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一通り終わり、王都のはずれにある屋敷へ一同は向かう事に成っていた。
そこはあらかじめ用意した『八本指対策』の建物で、隠し通路からみんな出ていくことに成っている。黒幕の正体が不明ということであれば、迂闊に実行犯である冒険者を殺すことはないだろうと期待しての事である。
底に向かう傍ら、デイバーノックはラズロックに他愛ない質問を投げた。
「先生。途中で妙な動きをされて居ましたが……あれは回避の一種でしょうか?」
「回避と言えば回避かな。自動制御に気が付いた人様に『紛れ』を入れていてね。それと実は隠れている人が居たんだ」
ラズロックの戦闘機動は、予め条件付けされている。
端から眺めていたデイバーノックはそこまでは気が付けたが、その先に思い至って居ないのだろう。優先順位は割りと簡単だが、敵が気が付いて追い込まれない様に、ラズロックは切り替えをしていた。『紛れ』というのは無意味な軌道で移動するパターンだが、基本はシンプルに回避するパターンと組み合わせることで意味が出てくる。
そしてもう一つ理由があるのだが……。
人に紛れたアンデッドゆえに、生きていくために視線に敏感な筈のデイバーノックにすら見切れない、何者かがあの場に潜んでいたという事だ。
「ちなみにそこに居るよ。敵意は無いから放っていたけどね」
「なんと!? その様な強者が……」
「っ!?」
ラズロックは軽く指摘するがデイバーノックの方はそうもいかない。
もちろん挙動は隠そうとするが、見守っている人物の方が英雄級なので見つかったことを理解してしまった。何というかラズロックは気遣っていた事も伺えるので、何とも言えない空気が周囲に漂う。とはいえそのまま歩いて行くわけにはいかないのと、聞きたいことがあるのでその人物は姿を現すことにした。
大人しく姿を現すことで、自分よりも隠形が得意な者の存在を隠すという意味もあるのだが……。
「……叶いませんね。一体いつから?」
「割りと最初の方かな? あれなら事前に地面に潜っておくほうが気が付けないと思うよ」
ラズロックの世界では、塔を登って鍛錬を重ねるクライマーという魔法使いが居る。
万能を求めるのではなく、得意な属性を絞って、余力で体術や探知力を上げるのが定番だ。何故ならば色んなタイプの敵が居る塔に挑むことに成り、場所によっては隠形で隠れているモンスターばかりの場所もある。逆に隠形がないと進めない、脳筋が何百と屯する場所もあるので、魔法使いの創意工夫を試すように用意されているのだろう。
その経験からすれば、『どうせ見つかりっこない』と後から覗きに来る『彼』は見つけてくれと言わんばかりに思えたのだ。
「察するに君はクレマンティーヌ君の同輩だろう?」
「思うに君たちは……いや、君たちですらある種の病に掛かっている」
「この国……リ・エスティーゼ王国は特にそうだが、強く成る教えは途上、それを運用する為に至っては『上』に行くほど杜撰になっていく。下の冒険者たちが心得ている事を、アダマンタイト級の冒険者や、君たちはやらなくなってしまうんだ。最初は不思議だったんだがね」
まずレベルキャップの存在と、それを越える術を大多数の人間が知らない。
帝国軍に扮した偽兵士が優良な統一装備を身に着けている事を考えると、帝国や法国はそれなりに理解しているのだろう。だが、不思議な事に蒼の薔薇や漆黒聖典など、強者になればなるほどに努力をしなくなってしまう。
それは何故か?
「要するに同格の強者と戦った経験が少ないのだろう? 相手が自分と同じ見地で、自分と同じような者が考察して対抗策を考えていると思っても居ないんだ。むしろ気が付かれる前に自分の力を最大に発揮して、一気に片付けることにリソースを注いでしまっているんじゃないかね?」
「……耳に痛いですな。確かにその通りです」
ラズロックの指摘に『彼』……神領縛鎖は苦い顔で頷いた。
彼らの所属する漆黒聖典は全員が英雄級以上で構成されており、厄介な相手には必ずチームで対抗する。場合によっては……ラズロックの様な逸脱者と戦う想定の場合は、全員の動員が基本原則であった。最強格である『絶死絶命』によってプライドをへし折られ、上には上がいると理解はさせられるのだが、それでも大抵は能力で押し切る戦闘を想定してしまっているのだ。
つまるところは、強者に成れば成る程に、『自分と同格以上の相手』との勝負を行わない……いや、出来ない傾向にあるのである。
「敵が居ないのが確かに決定的な理由です。なにせ我々は生存競争の為の戦力ですから。正直な話、我々も身内で殴り合う事もないくらいです。大抵は自分が自信のある状況で最大の技を繰り出せば勝てるし、絶対に勝たなきゃ駄目なんです。だから勝負なんかしないという事に落ち着きます」
「だろうね。私も森の周囲を探ってみたが、厄介なのは白いゴーレムだけだった」
「……?」
神領縛鎖の述懐にラズロックが出した例にデイバーノックは内心で首を傾げた。
強者の絶対数が少ない事は理解が出来るが、ゴーレム程度をラズロックが脅威に思うとは思えなかったのだ。もっとも『ソレ』をゴーレムと言って良いのか、ラズロックにすら判らないのだが。
そして神領縛鎖の方はもっと厄介なことに気が付いていた。
おそらく彼らの隊長をもってしてもラズロックには勝てない。正確に言えば、漆黒聖典全員で戦おうとしても、勝負すら挑ませてもらえない事実に、だ。神領縛鎖は個人で何とかなる唯一の可能性であり、彼よりも隠形が得意な『天上天下』は一撃で何とかする能力に欠けている。おそらくは届かないと判断した。
「時に先生。ここまで答えたのだから、教えちゃくれませんかね? そいつを使って何をなさるのでしょうか?」
「そう呼ぶ必要はないがね。君たちが挑む『適度な障害』の用意さ」
「っ!!」
神領縛鎖は『我々と戦うとしてどう戦いますか?』などとは聞かなかった。
敵対する気のない人物に警戒させても仕方がないからだ。代わりに尋ねたのは、当初から気に成っていた事……デイバーノックの去就である。尋ねて当然の事なので、ラズロックは淡々と答えた。その内容がどうであったかはともかくとして……デイバーノックはむしろ驚喜したという。
ちなみにラズロックが、『1km離れて視界内を薙ぎ払い続ける』という選択肢を採れる時点で、漆黒聖典は彼の敵には成りえない。結界でも築いて、その中で勝負を挑まないと駄目だろう。
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そして集まった館で、今後に関するアレコレが周知されることに成った。
まずは八本指に関する報告であり、それを元に基本方針を決定していく。そこにはクレマンティーヌも居るし、蒼の薔薇だって居た。居ないのは不良中年率いる朱の雫くらいのものである。
議題に上がる話題は幾つもあるが、視界を務めるのは依頼主と言う形式のクレマンティーヌであった。
「なんで神領縛鎖ちゃんが姿を現してんのか知らないけど、ちゃっちゃと行きまーす」
「みなさんのおかげで八本指の王都拠点は見事かいめーつ! お疲れさんでしたー!」
「さーて、裏が気に成るだろうからそっちいっちゃうね。気にならなくても話しちゃう」
「今回は囮に対する囮。八本指が用意した囮の罠を踏み潰しつつ、報復の為に用意された監視を辿る事でした。ちなみに他の国での拠点にも張らせてっけどね。なので、此処からは経過観察に成りまーす」
ケラケラと笑いながらクレマンティーヌは基本要綱を説明した。
依頼が果たされたかどうかを見極め、告知することは重要だからだ。そして監視要員が居たことを説明し、そいつらも始末した事を伝えれば、『基本的』には依頼終了と言う事に成る。
問題なく状況が終了したことに、一部からは溜息が漏れた。
「とりあえず、なーんも無ければこれで解散ですが、何か言いたい人が多そうだよねーえ? 無視しても良いんだけど、また依頼する可能性もあるし~ぃ。質問タイムって事で」
「あの! 薬に関する知識を教えていただけませんか? 姉が薬漬けにされて!」
「こちらからはそこのアンデッドに関してだな。納得のいく説明を貰いたい」
この機会を逃すとキカケの無いニニャが焦るように手を挙げる。
イビルアイもデイバーノックに関して質問するが、あまりにも切迫したニニャの表情に、一応尋ねておくというスタンスで留めておいた。実際、アンデッドである彼女としては他のアンデッドなど特に気にするほどの事ではない。あくまで蒼の薔薇を代表して尋ねたに過ぎないのだ。
その二つ以外に議題はなさそうだったので、順番に応えていく。
「法国は薬の技術が凄いんですよね? 王国でも一番のバレアレ家の人が言ってました。だから……」
「まーそりゃそうなんだけどさ~。薬を抜くのってツライよ? ぶっちゃけ面倒なんだけど」
「受けてやれ疾風走破。この後の話に参加する理由に成る。悪くない取引だ」
ニニャがあらましを説明するが、それを聞いただけでクレマンティーヌは嫌そうな顔をする。
法国では薬物作成の技術が王国よりも上であるが、それだけに面倒事が多いと判っているからだ。渋い顔をする彼女に対して援護射撃を放って来たのは、意外にも神領縛鎖である。事前にラズロックの話を聞いていた事、その実力と人格を知った上で、計画の意義を聞かされたこともあり、ここは受けるべき状況だと判断したのである。
ある意味で四人目の協力的な漆黒聖典になったと言えるし、ラズロックを何とか出来る可能性を唯一もっていた彼が『投げた』ということは、他の誰にも対処できないことを意味するとも言えた。
「んじゃ、まず何が面倒くさいかって説明からね」
「短期的な薬は呪文で抜けるけど、長期的な薬は無理なの」
「だから生活させる過程で徐々に抜かなきゃいけないんだけど……これが実に面倒なのよね」
「まーお姉さんって事だし妹ちゃんには頑張ってもらうとして……。こっから重要なのは薬は一種類に見えて複数混ざってる場合が多いって事と、抜く過程で禁断症状が起きる事だね。禁断症状ってばツライんだよ? いきなり錯乱しはじめっからね」
クレマンティーヌは腕から順番に顔まで指を滑らせていった。
剛力を与える為の薬に見えるが、実際には体全体を強化している事、そのために体力全体をタフネスにしている事、それに見合う神経加速をさせて、最後に精神を興奮させて意識加速もさせているという事だ。要するに心臓を強化する血流強化に、欠陥を太くして破裂しない様にする保護。肺を強化して一度に取り込める酸素を増やし、同時に血を全身に巡らせるのだ。そして精神にも大きな影響を与えて、心身共に強くしているという訳だ。
もちろんこんな薬に副作用がない筈もなく、同時に依存症も発症するのが厄介であった。あえていうならば……この時代、むしろ副作用は体の一部を諦めれば良いので、依存症の方が厳しいまであった。
「依存症……ですか?」
「うん。何が問題かと言うと、クスリが切れかけるといつ錯乱してもおかしくはないわけ。凶暴化して殴り掛かるならまだ大人しいかなあ。酷いのに成ると自分の舌を噛み千切ったりね。これって縛り付けるだけじゃ駄目なんだよねえー布でも噛ませとけばなんとかなるけど、何時まで? そんで食事はどうすんの?」
真摯な顔をするニニャにクレマンティーヌは笑顔で答えた。
だが、その視線は動かない。何かを期待している様であり、何かに諦観しているようでもある。無理もない、その間、誰が押さえつけるのか? ずっと傍に誰かがいるとして……その誰かの生活の保障は、いったい誰がするのか?
今回の場合、ニニャがソレにあたるのだろう。
問題は、ずっと傍に居てニニャ自身の生活はどうするのか? ニニャがやりたいことは姉探しと復讐だからまだマシだが、少なくとも生活していくための糧は必要であろう。
「質問なのであるが、毒は無理にしても平静を齎す呪文はいかがか?」
「そりゃよかった。そん時は収まるよお? でもね、これの厄介なのは、次の周期が来るとまたブリ返すこと。だって体が薬がある状態に慣れっこになっちゃってるからねえ。使ってれば使ってるほどに依存症は強いし、周期が来るのが早いんだよね。もちろん段々と長くは成っていくけど……あんた、その間、この姉妹の事情に顔突っ込むの? 何様の分際で? あ、プロポーズでもしちゃう? なら好都合な言い訳だよねえ? 結婚しちゃえば?」
思わず口を挟んだダインの言葉にクレマンティーヌは苦笑を向けた。
複数人で当たるならばともかく、信仰系マジクキャスター一人で済む話ではないのである。熱烈な信奉者が婚約者として名乗りを上げるならともかく、そうでなければ余計なおせっかいであろう。事実……法国では才能がある娘がそうなってしまった場合、有望な夫の妾として嫁がせてしまうのだ。
それは一つの有望な解決策ではあるが、法国の方針を嫌っているからこそ、クレマンティーヌはあえて下世話な口調で否定する。
「疾風走破。取引に応じるなら人を貸す、それ以上でもそれ以下でもなかろう」
「そりゃま、そうなんだけどさ……でも、こいつら程度要るの? 私が、じゃなくて国が?」
無理に話を拗らせるなと言う神領縛鎖の忠告にクレマンティーヌは嫌そうな顔をした。
享楽主義で破滅主義であった彼女としては、ここで心底納得がいく答えをもらえるならば、あえて付き添っても良いと思ってすらいた。別に王国の神殿務めをずっと続けても良いのだ。延々と術を使って神聖呪文を鍛えつつ、パートタイムで暗殺とか悪くない生活だと言えた。少なくとも竜王国で亜人の強者を百人くらい狩ってこいと送り出された、陽光聖典の連中よりはマシだろう。
もちろん、そんな都合の良い未来などは存在しない。
美しい回答が得られ、彼女のこれまでの人生や、死んだ友人たちの人生が報われるような真実など存在しないのだ。そこにあるのは、妥協と政治取引の産物でしかない。
「ある。脱線する疾風走破の代わりに応えるが、呪文の使える複数の神官が居る神殿で静養させても良い。それだけの価値をラズロック先生の『計画』には感じた。そこのアンデッドも、この件には関わっているぞ」
「けいかくぅ? そんな都合の良いもんがぁ?」
「あのアンデッドも関わっているだと?」
神領縛鎖の言葉にクレマンティーヌとイビルアイは胡散臭そうだと返した。
とはいえ二人では意味が異なる。クレマンティーヌはラズロックにそれだけの能力と知識がある事を知っているが、その他の漆黒聖典がいきなり掌を返すような計画など聞いたことも無かった。イビルアイに至っては、どんな計画であろうとも胡散臭いと思う疑心暗鬼な所を法国に感じているし、そこにアンデッドが関わってくると聞かされれば首を傾げる以外の反応はありえまい。
ただ、そこの基準が存在する。
複数の神官、それも精神を平静に保てるサニティの使い手を複数添えているような場所に招待できるような……それだけ神官を拘束するような計画である必要があるという事である。
「師匠。そのような計画が? そもそも、そのアンデッドは一体……」
「まずは彼の紹介から始めようか。彼は六腕のアンデッドの身代わりとして雇われた、知性のあるアンデッドだ。アンデッドは執着心に寄って行動が固定されているそうだが、彼の場合は呪文に対する知識欲だな。教えている限りは、我々に雇われてくれる」
「どうも。偽デイバーノックです。これからは私がデイバーノックになるのでしょうか?」
ラズロックは平然と嘘を吐いた。
丁度、ズーラーノーンのナイトリッチがデイバーノックに罪を押し付けるために、自分でデイバーノックを名乗ったのである。ならば本物が偽者を名乗って悪い道理はないと考えたのだ。ちなみに話の筋から察しただけで、彼が本物で偽者ではないと言う事は神領縛鎖も聞いてはいない。その場ででっち上げた嘘である。
そしてデイバーノックはアンデッドゆえの精神的な抑制で耐えきった。人間が聞いたらどう考えても噴飯物な騙りを、そのまま受け入れて平然と頷いたのである。
「六腕の偽者……いえ、それでもアンデッドだと思うのですが……」
「いや。確かに執着が強いアンデッドはその傾向にある。まあ、監視を付けるべきだが」
これに対してニニャは戸惑いを隠せず、むしろイビルアイが積極性を見せた。
何しろイビルアイの正体は亡国の姫……でもあるが、伝説級の吸血鬼なのだ。その伝説が間違っていたというか、アンデッドにされやただの被害者なのだが、今はそこまでにしておこう。
重要なのはここからである。
「さて、計画の本質を話すとしよう。用意するのは訓練所だよ」
「塔を建設し、一階層ごとを区切って戦力指数を少しずつ上げていく」
「試験的な段階なので、まずは五階層かな? 最上階に彼の研究室を作る」
「実質的にはその下、四階層目が最後の戦いに成るだろうか? エルダーリッチが擁する戦力を、段階的に配置していく事に成る。冒険者で言えば楽に突破できるならばミスリル級だな」
ラズロックの世界にある『塔』をスケールダウンして実装するという形になる。
たかが知れる存在ではあるが、この世界でミスリル級と言うのは強者である。いや、シルバー級ですら若い段階で到達できるならば十分に強いとされるのだ。ミスリル級に意図して成れるのであれば、その価値は計りしれまい。その意味で、エルダーリッチというのは判り易い障壁足り得た。
その計画性自体の意味は分かるし、実現可能であれば有用どころではあるまい。だが、幾つもの疑問が生じるのだ。
「ええと人口のダンジョンと言う事でしょうか? しかしどうして塔なのでしょう?」
「そうだな。判り易い疑問として、どうして地下道ではならんのだ?」
「それについては魔力を集め易く、失われ易い構造だからね。地下道は逆に魔力を集めるのが難しく、特定の地形に頼ることに成る。そして何より、蓄積し易いから暴走したら大ごとだよ。君たちだってアンデッドの災禍は見ただろう? まあ理由はもう一つあるがね」
ニニャとイビルアイの質問にラズロックは端的に答える。
ダンジョンを引き合いに出せば理解は出来るのだ。便利だし過去の英雄たちがダンジョンと呼んでいるから総称しているだけで、地下道でも呪いの森でも建物でもダンジョンと呼ぶだけの事。だが、どうして塔にこだわるのかが分からないのだ。
だが、その半分がアンデッドの災禍を例に出されると氷解する。
死者は死者を呼び、アンデッドと成り易い土壌が形成され、そしてアンデッドは強いアンデッドを呼ぶ傾向にある。それはこの世界では常識であり、例としてとても判り易かった。地下道は一つらなりであるし、確かにアンデッドの力が集積しそうだ。その点、塔は一階層ごとなので切り分けられていると言えた。
「「もう一つ?」」
「塔は構造物だからね。塔の形をしたゴーレムを作り、アンデッドを材料として組み込み、ゴーレムの復元性に頼って塔の復元もやってしまうのさ」
ゴーレムを作成する魔法は『形状を固定する』物とも言えた。
泥のゴーレムはともかく、石のゴーレムはどうして関節がないのに動くのか? それは単純に『形状の範囲内』で動いているからに過ぎない。実際には関節部分が壊れているのか、それとも液体の様に石が流動しているのか分からない。だが、そう言われると何となく納得は出来る。だが、沈黙の理由はそこではない。
ただ、その疑問に回答できる者が居なかった。
何故ならば、この世界ではゴーレム作成魔法は失われて久しいからだ。つまり、ラズロックはゴーレム作成魔法と言う、膨大な魔力を使う呪文を知っているという事であろう。確かに、その事を知るだけでも、法国が取引する価値はあると伺えたのであった。
「師匠……ゴーレム作れたんですね」
「弟子が居ると移動目標を用意できると便利だからね。それと魔力の管理もし易い」
ニニャの質問にラズロックはこともなげに答える。
この世界で廃れた理由はレベルの問題もあるが……膨大な魔力を使う割に弱いからだ。そんな魔術系統を覚えるならばもっと良い術派は幾らでもある。あのナザリックだって、系統が被る者は沢山いたのに、ゴーレムクラフターは問題児一人だけだったという時点でお察しであろう。
こうして王都での出来事は終わった。
八本指がどうなるかは別にして、ラズロックとニニャの今後は動き出す。
と言う訳で王都編が終わります。
八本指は終わりましたが、リ・エスティーゼ貴族さんたちの命運はあとちょっとだけ続くんじゃよ。
●この世界の強者の不思議
努力するのはブレインまでで、不思議とそこから上は努力をしません。
この場合は訓練をするとかじゃなくて、「相手は自分以上」だと考えて、戦術を磨かないのですよね。
要するに、自分のコンボ表を作ったら、それを磨くことはあっても、対人メタとかは張らない。
なんでかと言うと、生存競争の世界で、適度な相手は法国が倒しているし、英雄級の集団が居たら、大抵は脳筋になるでしょう。クレマンティーヌの「マジックキャスターなんて、さっといってドス」なんかが良い例です。
●ラズロックが真面目に戦ったら?
疾走系の魔法で1km離れて暗黒竜を連射しますので、漆黒聖典では勝てません。
視界内を全面薙ぎ払う呪文な上、探知が高いのでい天上天下も神領縛鎖さんも見つかります。
逆に絶対に勝てないのが接近戦で、まあ戦法の差もありますし、絶死絶命さんや隊長にはころされそうです。
その上で、何をやっても勝てないのがツァーですね。動く鎧に関して、ディスペルが通じるならワンチャンくらい。古竜の竜王には勝てんって。
●ニニャのお姉さんが生きている理由
八本指が戦闘薬というか、超人薬を作ろうとしていた一環ですね。
あと、娼婦の数が減ったし、アンデッドから逃げてる村人は他所の国に奴隷として送るので、タマ数が無いからです。
なので生きては居るですが、他の娼婦と同じく薬漬けです。
正気があるのかないのか、あるならチャームパーソン掛けたら後で覚えてるわけだし、無いならパラライズでも良いくらいですが、多分戻って来れない感じ。まあ法国だとそういう人も元漆黒聖典のお妾さんにすれば良いのでエコ(意味深)ですけどね。
●偽デイバーノックさん
彼は以後、偽物として生きていきます。アンデッドなので死んでますが。
●塔であって地下ではない理由
でっちあげですが、魔力の巡りを理論に入れて、正体がゴーレムだとすると納得がいきます。
何度でも同じ階に行くと、同じ敵が居ますからね。そいつら全部、塔型ゴーレムのオブジェクトだと思えば理解はできます。
その上で、ラズロックさんならゴーレムは作れるでしょう。
仮に500MPを一般人分割して消費するとして、ラズロックさんなら一発。
弟子がホーミング呪文を使って練習する役にも立つし、何なら暴走して弟子に無理エッチしなくて済むくらいです。