八幡「SAO?」   作:まぐまぐ GR

1 / 5
以前、某サイト様で投稿させていただいた作品をリメイクし直したものです。現在はそちらのサイトでは削除しています。
もしかしたら読んだことがある!という人もいるかもしれませんが、どうか気長にお付き合い下さい。



プロローグ

季節は春。

今年から高校二年生になる俺、比企谷八幡はまだ冷たい風が時折吹く坂道を自転車で登っていた。

俺が去年から通う水明芸術大学附属高等学校、通称スイコーは長い坂の上にある。

その敷地は広く、俺が前にいた総武中学とは比べものにならない。

重いペダルにイラつきつつ、俺はまだまだ遠い校門を見上げた。

 

 

時間は約一年前に遡る。

ある日曜日の午後、俺が録りためたアニメを消化していると、今更起きてきた親父がゾンビのような足取りでリビングにでて来た。

お互い言葉を交わす事なく黙ってアニメ鑑賞をしていると、急に親父が口を開いた。

 

「お前、引っ越しする?」

 

「……は?」

 

言われた事が理解出来ずに思わず聞き返してしまう。今、引っ越しとか言わなかったか?

 

「そのままだ。この前俺の転勤が決まってな。福岡に行くんだが一緒に来るか、独り悲しく暮らすの、どっちがいい?」

 

「ちょっと待て、なんでだ。単身赴任でいいだろ」

 

「それだと俺が悲しいだろ」

 

「子供か!」

 

「どっちにしろもう決定事項なんだよ」

 

「……小町は?」

 

「連れてく、ゼッタイ」

 

「いつ?」

 

「一ヶ月後。」

 

正直、迷う。

独り暮らしなら自由だが、洗濯や炊事をやらなくちゃいけない。

しかし、もし福岡に行くなら折角合格したスイコーにも行けない。

こう考えると明らかにデメリットの方が大きい。

 

「………俺はーーー。」

 

そんなこんなで色々検討した結果、俺はここに残ることにした。

小町が一緒に行こうと相当泣きついてきたが母親になだめられて渋々、福岡へと行ったのだった。

 

 

時は戻り現在。

俺は高校に入っても中学同様、快適なぼっちスクールライフを送っていた。

因みに今は家を売り払い、学校から徒歩10分のところにある「さくら荘」という所に住んでいる。

選んだ理由としては、もう一つある一般寮より安く済むことだ。

しかし、「さくら荘」には安く済む理由が当然存在していた。

それはさくら荘は一般寮とは違い、「変人の巣窟」と呼ばれ、敬遠されていることだった。

だが、さくら荘にも住人がいる。

二人の三年生、上井草美咲と三鷹仁。

同じ二年生の神田空太、椎名ましろ、青山七海、赤坂龍之介、そして俺。

 

計7人の住人と神田が拾ってきた数匹の猫。そして独身教師千石千尋(中学時代にお世話になった平○先生に似ている)、赤坂龍之介が開発したAI、メイドちゃんがさくら荘で共に生活をしている。

 

毎日、朝から騒々しいこの生活も遂に二年目に入った。

昨年は椎名や青山が入寮してきたり、上井草先輩が三鷹先輩と結ばれたり、千石先生が結婚出来なかったり、etc…

大変な一年間だったが、今年は大した事件も無く、平穏な日常が続いている。

しかし、変人の巣窟であるさくら荘には平穏は長くは続かなかったーーーー。

 

 

 

教室に入り、窓際後ろから二番目の席に座る。

既に教室には何人か居て、それぞれが好きな様に過ごしている。

俺はカバンからi podを取り出し、イヤホンを着けると机に突っ伏した。

いつもどおり寝たふりをすると、俺はHRまで耳元から流れて来る歌詞を頭の中で追い続けた。

 

 

 

 

昼休み。

無事に午前の授業を乗り切り、教室で今朝買ったサンドイッチを食べていると、後ろのドアから神田と椎名が入って来た。

 

「よ、比企谷」

 

「…おう」

 

俺は基本人が嫌いだが、神田の事はきらいではない。

神田はゲームクリエイターを目指しているためゲームについてかなり詳しい。話題の新作とかをよく紹介してくれたりするので、ゲーム好きな俺とかなり話が合う。

多分、俺と一番話す奴は神田だと思う。

こいつはお節介なところがあるが基本、無理に話しかけようとはしてこない。

そんな距離感が俺には心地良かった。

しかしもう一人、椎名ましろは空気という空気を読むことなくマイペースに話しかけてくる。

何を考えているかわからないし、無自覚に俺の心のATフィールドを無視し、ダイレクトアタックしてくる俺の天敵だ。

当の本人は今、俺の目の前の席に座る神田の隣に座っている。

……なんかさっきからずっとこっちを見てるんですが。

やめろよ、勘違いしちゃうだろ。

 

「………なに?」

 

「…八幡はどうしていつも独りでご飯を食べるの?」

 

「………。」

 

(察しろ、マジで。そういうことを皆がいる教室で聞いてくる椎名さん、マジぱないわー。なんか今の言い方、中学の頃のクラスメートの戸部君(笑)に似てるな。…もうやめよう)

 

「…さまよえる孤高の魂は拠り所を必要としねえんだよ」

 

「孤高?」

 

「そうだぞ。俺ぐらいになると一緒にいる奴が俺の特殊スキル『過負荷』で精神がやられちまうんだ。

 

あえて俺は被害を出さないために独りでいるんだよ。だから……ぼくは悪くない!

 

「八幡、かっこいい…。どうしたら私も八幡みたいになれるの?」

 

「椎名、なれないからな。騙されるなよ」

 

「バッカお前、憧れは人を大人にさせるんだよ。憧れて現実を知って、また憧れて……そうやって階段を登っていくもんなんだよ」

 

「そーだな」

 

「空太は頭おかしいの?」

 

「椎名さん、なんでそうなるんですか⁉︎今の会話にそんな要素どこにも無かっただろ!」

 

「空太は時折おかしいもの」

 

「まずは自分の生活を見てから言おうか!」

 

「流石は過負荷ね」

 

「よし、生活うんぬんの前にまず人の話を聞こうか!」

 

「お腹いっぱい。八幡残り食べる?」

 

「頼むから俺の話を聞いて下さい!」

 

「おう、食べる。…良かったな神田。これでまた一歩、ぼっちライフに近づいたぞ。」

 

「おめでとう空太」

 

「ありがとう…って、んなわけあるかい!」

 

「空太」

 

「はい」

 

「2点」

 

「椎名にだけは言われたくなかったわ!」

 

こいつらのやり取りは面白い。

毎日見ている俺でも飽きないぐらいだ。アニメ化とかしたら売れるんじゃないの、コレ?

作品名は『さくら荘のペットな彼女』とかで。

うん、我ながら妙案。

 

そんなことをぼんやり考えていると、神田が声をかけてきた。

 

「そういえばさ」

 

「ん?」

 

「比企谷はSAOって知ってる?」

 

「ああ、あれだろ?完全なる仮想空間ってやつ。サービス開始っていつだっけ?」

 

「明日だよ」

 

「いいよなー。確か初回チュートリアルは一万人限定だろ?」

 

「そのことなんだけど、赤坂が仕事のツテでナーヴギアを一つだけ貰えたらしいんだよ。

赤坂はやる気がないらしいから俺にくれるって話になったんだけど、その日は『ゲーム作ろうぜ!』の二次審査があるから出来ないんだよ。

だから明日は比企谷が代わりにやらないか?」

 

「……良いのか?」

 

「ああ。明日、朝には出かけるから今日の夜にでも渡すよ。」

 

「サンキュー。でもキャラ設定とかはどうするんだ?」

 

「俺はゲームの仕様とかを見たいだけだから、気にはしないよ」

 

「そうか。ありがとな。」

 

「珍しいな、比企谷が素直にお礼を言うなんて。」

 

「……ほっとけ」

 

「……八幡、ツンデレね」

 

「ちげえよ」

 

 

 

 

 

 

夜。

さくら荘に帰ると食堂が豪華に飾られていた。

 

「なんだコレ…」

 

「おそいぞー、こうはいくん!もう鍋がぐつぐつだぞ!」

 

「……意味分からねえ」

 

「先輩、あまりはしゃがないで下さい!危ないです!」

 

「なんだとこうはいくん!絶対に負けられない戦いはもう始まっているんだもーん!」

 

「じゃあ、とりあえず仁さんを呼んできて下さい!」

 

「了解ー!」

 

上井草先輩はそう叫ぶともの凄い速さで食堂を出て行った。

少し遅れて三年生の先輩、三鷹仁の叫び声が聞こえてくる。

 

「なんで鍋なんだ?」

 

「明日俺の審査があるからって美咲先輩が」

 

「ふーん。で、青山と赤坂は?」

 

「二人とも部屋だと思うぞ。あ、おい!椎名!つまみ食いするな!」

 

「じゃ、手洗うついでに呼んでくるわ」

 

そう言って食堂を出る。

廊下には仁さんの部屋から未だに叫び声が響いていた。

部屋で宇宙人と格闘しているであろう仁さんに黙祷を捧げながら洗面所、風呂に続く扉を開ける。

すると。

洗面所の前で体に何も纏っていない青山が体重計に乗っている姿が目に飛び込んできた。

…………………。

………。

…。

あまりの出来事に扉をしめるのも忘れフリーズしていると青山が振り返った。

 

「比企谷くん⁉︎何してるん⁉︎」

 

「いやっ、これはだな、あの」

 

「早く出てって!」

 

「すいませんでした!」

 

言われた通りに素早く扉を閉める。

瞬間、扉に何かが当たる衝撃がした。

(おいおい、俺死ぬところだったじゃん!普通、モノ投げますか⁉︎どこかのIS乗りじゃないんだから!)

 

「………見た?」

 

「ま、まあ、見てないと言えば嘘になるが…」

 

「やっぱり見たんじゃん!」

 

「すいませんでした!だって女子使用中の札下がってなかったし…」

 

「それは…そうだけど…」

 

「…………そうだ、えーと、もう鍋の準備が出来たから早く食堂に来いよ」

 

「………わかった…」

 

とりあえず青山から返事を貰えたので、扉から離れる。少し奥に行き月明かりが差し込む窓の前で止まる。壁に背中をあずけると、今度は部屋にいる赤坂を呼ぶために俺はポケットから携帯を取り出した。メール画面を開き赤坂に送信すると、直後に返事が来た。この早さはメイドちゃんだろう。

 

『龍之介さまは只今、S社から依頼された大規模ネットワークソフトウェアの調整中です。

晩御飯なら部屋の前にトマトを置いといてくれ、との事です。

メイドちゃんより』

 

想像通りの答えに虚無感を覚えて

俺は携帯をしまうと、食堂に向かった。扉を開けると俺以外の全員が既に食べ始めている。

 

「………おい」

 

すると憎たらしい笑顔で寮監である千石千尋が言う。

 

「遅いから先食べてるわよ比企谷」

 

「…それはもっと早くに言ってくれないですかね」

 

「まあ、そんなカリカリすんなって八幡」

 

「こうはいくんの肉は全部私がいただくんだもーん!」

 

「ちょって待て!なんで俺の分の肉をあげなくちゃならないんですか!」

 

「うるさいわねー。小さなことでぐちぐち言ってるんじゃないわよ。

だからヒキガエルって言われるのよ」

 

「おい、なんで俺の過去のトラウマ知ってんだよ」

 

「比企谷、締めにうどんがあるから諦めるなって」

 

「…八幡、ファイト」

 

「お前らはフォローになってねえ!」

 

愚痴をこぼしながら席に着く。

食堂を出る前、あんなにあった鍋は既に半分ぐらいにまで減っていた。

箸を置いた仁さんが空太に顔を向ける。

 

「空太、明日の審査頑張れよ」

 

「はい、少し心配ですけど頑張ります」

 

「頑張れ、こーはいくん!」

 

「はい」

 

「そういやさ、俺の友達が言ってたんだけど空太はSAOって知ってる?」

 

仁さんの話に野菜を食べていた青山が食いつく。

 

「あ、それって明日からサービスが始まるゲームのことですか?」

 

「そうそう」

 

「それなら俺、持ってますよ」

 

「え?でも空太は明日、審査だろ?」

 

「だから明日は比企谷がやることになってて」

 

「へー。じゃあ今度でいいから俺にもやらしてくれよ」

 

「りょーかいです」

 

 

 

 

そんなくだらない会話しながら鍋をつつく。

順調に神田の審査の前夜祭?は夜にふけていく。

皆が同じ場所で。

 

まだ。

まだ、この時の俺は平穏という日常にいた。

これから向かい来る残酷な運命を知る由もなく。

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。