りてはいるから二度と本を乱雑に扱う事はないだろう。しかし、それは表面的な理解だ。どうしてアイズが怒ったのか、何がいけなかったのかを真の意味で理解できてはいない。
それに、仮にキチンと反省していたとしても、だからと言って謝らない理由にはならないだろう。口にすら出さずに、相手に『俺の誠意を感じろ!』なんて、それこそ無茶な要求だ。
だから当然、アイズの怒りは収まらない。大好きな両親の言葉にさえ耳を貸さない。当たり前である。今回の件に、彼女は何の落ち度もないのだから。……というか、今回だけではない。前々から、アルスは姉に対して色々とやらかしすぎている。『積み重ね過ぎていた』と言っても良い。そして、この子の両親は、アルス・ヴァレンシュタインに甘すぎだ。
もちろん、悪い事をしたら叱りはするけれど、それ以上に長女に我慢を強いている。否、なまじアイズの堪えがきく為、末っ子の我儘が馬鹿みたいな頻度で通ってしまうのだ。結果、奴は無自覚に増長する。自分の意見が通るのが普通という認識になってしまう。まるで
しかし、仏の様な彼女にも限界はある。そりゃあ、あの子だってまだまだ6歳児の幼い子供だ。いつか爆発するのは自明の理で、それが今回だったというだけの話。結局、夕食が終わっても、姉が弟に話しかける事はなかった。
そして、就寝時間になる。
ここで事件が起きた。普段、ヴァレンシュタイン一家は寝室で川の字になって寝ているのだが、アイズがアルスと同じ部屋で床に付くのを拒んだのだ。そして、ガッチリと母親にしがみついて放さない。まるで、お邪魔虫に取られまいとする様に。最早お約束だが、再びアルスが泣き出した。だからさっさと謝れっつったのに……という俺の嘆息も、大きな泣き声に掻き消される。
正直、俺としてはこのままひとりで就寝するでも良いと思っていた。それならアイズの留飲も下がるだろうし、アルスにとっても丁度いい薬になる。ここまで精神的にボコボコになった状態なら、一時的に肉体を乗っ取って、居間に引きこもるのも容易いだろう。
けれど、流石に4歳児を独りで寝かせる事に抵抗があるらしい。結局、父親が一緒に居間で寝る事になった。アイズも、母に『夜中アルスにもしもの事が合ったら大変でしょ』と諭され、渋々納得していた。やはり、この子は大人である。
消灯。
アルスは父にくっつきながら、コロッと眠りについた。正直、もうちょっと悶々としてろよと思わなくもなかったが、今回ばかりは都合が良い。普段、俺の行動はアルスの抵抗によって9割以上制限が掛けられている。けれど、奴が眠りついている時だけは話が別だ。流石に肉体を動かすことはできないが、強制的にアルスと話し合いをする事は可能。無抵抗の奴の精神を、自身の深層世界(?)的な空間に呼びつける事ができるからだ。
この空間に強制連行すると、奴は決まって不服そうな顔を見せる。睡眠が妨害されている事に加え、大抵、俺からのガチ説教が待っているからだろう。夜……というかアルスの就寝中にしか連れて来れず、その間俺自身も眠れない為滅多な事が無い限り開催しないが、それでも鬱陶しく思うには十分な筈だ。
だというのに、こうして対面しても文句の一つも寄越さない辺り、今回の件が相当に効いているらしい。正直、少しスカッとする。因果応報。ようやくコイツにも好き勝手していたツケが回って来たのだ。その感情を表に出さない様に、努めて真面目な顔で俺は問いかけた。
「呼ばれた理由、分かるよな?」
「……………」
返事はない。けれど、彼の丸く大きな頭が、コクリと頷く。此方を見上げる瞳には、またも涙が滲んでいた。そこには縋る様な色も見え隠れしている。嫌いな相手にも縋りついて助けを乞う、甘ったれた性根……。改めて思う。やはり、今のコイツは嘗ての俺の生き写しだ。
俺も、姉と仲が悪かった。というか、一方的に嫌われていた。原因は俺だ。
アルスのように我儘三昧で、随分と不満を感じさせていたから。姉も、アイズと同じく我慢強い優しい少女だったから。積もり積もって決壊した。
きっと、このままではヴァレンシュタイン姉弟も同じ末路を辿るだろう。正直それも一興ではあるが、俺はその様子を間近で見続ける事になるのだ。そして、その度に昔の自分を思い出す。思い出して、『あの時こうしていれば良かった』とか、『あんな事しなきゃ良かった』とか、永遠と後悔する事になる。それは、ご免被りたい。
白状すると、俺はこれから頭ごなしにアルスを怒鳴りつけるつもりでいた。そんな事をしても逆効果なのは分かっていたが、俺は別にコイツの親ではない。コイツの成長を考慮した説教をする義理なんてない。結果、態度の改善が見られず更に姉に嫌われてしまっても、アルスの自業自得だと考えていた。
でも……。
「気が変わった」
「え?」
「協力してやるよ。お前と
「ほ、ほんとう……!?」
アルスの目が露骨に輝く。頬にも朱色が差す。小さな身体が脈動している。
けれど、これは善意なんかじゃない。当然、100%仲直りできる保証もない。
これは単なる実験であり、『答え合わせ』だ。今の俺の考えを実践して、嘗ての姉に見立てたアイズ・ヴァレンシュタインとアルスが仲直りする事が出来るのか。その是非を試す為の、
お読み頂きありがとうございました。
以下、ちょっとした補足になります。
・寄生虫(主人公):
顔面偏差値70の側を手に入れたラッキーボーイ。前世の14歳までの記憶を持つ。
自分の名前は憶えていない。容姿も朧げ。なので実は前世もイケメンだったんじゃないかと密かに期待しているが、残念ながらお察しレベル。深層世界の事を「ここは俺の生得領域だ……」とかしたり顔で言いたいと思っているが中々勇気が出ない。
・アルス・ヴァレンシュタイン(4歳):
寄生虫の側かつ自立した本体。めちゃくちゃ我儘だけど年齢考えたら仕方ない気もする。ただし、本を踏みつけようとしたのは絶許。アイズ大好きっ子で、両親の事も大好き。産まれた時から共存していた為、意外と寄生虫への嫌悪感は少ない。というか、普通に舐めている。
・アイズ・ヴァレンシュタイン(6歳):
説明不要の圧倒的美少女ヒロイン。6歳にして既にその片鱗を見せまくる。アルスの所為で、原作より両親に甘えられなく不満。でも「私の方がお姉ちゃんだから」と我慢していた良い子。今回は爆発したが、ちゃんとアルスの事は愛している。でも現状、両親>>>アルスぐらいの差がある。