にじさんじヤンデレ物語   作:にじさんじヤンデレ委員会非常勤員

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感想に感謝です
気怠さと喉と鼻が色々あれですが、リゼさん編は完走させるようにしますので……


リゼ17

 リゼ様が中学三年生を無事に迎えられた。

 

 入学当初は国王の一件もあり、クラス内での人間関係に苦心されていたリゼ様だった。

 しかし、元々が利発的な御方だ。一言二言でも言葉を交わせば自然と交流の輪は広がっていった。

 

 文武両道、気品を纏いながらも心根のお優しいリゼ様に、クラスだけではなく学年全体が敬愛の視線を向けるようになっていた。

 

 二年に上がり、当時の生徒会長から直々の使命でリゼ様が生徒会長を引き継ぐこととなった。

 

 新たに入学してくる一年生へ向けた挨拶を行ったリゼ様は、新学期というのに初日から信徒を獲得するに至る。

 

 清廉と全生徒の視線を受けてもなお凜々しく気高いそのお姿はまさしく皇女の姿。

 ヘルエスタ王国で配信された際には、悲しくもカメラには収まりきらない勇姿。

 15歳を迎えられるに当たり、今一度ヘルエスタ王国の発展と繁栄をリゼ様ご自身が高らかに示したのです。

 

 さしあたって――

 

「ナナシダ」

 

「はい」

 

「これ、本当に送ってるの?」

 

「一言一句変わらず送ってる」

 

「やぁああああめぇええええてぇえええええ!」

 

 絶叫。

 次いで俺の報告書をビリビリに破り捨てていくリゼ様。

 

 何がご不満か。

 

「不満しかない! てかすっごい恥ずかしいよこれ! うぁあああああやっぱり生徒会長なんかなるんじゃなかったあああああ!」

 

「リゼさん以外に生徒会長が務まるわけないだろ、国王陛下も涙を流してお喜びに――」

 

「それが嫌なんだよぉ! 皆ドン引きしてたじゃん! 私とお父様を交互に見て「うわぁ」て顔してたじゃん!」

 

「はっはっはっは」

 

「笑って誤魔化さないで!」

 

 確かに、関係ない入学式に参加する国王は毎度のことながら周囲からの注目を独り占めしていた。

 

 リゼ様のご友人やクラスメイトは苦笑いを浮かべていた所を見るに、慣れれば風物詩的な扱いで済むんだろうけど。

 当事者であるリゼ様からすれば看過できないだろう。

 

「もう、今度お父様にガツンと言ってやるんだから。それよりもナナシダ早くして!」

 

「はいはい、すぐに」

 

 食べ終えた夕食の皿を洗っていた俺は手早く作業を済ませる、そしてソファの上でテレビを見ているリゼ様の隣に腰掛ける。

 

 間髪入れずにリゼ様は俺の脚の間に座り直し、そのまま体重をこちらにどっしりと預けてくる。

 

 華奢な体躯からは羽のような柔らかな感触が伝わるのみで、重さなんて物は一切感じられなかった。

 ふわりと爽やかな香りが鼻をくすぐる。

 

「んふふ~」

 

 機嫌良くハミングを奏でながらリゼ様が下からこちらを見上げる。

 

 ……うーん、この二年間で着実に距離を縮められている気がする。

 いや、でも添い寝とかは前からしてたしこれぐらいならまだ大丈夫か?

 

「ね、ナナシダ。私もう三年生だよ、上級生だよ? 凄くない?」

 

「凄い、他の人には真似できないな」

 

「……真似るとか以前の話だけどね、それ」

 

 リゼ様は一人ブツブツと呟きながら、暇そうにだらりとしていた俺の右手をいじり始める。

 性別の違いから生まれる手の大きさに対抗するように、両手で抱えるようにして持たれてしまえば抵抗もなにもない。

 

「ナナシダの手って大きいよねー、あとゴツゴツしてるー」

 

「訓練の賜物だな、ナイフでも切れない特別製だ」

 

 ふーん、と言いながらも俺の手を放すつもりがないのか、リゼ様はしきりに無抵抗な手をこねくり回す。

 

 指の腹を押したり、関節ごとに曲げたり、手の甲を擦ったり、あまつさえご自身の頬に宛がうように俺の手を我が物顔で振り回す。

 

「男の手なんか触ってて楽しいとは思えないんだけど……」

 

「む、その言い方なんかやだなあ。男、じゃなくてナナシダの手だから触ってて楽しいの! そこんとこ間違えないでよね」

 

 いまいちピンとこないが、リゼ様的にはどうやら重要な違いらしくフンフンと鼻息を荒くする。

 たとえ男でも俺でも等しく一緒な気がするが、ここで求められているのは同意。

 

「なるほど、理解した。俺も触られるならリゼさんが良いな」

 

「うひゃ! ちょ、ちょっと急に変なこと言わないでよ! ビックリしちゃうじゃん!」

 

「え、あ、その……すみません、でした」

 

「う、うむ! 分かればよろしい!」

 

 頬を赤くするリゼ様。

 リゼ様、というよりは女性特有の乙女心は未だに理解しがたい領域だ。

 

 最近ではリゼ様から直接的な好意を向けられた記憶もないし、ようやっとリゼ様も年相応の恋愛観を習得なさったのだ。

 

 あれほど熱烈に好きだと言われた過去を思い返せば、残念だという気持ちは少しばかりある。

 でも、それは着実に進められていく巣立ちの準備を見ている親心に近いのだろう。成長を喜ぶと同時に一抹の寂しさを感じてしまうものだ。

 

「リゼさん、学校は楽しいか?」

 

「毎日聞いてくるよね、それ。昨日と同じく楽しいよー。ナナシダも一緒だったらもっと楽しいけど……」

 

「そう言って貰えるなら俺も嬉しいな。見た目が若ければ護衛って名目で生徒に扮することはできるけど、流石に……な?」

 

「そうかなー。一年目とかならともかく、今ならナナシダぐらいの身長の男子とかいるよ? 見た目だって今から中学三年生です! ていっても通用すると私は思う」

 

 少し不貞腐れ気味に答えるリゼ様の言うとおり、見た目は中学三年や高校ぐらいに鳴れば問題はなくなる。

 もしもの場合は老け顔と言っておけばそれまでだし、護衛としてなら同じクラスに入るのが最も効率的なんだよな。

 

 しかし。

 

「リゼ様がそう言っても、最終的な採決を行うのは国王陛下。俺がとやかく言ったところで残念だけど無理だよね。ま、一年目ならいざ知らず今ならお友達もいるじゃん」

 

 今のままでも護衛は問題ない。

 ならば俺という不純物はリゼ様の通う学校の中に入れる必要がないのだ。

 

 と思ってるのは俺や国王だけで、さらに頬を膨らませ始めたリゼ様は大変不服なようで。

 

「ナナシダと一緒に授業を受けたいの、一緒の制服着て、一緒に登下校したいの!」

 

「してるじゃん、いつも」

 

 なんだったら今日の授業内容をこの場で再現できる。

 登下校だって護衛のため常にお側にいるのだ。

 

「影に隠れてね! 私の視界に入らないんじゃダメなの!」

 

 リゼ様が俺の太ももを叩きながら抗議する。

 なんと平和的なデモ活動だ。

 

「ていうかお父様に言えばいいだけじゃん! 私天才!」

 

 手を叩いて閃いたとばかりに携帯を取り出すリゼ様。

 

 え、今から電話するの?

 

「もう夜だぞ、こんな時間に電話なんかしたら国王陛下に無用な詮索をされるぞ?」

 

「あ、そっか」

 

 日を跨ぎかけている時計を指しながら伝えれば、少し落胆しつつも手に持った携帯を手放すリゼ様。

 

「国王陛下への電話は明日にして、今日はもう寝た方がいい」

 

「はーい」

 

 元気の良い返事とは裏腹に、リゼ様は一向に動こうとはしなかった。

 リゼ様は俺の上に座っているため、無理矢理に立つのも憚られる。

 

 どうした物かと思っていると、リゼ様が振り返りながら首元に抱きついてくる。

 

 背を預けられたときとは違う、女性特有の柔らかさとサラサラとした髪が視界の半分を占領した。

 

「リ、リゼさん……?」

 

 成長したことにより女性としての体へと成長されたリゼ様。

 否応にも感じる女性としての魅力に困惑しながらも、どうにか平静を保つ。

 

 そんな葛藤を知ってか知らずが、視界の少し下から見つめてくるリゼ様が悪戯に微笑む。

 

「んふふー、ベッドまで連れてって。ナナシダ」

 

 どうやら移動するのが面倒だったようだ。

 そうと分かれば話は早い。

 

「了解」

 

 短い返答。

 抱きついてきたリゼ様はを落とさないように抱きかかえた俺は、極力揺らさないように寝室へと向かう。

 

 ダブルよりも少し大きいサイズのベッドが占領する寝室に到着し、そのままリゼ様をベッドに横たわらせる。

 

「夏が違いとはいえ、夜は冷える。しっかりと布団を被るんだぞ」

 

「大丈夫ー、ナナシダがいるんもーん」

 

 そう言って俺が掛けた布団を開けて早く入ってこいと催促される。

 

 結局中学校に入学してからこのルールが消えることはなかった。

 好きな人ができれば自然と消えると思っていたルールだが、未だにリゼ様のお心を射止める益荒男は現れないようだ。

 

 因みに、リゼ様と付き合うには俺に一撃入れられるぐらいじゃないとな。軟弱な野郎はお父さん許しません。

 

「ナナシダー早くー、寒いよー、凍えちゃうよ-」

 

「はいはい」

 

 慣れた様子で安い演技を披露するリゼ様。

 そしてなんだかんだと慣れてしまったのは俺も一緒で、平然と迎えられたベッドの中に入っていく。

 

「あー、ナナシダあったかー……」

 

「人間湯たんぽなら誰にも負けないという自負がある」

 

 当然のように俺の胸に顔を埋めながら抱きついてくるリゼ様。

 本人曰くこれが一番安心するらしく、暫くすれば俺の右か左の腕が抱き枕へと変貌を遂げる。

 

「スー……ハァ……スー……ハァ……」

 

 そんな状態で、リゼ様は数回ほど深い深呼吸を繰り返す。

 過去にこの儀式を止めて貰うように進言したときは大層反対された、その際の剣幕は凄まじく俺もたじたじになってしまった。

 

 最終的に涙で潤ませた瞳に負けてしまい、リゼ様は水を得た魚のように遠慮をお殴り捨てになられたのだった。

 負けんなよ俺。

 

「すぅ……すぅ……」

 

 しかし、リゼ様の心が落ち着くというのは本当らしく。

 深い深呼吸は次第に規則的な寝息へと変わっていった。

 

 数十分も経てば完全に睡眠状態に入ったのか、リゼ様の体は完全に脱力した物へと変わる。

 

「お休みなさい、リゼ様」

 

 リゼ様が寝たことを確認した俺は、気付かれないようにゆっくりとベッドから這い出る。

 

 昔は抱きつかれて動けなかったが、抱きつかれた状態からの脱出も長年の積み重ねでリゼ様を起こすことなく、静かにベッドから離脱できるまでになったのだ。

 

「いって参ります」

 

 私服姿から仕事着へ装いを変え、玄関にて届かぬ挨拶を送る。

 そして深夜、俺は夜闇の中で明るく照らされ続ける街に向けて跳躍する。

 

 リゼ様は確かにご成長なされた。

 

 学友は良き教養を両親から得ているのだろう。異国人であるリゼ様に対しても偏見ではなく、違いを個性と捉えて接してくれている。

 リゼ様が学校生活を楽しいを感じてくださっているのも、ひとえにそういった周囲の人の根の良さが大きく影響している。

 

 リゼ様は確かに笑顔が増えた。

 

 心を許せる者が近くにいるというのは精神に良い影響をもたらす。

 それが俺だけではないと言うのはただの自己満であり、リゼ様のご学友には感謝につきない。

 

 だからこそ、蛆虫は幾らでも湧いてくる。

 

「や……べ……て……」

 

「ひ、ひぃい⁉」

 

 暗い路地裏、少し歩けば眠らない街に通じる場所も脚が折れ曲がっては近づくことすら難しいだろう。

 群衆の喧噪は、情けなく地面に転がる蛆虫の嘆きをはねのけてしまう。

 

「質問を続けよう……お前の後ろには誰がいる?」

 

「だ、だだだだだ、だれの――ぐぎゃぁああああああああ!」

 

 俺を中心に無数の男達が呻き声を、または声すら上げること叶わずに倒れ伏している。

 

 今し方左足を潰した男はその中でも一際よい鳴き声を上げる。

 

「リゼ様を襲うなどと抜かした愚か者のことだ、二度はない。お前らをそそのかしたゴミの居場所を吐け」

 

「こっこここここっこっここんんな、こどじでっ……! だだで、ず、ずむどおぼうなよ!」

 

 痛みによって吹っ切れたのか、男は涙ながらに俺を睨み付ける。

 おおよそ殺されないとでも思っているのだろう……なんと愚かな。

 

「日本人は平和ぼけしているから面倒だ……よく見ていろ」

 

 比較的元気、といっても腕とかは折れ曲がっているが。転がっている中から手頃な奴を片手で持ち上げる。

 

 微かに届く光が血塗れの顔を照らす。

 

「殺されないと思っているなら……それは勘違いだ」

 

 そして男に見えるように、拾い上げた男の首元にナイフを押し当て、ゆっくりと引く。

 

 アニメで見るような血しぶきは出ない、代わりにどろりと湧き出るように血が流れ、暫し痙攣を発症。

 暫く抑えていると完全に動きを止めてしまう。

 

「し、ししししん⁉ しっ⁉ しっ⁉」

 

 壊れたプレイヤーのように簡単な単語一つ言えないほど、顔を青くする男に再度近づく。

 

「もう一度聞く、もしも断れば次の奴を……そうだな、今度はお前の手で心臓を刺させてやる。中途半端な畜生から本当のクズになれるぞ」

 

「い、言う! いうがら! んぼうやべでぐれ!」

 

 流石わ世界一安全と呼ばれる日本だ、拷問をするまでもなく脅し一つでなんでも吐いてくれる。

 本国でもこれぐらいの連中だったら俺の仕事も楽だったんだけどな。

 

 精神的に追い詰めすぎたのか、ごろつきのリーダー格として堂々としていた男の姿はそこになく、情けない一匹の畜生に成り下がっていた。

 

 そんな男からあらかたの話を聞き終えた俺は、男を含めたその場にいる全員の首を切り落とした。

 

「……ナナシダ様」

 

 タイミングを見計らっていたように、暗闇から這うように影の一族の連絡要員が姿を現す。

 

「はぁ、リゼ様が様付けを嫌う理由が身にしみて分かるよ……。まあいいや、部隊に連絡を入れろ。トップ以外は殺して見せしめに、トップはアジトに監禁。俺があとで直接尋問する」

 

「御意。ナナシダ様はどのように」

 

「俺は戻る。その前にシャワーと着替えだな。今のままじゃ血なまぐさすぎるか……行け」

 

 通信機器は暗号化されているからこんな直接指示を出す必要はないのだが、諸々を考えれば今も昔も顔を合わせてのやり取りが一番安全だ。

 

 連絡要員が再び影に消えていくのを見送った俺は、死体をそのままに後処理だけ済ませてその場をあとにした。

 

「ただいま戻りました」

 

 部屋を出てから1時間。

 できる限り最速で戻ってきた俺は音を出さずに寝室へ向かう。

 

「すぅ……すぅ……」

 

 ベッドでは眠り姫の寝息が静かに繰り返されていた。

 起こさないようにベッドに潜り込み、いつもの定位置に戻る。

 

「ん……んん……」

 

 すると、待っていたかのようにリゼ様が抱きついてくる。

 

 寝ながら見せるこの執着はどこから来るのだろうか。

 別に寝なくても業務に差し障りはないが、寝ないとなぜかリゼ様にバレて怒られてしまうため無理矢理に目を閉じる。

 

「リゼ様、お休みなさい」

 

 不思議と襲ってくる微睡みに、俺は身を委ねた。

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