にじさんじヤンデレ物語 作:にじさんじヤンデレ委員会非常勤員
非公式wikiからの情報ですが、戌亥さんは人狼ゲームが苦手なようですね
理由として「他の人に嘘をつかれるのが悲しくなったり」などがあるらしいです。
ちなみに、ケルベロスは冥界から逃げ出そうとする者を捕まえるらしいですね
ケルベロスは意外とマヌケな表現がされています、オルペウスの竪琴の音色に眠らされて逃がしてしまったり、好物の甘いものに夢中になっている間に逃げられてしまったり、最後には睡眠薬入りのパンを食べて寝てしまい逃げられたり。
ここからは妄想ですが、失敗続きのケルベロスはご主人様に怒られたのかもしれませんね。
あ、関係ないですけど。戌亥さんの手のひらは90℃らしいですね。
本文には関係ないんですけどね。
読書の時間を邪魔されて、あからさまに不機嫌そうな戌亥さん。
それでも諦めようとしないナンパ男、つうか戌亥さんの反応に気づいてない。
「は、早く止めた方がいいんじゃないか? わ、私が止めてこようか?」
中年のお客さん、というか山寺さん。
一戸建てローン有り、大学と高校の娘二人を立派に育てている人なだけあるわ。
見て見ぬふりをしない流石社会の大先輩、俺が別のお店で同じ状況だったら多分動けない気がする。
「まぁ大丈夫ですよ、戌亥さん強いですから」
強いと言うか、化け物というか。見合う相手の基準が軍とか国家単位な人だし。
たかが人間のナンパ男が地獄の番犬をどうこうできるとは思えないんだよなぁ。
「つ、強いって言っても女性だ。男たる我々が動かねば」
戌亥さんを自分の娘さんと重ねているのか、普段は穏やかな山寺さんが決意を固めた男の顔を見せる。
「むしろ動かない方がいいです。戌亥さん、この間強盗犯を取り押さえて逮捕に貢献したことがあるんですよ」
「そ、そうなのかい?」
「はい、ちなみに力を入れ過ぎて犯人がちょっと怪我したくらいですから。それにここは俺の店です、俺がしっかり対応します」
お客さんである山寺さんに怪我をさせるわけにはいかない。
でも頑張れナンパ男、お前が戌亥さんを釣りあげてくれればこの店は救われるんだ。
「ありがとうございます、山寺さん。椅子に座っていてください」
「なにかあったら私を頼りなさい、これでも君ぐらいの娘を持ってる父親だからな」
マージで山寺さんいい人過ぎるだろ。そりゃあんな美人な嫁さんを貰えるわけだよ。
以前、山寺さんが夫婦揃ってきたとき、驚きのあまり二度見してしまったのはいい思い出だ。
あれで50前半だというんだから、年齢詐欺もいい所だったぞ。
「ね、ついでに名前教えてよ」
「なんでお前に名前教えなアカンの、さっさとどっかいき」
「そんなつれないこと言わないでよ、何? 照れてるの?」
すげぇ……。
ナンパじゃなくてもはや煽ってるだろそれ。悲報、ケルベロスさん人間に煽られる。
俺は彼を過小評価していたのか……。彼は英雄だ! オッズは上がってしまったけど頑張れ!
なんせ戌亥さんが来てから彼女の半径3メートル、うちの愛犬達が絶対の不可侵としているのだ。
おかげで近くの席に座ったお客さんがいくら呼ぼうとも、一匹たりとも近寄らずにめちゃくちゃ落ち込まれたことがあるんだ。
悲しき被害を再び生み出さないため、君には頑張ってもらいたいんだ!
「はぁ、なんやねんお前」
「あ、ちょっとは気にしてくれた? 嬉しいな!」
戌亥さんの声のトーンが一段下がった。
アカン、こらアカンでナンパ男。
言葉に気を遣うんや! お前ならできるはずだ!
「こんな店じゃなくてもっといいところ行こうよ、俺が案内してあげるからさ」
おいコラてめぇ今なんつった?
こんな店? 言ってくれるじゃねぇか……。
「はぁ、ホンマの阿呆っておるんやな」
「えー俺がアホってこと? 可愛い顔して言うことひっどいなー、美人が台無しだよ~?」
はっ⁉ 俺が怒ってどうする。
戌亥さんの声がさらに低くなったことで逆に俺が冷静になってしまった。
時限爆弾の導火線がどんどん短くなっていくようだ。
「ま、話は向こうで聞くからさ。ほら立ってー」
変化する戌亥さんの様子に気が付かないまま、あろうことかナンパ男は戌亥さんの肩に手を置いてしまった。
あー、終わったぁ。どうして導火線じゃなくて爆弾を直で起動させちゃうのかな……。てそんなこと言ってる場合じゃない!
「お前、去ね――」
「お客様ああああ! 店内でのナンパは困りますぅうううう!」
殺させるわけにいくか! せめて店から離れたところでやってくれ!
全力で止めに入った俺に、戌亥さんはポカンとした表情で、ナンパ男は魚を釣り上げる瞬間を邪魔されたみたいに不快そうな顔をする。
なんちゅう顔で見てくるんだよ、お前が釣ろうとしてたの地獄の化け物だぞ、俺はお前の命の恩人なんだぞ感謝しろ。
「店員さん、ちょっと邪魔しないでくれる?」
「お客さん、店でこういうことされると困るんです」
「は? お前に関係ねぇだろ?」
関係あるんだよ。
この店をナンパ男の血で汚された日には廃業確定じゃねえか。
「関係ありますよ、当店は女性のお客様が多いので。貴方のような人のせいで噂になると困るんです」
「だからなに? 俺お客様だぜ、喧嘩売ってんの?」
「喧嘩売ってるのは貴方の方です、うちのお客様をナンパする男が客なわけないじゃないですか。威力業務妨害で訴えますよ」
サービスは提供する側にも客を選ぶ権利が保障されてるんだ。オラ、諦めて出てけ。
訴えると口にすればナンパ男は怯んだ様子を見せる。
「……っち、憶えてろ」
不機嫌そうに舌打ちをすると、ナンパ男は諦めたのか店を出ていく。
これで店を血塗れにされる最悪のケースは避けることができた。問題は……。
「なぁ奈田くん、どうして邪魔したん?」
明らかに不機嫌そうなラスボスにどう言い訳をするかだ。
落ち着け俺、言い訳といっても素直に答えれば大丈夫。言語を介する者は必ず言語によって和解できる、俺が今作った名言を信じろ。
「店を汚されたら困るからです」
「店?」
「店内を人間の血で汚されたらお客さんが来なくなっちゃうじゃないですか。やるにしても、せめて人知れず隣の市とかにしてください」
様子を窺っている山寺さんがいるから声は潜める。
「ホンマか? 私が怖いからとかじゃないんか?」
「こ、怖くないと言えば嘘になりますけど。それ以上に、戌亥さんとの接し方がいまいち掴めてないんですよ」
「へぇ、なんでや。私がケルベロスだからか」
「勿論その通りです」
思い返せば、この時の俺は少々興奮していたのかもしれない。
ナンパ男を言い負かして撃退できたことに、「あれ? 俺って結構やれるんじゃね?」感に満ちていたのだ。
だからこそ、言葉の言い回しを変えたりといったバイブルの教えを忘れていたのだ。
「人生でケルベロスと話したことなんて一度もないんですから、当然でしょ」
「確かに」
戌亥さんは盲点とばかりに頷く。
「この間のコーヒーの時と同じですよ。俺からしてみれば、人間で定義づけられている行為が地獄と同義かも分からないんです」
「大体同じやろ」
「何言ってるんですか、この拳の形から指だけを立てるこれだって、日本だと称賛の意味ですけど他の国だと侮辱の意味になるんですよ」
とあるテレビ番組で、少女が海外で食べた料理を褒めるときに同様のジェスチャーをしたところ、店のオーナーがふざけるなとぶちぎれたシーンはまさしくカルチャーショックだった。
人対人でこれなんだ、ケルベロスを相手にそんな光景想像したくもない。
「だから戌亥さんに嫌われたくないので、精一杯注意して考えてるんですよ」
「奈田くんおもろい人間って言われることあるやろ?」
「ありませんよ、何処にでもいるただのホモサピエンスです」
面白い人間だったら犬カフェじゃなくて芸人を目指していたはずだ。
そう思っていると戌亥さんはなにも言わなかったが、オッドアイの宝石のように瞳を細めた。
「……っ」
得体のしれない何かに摘ままれたような錯覚に襲われ、思わず背筋を伸ばしてしまった。
それが面白かったのか、戌亥さんは独特な笑い声? を上げた。
「しゃーない、今日は奈田くんを許してやろう」
「あ、ありがとうございます!」
「感謝せーよ?」
「はい!」
た、たたたたた助かったぁ……。
つか俺悪くないのに、何でこんな気苦労を強いられなければならないんだ。
ナンパ男を追い払った、戌亥さんに真正面から受け答えできている、自分が少しはできる人間なんだと思えた。
そんなもの、超常の存在からすれば床に落としたガラス細工のように脆く、息一つで粉々になってしまう程度のものだった。
「せや、正直者の奈田くんにケルベロスと仲良くするための秘訣を教えたる」
気が付くと俺は首を垂れていた、視界には戌亥さんではなく見慣れた床が映っていた。
理由は分からない、体が思考と切り離されたように言うことを聞かなかった。不可思議な現象に襲われている俺に構うことなく、戌亥さんの顔が耳元に近づいてくる。
香水とは違う、ほのかに甘い匂いがふわりと鼻孔をくすぐる。
「あんま言いたないんやけど。私、嘘つかれて酷い目にあったことがあってな? 嘘嫌いなんよ。だから嘘はアカンよ? 噛みたくなってまうからな」
「ヒュッ……⁉」
さっきのナンパ男に向けてはなった時よりも低く、重い声。
意識なんてしたこともなく、当たり前にできていた呼吸の仕方を忘れ、息ではない何かが口から洩れた。
「騙すなんてもってのほかや、臭い笑顔はズタズタに引き裂きたくなる。虫唾の走るおべっかを吐く口はむしり取りたくなる、そんな奴が差し出す食い物なんて見ただけで吐き気がするんよ……。奈田くん、分かってくれるか?」
な、何を分かれと言うんだ。戌亥さんはなんの話をしているんだ。
そっと頬に戌亥さんの手が添えられる、それだけなのに戌亥さんの手は熱された鉄のように熱く、頬が焼けていく感覚は彼女への畏怖を助長させた。
「嘘をつかない、騙そうとしない。たったそれだけ、なんや難しくないやろ? こんな簡単なことを守ってくればええんよ、そうすれば多少のことは笑って許したる……分かったぁ?」
「ぁ……っ。……っ⁉」
呪詛のように、ドロドロとした物が耳から侵入してくるようだった。
体中に浸み込んで、全身の毛穴が開くのを感じた。
「……返事ぃ、聞こえへんなぁ」
「ィッ……! はっ、はぁっ! はっぃ……!」
声が出なかった、いつの間にか肺の酸素がなくなっていたのだ。
それでも答えようと全身の力を使って無理矢理に肺を収縮させ、カラカラに乾いた喉を震わせた。
許しを乞うように、全身全霊をもって懇願する。
ようやく出せたのは搾りかす、蚊の羽音のような擦れ声で返事をする。
そうしなければ頭がどうにかなりそうだった。
「約束……。違えたらアカンよ?」
顔なんて見れない、戌亥さんがどんな表情をしているのか分からなかった。
不意に頬に触れていた戌亥さんの手が離れる。あれほど熱いと感じていたはずの手、しかし触れられていた箇所を触っても焼けただれているなんてことはなかった。
精神を侵され、体の内側をかき回されたかのような不快感、まるで酷い悪夢の中にいるように全身から汗が噴き出していた。
「それじゃ奈田くん、ジャガイモよろしく~」
「……ッ⁉ は、はい。直ぐにっ!」
怖い、怖い、怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い。
何もされていないはずなのに、絶対に何かをされたと確信した。
とにかく声を出して、必死に体を動かす。
そんな俺を戌亥さんがどんな表情で、どんな風に瞳に映していたのか。振り返ったら全てが終わってしまう気がした。
だから聞かずに済んだ。
「奈田くんは、許したる……」
数日後、とあるニュースが流れた。
隣の市で、複数の男性の遺体が発見されたのだ。
比較的経験のある警察でも眉をひそめるほどに、遺体は凄惨を極めており。
警察の調べではクマや野良犬の仕業と推察されているが、死因は未だ調査中らしい。
遺体は無残にも獣に食い散らかされたらしく、原型を留めないモノばかり。
中でも一体だけ執拗なまでに破壊されており、頭部は噛み砕かれ、四肢は千切られ、体は潰されていた。
なのに五体は全て残され、食われて消えた箇所は存在しなかったらしい。
最初は戌亥さんやっちゃいました⁉ とも思ったが、遺体は複数。
つまり一人だったナンパ男ではないことは確実。
それにしても隣の市で人を襲う動物がいるのは少し怖い。動物の移動範囲なんてわからないし、もしかしたらこっちに来るかも。
後で動物対策のスプレーとか買っておこうかな。鈴って駄目なんだっけ?
「ま、こっちには戌亥さんがいますし。怖くないですね」
「何の話や?」
「隣の市で動物が人を襲ったらしいです」
「それでなんで私がいると怖くないんや?」
そういえば最近いいことがあった。
「戌亥さんの半径4メートルに近づかない、うちの子達を見てそれをいいますか?」
「お、喧嘩売ってるんか?」
「違いますよ、戌亥さんは頼りになるなーって。さすが地獄の番犬」
少しだけ、戌亥さんと親しくなれた気がする。
「……奈田くん、そこ座り?」
「ア、ホントスミマセン。ジャ、ジャガイモアリマスヨ。イヌイサンノタメニ、イッパイカッタンデス」
「ん~……。ダメ」
すみません、最後のぼかした部分は表現的に気分が悪くなる人がいるかもなのでぼかしました。(対象の文字をコピーして、メモ帳などに張り付けると読めます)
別にストーリーに関係するわけではなく、遺体の状態を書いてるだけです。