Before Days -case of DGP-   作:瑠和

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キャラカフェのアニマルメイド…もっとはやく出してほしかった。最近絵しか書けてませんが次の話がようやく書けました。今回少しだけアダルティです。


信条Ⅲ:自分にできること

瑠和はすこしだけ思い悩みながら更衣室から出てきた。

 

「………」

 

「さっきはありがとうね」

 

更衣室の近くには果林がいた。瑠和は少しだけ怪訝な顔をする。

 

「…俺を使って、栞子ちゃんの本音を聞き出したってことですか?」

 

「ご名答。案外賢いのね」

 

「…あなたの表情が、とても挑発的な色だったので」

 

「…ふふ、なるほど。色………ね」

 

果林は瑠和に近づいてきた。瑠和は一体なんだと思いながら少し警戒する。

 

瑠和の目の前まできたとき果林は瑠和の顎をクイッと持ち上げ、顔を一気近づける。

 

「な……なにを」

 

「その赤橙色の眼………あなた人の表情に色が見えるんでしょう?」

 

「………ええ」

 

瑠和の瞳は赤みがかったオレンジ。いわゆる赤橙色の眼をしていた。その瞳の色を持った人間は、他人の表情に色を覚え、感情を読み取れる共感覚を備えていることが多い。

 

果林は瑠和を見たときからそうなのではと思っていた。

 

だから栞子の本音を聞き出せると思って口止めされていたことを話したのだ。

 

「だから頼んだのよ。私は。ごめんなさいね。利用したみたいになっちゃって」

 

「………あなたの願いはなんですか?」

 

「え?」

 

「あなたからは本心が見えない。理想に向けての熱意も……一体なんのために、なぜデザイアグランプリにいるんですか?」

 

果林は瑠和の眼を見る。さっき自分で言ったように瑠和に嘘をついても見破られる可能性が高い。

 

それに瑠和は先ほど「みんなのために戦う」と言っていた。うまく利用できるかもしれないと果林は考え、素直に答えることにした。

 

「………私はね、弱くなりたいの」

 

「…はい?」

 

よくわからない願いだった。強くなりたいというのであればわからないでもないが、弱くなりたいとはどういうことだと思う。

 

「私、結構なんでもできるの。勉強もスポーツも…。だけど、それじゃ競える相手が一人もいなかった。いつだって私がトップ。だから、弱点だらけで親しみやすくて、最高のライバルと…いつも競ってられるような。そんな存在になりたいの。せつ菜とは真逆の願いね……」

 

「…」

 

せつ菜とは真逆で、嵐珠とは似て非なる願いだった。

 

果林はライバルを求めていた。だが、これまで果林にとってライバルと呼べる存在はできなかった。だからこそ、自分自身が弱くなることで他の人間と「競いあう」ために弱くなりたかったのだ。

 

「そうだ、もしよかったらこれ使ってください」

 

瑠和はレアバックルを差し出した。一回のデザグラででるかどうかのレア物を惜しげもなく差し出したことに果林は驚く。

 

「……いいの?」

 

「今回のゲームはチーム戦です。戦闘センスも持ってる朝香さんが持ってるのが一番いいかと」

 

どうやら素直に腹を割ったおかげか、瑠和の信用を勝ち取れたようだと果林は思った。

 

「それに…」

 

「?」

 

「これで栞子ちゃんのこと、できたら助けてやってくれませんか?」

 

「どういう意味?」

 

「朝香さんはなんというか、人の本質を見抜くことができるじゃないですか栞子ちゃんのことも、俺のことも」

 

「…」

 

「栞子ちゃんはきっとそうされることを願ってる。あなたなら…」

 

「ま、ありがたく受け取っておくとするわね」

 

果林はレアバックルを受け取った。だがそれでどうするとは言わなかった。

 

瑠和は果林のことを信じてあえてなにも言わずにラウンジに戻る。

 

「あ、お兄ちゃんおかえり」

 

ラウンジではまだフォーメーションについて話し合っていた。

 

「ああ。フォーメーションはどうだ?」

 

瑠和が尋ねるとソファで横になっていた彼方が答える。

 

「とりあえず、ボスが出現するフォワードに果林ちゃんを追加、愛ちゃんは運動神経がいいから基本ミッドフィルダーだけど自由に動ける役割って感じかなぁ」

 

「なるほど…」

 

「それから!今日はチームワークアップのためにみんなで合宿しようって話になってるんです!どうですか!?」

 

かすみが提案した。

 

「いいんじゃないか?一応部屋もあるみたいだし…」

 

「いえいえ!ラウンジを使ってみんなで泊まります!大丈夫ですよね!イマシさん!」

 

バーカウンターでドリンクを作っていたイマシは一旦手を止めた。

 

「ええ。次の試合は明日ですので。問題はありません。ただ…瑠和さまに関しては別のお部屋で寝ていただくことになってしまいますが…」

 

「まぁ、仕方ないでしょ」

 

瑠和は横目でイマシを見る。恐らく合宿など勝手にやっていろと思っているだろうが、瑠和を別部屋にしたいのは妹がいるからだろうと瑠和は推測した。

 

(三船薫子……か)

 

言われてみれば確かに栞子と雰囲気が似ている。栞子に比べて表情が豊かだが、確かに似ているぶぶんもある。

 

「戻ったわ」

 

「すいません。急用がありまして」

 

それから、果林と栞子が戻ってきてフォーメーションの確認をした。

 

それから全員でシュミレーションルームへ移動し、チームごとに連携の取り方等の練習を開始した。

 

「じゃーミッドフィルダーチーム!いっくよー!」

 

最初に練習を始めたのは愛の率いるミッドフィルダーチーム。出現させた仮想ジャマト相手にボールを取られないようにパスを回していく。

 

「あっちはあっちで始めたみたいね。じゃあ、こっちも始めましょうか」

 

こちらはフォワードとディフェンダーチーム。フォワードは敵を突破してゴールする力を、ディフェンダーはゴールを守る力を高めるためにお互い戦いあうことにした。

 

「行くわよ!!」

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

トレーニングは滞りなく終わり、夕食の時間になった。夕食を作ったのは歩夢、彼方、愛の三人だった。

 

「はい、お待ちどうさま!愛さん特製もんじゃ焼き!おあがりよ!!」

 

「「おぉ~!」」

 

宮下愛は関西出身というわけではないが、もんじゃやお好み焼きを作るのが得意ということでそれを作った。瑠和はさっそく口に運んでみる。

 

「ん、うまいな。しかも本格的だ」

 

「うん、愛さんち昔はおばあちゃんがやってた鉄板焼きお店だったからねぇ」

 

「へぇ、今はやってないの?」

 

「うん……少し前になくなっちゃって……。愛さんも学生の時はお手伝いしてたんだけどねぇ」

 

愛も今はデザイナーという自分のやりたい職に就いている。両親が継いだわけでもない店をそれ以上経営するのは難しかったのだろう。

 

「じゃあ愛ちゃんの理想の世界って……もしかしておばあちゃんのお店が続いている世界?」

 

「え?あはは!それでもよかったけど……愛さん別の理想があるから。まぁ、もうちょっと仲良くなったら教えてあげる!はい、お肉もあるよ!」

 

ごまかされたが、愛には愛なりに望む世界があるらしい。

 

「はい、おやさいもお食べ~」

 

瑠和と璃奈が愛から肉を受け取って食べていると彼方が大皿に乗った野菜炒めをもってきた。

 

「ありがとうございます」

 

それぞれが準備したのはどれも庶民的なものだったが、みんなで食事をするというのはやり楽しいものだった。

 

この場に嵐珠とせつ菜がいてくれたら………。

 

そんなことを全員一度は考える。だが、叶わぬ願いと知っているから誰も口にはしない。

 

「栞子ちゃん、これおいしくできたんだ。食べてみて」

 

「ありがとうございます……あの」

 

「どうかしたの?」

 

「先ほどから妙に気をかけていただいているように感じるのですが……」

 

さっきのトレーニングの時から歩夢は栞子に水やタオルを持ってきてくれたり、今も食事を進めてきたり、妙に気にかけている感じがしたのだ。

 

「………ん~、栞子ちゃん。なんかすごく悩んでいるように見えたから。ひょっとしてまださっきの試合のこと、気にしてるのかなって……」

 

「…………私は…どうすればいいのでしょうか」

 

栞子は少しの間考えてから口を開いた。それは、これまで栞子にない経験をしていたからだろう。

 

ずっと調整役のスタッフとしてデザグラに出ていたが、今まで見てきた参加者は自分の欲望のためだけに戦い、そして多くの人間が散っていった。

 

しかし、今回のデザグラは仲が良いというか、仲間意識が高い人間が多い。一見仲間に興味がなさそうな果林も栞子に気をかけていた。そんな光景を見たのは初めてだったし、蹴落として当然と思っていたデザグラの参加者が「美しく」見えた。

 

「?」

 

「…私には、とある使命があります。それは今まで見てきた人が醜かったからその使命を全うすることに何の戸惑いもありませんでした。ですが………いまそれが変わりつつあるんです。このまま使命を全うすることが正しいのか………」

 

醜い人間たちを蹴落として自らの願いを叶えてもらう。それに何の戸惑いもなかったが、今回の面子を蹴落とすことに少し抵抗を覚え始めていたのだ。

 

「使命を全うしなくてもいいんです。私の代わりはいますから。だけど、私にも譲れないものがあって………しかし、このまま続けたら美しいかもしれない一つたちを不幸にしてしまうかもしれないのも…なんだか」

 

「……」

 

歩夢は少し考え、お皿に自らの作った料理をとりわけながら話しはじめる。

 

「…………私には栞子ちゃん使命が何なのかはわからない。だけど……栞子ちゃんには栞子ちゃんにしかできないことがあると思う」

 

「私にしか……?」

 

「それが何なのか、探してみるといいんじゃないかな。みんながみんな納得するのは難しくても、それが正しいって信じて突き進めば何かを掴めるかもしれない。悩むのも大切だけど、まずは動いてみなきゃ始まらないんじゃないかな?」

 

歩夢はそう言って、笑顔でおかずを取り分けたお皿を栞子に差し出した。

 

「…ありがとうございます」

 

 

 

ー夜ー

 

 

 

「あの、姉さん」

 

その夜。栞子は廊下ですれ違った姉に声をかける。薫子は立ち止まり、小さくため息をついた。

 

「ここじゃそう呼ぶなって言ってるでしょ?………なに?」

 

「私の願いは、いつ叶えていただけるのでしょうか」

 

「さぁ、そればっかりはゲームマスターの采配だからねぇ」

 

「わたしのやっていることは…正しいのでしょうか」

 

「正しいとか正しくないとか、そういう次元じゃないでしょ。デザグラは。仕事だからやる。それだけよ」

 

薫子はそう言い残して去っていってしまった。栞子は胸の前で拳を握る。

 

 

 

ー瑠和の部屋ー

 

 

 

女性組はラウンジで寝ることになったが、瑠和は別部屋だ。一人だけ省かれたことに対する情けか、個室を用意してもらった。

 

「そろそろ寝るかぁ」

 

もう女性組は寝ている時間だ。瑠和はベッドに入り、眼を閉じた。

 

 

 

眠りについてからどれくらい経っただろうか。

 

瑠和は妙に身体が重たいことに気づく。最初は気のせいか疲れのせいかと思ったが、明らかに何かが乗っていることがわかった。

 

「ん………?」

 

眼を開くと、ぼやけた視界の中に見覚えのある人間が見えた。

 

「……しずくちゃん?」

 

「あはっ。起きてくれたんですね。瑠和さん」

 

瑠和の身体の上に、しずくがいた。

 

布団越しにではない。布団の中におもいっきり入ってきていた。

 

「……え?」

 

夢かと思ったが、意識ははっきりしている。

 

「…ごめんなさい。わたしもあんまりこういう風な真似はしたくなかったんですけど」

 

しずくが起き上がる。瑠和は慌てて眼を塞いだ。

 

眼を塞いだ理由は簡単で、しずくは一糸纏わぬ姿で瑠和の布団に入ってきていたからだ。

 

「なっ!何してるの!?早く服着て!」

 

「瑠和さん。わたしの理想の世界…私の願いはなんだか知っていますか?」

 

「え…?」

 

しずくは瑠和に自分のスマホを突きつける。瑠和はしずくの身体を見ないように画面を見た。

 

そこにはおびただしい量の着信履歴があった。名前を見るにしずくの親からだ。

 

「これは…」

 

「前に、見ましたよね?私の家が、どんな家なのか。過保護…なんて生ぬるい。牢獄。小さい頃から遊びに行くのも、友達を作るのも、全部禁止で………。高校になってからはある程度の自由は許されましたが…それでも一般的な高校生と比べたらまだまだで……」

 

しずくはスマホを置く。

 

「だから私は願ったんです。本当の自由を。私の家という牢獄から連れ出してくれる白馬の王子様………。でも、願うまでもなかったんです。私は王子様に出会えた」

 

しずくはにっこり笑って瑠和の頬に手を添える。あの時、ジャマトの手によって殺されかけたしずくを救った瑠和。外界との接触が少なく、そもそものポテンシャルが高かった彼女にとって、誰かに助けられる経験すら初めてだった。

 

「瑠和さんのことです」

 

「しずくちゃん……」

 

「………あの日、嵐珠さんとせつ菜さんが退場してから心に決めていたんです。次のゲームは絶対生き残って………こうしようと」

 

しずくは瑠和に口づけする。しずくの表情がとても切なそうで、悲しそうで、それに気を取られていた瑠和は口づけを拒むことができなかった。

 

「……ぷぁ…。いつ死ぬかわからないこの戦いに身を投じるからこそ………後悔を残したくないんです………私のお願い、聞いてくれますか?」

 

「…………」

 

瑠和はしずくを抱きよせた。そして、再びキスをしながら己の服を脱いでいく。

 

拒むことはできたし、たぶん拒むことが正解だった。

 

しかし、瑠和自身しずくに好意を寄せていなかったわけではないし、しずくの言っていることが最もだと思った。

 

思い残すことはないようにしたい。自分の理想の世界がなくても、仮にこの先脱落してしまっても。好きな相手と過ごした時間くらい、誰も知らなくても、残しておきたかった。

 

薄暗い部屋の中で互いの名前を呼びあう声が木霊し、むせるほどの湿度は不思議と心地よさを感じさせた。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

―翌日―

 

 

 

翌日の昼から試合が再開されることとなり、12人はジャマーエリアに集合した。

 

「さぁ!皆さん!頑張っていきましょう!」

 

「………妙に元気だね。何かあった?」

 

気合が入っているしずくにミアが聞く。

 

「え!?い、いえ!これに勝てなければジャマーエリアが消されてしまいますし!気合を入れるべきかと……」

 

「ふーん………まぁいいや。ディフェンスは任せたよ」

 

「はい……」

 

ミアはディフェンダーを任せ、ミッドフィルダーチームとエリアの中心地点まで向かった。

 

一方フォワードチームの人間は敵チームのゴール前に構えていた。

 

「さて、じゃあ借りたバックルをありがたく使わせていただくわね」

 

果林はビートバックルとレアバックルをベルトにセットした。

 

「頼みます」

 

「よーし、がんばりますかぁ」

 

「……」

 

瑠和、彼方、栞子もベルトにバックルをセットした。

 

「「「変身」」」

 

『ビート!アーンド、グレート!』

 

『Great』

 

『シノビ!』

 

『ニンジャ!』

 

『Ready fight!』

 

変身が完了すると同時に試合が開始された。

 

試合が再開されるとエリア中心にボールが落ちてきた。

 

ボールを再度愛が取りに行こうとしたとき、ビルの壁から巨大な蔓が愛に向かって伸びてきた。

 

「嘘!」

 

とっさにガードはできたものの愛は弾き飛ばされボールは真下にいたジャマトに渡った。

 

「いっつ……ごめん!ボールとられた!」

 

「任せろ!」

 

すぐ後方に構えていたミアが動き、ボールを持っているジャマトを切り裂いた。ジャマトが落としたボールを拾い上げ、前を向くがもう別のジャマトが迫ってきていた。

 

「チッ!歩夢!!」

 

ミアはボールを放り、ゾンビブレイカーで近くにいた歩夢の方へボールを思いっきり打ち飛ばした。

 

「っ!」

 

しかし歩夢の方もあまり余裕があるわけじゃない。歩夢はチェーンアレイバックルを起動させる。

 

『チェーンアレイ・ストライク』

 

「エマさん!!」

 

ミアの方から飛ばされてきたボールを歩夢はエネルギーを貯めたチェーンアレイを命中させてさらにエマの方へ飛ばした。

 

「わっと」

 

飛ばされてきたボールを受け止め、エマはフォワードの方へ走る。

 

「ジャジャ!!」

 

「わっ!もう来た!でも!」

 

目の前からジャマトが迫るがエマはドリルを構えて突き進む。

 

「エマさん!こっち」

 

それが長く続かないことを察した侑が別のビルの屋上からギガントブラスターで援護射撃をする。侑き気づいたエマはすぐにボールを侑に投げた。

 

「侑ちゃん!」

 

ボールが侑めがけて飛んでくる。しかし、フォワードがいる地点まではまだ距離があった。おまけに侑の方にもジャマトが集まってきた。

 

『ギガントハンマー』

 

侑はブラスターからハンマーに切り替え、それを構えた。

 

「フォワードのみんな!ごめんなさい!誰に届くかわからないけどそっちに飛ばす!」

 

『ギガントストライク』

 

「やぁぁぁぁ!!!!」

 

飛んできたボールに思いっきりギガントハンマーを当てる。すさまじい勢いでボールがフォアードの方へ飛んでいった。

 

ボールは壁にぶつかり、とある人物の前に落ちてきた。

 

「………」

 

誰あろう栞子だ。

 

栞子はボールを拾う。するとそこにボスジャマトがやってきた。だがボスジャマトは敵対せず栞子を見ているだけだ。

 

「…」

 

『栞子。今ならだれも見てないわ。ボスに渡しなさい』

 

「姉さん…」

 

栞子のベルトについている通信装置から薫子の指示が聞こえてきた。だが、栞子の脳裏には歩夢や果林、瑠和の言葉が残っている。

 

「栞子ちゃん!」

 

栞子がどうするか悩んでいるとき、果林が飛び込んできた。

 

「果林さん!」

 

「大丈夫!?」

 

果林はビートアックスを構えてボスに突っ込んでいった。

 

「………私は」

 

瑠和と栞子二人係でも苦戦したボスジャマトを果林は僅かだが圧倒していた。瑠和から受け取ったレアバックルの恩恵だ。

 

攻撃してきた腕を軽くいなし、がら空きの腹部にビートアックスの刃を突き立てる。

 

ボスジャマトが怯んだ隙に果林はビートアックスで曲をを奏でた。

 

『タクティカルファイアー』

 

「はぁぁ!」

 

炎を纏ったビートアックスを振るうと火炎が付与された斬撃波がボスジャマトに向かって飛んでいく。

 

「ジャァァァ!」

 

「……今のうちに行きなさい。ボスは私が引き受ける」

 

「……」

 

栞子はボールを持ってゴールに向かって走る。少し走ると前方からジャマトが押し寄せてきた。

 

「…っ!」

 

「栞子ちゃん!」

 

上から声がした。栞子は声がした方へボールを投げ、ニンジャデュアラーを構えてジャマトを切り倒していく。

 

栞子からボールを受け取ったのは彼方だ。しかし彼方の周りにもジャマトはいる。彼方は落ち着いてシノビバックルを一度起動させる。

 

『シノビ・ストライク』

 

それと同時に彼方はボールごと複数人に増えた。そのことにジャマトも驚いている。

 

「さぁて」

 

「本物は」

 

「どれでしょ~か」

 

そういって分身はそれぞれ別の方向へジャンプした。

 

「ジャジャ!」

 

そのまま彼方の分身はビルを次々と乗り移り、ゴール付近まで行く。

 

そしてゴールの目の前で三人が一つになり、ゴールへボールを投げ込んだ。

 

『ゴール!』

 

先制点を取った。ボスの動きを果林が止めているため、ポーンジャマトがボールを拾って試合が再開される。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

それからしばらく試合は続き、点数的にはライダーチームが不利となった。時間も残りわずかで距離を考えるとあと一回ゴールできるかどうかだ。だが、ロングシュートを決められれば、逆転ができる。

 

ライダーチームもかなり頑張ってはいるのだが、いかんせん敵も数が多く中々思うように動けないのも事実だった。

 

ちょうど今ライダーチームに点をいれられたところだ。

 

息を切らし、膝をついていた栞子に果林が近寄る。

 

「………先ほどから、私のサポートに回っているのは私が陰で動くのを抑制するためですか」

 

「ま、半分あたりね」

 

「半分?」

 

「瑠和や歩夢………ほかの人に触れてあなた自身が変わったんじゃないかなって思ったんだけど………」

 

果林はみんなで食事をしたとき、歩夢と栞子が話しているのを果林は聞いていた。

 

「………」

 

「だから私は賭けに出る」

 

果林は瑠和から預かっていたレアバックルを栞子に差し出した。

 

「え………」

 

「これを使って、あなたにしかできないことをしなさい」

 

「………果林さん…」

 

「さ、試合が再開されるわよ」

 

試合が再開され、しずくがボールを持ってミッドフィルダーに届けに行く。当然ジャマトの邪魔が入るのだが、もう止まっている時間はない。

 

『モンスター・ストライク』

 

「やぁぁぁぁ!!!」

 

目の前のジャマトを蹴散らし、再び進み始めるが、生き残ったジャマトに手足を掴まれた。

 

「このっ………」

 

「しずくちゃん!」

 

上からエマの声がしたしずくはボールを上空に投げる。それをビルの上に待機していたエマが受け取り、先で待っているかすみめがけて投げた。

 

だが、少々飛距離が足りずボールはビルの間に落ちかけた。

 

「まずいですよ!」

 

「大丈夫」

 

焦ったかすみだったが、落ちかけたボールを璃奈が狙撃でカバーし、かすみの元まで飛ばした。

 

「りな子ナイス!行きますよぉ!!」

 

『ハンマー・シールド・ヴィクトリー!』

 

かすみはエネルギーを貯めたハンマーでボールをかっ飛ばした。

 

「あとは頼みました!」

 

飛んでいったボールを愛がキャッチする。しかし、目の前にいるジャマトはそう簡単に突破できる数ではない。

 

「これはぁ……ちょっと難しいかもねぇ」

 

愛は少し考え、フィーバースロットバックルを外し再度デザイアドライバーに装填する。

 

「いいの来てよっと!」

 

近づいてきたジャマトを蹴り飛ばしながら愛はフィーバースロットを起動した。

 

『ヒット!フィーバー、ニンジャ』

 

「お、いいのきたきた!!」

 

ニンジャを引き当てた愛は分身や身代わりを駆使してジャマトの群れをかいくぐっていく。しかし一人で超えていくのには限度があり、建物の上で戦っているミアに向けてボールをぶん投げる。

 

「はぁぁぁ!ミアち!!!」

 

「誰がミアちだ!!」

 

ミアはボールを受け取り、屋上から屋上へ飛び移る。しかし、今回のジャマトはどこからでも湧いてライダーを邪魔してくる。

 

「ああもう!こいつらしつこいなぁ!!」

 

ミアはボールを高くなげ、ゾンビブレイカーのレバーを引く。

 

『ポイズンチャージ』

 

「piss off!!!」

 

目の前の敵を消し飛ばした。だがボールを持っているミアには多くのジャマトが集まってくる。しかし、集まってきたジャマトはミアがさっきボールを投げてからボールを再度キャッチしてないことに困惑している様子だ。

 

「ジャ?」

 

「ジャ?」

 

「おいおい、いつまでも僕がボールを持ってるとでも思ったかい?」

 

ボールは上空に投げられた瞬間、別のビルの屋上にいた侑がアームを伸ばしてキャッチしていた。

 

「もう時間がない…ここから決める!」

 

侑はギガントハンマーを地面に叩きつけ、ビルの上に高い足場を建設した。かなり目線が高くなったことでゴールの直線上まで来た。

 

『ギガント・ストライク』

 

「はぁぁぁぁぁ!」

 

ギガントハンマーでボールをゴールに向けてまっすぐ打ち出した。これで終わる。

 

そう思ったのも束の間、突如地面から伸びてきた巨大な蔦によってボールがカットされたのだ。

 

「そんなっ!」

 

カットされたボールは宙を舞い、たまたま歩夢の基へ落ちてきた。

 

「…えっ!ええ!」

 

「歩夢!」

 

たまたまミッドフィルダーの中でも最前にいた歩夢がキャッチできたのは不幸中の幸いだが、歩夢の装備はこの中では最弱だ。

 

すぐにフォワードにパスしたいところだが、近くには誰もいなかった。

 

「ジャ!」

 

「えぇぇぇ!どうしよう!」

 

走行しているうちにジャマトの群れが迫る。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

『上原歩夢を攻撃しなさい』

 

「え…」

 

歩夢がボールをキャッチした直後栞子には歩夢を攻撃するように薫子からの指令が出ていた。

 

『ニンジャなら襲撃はお手のものでしょう?大丈夫。ペナルティが発生しないようにしておくから。気づかれないように背後から襲って、ボールをジャマトに渡すだけよ』

 

「…」

 

栞子はそっとビルの屋上から歩夢を見る。歩夢は気づいていなかったが、栞子は近くにいたのだ。

 

「…」

 

栞子は少し考え、ニンジャバックルの力でその場からぽんっと消える。

 

そして、必死に奮闘する歩夢の背後に出現してニンジャデュアラーを振りかぶった。

 

(栞子ちゃんには栞子ちゃんにしかできないことがあると思う)

 

昨日の言葉が、栞子の脳内に響いた。

 

(歩夢さん…っ!)

 

ニンジャデュアラーは、歩夢の背後に迫っていたジャマトを切り裂いた。

 

「ジャー!」

 

「栞子ちゃん!」

 

『栞子!?あなたなにをやっているの!?』

 

耳元で薫子の叫ぶ声が聞こえた。栞子はその問いに答えるように叫ぶ。

 

「………私は!私にしかできないことをします!」

 

『グレート・ニンジャ・ヴィクトリー!』

 

歩夢を守るように栞子の分身が出現し、巨大なエネルギー出てきた手裏剣を一帯のジャマトに食らわせてジャマトを一掃した。

 

「歩夢さん!ボールを!今度こそ……今度こそっ!!決めて見せます!」

 

「うん!お願い!」

 

歩夢は栞子の吹っ切れた真っ直ぐな瞳を見てボールを託し、託された栞子もボールを抱え、ゴールまで一直線に走った。

 

正面からジャマトが迫ってくるが栞子はニンジャデュアラーで切り倒しながら進んでいく。

 

「やぁぁぁ!」

 

レアバックルの力で身体が軽い。囲まれるより先にジャマトを切り裂いて突き進んでいく。

 

だが、その道中ボスが地面から現れた。

 

「テテビオズポケイズキョビルラ!」

 

「…っ!」

 

栞子は一瞬足を止めながらもすぐにボスジャマトに飛びかかった。ニンジャデュアラーを振り回してボスジャマトに攻撃するがさすがにボス相手ではそうそう先には進めない。

 

「ジャジャ!」

 

「おっと!」

 

さらに周りからポーンジャマトがボールを奪いにやってきていた。

 

「このままじゃ……」

 

さすがに分が悪いと思った時、あたりのポーンジャマトとボスジャマトが同時に吹っ飛んだ。

 

「!?」

 

よく見ると瑠和はジェッドでボスジャマトを蹴り飛ばし、彼方が分身でポーンジャマトを蹴散らしていた。

 

「お二人とも!」

 

「いって!栞子ちゃん!」

 

「お前の願いのために!!」

 

「………はいっ!!」

 

栞子はそのまま一気にゴールへ向かって走っていく。それを追いかけようとするジャマトの前に瑠和と彼方が立ちふさがった。

 

「ここから先は」

 

「行かせないぜ~」

 

「ジャ!」

 

「ジャジャ!」

 

ボスジャマトの指示でポーンジャマトが襲ってくる。

 

「彼方さん」

 

「おうよ」

 

二人は同時に動き、迫ってくるポーンジャマトを一瞬で蹴散らしてボスジャマトに迫っていった。

 

「おぉぉぉ!!」

 

「だぁぁぁ!!!」

 

「ジャ!」

 

ボスジャマトは腕のウツボカズラのような部分からエネルギー弾を飛ばすが二人はそれを紙一重で躱していく。二人はボスジャマトに接近すると瑠和のレイジングソードと彼方のシノビクナイで突かれて後方に吹っ飛び、工場の壁をぶち破る。

 

「さぁ、終わらせるか」

 

「うん。行こう」

 

『コマンド・ツイン・ヴィクトリー』

 

『シノビ・ヴィクトリー』

 

「「はぁぁぁぁ!!!」」

 

二人は同時に飛び上がり、ボスジャマトに向けてダブルキックを放った。ボスジャマトは抵抗する間もなくダブルキックを食らい、爆発四散した。

 

「ふぅ」

 

「お疲れ~」

 

「ああ、栞子も無事ゴール決められると…………え?」

 

栞子のサポートに向かおうとしたとき、瑠和は工場の奥に誰か倒れているのを見つけた。逃げ遅れ、ジャマトに襲われた一般人かと思ったがよく見ると違う。デザグラ制服を着ているのだ。

 

瑠和が目を丸くして見ていると彼方も気づいたようだ。

 

「あれって……」

 

 

 

―ゴール前―

 

 

 

一方栞子はボールを持って猛進していた。ボスも瑠和と彼方が引き受けてくれたのでもう彼女を止められる存在はない。

 

そして、ある程度進んでから一気に飛び上がる。

 

「ここからなら!!」

 

だが、飛び上がった栞子を叩き落とすように巨大な蔦が伸びてきた。

 

(回避…ゴール……どちらも間に合わな……)

 

「栞子ちゃん!」

 

地面からエネルギーをまとったチェーンアレイが伸び、蔦を弾いた。歩夢がやったのだ。

 

「お願い!!」

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

栞子は力の限り腕を振り、ボールを投げた。ボールがゴールに入ると得点ボードに5点が追加され、ライダーチームは逆転した。

 

あと数秒でゲームは終了し、もうジャマト側に点数を奪われることはない。

 

栞子は地面に着地し、そこに歩夢が合流した。

 

「栞子ちゃん!やったね!」

 

「はい!………歩夢さん、あの…ありがとうございま」

 

刹那。

 

栞子の心臓を蔦が貫いた。

 

歩夢の頬に、栞子の血液がつく。

 

「……………え?」

 

「…………こほっ」

 

「困りますよ。栞子さん。きちんとお姉さんの言うこと聞かなきゃ」

 

栞子の背後には黒いコートを着た男が立っていた。栞子は歩夢にもたれかかるように倒れる。

 

「…………歩夢さ…逃げて…」

 

「栞子ちゃん!!!!」

 

「このゲームでもう少し人数削りたかったけど………まぁしょうがないですね。今は皆さんに勝ちを譲りましょう」

 

男は小さく笑って姿を消した。敵がいなくなったことを確認すると歩夢はすぐに変身を解除した。

 

「あ……………あぁ…栞子ちゃん!栞子ちゃん!!」

 

「…………ごめんなさい…。私なりに、私にできることを全うしたつもりなのですが」

 

「もう………しゃべらないで…」

 

「…………歩夢さん…どうか………今後も………生き残ってください」

 

栞子は歩夢の腕の中で静かに息を引き取った。息を引き取ると同時にIDコアに亀裂が入り、栞子の身体は消滅した。

 

『mission failed』

 

「――――っ!!!栞子ちゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!!!!!!」

 

 

続く




現在の仮面ライダー

天王寺瑠和 職業:公務員
モチーフ・猫/仮面ライダーギャーゴ
願い・未定
所持バックル・ウォーター・コマンド

天王寺璃奈 職業:高校生
モチーフ・猫/仮面ライダーリーニャ
願い・???
所持バックル・マグナム

朝香果林 職業:モデル
モチーフ・狐/仮面ライダーキュービー
願い・???
所持バックル・クロー・ビート

近江彼方 職業:弁当屋
モチーフ・羊/仮面ライダーランビー
願い・遥ちゃんがスクールアイドルができている世界
所持バックル・シノビ

宮下愛 職業:デザイナー
モチーフ・豹/仮面ライダークーガー
願い・???
所持バックル・フィーバースロット

中須かすみ 職業:高校生
モチーフ・狸/仮面ライダーラグーン
願い・???
所持バックル・シールド・ハンマー

桜坂しずく 職業:高校生
モチーフ・くま/仮面ライダーマック
願い・???
所持バックル・アロー・モンスター

鐘嵐珠 退場

ミア・テイラー 職業:作曲家
モチーフ・ウサギ/仮面ライダーリープ
願い・???
所持バックル・ゾンビ

エマ・ヴェルデ 職業:農家
モチーフ・山羊/仮面ライダーライズ
願い・???
所持バックル・ドリル

優木せつ菜 退場

高咲侑 職業:大学生
モチーフ・鹿/仮面ライダーシーカー
願い・???
所持バックル・パワードビルダー・ギガントコンテナ・レアバックル

上原歩夢 職業:大学生
モチーフ・蛇/仮面ライダーサスケ
願い・???
所持バックル・チェーンアレイ

三船栞子 退場
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