時間が過ぎ、時間いっぱいまでジョブリストを見ていた僕は気がついたら森の中にいた。
最後のナビゲーターの声が脳裏にこびりついている。
「ようこそ、死人のでないデスゲームへ!」
死人が出ないってどういう意味だ。デスゲームってのは偽り? いや、けどそのすぐ後にデスゲームって言ってるしな。
そんな風に考えながら、当たりを見渡す。
森だ。完全な森である。
初期位置は始まりの街だと相場は決まっていると勝手に思っていたけど、このゲームはそうじゃないらしい。
「頼むからクソゲーじゃないでくれよ」
運営がクソでもゲームがクソじゃ無ければまだ耐えらえる。
そんな風に思いながら、早速目をつけていたスキルを初期ポイントで購入した。
【
短剣用の投擲スキルだ。メイン部機種に関してはこれから変更することもあるだろうけど、投擲用なら腐ることも無いだろう。
ちゃんとスキルを取得する前に初期装備の確認もしている。短剣一本に布の服。耐久値という概念は装備画面を見るにあるようだ。
そんな確認をしながら、ポップしていたモンスターを三体ほど屠る。チュートリアルはなかった。
はい、クソゲーですっと。デスゲームなのにチュートリアルなしとかあり得ないだろ。
ああ、敵自体は弱かったし、わざと負けようとしない限り死ぬことはないのか?
だとしてもちょっと不親切すぎるだろ。
そんな愚痴を内心吐いていると、背後から気配がした。
「ひゃっ!」
右手でナイフを構え、左手に持っていた小石を背後に投げつけようとしたら小さな悲鳴が聞こえた。
でも構わず僕は石を投げつける。
スキル『投擲』
小石の武器種はその他、と分類されていた。『投擲』の使用武器種は短剣。武器種は違うが発動は出来ている。
投擲物の種類によって攻撃力の倍率が違う? 後で検証が必要だな。
「あ、あのー」
「ジョブは?」
「へ?」
「あんた、ジョブはなんだ」
目の前には腰を抜かす少女がいた。
中学生……高校生か? 見た目はとても可愛い。
と、そこまで確認してふと思う。
僕の姿はどうなっている? デスゲームを始まる前にログインしていた時のゲームのアバターなのか?
「私は【
「僕は【
あからさまにホッとした様子を見せる少女。この様子が演技だというなら、驚愕の演技力だ。
「よかったー。てっきり【
そんな風に笑顔を浮かべる少女に呆れてしまう。
これは素なのか?
もし素だとしたら、これが一般プレイヤーの認識?
ああ、それだとしたら不味い。非常に不味いぞ。
「どうしたんですか?」
「もっと疑えよ。僕が【
「え? 【
「違うけど……」
「なら大丈夫じゃ無いですか!」
安心しきったその顔に、警戒心が解かれていく。
警戒しているこっちが馬鹿みたいだ。
とりあえず、ナイフを構えるのをやめる。ただ、決して鞘には戻さない。
僕は彼女が【
「冒険者だっていう証明が出来ない」
「取得したスキルで判断できるじゃないですか。今のって多分投擲ですよね?」
ああ、それは素晴らしい考えだ。穴だらけな事を除けば。
「初期ポイントが全員統一であるか分からないし、ジョブ特典で安くなってスキルを買ってるとも限らないだろ。もっと言えば、今のが投擲なのかも僕は証明できない」
「……確かに。けどそれを教えてくれるって事はあなたは【
反論したい気持ちもあった。
だけどその自信満々な顔を見ていると自分が馬鹿らしくなってくる。
よく考えれば、向こうが都合よく解釈してくれてるんだから乗っかれば良いだけの話だろ。
なに余計な事してるんだ。警戒心を持った方が良いとは思って余計なお節介なんで出すべきじゃ無いだろ。味方になりそうな相手ならまだしも。
そもそもの話、【
◆
彼女と一緒に周りを散策することになった。
散策しながら、色々と話していたがいくつか驚くことも分かった。
まず、彼女の姿はリアルと同じらしい。つまりはリアル美少女という奴だ。
そして、僕の姿もリアルと同じらしい。
また理解不能な事が増えたよ。リアルの姿をVRに登録したことが無い。
創作などではVR機材がヘルメット型なため、スキャンしてみたいな話をみるが、現実の機材にそんな機能はついていない。
……記憶を読み取ってアバターを構成した?
いや、流石に無いか。
「ゲーム内通貨で、あの部屋でみたジョブリストは買うことが出来るのか」
「リリムちゃんはそう言っていましたよ。ちょっと不便ですよね。本当だった一日間くらいじっくり見たかったのに……」
「まぁ、最初からじっくり見られたら不都合もあったんだろ」
そんな有益な情報も無益な情報も交換しながら僕たちは街に辿りついた。
ただ街の中とはいえ非戦闘エリアというわけでは無いらしい。
当たりを見ると他のプレイヤーもちらほらいる。どうやら森にいたらしく、通りがかっただけでも愚痴が聞こえてきた。
「ねぇ、お兄さん。私と良いことしない?」
隣に美少女がいるというのに、ヘソ出し肩だしの色気のある女が声をかけてきた。
一緒にいる子と比べると巨乳だ。僕の前に来たときにぷるんと揺れて、意思を揺らがせ精神攻撃をしている
【
「あんたジョブは?」
「あら。分からない? 【
【
【
Fate:30人以上と性行をすること
当たりを見渡すと、ちらほら【
……ああ、やっぱ危険だなこの状況。
「すみま――」
「お姉ちゃん。そんなガキより俺と遊ばなーい?」
金髪のチンピラっぽい人が僕と【
その時の【
「あら、じゃあお願いしようかしら」
その女は、笑っていた。
【
これが僕の被害妄想が見せた物かはわからない。
心が急速に冷えていくのを僕は表情の裏に隠して動揺しているのをバレないようにしていた。
「大丈夫ですか?」
「あ、ああ。その、ありがとう」
「いえいえ、様子がおかしかったので。大丈夫なようでよかったです」
隣にいる少女が癒やしになるとは思わなかったな。
だから、余計な事を言いたくなってしまう。
未だに疑っているし、なんだったら僕は彼女と合ってからずっと半歩後ろを歩いていた。
だけど、冷えた心を温めてくれたその心に、僕は敬意を払いたい。
「もしも【
「え? いやいや、何歳だと思ってるんですか!? そんな、恥ずかしい。初めて会った人となんて……」
顔を赤らめ、人差し指同士をちょんちょんとしながら言う彼女の姿は年相応だが、だからこそ危険だ。
「命がかかってる、死にたくない。そう懇願されても泣きつかれても断れるか?」
「それは……うーん。その時になってみないと」
「これは所詮VRだからノーカン。そんな思考になってOKする可能性だってあるだろうけど、絶対に誘いには乗らない方が良い。そうだな……最短で一週間。最長で一ヶ月は様子見をした方が良い」
「ん? あれ、それ以降は止めないんですか。どうして?」
「それは……その時になって見れば分かるよ」