にじさんじヤンデレ物語 作:にじさんじヤンデレ委員会非常勤員
そのため、そこで得た情報を前書きか後書き部分で紹介していこうと思います。
異論は認めます、ググっただけなので間違ってたら教えてください。
つよつよケルベロスのコーナー①
戌亥さんの有名なセリフ「犬じゃない、ケルベロス!」ですが、あれ本当の意味でそうなんですよね
ケルベロスは"三頭の犬"や"地獄の番犬"と誤認されていますが、正確には犬ではなく悪魔です。
ケルベロスが登場するのはダンテ氏の「神曲」地獄篇ですが
翻訳によりけりですが、そこでのケルベロスは「犬のように吠えた」「犬の如く、吼えたてる」と表現されているだけで。
登場時も「三つの頭が合体した獰猛な怪物ケルベロス」と見た目ですら"犬"とは表現されていないのです。
さらに、訳される前の表現では「demonio Cerbero」と書かれており、demonio = 悪魔、魔王、サタンの意味を持ちます
つまり「悪魔ケルベロス」となります。ケルベロス自身神の子孫なので、元をたどればサタンと同じ神に連なる存在です。
結論、戌亥さんの種族はイヌ科ではなく悪魔となります。
なので、戌亥さんの「犬じゃない、ケルベロス!」は「犬じゃない、(悪魔の)ケルベロス!」と解釈できます。
というわけで、皆さん戌亥さんを崇めましょう。
犬カフェ経営者の朝は早い。薄っすらと太陽が昇り始めた頃が大体の起床時間となる。
まだ営業を始めて一年と少し、微かに残る睡魔を振り払うようにしてベッドから起き上がる。
なぜなら、毎朝欠かさず行わなければならない習慣があるからだ。
「メルルおはよー、ミュウおはよー、ハッチおはよー」
俺のお店の稼ぎ頭達への挨拶だ。
ゲージに入っている従業員たる彼ら彼女ら(犬)への挨拶だ、犬達との円滑なコミュニケーション。それこそが何もできない若造が一人でカフェを経営できている大きな要因なのだ。
俺が挨拶と共にゲージを開けると、犬達は吠えずに喉を小さく鳴らすことで挨拶を返してくれる。
「よーし、じゃあ朝のお散歩に行きたい子!」
その言葉を待っていたとばかりに千切れんばかりに尻尾を振る犬達、今日も彼らは元気だ。
全員を連れていくことはできないから、三回に分けて散歩を行う。
「はーい、足を拭こうなー」
帰ってくれば全員の足を拭いていく。
室内でサービスを提供する都合上、犬達の足に汚れがあってはいけないから。
普段は聞き分けの良い犬達も、この時ばかりは僅かばかりの抵抗を見せる。
「みんなー、ご飯だぞー」
散歩が終われば朝ごはんの準備だ。
平均より少しだけ少ない量を一匹一皿に分けていく。
「ハウス!」
掛け声でゆったりと寛いでいた犬達が自分のゲージに入っていく。
全員が入ったことを確認して、それぞれのゲージに餌を置いていく。
犬達が食べている間に今度はカフェの掃除に取り掛かる。
「フフフン~フンフフン~」
鼻歌を歌いながらルーティンのように掃除を終えると、ようやく俺は自分の朝食を用意する。
掃除の後に朝食をとるのは、食べた後だと掃除する気にならないからだ。
朝食を食べ終えて暫し犬達と戯れる。
何気にこの時間が重要だったりする、彼らの体調やらテンションをここで見ていくのだ。
「掃除よし、配置よし、食材よし、コップよし、皿よし、犬達よし!」
忘れっぽいため一通りの作業が終われば、一年前に作って壁に張った確認リストを指さし声出しでチェックしていく。
開店当初、慣れていないのもあったが、食材が足らなかったり掃除を忘れていたりと失敗ばかりだった。
このチェックを終えるころには、俺の意識も仕事モードへと切り替わる。
「今日も働くぞー!」
一人経営ということもあり、自分を奮い立たせるための独り言が増えたのが最近の悩みだ。
店の入り口に看板を立てて、closeの札をopenにひっくり返す。
この時点で大体7時半。こんなにも早く開店するのには理由がある。
「おはようございまーす!」
そんな声と共に入店してくれたのは、スーツを着こなしたキャリアウーマンだ。
「いらっしゃいませー、おはようございます」
ストレス社会に生きる社会人の中には、出勤前のわずかな時間でもうちの犬に活力を得ようとしてくれる方がいるのだ。
だから我が犬カフェにおいて、朝一のお客さんはスーツ姿が多い。
「メルルちゃ~ん、おいで~」
女性のお客さんがトイプードルのメルルを呼ぶ、しかし散歩に朝ご飯を済ませたメルルは耳をピクリと動かし、片目で女性客を軽く見るだけ。
少しだけ待っていると、ようやくのっそりとした動きでメルルは女性客の膝の上に座る。そして寝た。
「奈田さん、ブラックコーヒー一つ。ホットで」
「かしこまりました、少々お待ちください」
出勤前ということもあり、この時間のお客さんは大抵がコーヒーなど飲料系のみのオーダーだ。
彼女のように高頻度で来店してくれるお客さんの場合、ある程度は事前に準備していたりする。
「どうぞ、ブラックコーヒーです」
「ありがとうございまーす」
コーヒーをゆっくりと飲みながら膝の上に陣取るメルルを撫でる、時間にして10分から20分。この時間が彼女にとっての精神的な栄養補給らしい。
「メルルちゃ~んまた明日ね~」
「ありがとうございました、またのご来店お待ちしております」
過剰な反応は見せないが膝の上にずっといてくれたメルルに、女性客は笑顔で手を振る。
そうしてこの一年で顔馴染みになった数名のお客さんを見送る。脱サラして一年も経てば「自分もあっち側だったんだよなぁ」と感慨深くも思ってしまう。
朝、それに平日ということもあり、9時前後になればお客さんはピタリとやむ。
この時間が実質的な休憩時間だ。とはいえ、ちらほらとお客さんが来たりするから俺にとっては半々といったところだが。
でも、俺はこの客足が少なくなる時間が意外と好きだ。
犬達はプロレスをしたり、追いかけっこをしていたり、寝ていたりと思い思いに過ごしている光景は微笑ましい。
いつまでも、こんな時間が続けば最高の一言だろう。
「おおきに~大将やってる~?」
どこか独特で落ち着いた印象を与える声が聞こえ、ピタリと空気が止まった。
あれほど元気だった犬達は動きを止め、クッションの上で微睡んでいた他の犬もすぐさま立ち上がる。
「い、いらっしゃいませー」
今の俺は古びたブリキ人形のように、錆びてぎこちない無様な姿をさらしているのだろう。
でも仕方ないだろ、だってお店に地獄の番犬が来たんだぞ。
犬カフェに来るケルベロスってなんだよ、うちは喧嘩防止のために犬の同伴は禁止してるんだぞ。
「戌亥さん……どのようなご用件でしょうか?」
焦るな。俺には我が従業員達を守る責務があるんだ。
臆するな。先日だって上手くお帰り頂けたじゃないか。
がんばれ。俺!
「ご用件じゃないよ、昨日言うたやん。また来るーって」
また来ちゃったかー。
お帰りは後ろですって超言いたい、めちゃくちゃ言いたい。
「えっと、うちは犬カフェでして。その……戌亥さんにご提供できるのあまりないと思うんですけど」
とりあえず要件を聞き出さないことには始まらない、要件を素早く聞き出し、対応して、帰ってもらおう。
「かまへんよ、私お金ないし。暇だから来ただけ」
そっか……ご用件なしですか。そうですか……。
どうしよう、返す方程式が見つからない。助けてピタゴラス! え、無理? そうですか……。
「……コーヒーとかお好きですか?」
「うーん、あんま飲まへんけど。嫌いやないでー」
「ではコーヒーでもどうですか? 一応お客さんからは評判良いんですよ」
返す方法が思いつかないのなら、とりあえず機嫌だけは損ねないようにしよう。
「私お金ないよ?」
「サービスしますよ。折角いらしてくれたんですから飲んでください」
「ええの?」
「もちろんです、感想ください」
次がないことを祈るが、万が一億が一でも戌亥さんがまた来てしまった日に向けて対策しないと。
生存に思考を全部りしていると視界の端に一枚の紙が写る。
『注意! カフェインは犬に毒! 絶対に飲ませないでください!』
それはコーヒーを頼むお客さんに向けた注意喚起のポスターだった。
戌亥さんの見た目は犬耳の生えた美人さんだが、中身はデカい三頭の犬……。だ、大丈夫なのだろうか?
「あ、あのぉ……戌亥さんってコーヒー飲んでも大丈夫なんですか?」
「へ? なんで?」
「い、いえ。その、地球の犬ってカフェインが毒なんですよ。だから戌亥さんは大丈夫なのかなーっと」
俺からすれば一応は善意のつもりだ。後で恨まれて殺されたくないし。
そんな浅はかな企みをしたからか、俺は自分の犯した過ちに気づくことができなかった。
「私を地球のただの犬と同じ言うんか?」
「あ……」
や、やってしまった……。
そりゃそうだよな! 俺だって犬基準で体の心配されたら不快だわ!
え、犬はカフェインで死ぬけど、お前大丈夫? なんて人に向かって言えるわけがない、ましてや相手はケルベロス。
はい、俺の人生終わりでーす。
「どうなんや? 私を馬鹿にしてるんか? 答えや」
「そそそそそその! すみませんでした! ただ地獄の番犬たる戌亥さんのお体のことを全く知らなかったので、その、万が一が起きないように確認しないとと思いまして!」
「それで?」
「地球の犬と一緒くたにしてしまい申し訳ございませんでした!」
恥も外聞もない、俺は人生で初めて土下座をした。
冷えた床の温度は、まるで数秒後の自分の体温のように感じて体が震えてしまう。
「……なぁ」
額を床に付けているから戌亥さんの表情は見れない。だが地を這うような声はまさしく地獄の番犬、ケルベロスの一端だと本能で理解させられた。
「は、はい!」
「私のために言ったってことでええんよな?」
「はい! 戌亥さんのためです!」
体だけじゃない、声も震える。
そんな俺の後頭部に手が添えられる。
「もう一つ聞いてええか?」
「はい!」
「なんで頭下げてるん?」
「え?」
思わず顔を持ち上げる。
そこにあったのは口の端を吊り上げた戌亥さんの顔だった。
「アハァー! 奈田くんおもろいなー!」
声はさっきまでの恐ろしく、畏怖してしまう地獄の声ではなくなっていた。
もしかして俺、揶揄われてた?
「い、戌亥さん?」
「そんな怖がらんでええのに! ちょーっと揶揄っただけで全力で謝るんやもん、面白くてしかたないわ」
心底面白いと満面の笑みを見せる戌亥さん。
バンバンと女性とは思えない力で肩を叩かれたことで、ようやく緊張の糸が緩んだ。
「は、はぁ……もうめちゃくちゃ怖かった……」
絶体絶命からの解放は全身の脱力によって表現され。顔どころか全身にかいてしまった冷や汗が気持ち悪く感じた。
「あははは、なんかあれやね。奈田くん揶揄いたくなるなぁ!」
「本当に勘弁してください、誰だってケルベロスにああ言われたらこうなりますって!」
「お、なんや反抗期か? お母さん悲しいわぁ……」
オヨヨョとわざとらしい鳴きまねをする戌亥さん。
なんだろう、凄くうざい。
「お母さんなんて年齢じゃないでしょ!」
「何言うてん、数えてないけど数百年は生きてんねんで。人間で言うたらもうめっちゃお母さんよ!」
「ならもっとお母さんなんて年齢じゃないでしょ!」
数百歳のお母さんがいてたまるか!
というか、こんな美人でも数百年も生きてるのか。そう考えるとめちゃくちゃ年上、というかおば――
「なんや?」
「年上って魅力的ですよね」
「せやろ」
言葉には気をつけよ。
そのあとコーヒーを出した。
戌亥さんにブラックコーヒーは苦すぎたようで、砂糖とミルクを入れるといたく気に入ってくれた。
「美味しい! また来る!」
しばらく、いや半日以上店の片隅を占領した戌亥さんは、次の日からこの店一番の常連になった。
なお、オーナー承認の無銭飲食客だ。