「ようこそ、死人のでないデスゲームへ! 私はナビゲーターのリリムです。さっそくですが、ルール説明をさせてもらいますね!」
気がついたら、謎の真っ白な部屋にいて目の前には妖精の様に小さな女の子が、宙に浮きながら笑顔を浮かべていた。
さっきまで草原フィールドでモンスターと戦ってたよな?
それが急に場所が変わる、転移してナビゲーターがいるってことは……イベントか。
「このゲームを生き残るには二つの条件を守る必要があります。
1.ジョブごとに指定されたFateと呼ばれる条件を満たすこと。
2.最終日に生存をしていること
以上二点です。ここまでで何か質問はありますか?」
「はぁ!? ジョブの選択!? え、まさかレベルリセット? それともレベル継続で新スロットのジョブ追加とかなのか?」
今プレイしているゲームでは既にジョブ機能は実装されているメインジョブとサブジョブを組み合わせる仕様になっている。
まさか、三つ目の枠のジョブでも追加するのか?
「レベルリセット? あなたはまだメイキング中です。レベル以前にプレイすらしていませんよ?」
「何言ってんだ。これって【ペガサスの奇跡】のイベントだろ?」
「いえ、該当ゲームとは一切関係ないものとないですよ? 初めにいったと思いますが、これはデスゲームです。ニューゲームです。コンテニューではないですよ」
話が通じない。そういう仕様なのかもしれないが、プレイヤーの不安をこう煽るのは後で問題になるだろ。
とりあえず、イベント詳細を見るためにログアウトしようとシステムウィンドウを開き、ログアウトボタンを触――ない。
ログアウトボタンが無かった。
先ほどまでの弛緩した心が一気に硬直する。
デスゲーム。
ナビゲーターの彼女はそう言っていたが、そんな物は物理的に不可能だ。
そういった事が起こらないようにVR用のハードは厳しい審査が行われ、一定値以上の情報やエネルギーが出力出来ないようになっている。
更に言えば、外部からハードを取り外されたら強制的にログアウトする仕様にもなっている。
だから物語であるようなデスゲームなんて不可能なはずだ。
となると犯人の目的が分からない。ログアウトボタンを消すのも違法で、もう冗談じゃ済まないレベルの犯行だ。
「質問が無いようなので続きに戻らせて貰いますね。このデスゲームにおいて最も大切な要素。それはジョブとそれに付属するFateです。まず、例として運営が最もお勧めするジョブを紹介させていただきますね!」
天真爛漫、無邪気そうに笑う彼女だが、その手元から表示されたウィンドウに載っている情報はそれとは真逆の内容だった。
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ジョブ名:【
Fate:ゲーム終了までにプレイヤーを5人以上殺害すること。
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「ジョブには二つ効果が付属しております。それがFateとジョブ特典です。
まず、Fateについて。Fateはゲーム終了時までにクリアしなければいけない個人ミッションのような物です。【
趣味が悪い。まさかお勧めで、他者の殺害を進めるだって?
ありえないことだが、これが本当に殺したら相手が死ぬデスゲームだったら大変な事になるぞ。
「ジョブ特典について。このデスゲームではスキルと呼ばれる能力をポイントで購入します。その際に、ジョブに関連付けられたスキルに関しては特別価格で購入できるというわけです。何が質問がございますか」
質問なら何個もある。これは趣味の悪い冗談なのか。
何が目的なのか。
幾十にも浮かぶ疑問をかみしめ、視界は死に写ったタイマーを睨む。
さっき気がついたけど、右上に時計アイコンがあり、針が徐々に進んでいる。恐らくこの針が一周したらこの時間は終わりなのだろう。
余計な質問は出来ない。
「このゲームはレベル制なのか? スキル制なのかどっちなんだ」
「両方ですよ。レベルアップによりステータスが向上しますが、スキルに関してはPT消費で購入しなきゃいけません。真っ先にゲームの仕様を確認するなんて乗り気ですねぇ」
ナビゲーターの言葉に眉をひそめる。こいつ、最後に何を言った。
てっきり定型文しか話さないAIだと思った。創作にあるような生きている様なAIは完全没入型VRが完成した現代においても、何世代も後に生まれる技術とされている。
まさか、NPCじゃなくて中に人がいるのか?
「説明を続けてくれ」
「はい。といっても、これ以上の説明はないんですよね。質問があれば答えますが、ないのならこれを読んでジョブを選択してくださいね」
目の前にジョブリストが表示された。
随分とガサツな説明だな。いまだにデスゲームの概要が分からない。
創作なんかだと無人島フィールドに集められてサバイバルをしながら、徐々に島を覆うようにフィールドが狭くなっていき、最終的に中心地にプレイヤーが全員集まる……みたいな感じだが、あれだけの説明だとどんな形のデスゲームなのかさっぱり分からない。
質問をしても良いけど、それより先にジョブだ。
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【
Fate:プレイヤーを5人以上殺害すること。
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・
・
【
Fate:ゲームをクリアすること
・
・
・
【
Fate:ゲーム終了時に生存者がゲーム開始時の四割以上であること。
・
・
・
【
Fate:国を一つ崩壊させること
・
・
・
【
Fate:二人一組となりどちらもゲーム終了時に生存していること
・
・
・
【
Fate:30人以上と性行をすること
・
・
・
【
Fate:ゲーム終了時にFate達成者が生存者の七割未満であること
【
Fate:ゲーム終了時にFate達成者が生存者の七割以上であること
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ざっとジョブを見ていく。といっても、Fate以外にもどんなスキルが安くなるのかという情報もあり一つ一つの情報が多い。
ジョブの全てを見るのは不可能だ。
ざっと見た限り、明らかに性格の悪いFateがあるな。
例えば【
明らかに両者は敵対する。どちらかしかFateを達成できないのだから当たり前だ。
「ナビゲーター。もしFateをクリアできなかったらどうなる」
「消去ですね」
デスゲームっていうくらいだから、死ぬのか。
このジョブはダメだ。ジョブ特典も見てみたが、【
……はぁ。
僕はゲームであまり頭を使いたく無い主義の人間だ。頭を空っぽにして強敵に挑み、トライアンドエラーであまり考えずにプレイする。それが至高だ。考える戦いなんていくらでも出来る。なら、何か新しい学びがあるかもしれない無の境地の方がいいのは当たり前だろう。
けど、命がかかってちゃそうはいってられない。
考えるか。
まず、ぱっと見た限り一番Fateクリアが楽なのは【
最序盤限定だが必勝法だって思いついている(ただし、イケメン、美女に限るが)
ジョブ特典のスキルだって強力な物ばかり。証拠隠滅の物から直接的戦闘能力に繋がる物まで幅広くそろっている。
だが、あくまでFateに限っての話。
もう一つの条件である終了に生存している事。この条件を満たすのは中々難しい。
PKなんて古今東西受け入れられるわけが無い。
一応、多少は受け入れられる方法も思いついているが、それが出来るのは超人くらいだろう。少なくとも僕には出来ない。
となると【
【
【
なーんて、考えてはいけない。
予想が正しければ【
ゲームスタートから恐らく三日目当たりを境に、【
【
文句ばっかりつけているが、じゃあ何が良いのか。僕の中では二つに絞られている。
「【
どっちもジョブ特典のスキルは中々高性能。
となると大切なのはFateだ。
【
Fate:ゲームクリアをクリアすること
【
Fate:国を一つ崩壊させること
「ナビゲーター。一つ質問がある」
「なんですか?」
「このデスゲームにシナリオはあるのか」
「勿論。これはデス『ゲーム』なんですから」
てっきり劇場型。プレイヤーの軌跡をストーリーに見立てるタイプだと思ったが違うのか。
「メインストーリーのあらすじを教えてくれ」
「すみませんが、それを伝える権限がないのですよー。行ってからのお楽しみ、って奴ですね」
国の崩壊。ここから考えられるのがNPCがいるパターンと、プレイヤーが国を作るパターンだ。
どっちだ。ジョブ特典のスキルを見ていると武器指定がされているスキルもある。となるとやっぱり武器屋から武器を入手しやすいNPCがいて、元々国があるタイプか?
そうじゃなきゃ素材を入手して鍛冶スキルを育成して……と手間がかかりすぎる。完全な自給自足なんてデスゲーム、面白いか?
面白いな。まずい、こっちのパターンは観客なら普通に見てみたいぞ。
「武器屋は始まりの街にあるのか?」
「そちらの回答も出来ないです。秘密事項ですね」
「使えないな」
国崩しなんてそう簡単にできる物じゃ無い。だからこそFateとしてあるのかもしれないが、こんな可能性もある。
ストーリーの中に国崩しが組み込まれている。
もしそうなら国を崩すためのアイテムや導線がしっかりよ用意されている筈だ。
まぁ、これは希望的な観測だ。ストーリーが悪の帝国を倒す! みたいな物だったとしても、国は崩壊させずに悪の皇帝を殺して善人を次の皇帝にして国を改善する。崩壊はさせない、というパターンだってありそうだ。
「やっぱJRPG好きはこれだよな」
「決まったのでしょうか?」
「ああ、ほぼ確定したよ。と言ってもまだ時間はある。他のジョブを見させてもらう」
「それはいいですけど、事前にジョブは教えてくださいね? 時間まで指定が無かった場合ランダムになってしまいます。時間中であれば好きに変えられるので」
「【
選択したのは【
理由は単純。これがゲームだからだ。
たとえどんな高難易度だったとしても、運営が想定したクリアパターンが必ずある。それならそれをこっちはなぞれば良い。
僕はどこで何をしてもいいオープンワールドの洋風かぶれよりも筋道が決まってるJRPGの方が好きなんだよ。