このデスゲームに死人はいない   作:八雲せは

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第3話「仲間」

 さて、デスゲーム開始から一週間の時が過ぎた。

 色々とイベントがあったが、その中でも僕の想像通りに事が進んだ物もある。

 

愛人(ラバー)】のカーストが最底辺となった。

 

 いやいや、待って欲しい。【殺人鬼(キラー)】やら【愚者(フール)】やらのジョブが最底辺だろ。法螺を吹くなよ。

 みたいな事を一週間前なら言う人もいるだろうが、今やプレイヤー全員の共通事項として【愛人(ラバー)】とは関わるな、となっている。

 

 さて、どうしてこうなったかは単純明快。

殺人鬼(キラー)】が【愛人(ラバー)】を語って、情事を致そうとしたときに背中からぐさりとする手口が流行ったからだ。

 

 ジョブ決めの時から考えていたのだろう。

 ソロっぽい人間を中心に狙い、事が終わった後に誰かに、あんたさっきまで他の人とやってなかったか? そいつはどうした? 

 と聞かれたら

 早漏だったとか、腰が動かせないくらい楽しんだ。

 とか言えば良い。

 

 だが、そんなこと長続きするわけがない。間抜けが一人でもいれば誰かがネタばらしをする。

 ああ、いや【殺人鬼(キラー)】が【殺人鬼(キラー)】を返り討ちするパターンもあるか。同じジョブ同士、思考も似ているのだろう。

 逆に殺して、それを5回繰り替えす。逃走路を確保して、失敗した場合は逃げて被害者として手口を暴露。成功した場合は5人殺せるまでこれを繰り返せば良い。

 無事Fateをクリアできたら手口を公開。そいつはもう誰かを殺す必要が無いという信頼を得られる、って戦法だ。

 

 また、逆に【愛人(ラバー)】に客として【殺人鬼(キラー)】が対応し、殺されるパターンもある。

 おかげで【愛人(ラバー)】も生き残るために性行をしなければならないのに、生き残るためにそれが出来ないという状況に陥っている。

 

 どこから手口が広まったのか情報を集めておけばよかったな。予想していたことだからって、情報取得を怠っていた。

 とにかく【愛人(ラバー)】の地位が最底辺になったのはこれが理由だ。

 

殺人鬼(キラー)】と【愚者(フール)】は表だって自分のジョブを公開するわけも無い。

 だが、【愛人(ラバー)】は不特定多数と性行をするためにジョブを公開するのが最も手っ取り早い。だが、それをすると警戒される。

 

 そんな【愛人(ラバー)】のジョブ特典であるスキルは、決して強くない。だからこれからソロで強くなろう、やっていこうというのも難しいだろう。

 弱い彼らを好き好んでパーティーに入れるような酔狂な人間も少ない。彼らはまさに今、崖っぷちにいるだろう。

 まぁ、彼らのことはどうでもいいか。僕とは関係の無い話だ。

 

「で、報酬は僕4でいいのか?」

「ああ、お前さんが4。あんたらと俺は3だ。報酬を取りに行って貰ってる間でこっちで決めさせて貰ったぜ」

 

 とある酒場で料理を囲みながら、報酬の取り分を改めて確認していた。

 メンバーは【反逆者(リベリオン)】の『A』と【共同体(ペアベンジャー)】の『ファットマン』と『かぷちーの』だ。

 Aはがたいのいい厳つい大男。最初見たときは厳つすぎて警察とかの威圧感が必要な仕事してるのかと思ったほどだ。

 ファットマンは大学生の優男。線の細いイケメンでゲーマー。

 かぷちーのはファットマンのリアルの彼女だ。清楚な人で優しい。

 

 このメンバーでとあるサブクエストをクリアしたのだが、その際の情報を多く提供したり、矢面に立ち危険な場所に一番出向いたりしたのは僕と言うことで若干多くの報酬を貰っている。

 

「いやー、流石【攻略者(プレイヤー)】。強かったな」

「そっちこそ。【反逆者(リベリオン)】だって強いスキルがそろってたじゃないですか」

「僕たちのこっちのスキルは二人と比べると見劣るからなぁ」

「何言ってるんだか。ペア前提のジョブなんだから、二人の総合力で見れば充分強いだろ」

 

 この三日間くらい常に行動を共にするメンバーだ。多少なりとも友情とかを感じ始め絆が芽生え……る訳がない。

 三人とも、有能すぎて逆に警戒心を抱いてしまう。

 Aは直接的な戦闘に限れば僕に劣るが、小細工などの技能は僕よりも上。準備期間などがあったら僕は負けるだろう。

 ファットマン&かぷちーのは単体ではそこまでだが、二人そろったときの能力は爆発的だ。そこまで、と表現したが元々が大学生な事でゲーマーな事もあり基本的な技能はかなり高い。

 

 そもそも信頼できる人間がいるというのがずるい。こっちは疑心暗鬼でいるというのに、この二人はギシギシアンアンときたものだ。

 羨ま……じゃない。いや、羨ましいけど羨ましくない。ダメだな。嫉妬で頭がおかしくなってる。

 とにかく僕たちは中々に優秀なメンバーだ。だからこそ、欲が出てくる。

 

「そういえば『南琥珀の虎人形』について何か知ってることはありませんか」

 

 何気ない会話の雑談のように聞いたが、先ほどまで和やかな筈の空気が霧散した。

 三人とも口を閉じ、お互いの出方を待っている。

 

「どうして急にこんなこと言い出したのかっていうと、メインストーリーの中にこの単語が出てきました。知っての通り、『南琥珀の虎人形』は収集家(トレジャーハンター)のFateの一つ。つまりは、先に入手すれば高額で売れる」

 

収集家(トレジャーハンター)

 Fate:トレジャーリスト内にある宝物を一つ以上ゲーム終了時に所有していること

 

『南琥珀の虎人形』っていうのはこのトレジャーリストに書かれている宝物の一つ。

 

 これが恐らく僕しかまだいけていない領域で情報が流れてきた。

 と言っても、もしかしたら他の場所から情報を入手している人もいるかもしれない。更に言えば、既に入手されている可能性だってある。

 僕はあくまでも攻略組。メインストーリーを優先的に進めていてサブクエストは省いている。

 

 だからこの三人が何か情報を持っていないか知りたい。

 デスゲームが始まってまだ一週間。自分のジョブと関係ない物を優先的に調べるほど三人とも暇じゃ無いはずだ。

 なら、偶然耳にしたちょっとした情報くらい教えてくれても良いんじゃ無いか?

 

 僕が情報に金を払う人間だって言うのはこの三日間で分かってるだろ。

 それとも

 

「無言なのは、本当はジョブが【収集家(トレジャーハンター)】だから教えられないから…………とか」

 

 静寂が、当たりを包む。ここが酒場だとはいえ、非武装地帯ではない。PKだって可能な場所だ。

 ひりついた空気。僕を探るような目線を向けられるが、こっちも向けているのでしょうがない。

 さて、どう出る。

 

「かはっ。そりゃ、ちょいと疑いすぎだぜ。いや、俺たちがお前を疑いすぎなのか。お前としては、疑いなんて殆ど無いようなモンだろ?」

「疑ってはいますよ。だけど、正直どうでもいい。【収集家(トレジャーハンター)】だったら出世払いって事で融通しようかって提案しようと思ってただけですから」

 

 Aが、がははと豪快に笑う。おかげで僕たちの中にあった緊張がほぐれ、ファットマンが苦笑いを浮かべた。

 

「人が悪いですよ。実際は僕たちが別のジョブがどうかなんて疑ってないでしょう?」

「私たちの【共同体(ペアベンジャー)】は騙るのにはむいてませんからねね」

「俺の【反逆者(リベリオン)】だってそうだぜ」

 

共同体(ペアベンジャー)】は二人一組。ペアがいないと弱いスキルばかりだ。デスゲームで信用できる相手を見つけるのだって大変なのに、そのジョブを騙るなんて正気じゃない。もっと騙るのに良いジョブなんて沢山ある。

反逆者(リベリオン)】だってそうだ。【反逆者(リベリオン)】の割引されるスキルは、素の状態で取得しようとすると、かなりのptを消費しなければならない。これを騙るというのなら、最初からかなりの覚悟が決まった人間と言うことになる。他にもっと良い選択肢があるだろう。

 

「ええ。それで、どうですか。何か情報は」

「こんな酒場で話すようなことか?」

 ぎろり、とAが周囲を睨む。あからさまに聞き耳を立ててた奴らは慌てたように酒を呷っていた。

「まぁ、【収集家(トレジャーハンター)】から接触があるかもしれませんし」

「襲われる可能性は考えないのか?」

「返り討ちにしてやりますよ」

 

 僕のジョブ【攻略者(プレイヤー)】は戦闘力はジョブの中でも最上位に当たるだろう。更にメインストーリーをガンガン進めている俺のレベルはプレイヤーの中でも最上位レベル。 

収集家(トレジャーハンター)】は宝物入手のためにサブストーリーや情報収集などをしていて、レベルは僕未満。しかも特典の割引されるスキルも、探索といった直接戦闘とは関係の無いスキルが多く、戦闘になった場合僕が勝つだろう。

 

「持ってるぜ。お前が知らないであろう情報をな」

「それで、売ってくれますか? もし知ってる情報だったとしても、値下げとかはしない。先に提示した額を払います」

「まぁ、まて。そうじゃねぇ。俺も噛ませろ。一儲けしようぜ」

「あのー、僕たちは残念ながら情報は持ってません。だけど、一緒に行かせて貰えませんか?」

「こんな場所で大々的に話していれば、誰かに襲われるかもしれません。それに、宝物と言うほどなのですから簡単に取得できるとは思えませんし、信用できる戦力が欲しくありませんか?」

 

 予想してなかった展開だ。あまり誰かと長い間付き合うつもりはないんだが、彼らの言っている事も一理ある。

 このゲームがデスゲームなのかは未だに分からない。ただ、一つ分かるのは死んだらこのゲームに復帰は出来ない。実際、このゲームから何人も人が消えている。

 そんな中、ソロで目立つイベント攻略は危険をはらむ。

 

 ソロプレイもこのあたりで潮時か?

 一人でいれば目立たないし、面倒ごとも減る。多くの人間に顔だけ売っておけば少なくとも敵対はされないと考えていたが、考え直す必要が出てきただろうか。

 

「分かった。やりましょう。僕たち四人で山分けで一稼ぎだ」




次投稿:2023/07/30 17:00
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