Before Days -case of DGP-   作:瑠和

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昨日投稿する予定すっかり忘れてました。
クリスマスには……人が……?


信条Ⅰ:願いの先

「おお、るなりんすごいねぇ!」

 

「はい………あれなら……」

 

せつ菜は愛に連れられビルの上で瑠和たちの戦いを見ていた。歩夢と侑はどこか他人事のような雰囲気で目下の戦闘を見ている。

 

まだ嵐珠が消えたショックは大きいようで、戦線復帰できないのだ。

 

そんな二人の背中を心配そうに眺めていると、せつ菜は唐突にかなりの量の血を吐血した。しかし、それらを三人には決して悟られぬように必死に声と音を押さえる。

 

(…………さっきの一撃……相当強力だったみたいですね………)

 

せつ菜はとうに限界を向かえていた。いまにも意識が飛びそうなのを必死にやせ我慢して堪えている。

 

身体のダメージだけではない。せつ菜のIDコアには既に小さなヒビが入っている。

 

(お願い…あと少しだけ……)

 

今苦しめばまた二人に気を使わせてしまう。嵐珠が退場したばかりでまだ立ち直れていない二人を心配してせつ菜は必死に声を押し殺しながら座っていた。

 

そしてそれから少しして、瑠和がボスジャマトを追い詰め、決着まであと少しとなった。

 

「いっけー!!るなりーん!!!!」

 

愛が盛り上がっているのを見たせつ菜は瑠和が相手を押しているんだろうと察する。もう視界もかすんできて状況がわからなかったのだ。

 

(…………ああ…でも、ちょっとだけ、理想には近づけたのかなぁ……)

 

まるで走馬灯のように自分の人生を振り返る。何をやっても要領が悪く、ミスばかりしてきた。人の期待を裏切る結果ばかりで、そんな自分がきらいだった。小さいころは世界を守るヒーローに憧れ、そしていまヒーローになるチャンスがあった。

 

(世界は守れなかったけれど……最近できた友達の…大切な別れの時間くらいは守ることができた…………ねぇ侑さん……歩夢さん…私、少しは役に立ちましたかね…?)

 

身体を起こしているのも難しくなり、せつ菜はだんだん前かがみになっていく。頬が地面に着くころにはIDコアのヒビもほとんど全体に広がりきり、上目で侑と歩夢の方を見ながらせつ菜は嵐珠の最後の言葉を思い出す。

 

(ねぇ…………もし、生まれかわってまた会えたら…嵐珠と友達になってくれる?)

 

(生まれ変わったら………か………もし、生まれかわることがあったら……………………せっかくなら…生真面目で………なんでもできそうな……生徒会長に……なんて)

 

『mission failed』

 

未来に想いを馳せながら、せつ菜は人知れず消滅した。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

休憩所のテーブルの上には嵐珠とせつ菜が使ったモンスターバックルが置かれていた。

 

「せつ菜ちゃん、普通に歩けてたんだ………ダメージは大きいけど…まだ大丈夫って思ってたのに……」

 

「…………きっと、愛さんたちのこと気遣ってくれたんだよ。心配させないために、苦しいの、痛いの必死に我慢して……黙って…消えた」

 

「…」

 

なんとかボスを倒したというのに、休憩所の空気はひどいものだった。せっかく仲良くなった友人を二人も一気に失ったのだ。無理はない。

 

「それがこの戦いってことでしょう?結局のところ生き残るのは一人なんだから。仲良しこよしでやっていけるほど甘いものじゃないってこと」

 

果林が言った。その場にいた大体の人間が果林の言う通りだと思ったが、侑は違った。

 

「それは…………違います」

 

「……何が?」

 

「私たちは、同じ仮面ライダーじゃないですか!今回だって、みんなの協力があったからあのボスを倒せたんです!果林さんだって手伝ってくれたじゃないですか!私たちは、ライバルかもしれないですけど……仲間……仲間でライバルなんです!!」

 

「…………今日はもう帰らせてもらうわね。仕事もあるから」

 

果林は去っていった。果林が帰っていったのを皮切りに一人、また一人と去っていく。最後に瑠和、璃奈、しずく、侑、歩夢が残る。

 

瑠和は一つだけ気になったことを侑たちに尋ねた。

 

「………侑ちゃん、歩夢ちゃん。二人は今後どうするんだ?まだ、デザグラを続けるのか?」

 

目の前で人が死ぬところを見たのだ。年頃の女の子がそんなショッキングな光景を見て今後続けるのは難しいだろう。

 

「……続けます」

 

少し悩んだ様子、しかも冷や汗のようなものをかきながらではあるが侑はデザグラを続ける決心をしていた。

 

「…どうして?」

 

「私が今ここでやめたら、嵐珠さんが私を庇った意味も、せつ菜ちゃんが頑張った意味もなくなっちゃいますから」

 

「私も……同じです」

 

「…わかった」

 

「あの、天王寺さん。よかったらこれ、使いませんか?」

 

侑はモンスターバックルを差し出す。

 

「大丈夫。それは君が持ってるといい」

 

瑠和たちも帰っていった。そうは言われたが、侑はそれを持っている気にはなれなかった。

 

 

 

―夕方―

 

 

 

「お疲れさまでしたー」

 

こちらはモデルの仕事を終わらせた果林。帰ろうと思ったが、自身の化粧ポーチがカバンに入っていないことに気づく。

 

「あ……いけない、忘れ物しちゃった」

 

果林は休憩所に化粧ポーチを置きっぱなしだったことに気づく。仕方なくドライバーを装着して休憩所に向かった。

 

「あったあった」

 

休憩所の更衣室には果林の化粧ポーチが置きっぱなしだった。朝から休憩所にいたために忘れてしまったのだ。

 

「……これって」

 

帰ろうとしたとき、侑に割り振られた机に何かが乗っているのが見えた。

 

 

 

―休憩所 廊下―

 

 

 

「さて、帰りましょ」

 

休憩所を出て帰ろうとしたとき廊下の先で誰かが話しているのが聞こえた。果林はなんとなく身を隠す。

 

「順調みたいね」

 

「…………はい」

 

(あれって………コンシュルジュのイマシさんと……栞子ちゃん?)

 

廊下で話していたのはイマシと栞子だった。

 

「あそこで一つ果実を取り逃したのもよかったわね。おかげで二人脱落した」

 

「………………………はい」

 

「でも、あんまり数が減らないのも問題ね。ファームの方からクレームが来る」

 

「ですが……」

 

「ま、うまくやりなさい」

 

「はい…」

 

イマシは栞子の肩を叩いて指を鳴らす。指を鳴らしたと同時にイマシはどこかへ転移した。

 

「………」

 

「今の話……どういうことかしら」

 

イマシがいなくなったタイミングで果林は栞子に話しかけた。栞子はこれまで見たことがないような慌てた表情で振り返る。

 

「あら、あなたのそんな顔、初めて見たわ」

 

「…変身」

 

『ニンジャ!』

 

栞子はすぐにニンジャフォームに変身し、果林に襲い掛かった。

 

「ちょちょちょ!」

 

『アームド・クロー』

 

果林もすぐに変身し、栞子が振りかぶったニンジャデュアラーをレイズクローで防ぐ。

 

「お、落ち着いて…」

 

「はぁ!!」

 

栞子はレイズクローを弾き、果林を切り裂いた。果林は廊下を転がる。

 

「申し訳ありませんが、スタッフ権限であなたを退場させます」

 

「……冗談じゃ…ないわよ!!」

 

こんなところで終わるわけにはいかないと、果林は立ち上がって反撃する。しかし、果林が突き刺したレイズクローには丸太が刺さっただけだった。

 

「え」

 

「はっ!」

 

背後からポンッという音と共に栞子が現れ、果林を蹴り飛ばした。

 

「あぐっ!」

 

栞子はニンジャデュアラーを構え、果林に迫る。

 

「このっ!」

 

果林はとっさに自分のバッグを栞子に投げた。栞子はバックを弾いたが、その隙に果林は一気に逃げていった。

 

「………」

 

果林は急いで廊下を駆けるが、背後から何やらモーターのような音が聞こえてきた。なんの音かと思い振り返ると、下半身にブーストを装備した栞子が迫ってきていた。

 

「嘘ぉ!?」

 

「はぁ!!」

 

果林は再び蹴り飛ばされ、休憩所のラウンジに突っ込んでいった。階段を転がり落ち、変身が強制解除される。

 

「痛ぅ……」

 

痛みを耐えながら果林はよろよろと立ち上がり、何とか栞子から逃れようとする。

 

「安心してください。これからあなたはIDコアを破壊されて脱落するだけ。嵐珠さんやせつ菜さんのようにこの世から退場するわけではないのでご安心を」

 

すぐに嵐珠に追いついた栞子は肩を掴んで振り向かせようとした。

 

「あまり……舐めないでよね!」

 

『モンスター!!』

 

果林は振り向きざまにモンスターバックルを装備して瞬時に変身する。そしてそのまま栞子の腹部に拳を叩き込んだ。

 

「っ!!」

 

まさか反撃されるとは思ってなかった栞子は拳をモロに食らい、バーカウンターまで吹っ飛んだ。そして頭を強く打ったのかそのまま気絶する。

 

栞子が気絶しているのを確認した果林は変身を解除した。

 

「………助かったわ、侑」

 

先ほど更衣室で侑の机にあったのはモンスターバックルだった。忘れたのか意図して置いておいたのか、わからない。誰かが盗むとも思えなかったが、あとでないと騒がれても面倒なので果林があずかろうと思って持っていたのだ。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

「う………」

 

しばらく経って栞子は目を覚ます。ぼーっとする頭で何があったか思い出そうとするがそれより先にソファに座る果林が目に入る。

 

「目が覚めた?」

 

「!?」

 

何があったか思い出し、すぐに動こうとしたが、自分の腕が椅子の足に縛り付けられていることに気づく。

 

「悪いけど縛らせてもらったわバックルも預かってる」

 

「…………そうですか」

 

栞子は観念したのか、顔を反らした。果林は栞子から預かったバックルの中から赤いバックルを持ち上げる。

 

「ブーストバックル…相変わらずすごい性能ね……ねぇ、さっきイマシさんと何を話していたの?」

 

「…………」

 

栞子は顔を反らしたまま黙っている。

 

「…………だんまりのつもり?まぁそれでもいいわ。でもね、私が気になってるのはイマシさんが言っていた「果実を一つ取り逃した」って話。あなたが果実をボスに奪われた話は聞いたけど………それってまさかわざと?」

 

「…………」

 

栞子はやはり何も言わない。

 

「これもだんまり?構わないけど………」

 

『ニンジャ!』

 

果林は栞子から預かっていたニンジャバックルで変身し、ニンジャデュアラーを栞子の首に近づける。

 

「あなたの行動で二人死んだ。あなたはそれを何も感じてないみたいだけど………私は結構不快よ?私だけじゃないでしょうね。あのお人好しの子達に話せばただじゃすまないとおもうけど…もしちゃんと話してくれれば………黙っておいてあげなくもないけど?」

 

「好きにしてください」

 

「それじゃ身もふたもないってものよ。取引といこうじゃない?」

 

果林は変身を解除して提案する。

 

「………何がお望みですか?」

 

「情報。あなたはいったい何?イマシさんとどういう関係?さっき言っていた「スタッフ」ってどういう意味かしら?」

 

このまま沈黙していても、あまりいいことがなさそうだと察した栞子はとうとう観念した。

 

「……………………そうですね。私は……デザグラのスタッフです。このゲームを円滑に進めるための調整役…といったところでしょうか」

 

「つまり、正規の参加者ではない……っていうこと?」

 

「ええ。私の家系は大きいのでこのデザグラのスポンサーをやっています。私と…イマシ…あれは私の姉です。本名は三船薫子」

 

「ああ、ちょっと雰囲気似てるなって思ってたけど、やっぱりそうなのね」

 

「姉さんは数年前、夢のために家を飛び出し、挫折しました。父は姉を再び家に迎え入れる代わりに、デザグラのスタッフ…コンシュルジュとして働くことを命令しました」

 

「じゃあ、あなたはどうして?」

 

薫子がここでコンシュルジュをやっている理由はわかったし、納得のいく理由だったが、栞子までスタッフをやっている理由がわからなかった。

 

「私は、たまたまです。私がデザグラの参加者に選ばれたのが始まり。うまくゲームを進めれば願いも叶えてくれるそうです」

 

「ああ……」

 

偶然デザグラの参加者に選ばれてしまった栞子は自然と薫子と出会ってしまい、デザグラのスタッフにならざるを得なくなったのだ。

 

「あなたの願い………彼方から聞いたんだけど、誰もが適正に応じた世界…だっけ?それってもしかして………」

 

「………」

 

「これ以上は野暮ね。質問を変えましょう。ファームってなに?」

 

「私もよくは分からないのですが、どうやらジャマトを育てているところがあるらしく……そこと、デザグラの上部が繋がっているらしいのです」

 

「え………?これってジャマトから世界を救うゲームのはずじゃ…」

 

「少ししゃべりすぎよ、栞子」

 

「!!」

 

ラウンジの入り口にはいつの間にかイマシ、即ち薫子が立っていた。栞子は明らかに顔を青くするが、果林は逆に少し笑う。

 

「あら、聞かれちゃったかしら?三船薫子さん?」

 

「………まさかこんな時間にここに来る輩がいるとは思わなかったわ」

 

「ごめんなさいね。妹さん尋問させてもらっちゃって」

 

「…………聞いてどうするつもり?」

 

「さぁ?でも、これを参加者のみんなが聞いたら……どう思うかしらね?」

 

果林は妖しく微笑む。薫子は特に表情を変えずに端末を取り出した。

 

「………じゃあ、これで手打ちにしてもらえない?」

 

薫子は手元の端末を操作して。ミッションボックスを出現させてそれを果林に渡す。ミッションボックスを開くと中には大型のバックルが入っている。

 

「あら、素敵」

 

「これでここで聞いた話、他言無用でお願いできる?それから、これ以上デザグラについても嗅ぎまわらないで」

 

「………私はデザグラが何かなんて興味はないわ。ただ、知っておきたいのよ。私が、何のために命を使うのか」

 

「…そう」

 

果林はそれだけ伝えて帰っていった。薫子は栞子の縛られている手を外す。

 

「…………申し訳ありません。姉さん」

 

「気にしないで。あなたはあなたの仕事をすればいい。今日はもう帰りなさい」

 

「………はい」

 

栞子は浮かない顔で帰っていった。一人残された薫子は果林と栞子の戦闘で散らかった部屋を片付ける。

 

片付けていると、背後から足音がするのが聞こえた。

 

「お困りみたいですね」

 

振り替えるとそこには若い男性が立っていた。男性の顔を見ると薫子は明らかに嫌そうな顔をした。

 

「……アリナ、ここには来ないように言ったはずよ」

 

「固いこと言わないでください。お互いちょうど良い関係でいたいでしょう?でも、そんなことはどうでもよくて………困っているんですよね?何かお力になれること、ありますか?」

 

「何をするつもり?」

 

「まぁ、色々と」

 

アリナと呼ばれた男は怪しく笑った。

 

 

 

―数日後―

 

 

 

瑠和と璃奈はこの日、お台場のアクアシティで待ち合わせをしていた。

 

「瑠和さん!璃奈さん!」

 

待ち合わせ場所に嬉しそうに駆けてきたのはしずくだった。お互いに連絡先は交換してなかたものの、スパイダーフォンを利用すれば連絡が取れることにしずくが気づき、会いたいと言ってきたのだ。

 

「お、しずくちゃん。鎌倉住みなんだっけ?遠いところからご苦労様」

 

「いえ、こんなの全然へっちゃらです。瑠和さんこそ、すいません急なお話で」

 

「どうしたの?急に会いたいなんて」

 

「ええ、私がここまで生き残れたのもお二人のおかげです。だから今日はお礼がしたいなって………とは言ってもお二人に鎌倉まで来ていただくのも申し訳ありませんし!よろしかったらお台場を案内していただけませんか?今日のお支払いは、全額私が負担します!!」

 

瑠和と璃奈は顔を見合わせる。そういえばしずくはお嬢様だという話をしていた気がする。

 

「いや、いいよ。さすがに申し訳ないし」

 

「ですが…」

 

「じゃあ、お昼ごはんおごって。あとは、一緒に遊ぼう」

 

「え?いいんですか?お金はいくらでもありますから、遠慮なんて全然…」

 

「俺らの関係は金じゃない。行こうぜ!」

 

「え、ええ!?」

 

「レッツゴー」

 

瑠和はしずくの手を取って走っていく。昼までにはまだ時間があるので、まずはジョイポリスに行って遊び始める。

 

お嬢様だったしずくは絶叫系アトラクションなぞ初めてだったがかなり楽しんでいた。

 

それから三人は、映画を見たり、ショッピングをしたりして一日を満喫した。

 

両親が亡くなってから、毎日を生きていくのが必死だった二人にとっても久しぶりに笑顔を振りまいた時間だった。

 

夕方になり、次はどこに行こうかと考えていると三人の前にスーツを着てサングラスをした二人組が立ちはだかる。

 

「………なんだ、あんたら」

 

瑠和は璃奈を下がらせ、前に出る。しかしサングラスの二人は瑠和ではなくその後ろの人物に声をかける。

 

「お嬢様、お迎えに上がりました」

 

「お嬢様って……しずく?」

 

振り返ると、しずくはため息をついてサングラスの男に物申す。どうやらこの二人はしずくのガードマン的な人間らしい。

 

「………もう少しこのお二人と一緒にいたいのだけれど?」

 

「御当主が心配されますので」

 

それを聞くと少しの間しずくは男たちを睨んでいたが、小さなため息をついて瑠和と璃奈の前に立つ。

 

「…………璃奈さん、瑠和さん、今日はありがとうございました。申し訳ないですが…私はこれで」

 

「ああ、俺たちも楽しかったよ」

 

「また一緒に遊ぼう」

 

しずくは瑠和たちに別れを告げると、男たちとリムジンに乗って帰っていった。走り去っていくリムジンを見ながら二人は呆然としていた。

 

「本物のお嬢様なんだな……財閥って言うからそうなんだろうけど」

 

「うん…………すごかった」

 

さっきまで年端の変わらない友達感覚だったが、一気に遠い世界の住人に思えてしまった。

 

二人は帰る前に軽く浜辺でも散歩しようと海浜公園に来ていた。夕暮れの浜辺を歩いていると、前方に見覚えのある後姿が見えた。

 

「あれって……」

 

「彼方さん!」

 

前にいたのは彼方だった。瑠和と璃奈は彼方に駆け寄る。

 

「お?やぁやぁ天王寺兄妹。どうかしたのかい?」

 

「いや、たまたま見かけただけなんですが……」

 

「お姉ちゃん、その人達は?」

 

彼方の前から声がした。彼方の後姿に隠れて見えていなかったが、彼方は車いすの少女と一緒にいたのだ。車いすに座っているのは、この世のすべてを諦めたような、憎んでいるような冷たい眼をした少女。

 

(私、妹がいてね。遥ちゃんっていうんだけど……スクールアイドル目指してたんだけど……高校に上がった直後に事故にあっちゃってね。下半身不随になっちゃったんだ)

 

以前の彼方の話からしておそらく彼方の妹なことは間違いなのだろうが、温厚で人当たりのよい彼方の妹とは思えないほど恐怖を感じる少女だった。

 

「あ、ほら、最近彼方ちゃん新しいこと始めたって言ったでしょ?そのお友達」

 

「天王寺瑠和です」

 

「璃奈です」

 

二人が挨拶すると、彼方の妹も頭を下げた。

 

「………はじめまして。近江彼方の妹の近江遥です。姉がお世話になっています」

 

「今日はお散歩に来たんだ。ずっとお部屋にいたら気持ちまで暗くなっちゃうからねぇ。お休みの日くらい、外に出ないと」

 

彼方の言い方からして、どうやら遥は学校にも行っていないらしい。

 

「そうなんですか………あ、そうだ!一緒にアイスでも食べませんか?さっき福引で割引券当たったんです。ほら、最大四名まで割引対象なんで」

 

「お、いいねぇ。遥ちゃん、アイス食べる?」

 

「どっちでもいい」

 

彼方が訪ねたが遥はどちらでもいいという。彼方は少し困りながらも相伴にあずかることにした。

 

 

 

―アクアシティ―

 

 

 

アクアシティのベンチで瑠和と彼方、遥と璃奈で別れて座り、アイスを食べていた。

 

「なんかごめんねぇ。気を遣わせちゃって」

 

「お気になさらず…………あれが、遥ちゃん……ですか」

 

「うん、高校はいる前まではすっごく明るくて元気な子だったんだ。髪型もツインテールが似合う子でね。「高校入ったらスクールアイドルやるんだ~」って、入学もしてないのに歌とかダンスの練習してて…………だけど」

 

今の遥にはその面影はない。無気力で無関心で、抜け殻のような感じだ。

 

「あれでも明るくなった方なんだ。事故に合った当初はもっとひどかった。食事もとらない日もあって……」

 

瑠和は少し懐かしく感じた。両親が亡くなった後、璃奈もそんな感じだったからだ。両親が亡くなった当時、瑠和は高校生、璃奈は小学生だった。あまりにショックが大きかったのだろう。

 

「…………だから、彼方ちゃんは負けられない。遥ちゃんにもう一度、輝いてほしいから」

 

「…そうですか」

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

数日たって再び瑠和たちはデザイアグランプリに収集された。しかし、案内役のUはまだ来ていなかった。

 

「あれ、Uさんまだかな」

 

「まだ全員来てないからじゃないかな」

 

歩夢の言うとおり確かにまだ全員揃っていないようだ。そしてちょうど侑が回りを見ているときに果林が転移してきた。

 

「……あ、ちょうど良かった。ちょっと、侑ちゃん?」

 

つくやいなや侑を見つけた果林が話しかけてきた。そして果林は侑にモンスターバックルを渡した。

 

「あ………これ」

 

「忘れてたでしょう?気をつけなさい?」

 

侑は一応モンスターバックルを受け取るが、それを見つめて少し困った顔をする。

 

「…………正直、私が持っていていいのか、わからないんです。もともと嵐珠さんが持っていたものなのに…」

 

たまたまその場の流れで侑が持つことになったが、侑はそれを持ってていいのかわからなかった。だからこのメンバーの中で一番活躍していた瑠和に渡そうと思ったのだが、瑠和も断ったのでどうするべきか考えていたのだ。

 

「………ま、結果的にあなたのところに巡ってきたんならあなたの好きにしたらいいんじゃない?」

 

「……」

 

「あ、あの」

 

悩む侑のところにしずくがやってきた。

 

「あ、しずくちゃん」

 

「もしそのバックル使わないのであれば、私が使ってもいいですか?」

 

「え…?」

 

これまであまり好戦的でなかったしずくの申し出に侑は少し驚いていた。

 

「私、これ以上瑠和さんたちの足手まといになりたくないんです!だから……」

 

「………わかった。これはしずくちゃんに任せるよ」

 

しずくの申し出を侑は承諾した。しずくの想いに応えたというより早く手放したかったという気持ちがあったのかもしれない。

 

だがしずくはそんなのどっちでもよかった。瑠和の役に立ちたい、その思いが強かった。

 

そんなこんなで神殿で待っていると、まだ来てなかったメンバーも集まり、全員揃ったところでUが突如出現した。

 

「皆様、再びジャマトが出現しました。今回のゲームは、エンドレスジャマーボールゲームです!」

 

「エンドレス…?」

 

Uはモニターを出現させて説明を始めた。

 

「はい。今回は人間サイド、ジャマトサイドにそれぞれゴールが定められています。ステージ中央に出現するボールをそれぞれのゴールに入れて、得点を競うゲームです」

 

「まぁ、バスケかサッカーみたいなものか」

 

「基本的にはルールは無用。なんでもありですが、ジャマトは皆様方以上に発生しますのでご注意ください」

 

「なるほどな…」

 

「そして、今回のゲームは2試合行い、もしも負けた場合そのジャマーエリアの消滅と皆様の中からランダムに2名脱落となります。ご留意ください」

 

「え……?」

 

「なお、このゲームは人間サイドが勝利するか、全滅するまで何回でも繰り返しゲームが行われます。それでは皆様、がんばってください」

 

 

 

―ジャマーエリア―

 

 

 

説明が終わると、参加者たちはジャマーエリアに送られた。空を見ると、ゲームが始まるまでのカウントと得点板が表示されていた。

 

「開始まであと5分………作戦でも立てとく?」

 

「そうだね。今回は一応チーム戦だし」

 

「あの~」

 

作戦を立てようかと話していると、しずくが恐る恐る手を上げる。

 

「すいません。私、球技が苦手で……」

 

さっきの足を引っ張りたくないという想いはどこへやら、しずくはかなり落ち込んでいた。というのも、本人が言う通り、しずくは超が付くほど球技が苦手なのだ。

 

「……だったらしずくちゃんはゴール前でキーパーをやれば良いんじゃない?」

 

侑が全体を見ながら提案をする。

 

それから侑が各々のポジションを決める形になり、話し合いが進む。

 

「機動力のある栞子ちゃんと彼方さん、瑠和さんも前に出るでいいかな?」

 

「構いません」

 

「任せろぜ~」

 

「…」

 

「瑠和さん?」

 

「え、ああ!ごめん、なんだ?」

 

瑠和はどこか上の空で、侑の話を聞いていなかったらしい。

 

「大丈夫?」

 

「…ああ」

 

そうは言うが、瑠和の様子は明らかにおかしかった。そんな瑠和のことを璃奈は心配そうに見ていた。

 

 

 

―数日前―

 

 

 

デザグラ2回戦が終わって2日が経った日の朝。瑠和は仕事にいく準備をしていた。

 

『世界的に有名な中国のスター。鐘嵐珠さんが2日前から行方不明で…』

 

「…」

 

鐘嵐珠の行方不明ニュースを聞いた瑠和の動きが止まった。鐘嵐珠はデザグラで敗退し、遺体も残らず消えた。その事を知るのはほんの十数人だけだ。

 

「嵐珠…」

 

得も言えぬ気分のまま瑠和は仕事に向かう。

 

今日は出張で少し遠くまで行かなければならない。電車に乗って移動し、用事がある施設まで向かっている道中、なにやらビラを配っている人が見えた。

 

いるのは夫婦らしき男女と数人の大学生らしい若者だ。

 

「お願いします!」

 

「見かけていませんか!?」

 

瑠和もビラをなんとなく受け取ると、そのビラは行方不明になった女子校生を探しているものだった。探している人物の名前は、「優木せつ菜」。

 

「まさか……」

 

瑠和は必死の表情でビラを配っている夫婦を見る。母親の方にせつ菜の面影が見えた。

 

「………」

 

 

 

―現在―

 

 

 

(みんな………自分の願いのために…必死で戦っている…。だけど死んだら何も残らない…)

 

瑠和は悩んでいた。

 

願いを持った人間が死に、何の願いも持たない自分が生き残っていることに。隣で作戦会議をしている彼方もそうだ。

 

妹のために戦っている彼方。

 

もし彼方が生き残れなければ、遥はあの暗く、すべてを諦めたまま人生を終えるだろう。

 

(……俺は、どうするのが正解なんだ?)

 

瑠和が悩んでいるうちにサッカーで言うところフォワードが瑠和、栞子、彼方。ミッドフィルダーがミア、侑、歩夢、愛。ディフェンダーが果林、しずく、エマ、璃奈、かすみという形になった。

 

試合開始まであと1分。フォワードとミッドフィルダーチームはボールを取りに行くために中央へ向かうことになった。

 

「じゃあみんな、行こう」

 

「………ああ」

 

「「「変身」」」

 

『Ready fight』

 

 

 

続く




現在の仮面ライダー

天王寺瑠和 職業:公務員
モチーフ・猫/仮面ライダーギャーゴ
願い・未定
所持バックル・ウォーター・レアバックル・コマンド

天王寺璃奈 職業:高校生
モチーフ・猫/仮面ライダーリーニャ
願い・???
所持バックル・マグナム

朝香果林 職業:モデル
モチーフ・狐/仮面ライダーキュービー
願い・???
所持バックル・クロー

近江彼方 職業:弁当屋
モチーフ・羊/仮面ライダーランビー
願い・遥ちゃんがスクールアイドルができている世界
所持バックル・シノビ

宮下愛 職業:デザイナー
モチーフ・豹/仮面ライダークーガー
願い・???
所持バックル・フィーバースロット

中須かすみ 職業:高校生
モチーフ・狸/仮面ライダーラグーン
願い・???
所持バックル・シールド

桜坂しずく 職業:高校生
モチーフ・くま/仮面ライダーマック
願い・???
所持バックル・アロー・モンスター

鐘嵐珠 退場

ミア・テイラー 職業:作曲家
モチーフ・ウサギ/仮面ライダーリープ
願い・???
所持バックル・ゾンビ

エマ・ヴェルデ 職業:農家
モチーフ・山羊/仮面ライダーライズ
願い・???
所持バックル・ドリル

優木せつ菜 退場

高咲侑 職業:大学生
モチーフ・鹿/仮面ライダーシーカー
願い・???
所持バックル・パワードビルダー・ギガントコンテナ・レアバックル

上原歩夢 職業:大学生
モチーフ・蛇/仮面ライダーサスケ
願い・???
所持バックル・チェーンアレイ

三船栞子 職業:高校生
モチーフ・サーベルタイガー/仮面ライダースミロ
願い・誰もが適正に応じた人生をおくれる世界
所持バックル・ニンジャ
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