八幡「SAO?」   作:まぐまぐ GR

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お尻にできたおできが痛くて、椅子にまともに座れない。
そのうえ、変な体勢だったからか腰が痛い。

だれかたすけて……


前夜祭

翌朝。

鳴り響くアラーム音に目を覚ますと、既に時刻は午後2時だった。

ぼんやりとした視界の端で、メッセージの受信を示すグリーンの光が点滅している。たぶん昨日キリトが言っていた大規模スキャンの話だろう。

メッセージを開くと、こんな内容が書かれていた。

 

 

エイト、ついさっき攻略組の招集があった。

午後2時から第65層の大講堂で攻略会議が始まるから遅刻すんなよ。

キリト

 

 

………。

………………。

………………………。

ってオイ!

始まってんじゃん!

会議始まってんじゃん!

 

 

俺は急いで装備を整えると、狭い部屋を走って家を出る。

じめじめとした石畳みの道を走り、俺は広場の転移門に向かった。

 

 

 

 

 

 

「はあ…はあ…はあ……間に合った……」

 

「いや、間に合ってないぞ」

 

「はあ……っなんで午後2時からなんだよ。起きたばっかだっつーの」

 

「そんなこと言うなって。エイトが寝過ぎなんだよ、真紅狼(クリムゾン)くん?」

 

「ホント、その名前って誰が言い出したんだよ。恥ずかしすぎだっての。

なんで漢字で書いてんのにカタカナ読みなんだよ。中二病ですか。

…まあ、『黒の剣士』さまには負けますけどね」

 

「お前…!」

 

「お互いさまだろ」

 

「…………なあ」

 

「ん?」

 

「もうお互い、言わないようにしよう」

 

「珍しいな。俺も今思ったところだ」

 

キリトと男同士のかたいかたい約束を交わすと、緩んだ思考を切り替える。

今、最大で二千人も収容できるオペラハウスのような超巨大なホールの壇上ではボス攻略の配置や突入、役割分担などの作戦の説明が行われている。

説明しているのは血盟騎士団・団長のヒースクリフだ。

ヤツはSAO屈指の巨大ギルド、血盟騎士団の団長であると同時にユニークスキル、『神聖剣』の使い手でもある。圧倒的な防御力と鋭い片手剣の斬撃は他を圧倒していて、ヤツのHPバーがイエローゾーンに陥ったのを見た者はいないとまで言われている。

事実上、このSAOでのトッププレイヤーはヒースクリフだろう。

実際、第50層のボス戦では崩壊寸前だった防戦ラインを一人で繋ぎとめ、乱戦からの全滅という最悪の事態を未然に防いだ。

それ以来、ヒースクリフの名は誰もが知るものとなっている。

しかし、それはギルドというチームワークの結果だ。

今現在、ソロとして最前線に挑み続けているのは10人もいないだろう。

そして、その中でも群を抜くプレイヤーが2人いる。

俺とキリトだ。

多大な犠牲者を出した第60層のボス戦では残存プレイヤーが最初の半分になり、戦線が崩壊。しかも前衛として後衛とスイッチを行うはずの軍の重装兵が撤退し、他のギルドのプレイヤーも撤退を開始したとき俺とキリトだけは戦闘を続行。まだHPバーが半分しか減っていなかったボスを苦戦の末にたった2人で倒した。

そのような事があってから俺とキリトはプレイヤー達に広く知られるようになった。更にいつの間にか、キリトは『黒の剣士』、俺は『真紅狼』というあだ名までつけられていた。

キリトは尊敬の意味でそう呼ばれるが、俺の場合は嫌味の場合が多い。

(真紅→俺の片手剣、ハンニバル・リフレクトの色、

狼→一匹狼→独り→ぼっち)

いじめ、ダメ、ぜったい!

攻略組の中でも一応、実力は認められてはいるものの基本は空気としての扱いだ。

まあ、説明はここまでにしよう。

俺は横にいるキリトに話しかけた。

 

「そういやアレクト・セレスの連中は?」

 

「そういえば見てないな。後から来るんじゃないか?前の方に結構なスペースあるし」

 

キリトが言った直後、俺達が座るすぐ後ろのドアが開いた。

開いたドアから出てきたのは白と青を基調にまとめられた装備に身を包んだユキノだった。

その後ろには同じような装備をまとったユイとアスナ、他に大勢の女性プレイヤーがいた。

見てのとおり、アレクト・セレスは女性プレイヤーのみで結成された巨大ギルドだ。

実力は折り紙つきで血盟騎士団に劣るとも勝らない。そのため発言力は絶大なものであり、このような会議でも必ず貴賓席が用意されるほどだ。

アレクト・セレスの団員数は250人にも登り、低レベルプレイヤーの育成にも力を注いでいるため周りからの評価も高い。

すぐにホール全体がしんと静まる。

その張り詰めた空気に臆することなくユキノは階段を下り、最前線列近くの席に向かう。

すると後ろにいた女性プレイヤー達もその後に続いた。

男ばかりのホールが一気に華やかになり、騒がしくなる。

最前列付近の一帯を占領したアレクト・セレスの連中が席に着くと同時に、ユキノは声をあげた。

 

「遅れて申し訳ございません。アレクト・セレス団長・ユキノ、以下40名只今到着しました。」

 

「そう固くならなくても大丈夫だ。まだ始まったばかりだし、綺麗なレディ達をを待つのは当たり前のことだろう」

 

「寛大な処置に感謝します。どうぞお話を続けて下さい」

 

「そうだな。では……

まず突入直後の陣形展開についてだがーーー」

 

そう言ってヒースクリフは作戦の説明に戻る。

てか、よくあんな簡単に歯の浮くようなセリフ言えるな。

俺だったら言った瞬間にその場の空気を絶対零度にする自信しかないぜ。いちげきひっさつ!

そんなことを考えながらヒースクリフの説明に耳を傾ける。

話を聞く限り、俺達ソロ組は後衛配置らしい。

まあ、いつものことなので気にしない。

それから10分ほど話が続き、ヒースクリフは壇上をおりた。

その後、作戦に参加するプレイヤー達の質問等が飛び交う。

ヒースクリフはその全てを丁重に答え、攻略会議は終了となった。

 

「じゃあな」

 

「ああ」

 

俺はキリトに別れを告げ、いち早く立ち上がるとホールを出た。

最前列からその後ろ姿を見つめる視線には気づかずに。

 

 

 

 

 

出撃は明日の正午だ。

俺はボス戦の準備をするために再びエギルの店へと向かおうとした。

すると。

 

「やっはろー!」

 

後ろから声をかけられる。

振り向くとそこには2人の護衛を従えたアレクト・セレスの幹部であるユイが立っていた。

後ろの2人はユイを止めるべきかどうか迷っているようだ。

 

「……なんですか」

 

「せっかく人が挨拶しに来たのにヒドくない⁉︎

なんでそんなにテンション低いの?」

 

「コレが普通なんだが…」

 

「さすがエイトだ……」

 

「うっせ。で、お前は何しに来たんだよ」

 

「あ、えっと…」

 

ユイが俺の問いに言葉を詰まらした時、後ろの護衛の2人が口を開いた。

 

「ユイさん、この人、あの残虐非道なビーターって噂のエイトですよ!私の友達が言ってました!」

 

「気安くユイさんに話しかけないで下さい!」

 

「………」

 

「ちょっと2人とも落ち着いて!エイトの噂は悪いやつばっかだけど、本当は良い人なんだよ……って、別に良い人って言ってもそういう意味じゃ…!」

 

「…はいはい、俺は噂通りの人間ですよ」

 

「そ、そうじゃなくてっ」

 

ユイが言葉を濁すと、好機と見たのか護衛の子達がたたみかけた。

 

「ほら、本人もこう言ってるじゃないですか!」

 

「ユイさん、早く団長のところに戻りましょう!こんな人と話してたら変な勘違いされちゃいます!」

 

「ちょ、ちょっと2人とも…」

 

ユイは優しい。

しかし、優し過ぎて人にモノを強く言えない時がある。自分より立場が下であるはずの護衛の2人をおさえつけることが出来ず、ユイはアレクト・セレスが大勢集まっている広場に連れてかれてしまった。

しばらくそちらを見ていると護衛の2人が俺のことを伝えたのか、アレクト・セレスの団員のほとんどがこちらに顔を向けた。

多くの視線に晒せれることは慣れているが、40人という数は流石に慣れていない。

彼女たちは俺に指を指したり、お互いに耳打ちしたりして俺に対して嫌悪の視線を送ってくる。

俺は居心地が悪くなり、逃げるように転移門へと向かった。

 

 

 

 

 

 

「ハハハ、そりゃ災難だったな」

 

俺はエギルの店にアイテムの補充に来ていた。

今は先ほどの事をカウンター越しに話しながらアイテムの補充が終わるのを待っている。

 

「ホントだよ……」

 

「まあ、お前なんかまだ良い方だろ。知ってるか?団長のユキノって結婚を申し込んできたヤツを全員、こっぴどくフってるらしいぞ。ようするに、余計な事には関わるなってことだな」

 

カウンター越しにエギルが肩をすくませた。

 

「マジか…………怖いわ」

 

「でも、第1層のボス攻略の時はチーム組んでたんだろ?」

 

「…ああ。でも向こうは忘れてんだろ、たぶん」

 

「いやいや、そんなことないかもしれねえぞ」

 

「ねえよ」

 

「でもこの前ここに例の団長様が来たんだが、お前の事聞いてきたぞ」

 

「…………は?」

 

「んで、『家も知らないし、たまにここに来るだけだ』って言ったら帰っていったが」

 

「………なんで俺のこと調べてんだよ……はっ!まさか、俺の事を屠るつもりか!プランCか!」

 

「いや、しらねえよ。どこのラノベだよ」

 

「うん……まあ、それはねえな」

 

「それより……今日の夜にいつものメンバーで前夜祭やるんだが、来るよな?」

 

前夜祭。聞こえはいいが、ようはボス戦で死ぬかもしれないから前日に出来るだけ飲み食いしようって主旨のものだ。毎回ボス攻略の前夜に行い、俺とエギル、キリトとクラインだけで行うので最終的には修学旅行の夜みたいな雰囲気になる。

 

「ああ」

 

「7時からだ。遅れんなよ」

 

「りょーかい」

 

アイテムの補充もしたし、装備も整えた。

俺はボス戦の前日になると必ず訪れる変な高揚感に浸かりながら、一度家へと帰宅した。

 

 

 

 

7時ちょうどに俺はエギルの店に訪れた。中からは既に賑やかな雰囲気が伝わってくる。

扉を開けるとそこにはいつもの3人のほかに別の3人がいた。

女性ギルド、アレクト・セレスのアスナ、ユキノ、ユイだった。

 

「……………なんでだ」

 

「やっはろー!なんかさっきはゴメンね。あの子たちも悪気はないんだと思うんだけど…」

 

「なんで貴方がここにいるのかしら、不愉快だわ。消えてもらえる?」

 

「やっほー、久しぶりエイトくん」

 

ユキノが辛辣な言葉を投げ、アスナが優しく微笑む。

だが、今はエギルに問いたださないといけない事がある。

 

「……………ちょーっとエギルくん?お話しようか」

 

「おい、まてまてまて!俺だって被害者だ!」

 

「じゃあなんでアレクト・セレスの大幹部様が3人もいるのかな?」

 

「キリトに聞け!俺は何も知らない!」

 

エギルはそう叫び、奥で項垂れて座っているキリトを指差す。

 

「どういうことだキリト!」

 

「……会議が終わってすぐお前と別れた後、俺は一回家に帰ったんだ。そしたら家の前で3人が待ち伏せてて…で、そのままここに……」

 

「ちょっとキリトくん!別に待ち伏せてたんじゃなくて、待ってただけだよ!」

 

アスナの抗議にクラインが口をはさむ。

 

「変わんねえだろ」

 

「クラインは黙ってて!別にエイトに会いたくて来たわけじゃないからね!ここのお店は美味しいって聞いたから…」

 

「私も誤解されないうちに言っておくけど、ご飯を食べに来ただけだから」

 

淡々と言うユキノの頬は、微かに赤い。

 

「………そうですね」

 

俺が言うと、ユイが声をあげた。

 

「あー!信じてない!」

 

「いやいや、信じてるぞ。プランCだろ?屠りにきたんだろ?」

 

「意味わかんないんだけど」

 

「ユイさん。この男の話にまともに取り合ってはダメよ」

 

するとキリトが場を区切るように、皆に声をかける。

 

「まあまあ、全員揃ったんだしとりあえず乾杯しないか?」

 

「お、おう。そうだな(GJキリト!)」

 

「じゃあーー」

 

「待ちなさい」

 

そこに凛とした声が響いた。

 

「はい?」

 

「なぜ貴方が仕切っているのかしら。立場的に、言うなら私じゃないかしら」

 

「…ま、まあいいけど…」

 

エギル・エイト ・クライン ( … … ユキノさんぱねぇー!)

 

「それでは、明日のボス攻略と全員の生還を願って。…乾杯」

 

アスナ・ユイ「かんぱーい!」

 

エイト・キリト・エギル・クライン「……か、乾杯…」

 

そうして男女の温度差がありすぎる異例の前夜祭が始まる。

 

「そういや、アスナ達は護衛をいつも連れて歩いてるだろ?」

 

チキンを頬張りながらキリトがアスナに話しかけた。

 

「そうだよ」

 

「俺とこんなゴミ溜めみたいなところに来る時、よく引きとめられなかったな」

 

「おい、それ本音か⁉︎」

 

キリトの言葉にエギルが驚愕の声をあげる。

 

「あー、うん、み、みんな忙しかったんじゃないかなっ?」

 

「へーそんなもんか」

 

(言えない!追いすがる護衛達を全力でまいてきたなんて言えないっ!)

 

するとユイがフワフワとした喋り方で、俺に話しかけてきた。

 

「ねーねーエイト。いつも前夜祭って何やってるの?」

 

「基本的には食べて飲んで、だべるだけだ」

 

「え……なんか…かわいそう…」

 

「んだよ。悪いかよ」

 

「別に悪いワケじゃないけど。ねー、ゆきのん?」

 

ユイが奥にいるユキノに水を向ける。

 

「ええ、別に悪いわけではないけれど、時間の浪費だと思うわ。別に悪いわけではないけれど。あとこの男の前でゆきのんはやめなさい」

 

「じゃあなんで二回も言ったんだよ。二回も。棘ありまくりじゃねーか」

 

 

 

 

 

ふと思う。

男四人女三人。合わせて7人。

二年前、さくら荘で共にバカな時間を過ごした人数と奇しくも同じ数だ。

今頃、あの6人はどうしているだろう。みんな大学に進んだのだろうか。

千石先生は結婚出来たのだろうか(笑)…あれ?なんか寒気が。

俺は眼の前にうつる光景を記憶の中で薄れつつあるさくら荘のリビングでの光景をそっと重ね合わせてみた。

過去と現在。どちらの方が大事か、俺には分からない。

それでも。

あの人達は今でも俺を待っていてくれてるはずだから。

すると、ユイに横から声をかけられた。

 

「エイト、食べないの?ケーキだよ、ケーキ」

 

「ん?…ああ、食うよ」

 

俺はユイが持って来てくれたエギル特製のチョコレートケーキを一口、口へと運ぶ。

 

 

うん、 甘い。

 

 

 

 

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