育種――。
それは 生物 (植物や動物)の遺伝的性質を人間の望む方向に改良することである。
果物や野菜、穀物、家畜などで広く行われている。
特に果物の育種では以下のような目的がある。
1.甘さ・酸味・香りの改善。
2.実の大きさや形、色の改良。
3.病気や害虫への耐性強化。
4.保存性や輸送性の向上。
5.栽培のしやすさ。(早生・晩生、樹勢など)
更に果物育種で使われる方法にはいくつかの種類がある。
交配育種。
異なる品種 (または系統)同士を交配させ、優れた性質を組み合わせる。
選抜育種。
自然に起きた突然変異や、もともと存在する変異の中から優れた個体を選んで増やす。
突然変異育種。
放射線や化学薬品で突然変異を人工的に起こし、そこから良いものを選ぶ。
遺伝子組換え。(ゲノム編集)
DNAレベルで特定の性質を操作する技術で改良する。
「いい具合に育ってますなあ、小竹さんや」
「そうでございますなあ、小梅さんや」
「ぼんは力王の訓練と理不尽、まほろの女の味と色、これらの
「確実に強うなっておる。ドラ○エのように様々な経験を積みレベルアップをしていきますじゃ――」
「しかし、まだまだ冒険はこれからですぞよ、小竹さんや」
「選抜育種、突然変異育種、遺伝子組換えがありますかなあ、小梅さんや」
果樹の室、双子の熟れたオーレンジは互いにほうじ茶をすする。
キィスキスキス、と
「力王のヤツ、マンダリンをぼんにぶつけるそうじゃぞ」
「ほうっ! マンダリンでございますか」
「うむうむ、サバキ系の芦崎空手五段の腕前ですじゃ」
「それだけではありませんぞよ、小梅さんや。ワシら一族特有のカポエラ――伝統ある奴隷武術のマスターレベルですじゃ」
「そうじゃの、そうじゃの小竹さんや。空手だけではなく、カポエラの使い手ですじゃ」
「小梅さんや、まるでワシらのような『ミックスジュース』でござりますなあ」
キ"ィ"ィ"ィ"ス"キ"ス"キ"ス"サ"ン"キ"ス"ト"!
笑う双子のオーレンジ。
まるで、ぼん――ザクロの成長が待ち遠しい栽培農家のようであった。
○○○
「ザクロ、今日はお前に特別指導教官を連れて来てやったぜ」
トレーニングルーム。
赤いアロハシャツに黒パンツ、片手にオレンジジュースを持ちながら力王はニタニタと笑っている。
腕立て千回、スクワット千回、腹筋千回、縄跳び1時間のワークを終えたザクロは汗びっしょりに濡れていた。
「…………特別指導教官…………?」
「おうさ、お前にモノホンの打撃を教えてくれるスペシャリストさ」
力王はオレンジジュースを一気に飲み干すと、
「さっさとリングに上がりな、ザクロ」
指示する。
ザクロはただ黙って頷きリングに上がるしかない。
師匠の言葉は絶対、それに少しでも不満そうな顔を見せると何をされるのかわからない。
ロープをくぐり、ザグロはリングに立つと力王は大きな手を叩いた。
「マンダリンーっ! このクソガキをいっちょもんでやってくれやーっ!」
すると、トレーニングルームの入り口はぬるりと蜜柑仮面が現れた。
覆面の形状から同じサンキストの一族である、血は遠いだろうが家族である、そして容赦のない残虐ファイトを見せる戦士である。
その一族の男の名はマスク・ド・サンキスト“マンダリン”。
上衣は白い空手着、その道着の胸には赤色で『芦崎空手』と刺繍されている。
下衣はアジュールブルーのレスリングパンツを履いていた。
奇妙だった。
打撃系なのか、組技系なのか、さっぱりわからないスタイルだった。
「それ、もしかしてサンキスト一族?」
マンダリンが突然そう述べた。
右手人差し指でザクロの赤い柑橘系マスクを指差している。
「サンキスト一族は、オーレンジのマスクを被るのが伝統ですけん」
「伝統……」
ザクロはそう呟くしかなかった。
このマスクは育ての親である小梅、小竹にこしられてもらったもの。
京都のマスク職人に仕立ててもらった特別製であることしか教えてもらっていない。
それにサンキスト一族は様々な形状、色のマスクを被っているため気にはしていなかった。
「君はまだグリーンボーイなのに、他のサンキストとは違うマスクを被っている。なるほど、これは非常に教育する価値がありますけん」
マンダリンは静かに述べる。
ザクロは何が何やら理解出来ていない。
リングの外にいる力王に目を置くと、ニタニタ笑いながら椅子に座りスマホをいじっている。
「――ということで、これから教育的な指導を行うけん」
マンダリンは「ニマッ」と笑うと、
「まずはサンキスト一族の基本、反則技ですけんッ!」
空手着を脱ぎ、それをザクロの顔面へと投げつけた。
「なっ……ッ!?」
突如の不意打ち。
ザクロの顔は空手着で覆われ、何も見えない状況となった。
「キェアアアアアアアアアアッ!」
怒涛、怒涛の乱舞が打ち込まれる。
正拳突き、裏拳、鉄槌、肘打ち、前蹴り、足刀、下段蹴り、上段蹴りの嵐。
キュッとした子気味のいいスリップ音は、マンダリンの卓越した足捌きの音色。
打ち込む技が正面からだけでなく、左右斜め、後ろ、あるいは上から叩き込まれる。
「うっ……があ、ぁ……ッ!」
一方的に打ち込まれるザクロの膝は折れ、急所が集中する頭部の位置が低くなる。
「これで終わりですけんッ!」
マンダリンの片手が床につき、太いオーレンジな足が鋭く跳ね上がる。
――子安キック!
それは古い時代の空手家の技でもあり、カポエラのような変則蹴りでもあった。
その蹴りは、相手の側頭部へと蹴り抜くような重い一撃である。
「――ぐ、ぁっ……!」
ザクロの赤いマスクの奥から、息が詰まる音が漏れた。
身体がぐにゃりと折れ、吹き飛ぶように崩れ落ちた。
リングの床に衝突する鈍い音が響く、ザクロは一方的な暴行を受けたのである。
「マンダリンちゃん。それ、もしかして空手?」
リング外の力王は、スマホのパズルゲームをしながら問う。
マンダリンは倒れるザクロを見て、冷たく答えた。
「空手ですけん――ただし、このグリーンボーイに合わせた
そのマンダリンの回答に、力王は不服そうに口元を歪める。
「おいおい、
マンダリンもまた、力王と同じように不服そうに口元を歪める。
「見たいんか?」
「そらそうよ」
「なら、このグリーンボーイが立ち上がったら――」
マンダリンは肩を竦め、皮肉めいた笑みを浮かべた。
片足でリズムを取りながら、まるで遊びの続きを待つように――。
「たっぷり見せちゃりますけん」
マンダリンの視線を倒れ伏したザクロに突き刺した。