神山高校1年A組日野森志歩   作:トール77

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閑話:ボクのゆく道、きみの見る星

 

 

 ボクに、友達が出来た。

 

 言葉にすればたったこれだけだけど、それでも、ボクにとっては大きな大きな大事件。

 でも、正直言ってまだボクはどこか完全には、志歩や杏の事を信用できていない。

 いや、正確には、信用するのがまだ怖い、って表現するのが正しいのかも。

 

 でも、そう言って二人に正直に言ったら、二人共まだそれで良いよって、何でもないように答えてくれた。

 入学式が終わって一週間、まだまだ自分達はそれぐらいの付き合いなんだから、それぐらい警戒するのがむしろ普通だって、そう言ってくれた。

 ——というか『むしろ私達だって瑞希の事で分からない所あるのに、勝手に信頼される方が少し困る』って、そんな本当だったら、秘めておいた方が良いぐらいの本心をあけすけにしてくれて。

 こんなにボクの事を対等に扱ってくれる人達なんて、初めてだなって、ボクはそう思った。

 

 でも、そうして不安に思っちゃう事なんて、すぐに時間が解決してくれるってボクは同時にそんな確信もあった。

 だって——

 

 

『だから()()! 最後にもう一度だけでもいい! 私に()()してよ! 絶対後悔させないから……だから! 私を、貴方にとっての『信じてもいいかもしれない人』にならせてよ! ——お願い!』

 

 

 あんな風にボクに、なんにも飾らない剥き出しの心でぶつかって来てくれた人は、ボクにとって人生で初めてだったから。

 

 だからボクは、きっとあの子なら大丈夫って——そんな、今まで裏切られてきた願いを、不安なく今だって持ちづづけている事が出来る。

 

 そんなボクの新しい友達。

 “友達”って、そう胸を張って呼ぶ事が出来る初めての存在。

 

 その子の名前は、日野森志歩。

 

 後々になって、入学式が終わった後で結局杏に連れ込まれたアイスクリーム屋で、ボクが二人にお礼の意味も込めて奢ったアイスを、みんなで食べながら聞いた話によると、どうやら志歩は、その助けてくれた唯一の人である、あの屋上に突然現れた“変人”の事が大好きらしい。

 それこそ、中高一貫の宮女を捨ててまで、あの変人の事を追いかけて来たんだという。

 

 その話を聞いてボクは思ったよ。『は~、なんだその少女漫画の主人公みたいな経歴は』って。いやさ、多分今どきいないよ? 好きな人を追いかけて高校に来たなんて、そんな恋に一途で情熱的な子。そりゃ変わった子のはずだよ。

 でも、それぐらい好きって事なんだろうね。

 そういうのいいじゃん。ボクはオタクだし、そういう尊い関係(CP)にも理解あるよ? 『“司しほ”てぇてぇ』そう言いながら、二人の周りを跳ねまわる準備は出来てる訳で。

 いやぁ、ボクの新しい友達は本当に良い子だなぁ。そんなからかい甲斐があって、可愛くて、優しくて——それでとってもカッコいい。

 

 そんな、ボクの新しい友達。

 そして——ボクの恩人。

 

 だからボクは、そんな恩人が学校に居る事がとっても嬉しくて、最初は入学式さえ行ったら、後は出席日数ギリギリまでサボってやろうと思っていた高校だったけど、一週間だけどなんと見事皆勤賞を果たしている。

 こんな事、ボクの人生小学生以来だ。

 

 つまり、そんな努力も苦じゃないぐらいに、ボクは学校に行くのが今、毎日楽しい。

 

 そう思いながらボクは、今日だって学校に行く。少しニーゴでの作業に没頭しちゃって、少し寝不足だけど頑張って行く。

 だってボクは今、学校が最高に楽しいから。それにもう一つ楽しみなのが——

 

「あ、おはよう瑞希。この間薦めてくれた美容液、買って使ってみたけどとっても良かったよ。教えてくれてありがと」

 

 こう言ってくれる志歩の、普段は教室で黙ってクールっぽい表情が、教室に来たボクが挨拶した瞬間に崩してくれる志歩の笑顔。

 この可愛い笑顔が見たいから、ボクは毎日学校に来てるのも正直な理由としてはあるかもしれない。

 

「うん! 他にも色々聞きたい事あったら何でも聞いてくれて良いよ? ボク、コスメとか香水にも結構詳しい自信あるから」

「ふふっ、流石瑞希だね。可愛い事に関しては妥協しないんだ?」

「ふふ~ん、まぁね~。だってボクはいつだってカワイイボクで居たいもん。そうだ! ねぇねぇ、今日ボクネイル変えたんだけど見て見て~?」

 

 そんな風に、教室でするくだらない会話。その会話の一つ一つがボクは嬉しくて。

 ずっとこの時間が続けばいいのになって、そんな馬鹿な事を考えてしまう。

 ボクを受け入れてくれた、ボクと向き合ってくれた志歩と杏こそが、ボクにとってやっと見つけることができた、ボクの居場所。ボクをありのままで認めてくれる人達。

 だからボクの長年の悩みは、これでやっと晴らすことができた。

 

 でも、人間悩みが一つ解決したら、またもう一つ現れるものだとはよく言ったもので、ボクは最近、()()()()に悩まされている。

 それは——

 

「あっ、ホントだ。キラキラしてて良い。可愛いじゃん、瑞希」

「——っ!」

「……え? どうしたの瑞希? 変な顔して何かあった?」

「——う、ううん! なんでもないよ!」

 

 “可愛い”って、そう志歩に笑顔で言われる度に、何故かボクの心臓の脈がおかしくなる事だった。

 

 ……いや~、まいったね。まさかこの若さで心臓病を患うとは思ってなかったよ~!

 ヤバいね、病院に行ったら余命宣告されちゃう系? ボク、そんな悲劇のヒロイン属性背負ってた感じ? うわーショック~! どうしよっかなぁ~!

 

 ——って、そんな現実逃避してられないよねぇ……。うっそじゃーん、ボクこんなチョロかったの?

 いや分かってるじゃーん、志歩には好きな人が居るってさぁ……報われない恋しちゃったなぁ……キッツ。

 でも……大丈夫だよ志歩、ボクの心は決まってるから。

 

「あ……ねぇ瑞希。良かったらなんだけど、ネイルの仕方とか教えてもらって良い? その……司先輩が気づくかどうか分からないけど、それでも、もしかしたら気づいてくれたらいいなって思うから」

「…………うん、分かったよ! ボクにまっかせといて! 志歩の事、サイッコーに可愛くしてあげるよ!」

「ありがとう、宜しく瑞希」

 

 志歩、ボクは君が笑ってくれるなら、君が幸せならそれで良いよ。

 

 それが、ボクを救ってくれた君への恩返しだって思うから。

 

 ボクがこれ以上を求めるのはきっと、罰当たりだから。

 

 だから今日もボクは、一番星を真っすぐ見上げる君を応援する。

 

 応援し続ける。

 

 

 それが、ボクの物語。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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