リメイクなので、結構早くに二話目を投稿できました。
翌日。
せっかくの休日なので遅くまで(この場合は正午過ぎぐらいまで)寝ていたいが、今日の12時からSAOのサービスが開始される。
そのため俺は10時に起きてから、食堂に行き簡単に朝食を済ませると自分の部屋に戻った。
今、机には神田から借りたナーヴギアが置かれている。
俺はソワソワした気持ちを無理やり押さえつけ、時間を潰すために本を手に取った。
作品名は『やはり俺の青春ラブコメは間違っている』。
ぼっちで捻くれた性格の主人公が黒髪美少女と茶髪ビッチと一緒に奉仕部という部活を中心に学園ラブコメ?を描くという、なんとも現実味の無い作品である。
しかし、流石は渡航先生。
会話も地の文も面白いので俺的にはすごくオススメしたい。
あ、オススメするようは友達はいないんだけどね、てへっ☆
しばらく主人公のクズっぷりに夢中になっていると1時間くらい経っていた。
現在の時刻は11時半。
ナーヴギアにはキャリブレーション?とかいう設定が必要とかで準備に時間がかかるらしい。
そろそろ頃合いかなと思いナーヴギアを手に取り頭にかぶる。
結構な重さがあり、首が疲れそうなのでベッドに寝ることにした。
「えーと…頭にかぶったら、電源を付ける。で、………『リンクスタート』?
え?コレ言わなきゃ駄目なの?」
しかし機械相手に抗議してもしょうがないので右手に持った取説を置くと、俺は仮想世界へと繋がる言葉を発した。
「リンクスタート!」
直後、目の前が真っ白になり奥から大量の文字が現れる。
英語で書いてあるので全ては読めないが適当にYesを選ぶ。
ごめん、神田。
はちまん、もうちょっと真剣に英語、勉強すればよかった(笑)
えーと、名前は……まあ、八幡だしエイトとかでいいか。
ふと、エイトマンとかいう名前も浮かんだが、俺は二度と同じ間違いはしない。
うん、俺最強。
幾つかの画面の後、目の前に表示される文。
コレは俺でも読める。
『Welcome to Sword Art Online!』
えーと、なになに…?
『ソードアートオンラインへようこそ!』
次に視界が晴れるとそこには欧州の中世を思わせる街並みが広がっていた。
ゲーム機の画面とは全く違う立体感、存在感は紛れもなく本物に思えた。
時折吹く風、石畳みの凹凸。
コレを作った茅場はやはり本物の天才なんだと思うと同時に少しの怖さを覚えた。
しかし、そんなことを忘れるぐらい今、俺の心はそれこそ子供と同様、
好奇心で溢れていた。
もっとこの世界を見てみたい。この剣一本でどこまで行けるか試してみたい。そんな思いに駆られ、俺は次々と周りに出現する大勢のプレイヤーを尻目にフィールドを目指して飛び出して行った。
スタート地点「はじまりの街」から少し離れた場所には幾つかのフィールドが存在していた。ここはスルーし、すぐに次への村を目指す。
はじまりの街周辺の狩り場はすぐに狩り尽くされるだろう。
そう思い俺はまっすぐ次の村に来たのだが、先客がいた。
こいつもレベリングというものを理解しているのだろう。
その証拠に引っさげている武器は初期設定のものではなく、強化されているものだった。
ずっと見ているとソイツは俺の視線に気付いたのかこちらに近寄り、話しかけてきた。
「驚いたな、ここに来たのは俺が最初だと思ったんだけど」
「いや、俺は今さっき着いたところだ。一番乗りはお前だよ、安心しろ」
「そうか。最初からここに来たってことは君もベータテスターだよな?何層まで行けた?」
「ああ、エイトでいいよ。……あと、俺はベータテスターじゃない。ここに来たのは単なるレベリングだ。はじまりの街周辺の狩り場はすぐ人で溢れると思うしな」
「え⁉︎、そうなのか?エイトはこの手のゲームのやり方は知ってるってことか…」
「まあ、ゲーム好きだしな」
「そうか…。 あ、出来れば俺がベータテスターだってこと他の人には黙っておいて欲しいんだけど……」
「別にわざわざ念を押されなくたって言いふらしゃしねえよ。ところでお前、ネームは?」
「えっと、このあたりに何か表示されてないか?」
そう言って目の前のヤツは自分の斜め上を指す。
どれどれ…Ki…r..ito……キリトか。
「おう、キリトって書いてある」
「当たり」
「そうか、よろしくな」
「よろしく」
そう言うとお互い握手を交わす。
人と握手したのは何年ぶりだろう。
仮想空間だというのを忘れるぐらい現実感のあるキリトの手はしっかりと俺の手を握った。
「ところでさ俺はこれからいったんはじまりの街に戻るけど、エイトはどうするんだ?」
「………あー、俺はここで経験値稼ぐわ」
「わかった。じゃあここでいったんサヨナラだな」
「ああ」
「死ぬなよ」
「へいへい。お前こそ死なないように気をつけろよ。 もし、お前が死んだらドロップしたアイテムは全部俺がもらってやるから」
「お気遣いどうも。じゃあな」
「ああ」
そう言うとキリトははじまりの街に続く道へ向かって歩き始めた。
なんでまた戻るのかは知らないが、それを聞くのはマナー違反というものだろう。
メニューから現実世界の時刻を確認すると、早いもので既に1時。
楽しい時は早く過ぎると言うが、本当だな。
「さて…時間までまだまだあるし、とりあえず稼ぎますか」
俺は腰にある武器を一度見てから、村の外にあるフィールドに向かって走りだした。
すぐにフィールドに出ると、そこそこ強いモンスター(まあ、雑魚キャラなんだろうが)が何匹か確認出来た。
俺はそのうちの一体に狙いをつけると、腰の剣を抜いた。
右手に持つ剣を肩の上で構える。
剣が光りだし、ソードスキルが発動したのを感じた瞬間に俺は勢い良く剣を振り下ろした。
敵への距離は3メートル弱。
ソードスキルに助けられた俺の攻撃は、まるで吸い込まれるように敵の側面にヒットした。
直後、敵オブジェクトが光の破片となり砕け散る。
それを確認すると、俺は視界の右手に映る敵へ狙いを定めた。
「はあー、疲れたー」
その後2時間近く狩り続けた俺はサービス初日にして既にレベル20まで達していた。
そろそろ夕飯もあるし、と思いメニューからログアウトボタンを出す。
いや、正確には出そうとした。
俺はそこで本来あるはずの場所にログアウトボタンが存在しないことに気がついた。
バグと思い一度メニューを閉じ、またメニュー画面を出す。
しかし、そこにはやはりボタンがなかった。
(あれ、初日から早々バグですか)
それに故障ならすぐに緊急アナウンスが流れてくるはずだと思い、その場で待ってみるが何も起きない。
(とりあえずはじまりの街に戻るか…)
きっとはじまりの街にも俺と同じようなヤツがたくさんいるだろうと適当にあたりをつけると、俺は元来た道を戻りはじめた。
その2時間前。
さくら荘102号室の住人、赤坂龍之介は自室に置かれた大型モニターの前にいた。
その四方を囲むように大小のモニターが置かれていて、部屋の隅には大型のサーバが7つ置かれていた。
既にS社から依頼された仕事は片付けていて、今は今日の12時からサービスを開始したSAOのシステムサーバにハッキングをしていた。
そもそも何故、赤坂龍之介はハッキングをしているのか。
それは数時間前にメイドちゃんが傍受した情報の中にSAOに関するものがあったことが始まりだった。
たまたま少し前に神田がSAOのナーヴギアをどこからかもらえないか、と聞いてきたこともあり少しだけ興味が湧いた。
情報は暗号化されていたが赤坂にとってはザル同然で、ものの5分で変換を終了させて画面に浮かび上がった文章は、目を疑う内容だった。
「………SAOにおける全プレイヤーの拉致・殺害について、だと?」
表示された報告書には様々な数値が書き込まれていて、とても悪戯でつくられたものとは思えない。
そのまま読み進めていくとSAOの裏の全貌が明らかになった。
その内容は開発者・茅場はSAOを使い、初回チュートリアルに参加する全プレイヤー1万人を拉致し、ゲームクリアを目的としたデスゲームを強制させるというものだった。
報告書を読み終えると、赤坂は自身が開発した自律型AI・メイドちゃんを呼び出す。
『ご用件をどうぞ!』
「今すぐSAOのシステムサーバを片っ端からスキャンしろ。もしかしたら何かとてつもない事が起ころうとしている可能性がある。時間が無い。30分で終わらせろ」
『了解しました!』
メイドちゃんに命令し終えると赤坂もキーボードに手を伸ばし、赤坂もメイドちゃんと同じくシステムへの侵入に取り掛かった。
今まではメイドちゃんだけでも十分に通用したが、なにしろ今回はあの天才プログラマー・茅場が相手だ。
念には念をということで赤坂もハッキングを同時進行で行うことにした。
予定の30分を過ぎても赤坂とメイドちゃんは未だにシステムサーバへの侵入が出来ず、流れていく文字の羅列を見ながら赤坂はメイドちゃんに問う。
「固いな。崩せるか?」
『十秒単位でルートが変わっています。おそらく接続が間に合わないかと』
「メイドちゃんでもか?」
『はい』
「了解した。正面を迂回し、障壁が薄いところから入るぞ。それと想像以上に逆探知が早い。ダミーを踏まされないように注意しろ。ハッキングは発見されないうちが華だ」
『了解です』
しかし、いかに赤坂といえども茅場の組んだカウンタープログラムの網に掛からないことはなかった。
正面の画面にエラーの通知が次々と現れる。
「…っ!こちらに2基のサーバにカウンタープログラムが作動してる!一時中断だ、障壁を展開しろ!」
『はい!……障壁、展開します』
クラッキングを中断した瞬間、他のサーバにもカウンタープログラムが発動し始めた。どうやら既に逆探知が完了されていたらしい。
全部で7基あるスパコン並みのサーバが一基でも破壊されたら損害はシャレにならない数字に跳ね上がる。それにハッキングは犯罪行為だ。大企業相手に裁判を起こされれば、勝ち目が無いのは明白だ。潮時と判断した赤坂はメイドちゃんに中止の命令を下す。
「……中止だ。これから専守防衛に入る。侵入してくるやつだけを処理して、下手な手出しはするな」
『了解です』
メイドちゃんの返事とともに赤坂のキーを打つ速度が上がる。
茅場の仕掛けたプログラムへの対処は一時間近くかかってしまい、破壊されたサーバは一基も無かったが囮に用意していたバグプログラムは全て破壊されていた。
「………流石は茅場といったところだろうな。メイドちゃん、こちらの損害は?」
『ダミーのバグプログラムは全損しましたが、中枢システムには届いていません』
「そうか……時刻は?」
『1時半です』
「………遅かったか」
『………まさか』
「比企谷はもう目を覚まさないということだ」
『そんな…!』
「とりあえず報告が先だ。さくら荘の全員にメールを出せ。警察にもだ」
『…はい』
メイドちゃんが画面の中から姿を消すと、赤坂はデスクに拳を叩きつけた。
しかし、落ち込んでもいられない。
己の力不足に憤りながらもなんとか立ち上がる。赤坂はらしくない不安気な足取りで歩くと、古い木製の扉を開けて静かな陽が射し込む廊下に出た。
エイトは目の前の状況に混乱していた。
怒鳴る人。
泣き始める人。
ただただ困惑し、周囲を見回す人。
はじまりの街はそれこそ一万人に近いプレイヤーが集まっていた。
すると。
急にはじまりの街の中心にある広場の上の空が赤に染まる。
何事かと見上げると、広場を覆うようにしてローブを着た巨大な人影が浮かんでいた。
『プレイヤーの諸君。私の世界へようこそ』
いきなり顔が無いその人影が喋り出した。
しかも、この声はどこかで聞いたことがあるものだ。
「……私の、世界?」
『私の名前は茅場晶彦。今やこの世界をコントロール出来る唯一の人間だ』
『プレイヤー諸君は既にメインメニューからログアウトボタンが消滅していることに気づいていると思う』
『しかし、これはゲームの不具合ではない』
『繰り返す。不具合ではなくソードアートオンライン本来の仕様である』
その後、GMである茅場晶彦からソードアートオンラインの説明がなされた。
それは。
全プレイヤーは自発的にログアウトは出来ず、現実世界に戻るにはこのゲームをクリアする以外に方法は無いとこと。
しかもこの世界での死は現実世界での死をもたらすという特典付きで。
それを理解したのか他のプレイヤーは皆、叫んだり、泣いたり、ウソだと言って笑い出したりしていた。
しかし、茅場晶彦から既にこのデスゲームの犠牲となったプレイヤーを取り上げたニュース番組の映像を示されると、皆が一様に黙ってしまう。
『それでは最後に、諸君らのストレージに私からのプレゼントを用意してある。確認してくれたまえ』
アイテムストレージ内を見ると新しく手鏡が追加されていた。
メニューから使用を選ぶと、途端に俺の体は光に包まれる。光が収まると、手の中に握られた手鏡に写っていたのは紛れもない目が腐った自分自身の顔だった。
『以上でソードアートオンライン、チュートリアルを終了する』
その声と共に人影は消え去り、空はいつもの青を取り戻した。
未だに周りがざわつく中、俺の意志は決まっていた。
もし茅場の言うことが本当なら、スタートダッシュに遅れる訳にはいかない。
この世界、レベル制VRMMOではレベルが全てだ。
他のプレイヤーより先に次の村へ行き、経験値を稼ぐ。俺のような知り合いが誰一人としていないぼっち、もといソロにはこれしか生きる術は無い。
俺は次第に騒がしくなってきた人混みを掻き分け、広場を後にした。
以前、投稿させていただいていた時に読まれていた方が、再び読まれていることに感動しました……!
前回は機種変などで続けられませんでしたが、今回は最後まで行くつもりです。