このデスゲームに死人はいない   作:八雲せは

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第13話「国崩し開始」

「来ましたよA!」

 

 ある日の夕方。僕は【反逆者(リベリオン)】のA。そして【共同体(ペアベンジャー)】のかぷちーのとファットマンさんの三人を集め、興奮を吐き出した。

 

「珍しいな。お前がそんなテンション高いなんて」

「そうなってもしょうがない事が起きてるんです。僕は今、平静さに欠けています」

「……マジで何見つけやがったんだ」

 

 Aは少し引き気味に、かぷちーのさんたちは嬉しそうに僕を見ていた。

 

「国落としイベント、来ますよ」

「本当かい!?」

 

 ファットマンさんが、身を乗り出し、真偽を問いてくる。

 嘘なんてつくはずがない。僕が頷き返すと、彼は嬉しそうにAの肩をつかんだ。

 

「やったじゃないかA! これでFate達成できますよ!」

「もちろん、私たちも協力しますよ。絶対に達成しましょう」

 

 彼氏彼女の二人は自分のことのように喜びを表す。

 Fate。このデスゲームの上で決して忘れてはいけない要素だ。

 簡単に言えばジョブによるクリア目標。

 このクリア目標をゲーム終了時に達成していなければ、消去されるとナビゲータは言っていた。つまりは、死ぬ、ということだろう。

 

反逆者(リベリオン)

 Fate:国を一つ崩壊させること

 

 今まで国を一つ崩壊させるなんてイベントは一度たりともなかった。

 ゆえに【反逆者(リベリオン)】のFate達成者はいない。

 だがようやく。ようやく達成できるイベントが発生する。

 

「なんだか反応が薄いですね」

 

 Aも喜ぶと思ったのだが、予想に反して彼は微妙そうに僕の話を聞いていた。

 どうしたんだ? 生き死にの話なんだし、そんな顔する必要なんてなさそうなのに。

 

「ああ、いや。嬉しいぜ。そりゃ、嬉しい。だが……な。国崩し、その意味を考えると手放しに喜べないぜ」

「そういえば、まだ詳細を聞いていませんでしたね。もしも対象がこの国でしたら拠点が大変なことになってしまいます。どうなのでしょうか? ナチュアさん」

「その心配はないですよ。相手は前々から敵対していたヤーミ王国です。攻城作戦とか書いてあったので、こっちから何処かに攻め込むのだと思いますよ」

 

 詳細はこの後話すが、このイベントに参加するにはとある場所に集まり、場所に乗り込む必要があるらしい。

 これはVRゲームとかで特殊マップに行くための演出でよくある手口だ。

 

 おそらく、通常の方法ではいけない場所にヤーミ王国マップが配置されており、そこに転移するためのシステムが馬車にでも組み込まれているのだろう。

 だからこの国に関しては何の影響もない。

 

「いや、そういうのじゃなくてだな。国ってことはそこに住む国民がいるってことだろ? 国を崩壊させるってことは、まぁ、後味のいい結果にはならないだろうなってな」

 

 Aは僕たちの中で一番NPCへ感情移入をしていた。それこそ、プレイヤーとNPCに優劣をつけないくらいに、彼は公平に見ている。

 僕もプレイヤーの中ではNPCへ感情移入……というよりも人間として扱っている。

 そのくらい、このゲームのNPCのクオリティは高い。正直、NPCに付与されているであろういくつかの規制がなければ、プレイヤーとの区別がつかないくらいだ。

 

 だが、NPCだ。

 

 だからファットマンさんやかぷちーのさんは、完全に人間と区別をつけている。言い方は少し感じが悪くなってしまうが、所詮はNPCだと。

 だからAのこの悩みに対し、Aが優しいとは思うが共感は覚えない。

 

「ま、だからと言って死にたいわけじゃねぇ。ちゃんと国は崩壊させるさ」

 

 

 ◆

 

 今回の国崩しイベント。正式名称(ヤーミ王国を滅ぼせ)はメインストーリーで敵の本拠地を見つけることで解放されるクエストだ。

 僕は攻略組というわけで、正式にクエストが発注される前にある程度事前情報を知っていたが、正式にシステムから全プレイヤーに告知されるといくつか知らなかった情報が見えてくる。

 まず、報酬がうまい。参加するだけで攻略組のメンバーが三人パーティーで本気で資金集めした場合の一週間分くらいの報酬が貰える。

 

 三人パーティーの一週間。それを一人でもらえるのだから実質三週間分だ。

 

 これが攻略組以外のメンバーが参加するだけで貰えるのだ、やらない手はない。

 難易度も低いだろう。

 運営としては救済措置のつもりなのか、こんな一文が書かれていた。

 

《このクエストは前に進めば進むほど難易度が上がります。各自自身の実力を見極めて前に進みましょう(意図的にMPKなどをしない限り、後方に難易度違いの存在が来ることはありません)》

 

 乱入クエストみたいな形で突然強者が後方に! なんてイベントも運営は用意していないようだ。

 意図的にMPKというのが怖い話だが、そんなことをする奴がいるとも思えない。MPKしても【殺人鬼(キラー)】のカウントは上がらない。それなのにMPKを、弱いプレイヤーにしたら他の【殺人鬼(キラー)】に殺されるだろう。

 

 それに万が一に備えて、後方側に攻略組の何人かも今回は待機するようだし後方組の安全は確約されたようなものだろう。

 

「盛況ですね」

 

 今回のクエストを受注するためには、指定された街の広場に集まらなければならない。集合場所はその一つだけなので、当然人でごった返している。

 このゲームに参加している人数は【指導者(リーダー)】の投票先から把握していたが、生き残っている人数まではわからなかったのでこういう形で見れるのは貴重な機会だ。

 

「【反逆者(リベリオン)】は参加しない理由がねぇからな。用心深い関係ないジョブの奴は今回待機らしいが、6割以上は参加してんじゃねぇか?」

 

 いつもの四人であつまり、僕たちは馬車に乗る。

 そして、視界が暗転した数秒後馬車の扉が開いた。

 

「あれ? 人少ないですね?」

 

 かぷちーのさんが三番目に降りて、そう漏らす。

 先ほどまでいた広場と比べると、明らかに人が少ない場所に僕らは飛ばされていた。

 

「そりゃ、城を攻めるのに一か所から攻めるわけないわな」

 

 僕らが下りたのは城の裏手。

 この国の地図は事前に配布されている。

 城が国の中央部。城の正面に繁華街。左右に住居区。そして僕らがいる裏手が工場などの生産区。

 

「敵対NPCもいませんね。避難してるってことでしょうか」

 

 ファットマンさんがあれ? と不思議そうに首をかしげる。

 だが、それは勘違いだ。

 

「気を付けてください。屋根の上にいますよ」

「え? おお、本当だ」

 

 屋根の上にこちらを探るような視線を感じる。

 明らかに非戦闘員の視線じゃない。

 

「A」

「わかってる。俺だって襲い掛かってくる奴に見せる慈悲はねぇよ」

 

 懸念事項だった、NPC相手にAの手が鈍るというのもなさそうだ。

 口だけならいくらでもいえるが、今のAは本気の時のみつけている装備。この装備で腕が鈍るなんてないだろう。

 

 Aの装備はハンマーとクロスボウだ。

 ハンマー、と聞くと某狩りゲーの人よりも大きな槌をイメージするが、Aが装備しているのは日曜大工で使用するような、小さな金槌といえばイメージしやすいだろう。

 

 敵を『押し潰す』巨大ハンマーではなく、敵を『カチ割る』金槌。

 そして、腕につけたクロスボウ。

 

 これにより、Aは近距離の相手は金槌でカチ割り、遠距離の敵はクロスボウで撃ち、中距離はクロスボウか金槌を投擲しカチ割る。この近中遠、隙のない構成でかなりの強さを誇っている。

 正直、攻略組トップ層と肩を並べられるだろう。本人は攻略組はごめんだと、メインストーリー攻略にめったに絡まないが。

 

「とりあえず、僕が先頭に立ちます。次にA。その後ろにかぷちーのさんと、その護衛のファットマンさん。いつもの立ち位置で行きましょう」

 

 これが僕らのパーティーフォーメーション。秘密技を使わないと遠距離攻撃が弱い僕が先頭に立ち、そのフォローをAがし、魔法で遠距離からのフォローをかぷちーのさんが行い、それをファットマンさんが守る。

 こうなったら僕たちを止められる人はいない。完全無欠、最強のパーティーだろう。

 

 僕たちは妙な静けさを孕む工場地帯を進んでいく。

 この世界の技術文明はよくわからないが、外から見れる工場内はなかなか機械化が進んでいるように見えた。

 どこまでリアルに動くかはわからないが、もしも戦闘中に機械に巻き込まれたらどうなるんだろうか? ミンチか? いや、けどこの体って結構丈夫そうだし機械が先に壊れるかもしれない。

 

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