神山高校1年A組日野森志歩   作:トール77

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22話 ここから始める私の物語

 

 

 

 合格発表から一週間後の日曜日。

 私はフェニックスワンダーランドの入口で、司さんを待っていた。

 目的は勿論、以前から約束していた司さんとのデートで、私は集合時間の3時間前から気合いを入れて準備をしていた。

 

 服装は、黒のシャツにアウターで深緑色の春用ジャケットを合わせ、下は普段私は私服でパンツ系のズボンを履く事が多いけど、今回は頑張って少しでも司さんに可愛く見られるために黒のハーフスカートを着用。

 さらにその上に私は、普段友達と遊びに行く程度なら絶対にしない、お姉ちゃんから昔に無理矢理覚えさせられた、不自然に見えない程度のナチュラルメイクもバッチリしてきている。

 まさに今の私は、考える限りの最高(ベスト)を尽くしたお洒落をしている自信があった。

 そんなベストの状態で私は、家を一時間前には出発して、こうしてフェニランの入り口前で立ち30分以上も司さんを待っていた

 

「……ちょっと早すぎたかな。いくら楽しみだからって、流石に30分前に待つのはやりすぎだって私……どこか、喫茶店とかで時間潰したらよかった」

 

 そんなことを呟きながら私は、浮かれ気分で集合時間の3時間も前から準備をしていた自分のはしゃぎっぷりを、自省せずにはいられなかった。

 いくら司さんとのデートが楽しみで嬉しかったからって、流石に気負いすぎたかな。というかもしかして私、気持ち悪い? 反省しよう。

 そんなことを考えながら待つ事約20分、ようやくラフなトレーナーにジーンズ姿の司さんが私の目に映り、その瞬間に私の心臓の鼓動はトクンと跳ねるのを感じた。

 そんな司さんは私の姿を見るやいなや、慌てたように駆け足でこちらにやって来て申し訳なさそうな顔で言う。

 

「おっと……すまない志歩! まさか待たせてしまっていたとは! 時間は余裕を見てきたつもりだったのだが……」

「あ……おはようございます、司さん。全然大丈夫ですよ、まだ時間10分前じゃないですか。私が早すぎただけなので気にしないでください」

「なら、せめて早く着いたのならば教えてくれればオレも走って——」

「いいですから、司さん。こんな所で言い合いをするより、私は早く中に入りたいです。だから行きましょう」

 

 私がそう反論すると、途端に司さんは言い返す余地がないように黙った後で、気を取り直すように司さんらしい大きな声で言う。

 

「むっ……そ、それは確かにそうだな。よし! ならばさっそく行こう! お前の大好きなフェニックスワンダーランドへ! 任せておけ! 今日はお前の合格祝いだ! オレは全力でお前を楽しませてみせるぞ!!」

 

 あ、そういえば、まだその勘違いしたままだったんですね司さん……懐かしいな。あの時は、何で司さんにこんな所に無理矢理連れてこられないといけないのかって、迷惑にしか思えなかった。

 でも今は……本当に楽しみでしょうがない。というよりもしかしたら私は、司さんと行く場所なら、もうどこでも楽しいのかもしれない。

 

「はい、じゃあ楽しみにしてますよ、司さん」

 

 そんな浮かれた事を考えながら私は、笑顔で司さんの後に付いてフェニランの門をくぐるのだった。

 

 

 

■ ■ ■ ■ ■

 

 

 

 そんな流れで始まった、私と司さんの二度目のフェニランデート。

 今回は司さんの案内の下、効率よく色んな乗り物に乗る事になったのだけれど、やっぱり予想通りというかなんというか、またもその全てが司さんに振り回される結果になった。

 

「うぉぉぉーーーー!! 回せ回せ回せ回せぇぇぇーーーー!!!」

「ちょっと……! 結局コーヒーカップは早く回さないと気が済まないんですか…!?」

「勿論だ! やはりコーヒーカップは速さと回転量が命! 回転量こそがこの乗り物の楽しさを決めるのだ! それに、この程度で満足していては——」

「未来のスターに、到底なれないからですか?」

「むっ……!? オレの言おうとしたことが言い当てられただと……!? 志歩、お前、さてはエスパーだな!」

「いえ違います、だってもう二年近く司さんと一緒に居るんですよ? 流石にもう司さんの事は分かります——よっと!」

「なにっ!? 更に回転量を上げるだと……!?」

「——ほら、どうしたんですか? 私を楽しませてくれるんですよね? なら……もっと回転上げましょうよ」

「志歩……フッ! 望むところだ! 行くぞぉぉぉーーー!!!」

 

 司さんに乗せられたコーヒーカップで、司さんと一緒になって二人共フラフラになるまで回転量を上げたり。

 

「ハーッハッハッハ! どうだ志歩! これがオレの研究に研究を重ねた、鏡の迷宮式分身術だ! どれが本物かまったくわからんだろう! さぁ、真実のオレを見つけ出し、無事脱出する事は——」

「はい、貴方が本物ですね?」

「——できっ!? お、お前! オレが喋ってる最中に見つけるとは何事だ!」

「……ふふっ、司さん。前と同じ弱点が全く改善できてませんよ? そんな大声だとどこから声がするのか丸わかりです。……そ、それに、もう私、鏡に映った司さんと本物の司さんだったら、見間違える気なんてしないといいますか……」

「なにっ!? オレの知らぬ間にそんな特殊能力を身に着けていたとは……やるな志歩、これはオレも負けてられん! もう一度だ!」

「はい、いいですよ。でも今度は……私が隠れますね? それで、もし本物の私を一分以内に見つけられなかったら、司さんには罰ゲームで外の売店で売ってるフェニーくんチュロスを奢ってもらいます。——勝負ですよ、司さん」

「何ぃ!? フッ……まさか志歩、とうとうお前がオレに挑んで来る立場になるとは……成長してくれる! いいだろう! このオレの渾身の実力を以て……お前を見つけてやるからな志歩ぉーー!!」

 

 鏡の迷路で、司さんの謎の遊びに全力で付き合ってチュロスを奢ってもらったり。

 

「……はむっ。……うん、美味しいです。チョコレートチュロス奢ってくれてありがとうございます、司さん」

「ぐぬぬぬ……! まさか、このオレが志歩に一歩遅れをとってしまうとは……!」

「ふふっ、司さんは分かりやすいんですよ。ひっかけとかハッタリとかにすぐ引っかかりますし、私、司さんとババ抜きしたらもっと圧勝出来る気がします」

「くそぉ……! 悔しい……! だが、今日はお前の祝いの日だ、敗北を悔やむのはこれぐらいにしておこう……!」

「ありがとうございます、司さん。……うん、それにしてもやっぱり美味しいです。少し苦めのビターチョコレート生地のチュロスに、全体的に粉砂糖がまぶしてあって……程よい甘さで飽きずに食べ続けていられそうです」

「ぬ……そう言われるとオレも食べたくなってしまうな……」

「あ、でしたら元々司さんのお金ですし、分けてあげるので食べますか? はい、少し待っててくださいね——」

「おおっ! 良いのか!? なら遠慮なく頂こう! ——失礼するぞ……あむっ」

「~~~っ!? え、ええっ……!? 私の、齧った所っ……!? 今、反対側から少しちぎろうとしたのにっ……!」

「……うむっ! 確かに美味いなっ!! これは絶品だ! フェニランのヒット商品間違いなしだな! 分けてくれて感謝するぞ志歩、後は全部お前が食べるといい」

「えっ……えっ? つ、司さんが、齧った所、私が……このままっ……!?」

「……どうした? 何か問題でもあるか?」

「~~~っ! いっ、要らないです! 司さんのバカ! 鈍感! 無神経っ……! 後は全部司さんが食べてください!」

「な、なにぃ? 一体、オレは何故志歩の機嫌を損ねてしまったというのだ……!?」

 

 鈍感で無神経な司さんに、急に間接キスをされてドキドキしてしまったり。

 

「飛ばせペガサス号・改! わくわくフェニーくんゴーカートのトップの座は、今度もオレ達のモノだ! お前もしっかり追ってくるんだぞ、志歩!」

「ご……ごめんなさい司さん……! 人が沢山見てますよ? 私、流石にこれは恥ずかしいですっ……! どうか、一人でやっててくれませんか?」

「大丈夫だ! 慣れてしまえば恥など一瞬で消える! 良いからついて来い志歩! オレにはお前が必要なんだ! ライバルとして!」

「~~っ! 最後の一言さえなかったら完璧だったのにっ……分かりましたよ! 行けばいいんですよね! 行けば! い、いけっ……私のフェニーくんっ……!」

「ハーッハッハッハ! そうだそうだ! その調子だぞ志歩!」

「こっ……こうなったら私、絶対に勝ってやりますからっ……! ここまで恥を捨てて頑張って勝てないなんて、悔しすぎますしっ……! 覚悟してくださいよ、司さん!」

「なんの! 志歩、お前がオレに勝つには100光年早い!」

「100光年? 時間と距離の違いも分からない人に、絶対に負けないんですから……!」

 

 ゴーカートで無駄に騒ぐ司さんのテンションに強引に乗せられ、恥ずかしさで死にそうになりながらも二人でワンツーフィニッシュを決めたり。

 その他にも色々、目を輝かせながらフェニランの色んな場所に連れて行ってくれる司さんに、私も同じように目を輝かせながらついていった。

 

 ——ああ、司さんと一緒のフェニラン、本当に楽しいな。まるで夢みたい。

 私、今まで勉強頑張って、試験に合格出来て本当によかった。

 

 そんなことを思いながら遊んでいると、一日なんて時間は本当にあっという間に過ぎて、夕日が園内を照らす中、私と司さんは最後の乗り物に観覧車を選んで乗り込んでいた。

 

 夕日が照らす観覧車のゴンドラの中、目の前に向かい合って座る司さんは、私に向かってニカッと笑いながら言う。

 

「どうだ志歩? 今日こそお前は楽しんでいるか?」

「……はい。とっても、とってもすごく楽しかったです」

 

 私が素直にそう言うと、司さんは満足そうに頷いた。

 

「おお! そうかそうか! ならば良かった! ではこれで、オレの以前のエスコートの汚名は返上したという事で異論はないな!」

「……まぁ、どちらかと言えば、私のモチベーションの違いといいますか……でも、はい、そうですね。司さんが私の為に頑張ってくれたおかげで私、とっても楽しめました。立派に汚名返上できましたよ、流石です司さん」

「そうだろう、そうだろう! 当然だ! 何故ならオレは未来の大スター、天馬司なのだからな! ハーッハッハッハ!」

「……ふふっ、これぐらいでそんなに笑えるなんて、あなたは調子が良い人ですね」

 

 司さんは満足そうに大きな声で笑う。そんな司さんの笑顔を見て私も気づけば笑ってしまっていた。

 なんだか不思議だな、まさか私が司さんとこうして一緒の観覧車に乗って、お互いに笑い合う日が来るなんて。

 本当に、人生って分からないな。

 そう思っていると、司さんは大笑いをした後で気を取り直したように、私に向き直って言う。

 

「では、改めてこの場で言わせてもらおう。志歩、今日まで受験勉強よく頑張ったな。合格できたのはお前の努力の賜物だ、オレはお前の事を誇りに思うぞ、志歩」

「司さん……いえ、それもこれも、司さんが応援してくれたからです。こちらこそ、ありがとうございます」

「——フ、謙遜などいらん。これでお前も来月の四月から、晴れてオレの後輩という訳だ! オレは嬉しくてたまらないぞ! ようこそ、都立神山高校へ!」

「……はい、そうですね。……その通りです」

 

 “司さんの後輩”

 その称号に、私は心が震えるような嬉しさを感じてしまう。

 やっと、やっとだ。司さんにとっての妹のような存在から、初めて一歩前に進める。ここから始まるんだ。私と司さんの、新しい関係が。そんな思いで私は、()()()()をもって口を開く。

 

「あ、あのっ……司さん、私……じつは、合格できたらずっと言おうって思ってた事があるんです。聞いて……くれますか?」

「ああ、構わんぞ。どうした志歩?」

「そ、そのっ……私っ、私はっ……実はっ、司さんの事ずっと——」

 

 そこまで言って私は一呼吸置き、まるで16ビートを刻むドラムのように暴れる心臓を抑えながら——“決意”を、言葉に変換する。

 

 

「——“司先輩”って……そう呼びたいって思ってるんですけど、そう呼ばせてもらってもいいですか……?」

 

「おお! そう言われればだな! 確かに、これからはそれが自然なのかもしれん! よし、分かったぞ志歩! 遠慮なくこれからはオレの事をそう呼ぶと良い!」

 

「——っ、はい……っ! 改めてこれから宜しくお願いします、()()()!」

 

 

 私はそうわざと大きな声で言って、頭を下げた。

 今にも泣きそうな顔を、司さんに見られたくなかったから。涙で震える声を、悟られたくなかったから。

 

 ——ここで告白しない自分を、後悔なんてしたくなかったから。

 

 わかってる、私はバカじゃない。

 これ以上自分の司さんへの想いに浮かれて、現実から目を逸らすのは終わりにしよう。

 

 もしここで、私が司さんに告白したら——私は多分、いや、絶対にフラれる。

 

 本当は、ずっと前から分かりきっていた。

 分かっていたけど、今までその事実に本当の意味で向き合おうともしていなかった。

 司さんの心は……私の方に一ミリも向いてなんかいない。

 今の私は司さんにとって例えるなら、司さんが主人公として演じる、人生っていう名前の劇の『物語』に登場する、ほんの些細な脇役でしかない。

 司さんの心は、昔も今も未来(スター)に一直線だ。

 そんな私が今告白したら、私はただ未来に進むだけの司さんの物語において、物語の進行を妨げる不要な端役と判断されて、無慈悲に切り捨てられるだけ。

 

 そんなのは、私はイヤだ。

 絶対に、絶対の絶対の絶対にイヤだ。

 例え、死んでもイヤだ。

 

 だから私はもう、司さんへの“恋”を楽しむのは終わりにする。

 自分が司さんにとっての“特別”なんだって勝手に思い込んで、司さんの優しさにただ甘えていた自分とは、今日で決別する。

 

 私は今のこの司さんへの想いを——ただの“初恋記念”になんかしたくない。

 甘酸っぱいだけの、青春の思い出として消費したくなんてない。

 

 だって、夢は——“想い”は、叶えるためだけに存在するんだから。

 

 だから私は、もっと強くなる。

 強くなって、司さんの方からも必要とされるような人間になりたい。

 司さんの人生っていう名前の物語において、唯一無二の“女主人公(ヒロイン)”だって、そう求められるような人間に、私はなってみせる。

 

 勿論、今までと同じように、プロになる夢も捨てない。

 自分の夢もしっかり叶えて、それで同じように夢を叶えている司さんの隣に立ちたい。

 司さんが演じる人生っていう名前の劇に、しっかりと隣に立ってその終幕(エンドロール)にまで共に演じ続けたい。

 

 それが、私の夢——私の今の“想い”。

 

 この“想い”だけは、私は絶対に——

 

 

「……志歩、どうした? 何故お前は……そんなに辛そうにしている?」

「——え?」

 

 そんな突然の司さんの言葉に、私は思わず驚いて前を向く。

 そこには、私の事を心から心配したような司さんの顔があった。

 

「志歩……もしや、オレは気づかない内にまた、お前に何かしてしまったのか? すまん……オレは、お前が辛そうにしているのは何となく分かるんだ。だが、何故お前がそんなに辛そうにしているのか、その理由までは察してやることが出来ん……やはり、オレはお前の言う通り、無神経な人間なのかもしれん」

「司さん……」

 

 驚いた。さっきの私は涙も流さず、声を必死で平常を装った。でも、それでも司さんは私が悲しんでいる事を察した。

 

 もしかして——司さんは、完全に鈍感って訳じゃないのかもしれない。

 この人は病院で今も一人ぼっちの咲希の為に希望(スター)であろうとして、ずっと泣いてる咲希に寄り添い続けている。

 そっか、だから、悲しみには人一倍敏感なんだ。

 

 ——思い出せ私。

 二年前に再会してから今まで、司さんが私にかけてくれた言葉の数々を。

 

 

『だがしかし! それでもオレは自分の意思を曲げる訳にはいかん! ここでお前を行かせてしまえば、その瞬間にお前の笑顔は二度と見られなくなってしまう予感がする! それだけはオレは認められん! オレはスターとして、咲希の為にも……何よりお前の為に、お前の事を“笑顔”にしてやると決めたんだッ!』

 

 二年前そう言って、辛かった私に手を差し伸べ続けてくれた時も。

 

『言っただろう? オレはお前を元気にするためにここに連れて来たのだと。お前が今がクラスと一番うまくやれてると言っていた時、寂しそうな顔をしていたのでな。つい行動せずにはいられなかった……まぁ、我ながら上手くやれていたかどうかは分からんがな』

 

 そう言って、私の事を始めてフェニランに無理矢理連れて来た時も。

 

『……志歩、もしや穂波と何かあったんじゃないのか? だからお前は今、そんなに辛そうな顔をしているのではないのか?』

 

 そして一緒に初詣に行った時は、私の隠していた気持ちを見抜かれた。

 

 

 ——そっか、そうなんですね。

 それがあなたっていう人間の本質なんですね。司さん。

 例え何においても、誰かが悲しんでいるのは絶対に見逃さないし、絶対に笑顔にしたい。

 だからこそ、誰かが悲しんでいる気持ちにだけは、人一倍敏感なんだ。

 それが貴方っていう存在(スター)の本質。

 

 ああ……やっと今一つ、あなたの事を本当の意味で理解出来た気がします。

 これからも、貴方の傍で——貴方の事をもっと“理解(しり)”たい。理解(しっ)てみせる。

 

 ——それがきっと、私の今の胸の“想い”を、叶える為の一番の道筋だって思うから。

 

 

「……いいえ、大丈夫です司先輩。私はもう……やるべきことは見えましたから」

「……そうか? ……そうだな。どうやら本当に……そのようだ。わかった、だがもし困った事があるなら、遠慮せずに先輩であるこのオレに言うのだぞ?」

「はい……是非、どうしようもない時は頼りにさせて頂こうと思います。ありがとうございます、流石——司先輩は頼りになりますね」

「……ふっ、“司先輩”か。なんだか、事実なのだか変にむず痒い気持ちになってしまうな。早く慣れねば」

「ええ、早く慣れてくださいね——司先輩?」

「なっ……ハハハッ! 志歩お前、今わざと呼んだだろう?」

「ふふっ……バレました? でも、私にとってもこれから慣れたい呼び方なので、大目に見てくださいね、司先輩?」

「まったく……志歩、お前も言うようになったな……! ハハハハッ!」

 

 そう言って観覧車の上で、私と司さんはお互いに笑い合った。

 だから今は、この立場でいい。まずは、司さんにとって“妹”から“学校の後輩”に。

 ここから続く私の初めての恋路の道のりが、例えどんなに遠くなっても、終わりが見えないぐらい長くても、私は構わない。

 だから、ここから全部、全部始めるんだ。

 

 

 私の恋を——私の、青春の物語を。

 

 

 そんな決意を胸に、私と司さんの二度目のフェニランデートは、私の心に確かな嬉しさと、ほんの少しだけ苦い思い出を残しながら、終わりを告げたのだった。

 

 あ……忘れてた。

 もう“司さん”じゃなくて“司先輩”だ。

 心の中の司さんへの呼び方も、これから慣れていかないとな。

 

 私……頑張りますからね、()()()

 

 

 

 

 

 

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