にじさんじヤンデレ物語   作:にじさんじヤンデレ委員会非常勤員

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エタってはないんや……ただ残業が100超えそうなだけなんや



アンジュ・カトリーナ
アンジュプロローグ


「私がもっと早く治療薬を錬成できたら君の両親は助かってた。協力してもらったのに……ごめんなさい」

 

 同い年の赤色のショートヘアの女の子に頭を下げられたのは、両親が流行り病で死んでから1年経ったぐらいの時。

 

 その時の俺は7歳だった。

 

 流行り病の治療薬のため、文字通り身を捧げた両親のことは悔しくて仕方がなかった。

 だけどその怒りは決して目の前で同い年とは思えない理性的な少女に向けたものじゃない、少女のように抗うことすらできなかった自分に向けたものだ。

 両親と共に戦った小さな英雄に向けるべき感情は複雑だったけど、いくつかはハッキリと言葉にできた。

 

「ありがとう。君は僕の両親の敵を取ってくれた」

 

 感謝の言葉が自然と出てきたのは当然だった。

 

「次は僕も一緒に戦う、僕を君の弟子にしてくれ」

 

 ヘルエスタ王国の危機を救ったとても小さな錬金術師、アンジュカトリーナに俺は頭を下げた。

 

 

 俺には朝のルーティンがある。そりゃ孤児院を出て既に10年以上この家で生活しているのだ、25歳というおっさんとも言えないが、若いとも言いづらい年齢にもなれば決まった行動の一つや二つあるものだ。

 

 まず、目が覚めてから数分はベッドの上で覚醒直後のまどろみを味わう。

 意識がはっきりとしてきたら今度はコップ半分程度の水で口を数回ゆすぐ。

 ポッドのお湯が準備し終わる間に朝食を作る。

 お湯が沸いたらインスタントコーヒーを入れる。

 用意し終わった朝食とコーヒーを窓際に配置したテーブルに並べていく、小さくとも一戸建ての一人暮らしが与えてくる寂しさとともにゆったりと朝食を味わう。

 

「あー眠い」

 

 ルーティンとも言えない普通の朝の風景。

 

 ドゴオオオォン!

 

 突如発生した空気を揺らす爆発音が響かなければ、俺はそんな平凡な一日を迎えるはずだった。

 冷静になるんだ。まだアイツが仕出かしたと決まったわけじゃあない。ヘルエスタ王国には数多の優秀な錬金術師がいるわけだし、毎度毎度アイツがポンポンと研究所を爆破させるわけがないんだ。

 赤いショートヘアを揺らしながらへらへらと笑う悪友の顔が思い浮かぶが、普段の行いがそうだからと一方的に決めつけるなんてよくないことだ。

 

 ドゴオオオォン!

 

 それから何度か心臓に悪い爆発音が外で響くのをじっとして耐える。

 ようやく不規則に聞こえる爆発音が止んだことに安堵した俺が、一日の活力を求めて朝食に手を付けようとしたときだった。

 

「いやー! まいったまいった! また失敗しちゃったよ~!」

 

 一階建ての小さな我が家の扉がノックもなしに開け放たれ、テンションの高いアルトボイスを伴った闖入者に俺は辟易とした視線を向けたのは仕方のないことだ。

 聞かない日が無いと言えるほどに聞きなれた声の主は、ズカズカと我が物顔でリビングに入ってくる。

 

「お! ナナシダ君みっけ、丁度良く朝食のタイミングだったんだね」

 

「お前の分は無い。さっさと出て行ってくれ」

 

「またまた~、そんなこと言って私の分を用意してくれるのがナナシダ君じゃん?」

 

 闖入者は家主に断りもなく、へらへらとした笑みを浮かべてキッチンから作り残しの料理を勝手に盛り付けてくる。

 

「アンジュ、俺はお前に何回言えば扉のノックと朝食泥棒を辞めさせられるんだ?」

 

 どうせ言ったところでコイツ、アンジュ・カトリーナがこの皮肉を受け入れるわけがないことは知っている。だが、言わずにはいられなかった。

 

「はっはっはー。諦めるんだなワトソン君、君の物は私の物。つまり君の朝食も私の物なのだよ」

 

 子供の頃から変わらないアンジュの自由奔放な性格に振り回されている身でもあり、さらに弟子でもあり助手でもあるため否定する気は起きなかった。

 にやりと人を食った笑みを浮かべるアンジュの顔にイラっとはしたので、とりあえずデコピンだけしておく。

 

「あいたっ!?」

 

「ジャイアニズムに俺は屈せんぞ、そのさらに盛った料理は俺が俺のために作ったものだ、返せ」

 

「へっへーん! やなこった! これはオイラのもんだもんね!」

 

 デコピンを受けた額を赤くして目に涙を浮かべたアンジュは、そのままバグバグと皿をかきこんでいく。

 別に彼女の行動は今日に始まったわけではない、こんなやり取りは俺が孤児院からこの家に移り住んだ日から毎日だ。その行動が身勝手にも俺が寂しがっているなんて妄信から来ていることにも、もはやどうこう言うつもりはない。

 

 ただ、これだけは言いたい。

 

「26でオイラとか、もんとか恥ずかしくはないのか?」

 

 がつがつと飯を食べていたアンジュの体がピタリと止まる。

 

「それに他人の家に上がり込んで飯まで強奪していく26歳でもあるな、俺じゃなったら通報されて

も文句は言えないぞ」

 

 ゆっくりとした動きで皿を置いたアンジュが勢いよく体をこちらに乗り出してくる。

 

「そういうことを女の子の前で言うとかホントデリカシーなくない⁉ 私これでも美少女錬金術師なんですけど! めっちゃモテモテなんですけど! 美少女に飯の一つでも気前よく奢りやがれってんだいチクショウ!」

 

 アンジュが身を勢いよく乗り出したことで、仄かに香るアルコールと香水とは違う甘い香りから意識を背け、ポーカーフェイスをできるだけ維持する。

 

 ここで顔を赤らめたり、口ごもれば待っていましたと言わんばかりにいじられるのだ。そしてその日1日中ひたすらいじってくるこいつの相手なんてうんざりだ。

 

「少女の年齢基準を考えろ26歳一般成人女性。自分でモテモテとか言うが、殆どが同性からだろうが」

 

 アンジュは美少女ではないが美女ではある。すらっとした体と整った顔は美人と形容するになんら不足はない。唯一の欠点として魚を捌くのにちょうどよさそうな胸だが、それも一部の男性から見ればプラス要素だ。

 

 俺は大きい方が好きだがな。だって柔らかいし、ぽよんぽよんするし。

 

「同性ちゃうもん、男の人だって言い寄ってくれるんだもん。だけど直ぐに逃げられちゃうんだからしかたないじゃんかぁ……」

 

 身を乗り出したまま今度は力なく項垂れ始めるアンジュ。

 

 そう、アンジュは確かに見てくれはいい。なんだったら性格だってこの悪戯好きを除けば裏表のな

 優しい性格だ。一部の女性はその悪戯好きすら好印象らしい、そう語ったのはアンジュガチ恋被害者女性の一人。

 

 明るい性格ながら相手に寄り添おうとするアンジュのせいで、アンジュにガチ恋する女性のガチ度はかなり高い。そうなればあの手この手でアンジュを自分の物にと暴れだす輩も現れる、そして暴れた女性の矛先(物理)は大抵俺に向けられる。

 

 要はあれだ、普段からアンジュの近くにいる俺という男性の存在こそが、自分の恋路を邪魔しているのだと思い込んでしまうようで、そのたびにアンジュガチ恋女性から襲われてしまうというわけだ。

 まったくもって嬉しくない。

 

 そのくせ本人はことの重大性にあまりにも無頓着。なぜか俺が刺されかけた時でさえ「あぶなかったねー」の一言で済ませやがった。

 ……なんで俺はコイツの弟子になっちまったかなぁ。仕事よりも私生活の部分でストレスを与えてくる上司とか普通に無いだろ。

 

 話が逸れたので戻すが、そんなガチ恋女性の牽制によって、アンジュに言い寄ろうとする男どもはこと如く尻尾を巻いてしまうのだ。結果、男に一瞬だけ言い寄られて速攻逃げられる構図が出来上がるという訳だ。

 言わぬが優しさか、言うが優しさなのか。未だにこの議題に終止符が付けられない俺は、議長兼議員としてこの議題が可決されるまでパンドラの箱よろしく地中深くに埋めているのだ。

 

「そうだな、今度は逃げられないよう俺も協力するさ」

 

「な、ななしだくん……!」

 

 だから俺はそう言って彼女の肩を毎度の如く優しく叩く。いくらでも慰めてやろうじゃないか、どうせ次の男も失敗するし。

 

 ちなみに俺はこんな地雷量産機の相手はごめんだ。確かに昔はこの見てくれだし? 性格も悪くないし? いいかなー? なんて思ったさ。思った次の日に刺されかけたので、俺は早々にこの弱肉強食の世界からドロップアウトを決め込んだ。

 

 今ではサバンナの動物ドキュメンタリーを見る気分だ。たまに画面からナイフが飛び出してくるからスリリングも味わえるぞ。

 素性も知らない初めましての女性に、敵意と矛先を向けられたあの日の出来事は今でも大事な思い出さ。

 

「そうだよね! 男なんてまだまだいっぱいおるんや!」

 

 アンジュ自身こういうのは今日に始まったことじゃないからか、すぐに立ち直り再び飯を食べ始める。

 

「それにさ、もしだーれにも相手にされなくなったらナナシダ君に貰ってもらえば言い訳だしね」

 

「止めてくれ……俺はまだ死にたくないんだ……。別れてくれぇ……一生の頼みだぁ……」

 

「凄い別れようとして来るじゃん。切実すぎるじゃん」

 

 バカだろお前、俺はお前のせいで刺されかけてんだよ。つかその場にお前いただろ、目の前で見ていたはずだろ。

 

 そこでハッと気づく。危険だ、こんな話をこんな防音機能皆無のこんな場所でしていたら、どこで盗聴されているか分かったもんじゃない。

 何か別の話題を、なんて考えれば特大の案件があったことを思い出す。

 

「そう言えばさっき爆発って」

 

「ひゅ~ひゅ、ひゅ~」

 

 見れば途端に顔を反らして目を合わせようとしないアンジュ。

 

「やっぱりお前か。この後王宮に行くぞ」

 

 俺の言葉が死刑宣告に聞こえたのか、今度はこちらを見て顔を青くさせるアンジュ。

 実質死刑宣告だから反応としては正しい。

 

「な、ナナシダ君? 今日は確か重要な実験が」

 

「その大事な実験をするために大事なパトロンの信用を捨てる。なんて言わないよな? 先生?」

 

「えっと、その、あ~……」

 

「どうした、顔が青いようだが気分がすぐれないのか? シャーロック」

 

 青を通り越して顔の色素を失いかけるアンジュ。

 そんなに怖いなら爆発なんてさせなければいいのでは? とは思うが、毎回こんな調子だ。

 そして毎回反省した数日後に同じことをして、また顔を青くさせるの無限ループ。

 

「さーて、今日ばかしは年貢の納め時かもな。安心しろ長い間色々と世話になったんだ、たまには差し入れをする」

 

「差し入れって私捕まっちゃってるじゃん! え、だめ? 今日こそ本当にダメな感じ!?」

 

「知らねえよ。だから毎回やりすぎるなって言ってんのに、調子に乗るからそうなるんだ」

 

「やだあ! 実験楽しいんだもん! いいじゃん研究所の一つや二つ爆発させるぐらいさ! けが人も死人も出してないよ⁉」

 

「金が飛んでってんだよなー。稀代の天才錬金術師であるアンジュカトリーナ様のために立てられる研究所、いったいどれだけの金と人材が投資されているのか……。考えたくもないな」

 

「ひゃぁ……」

 

 ひゃぁって。なんで初めて知ったみたいな空気出してんだよ。

 

 お前が立て直すたびにあれもこれ持って注文するから、ただでさえ安くない費用が詰みあがっていってんのに。

 コイツ……。俺とあの御方がどれだけ苦労しているのか一度教えてやりたくなる。

 だが、アンジュの才能は本物だ。その才能を俺を含め周囲からの余計な些事で曇らせてはいけない、といっても結局はアンジュに自由に錬金術をして貰いたいってだけなんだけどな。

 

 アンジュの優しい性格を鑑みれば、自分のために誰かが奔走して泥をかぶってるなんて知れば、どうにか解決しようとするだろう。だが俺達が求めるのはそんな自己犠牲で尽くされた産物じゃない。

 交渉は必要だが、カードはアンジュ自身が気付かぬうちに何枚も作っているのだ、分の悪い話でもない。

 

 アンジュを安心させるためであればこの話をするべきなんだろうが……。

 

「あわ、あわわわわわわ……」

 

 壊れたテープレコーダとなったアンジュを見る。

 

 ……ま、言わないでおこう。その方が面白い。

 




ストック? んなものござらん。
あ、それとアンジュさんのヤンデレリビドーを掻き立てたいので、おすすめボイスあったら教えてくんろ(全部買えって? 金があったら黙って買ってるわ!)
しょーじきヤンデレ難易度は以下の順なので、アンジュさんのハードルだけバリ高いんです
アンジュさん > 声らない壁 > リゼさん > 戌亥さん > 社さん
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