異世界卜部 〜異世界でもコードギアスの世界でも四聖剣は虚名にあらず!〜 作:シャール
「で、どうやったワケ?アレは。」
部屋のモニターにはチョウフ基地での俺の戦いの様子が映っていた。
「気合いとは言えんしな・・・。」
「勿論。そんな精神論じゃ納得できないわね。」
それはそうだ。ただ本当に感覚的な問題だからどう答えたものだろう。
「・・・とっくの昔に廃棄されていた計画の神経電位接続・・・。それならば不可能ではなさそうだけど。」
「しかし月下は。」
細い男が資料を見ながら言った。
「分かってるわ。昔ながらだけど一番信頼できる操縦システムだもの。」
「一番の問題が残っています。もしも月下の操縦法であのような事が可能であっても、機体スペックを大幅に超えたこの速さと動きは。」
「ま、無理だろうね。」
何を話しているが分からないが・・・。
「調べりゃ分かるわね。ここでは設備が足りないから詳しい検査は地上でね。」
「ああ。分かった。」
「でさ、本題だけど、私の新しい機体と装備のテストパイロットになって欲しいワケ。」
「テストパイロット?」
前は確か紅月がそれも兼ねていたな。
「あんたのナイトメア操縦技術には目を見張るものがあるわ。キョウトの爺ちゃん達が何故ノーマークだったか分からないぐらいにね。」
そうだな。確かに。
前はナイトメアの操縦技術に自信はあったが、紅月程ではなかった。
他の四聖剣と実力が拮抗していた故に目立たなかったみたいだが・・・。
「取り敢えず、チョウフの戦闘データから調整したアンタの機体よ。」
その時、ナイトメアフレームがライトアップされた。
その機体は全体的に暗い灰みを帯びた緑色。つまりは我々日本解放戦線の軍服の色にカラーリングされていた。
「月下・・・。だが違う。」
「そ。まあ、『月下乙型』ってところかね。」
確かに一見月下そのものだが、腕にはハンドガンではなく。何だ。火砲か?
「ま、見て分かる通り急ごしらえだけどね。ま、雷光の大型リニアキャノンのミニチュアってところかね。」
「あの超電磁式榴散弾重砲の。」
「分かってるじゃない。でもこっちはレールガンの技術をまだ小型化できていないから、榴散弾を火薬で撃ち出すだけだけどね。もちろん弾速と射程は劣るけどね。」
あれならば威力は絶大だな。
「専用のカートリッジに4発だけ装填されていて、再装填には時間が必要よ。ここぞって言う時にしか使えないわね。」
やはりハンドガン程の汎用性は無いか。
「で、こっちは試作兵器よ。」
そう、先ほどから気になっていた。
布をかぶせられているそれが。
「えいっ。」
その掛け声と共にその布が取っ払われる。
「これは・・・!」
槍・・・?いや穂先が違うな。一体何だ?
「ま、名付けて『
「制動槍・・・。」
あの藤堂さんが使っていた制動刀の亜種といったところか。
「ま、細かいことはこのトリセツ読んどいて。私はゼロの所に行かなくちゃね。シミュレーターで訓練しててもいいからね。」
ラクシャータはそう言うと手を振って格納庫から出ていった。
しかし俺で良いのだろうか。それに前に使われていなかったという事は失敗兵器ではないだろうか。
「取り敢えず読んでおくか。」
渡されたペラペラのマニュアルを開く。
『制動刃吶喊衝角薙刀』
ふむ、どうやら制動刀と同じシステムらしい。
区部分にはやはりブースターが付いているな。石突部分には輻射波動機構か。皮肉なものだな。刀身より殺傷力が高いとは。
しかしこれで敵の不意を突く事は可能か。
使うには必然的に両手が塞がるだろうな。榴散弾砲との併用は中々骨が折れそうだ。
それに色々な部分にブースターが付いている故に扱いが難しいだろう。まさに暴れ馬といったところか。
「強みと弱みは紙一重・・・か。」
しかし使いこなせれば相当強いはずだ。特に近接武装がされていないブリタニアのナイトメアには脅威だろう。
「卜部さん。いる?」
この声は朝比奈か。
「ああ、いるぞ。どうした。挨拶はもう終わったのか?」
「ま、壱番隊っていっても他の隊員はほとんど陸上待機みたい。だから暇でさ・・・ってこれが卜部さん専用機?」
朝比奈が機体に興味を持ったみたいだ。
「へー。なんか卜部さんらしい機体だね。腕の大砲は?」
「ああ。あの雷光の物と近いらしい。」
「あの超電磁式榴散弾重砲?」
「ああ。」
朝比奈は顎に手を当てながら、俺の機体を嘗め回すように観察する。
「で、こっちが散装備・・・。」
「制動薙刀というらしい。」
「なんかごてごてというか華が無いな。」
「ま、戦場には華は不要だな。」
「そうかなぁ。僕は戦場にこそ華は必要だと思っているけど。」
「お前らしいな。」
朝比奈は目立つのが好きだからな。
「そうだ!この後時間があるならさ、呑もうよ。藤堂さんと仙波さんと千葉を加えてさ。」
「どうした。いきなり。」
「藤堂さんを無事救出できた祝いでさ。」
前は特にそんなことをしなかったな。
しかし平時だからこそ祝いは必要か。
「いいだろう。千葉と仙波さんにはお前から声をかけてくれ。俺は藤堂さんに。」
「流石!頼りになる!」
「お前は本当に調子の良いやつだな。」
「悪いことじゃないでしょ?」
「まあな。」
朝比奈は別れの言葉を言うと格納庫から出ていった。
失念していた!そういえばカルメンはどうなったのだろうか。あの食堂に置き去りにしてきてしまったが・・・。
「今日はもういいか?」
確かこの男の名前はユスクだったか。
「ええ、大丈夫です。明日は朝の8時にここに。」
「承知した。」
さて、ではカルメンを捜すとするか。
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「君には紅月カレンの影武者になってもらう。」
カルメンはいまいち状況を呑み込めていないようだ。
「影武者?」
「私の・・・ですか?」
「ああ。最近アッシュフォード学園には通えていないだろう。」
カレンは驚く。
そう。ゼロは気にするはずはないのだが。
「・・・しかし何故ですか?」
ゼロは足を組みなおして頬杖を突く。
「アリバイ作りだよ。君は黒の騎士団に必要不可欠なパイロットだ。それにこれからは作戦行動が多くなる。必然的に不在が多くなるだろう。」
「確かにそうですが。」
「ちょっとちょっと!勝手に人の影武者にしないでもらえる?」
「君に拒否権は無い。この艦内にいる時点で君はもう黒の騎士団なのだからな。生殺与奪権を握っていると言ってもいい。」
「アンタねえ!」
カルメンが怒りかけたその時。
「お願いします!」
カレンが頭を下げる。
「ゼロの考えには訳があると思うんです。だから、どうかお願いします!」
そういわれると必然的にカルメンは落ち着くわけだが。
「そんないきなりそう言われても・・・。あなたの事はまだほとんど知らないのに。」
「じゃあ親睦を深めましょう?」
「まあ、それはいいけど・・・。」
「ゼロも少し待っていただけますか?」
「・・・まあいいだろう。」
「ありがとうございます。」
「それでは下がりたまえ。」
「失礼します。」
カルメンとカレンは部屋を出るのだった。
カルメンの顔はまだ不満そうではあったが・・・。
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「藤堂さん。」
「卜部か。」
艦内の廊下を歩いているとたまたま藤堂さんと出くわす。
「そう言えば、朝比奈が藤堂さんの救出を祝ってパーティーをやりたいと。」
「ほう。祝いの席か。たまには悪くない。」
どうやら乗り気のようだ。
「だがその前に、軽く腹ごしらえをしないか。先程昼食を食べ損ねてな。どうも腹が減って敵わない。」
「そういえば俺も食べ損ねてました。何か食べたいものでも?」
「・・・先程これを見つけてな。」
藤堂さんは懐から何かの袋を取り出す。
「煎餅・・・ですか。」
「まあ、少し相談したいこともあるしな。良いか?」
「はい。大丈夫です。」
俺達は四聖剣と藤堂さん用に用意された部屋に入る。
中にはまだ誰もいないようだ。
千葉と仙波さんはまだ部隊の隊員のところにいるだろう。まあ、朝比奈はどこかをふらふらしているんじゃないか。
「丁度いい。お前だけと話したい気分だった。」
俺と藤堂さんは歳が近い。だからたまに二人でこうやって話すこともあった。
「枢木スザク・・・。どう思う。」
枢木スザク。枢木ゲンブ首相の忘形見。今はブリタニア軍に属している。
あの虐殺皇女ユーフェミアの騎士。
「正直。良くは思ってません。」
「そうか。」
「ただ。彼も軍人。何か信念があっての事でしょう。」
「お前もそう思うか。」
そう。名誉ブリタニア人になって軍人を選ぶ。並大抵の覚悟では無かっただろう。
「彼には彼の道があるのだろう。だがその道の先には隷属の日本しか待ち受けてないと思う。」
そう。あの行政特化日本は罠だった。
「我々の手で取り戻してこそ、真の価値がある。そう言いたいんですね。」
「そうだ。」
例えブリタニア人のゼロに使われていたとしても、彼は切り捨てるだけではと言った。
俺はそれを信頼している。
藤堂さんはまだ知らない。だが彼に任せれば日本を。
「しかし上手くいかないものだな。片瀬少将が身罷られた今。ゼロを頼るしか無いとはな。」
「あまり気負いすぎない方が良いかと。それにもうゼロは知っているじゃ無いですか。『奇跡の藤堂』は奇跡では無く、軌跡だと。彼ならば日本解放戦線とは同じ末路は辿りませんよ。」
「うむ。そうだな。迷っていても仕方がない。彼の才覚を信じるとしよう。」
俺は煎餅を袋から取り出して齧る。
うむ。久しぶりに食べた。逃亡中ではこういったものはあまり無かったからな。
茶が飲みたくなってきた。
「ところで千葉とはどうなんですか。」
「ゴホッ!ゴホッ!!」
俺がそう書くと分かりやすく藤堂さんはむせた。
「冗談は辞めてくれ。それに彼女は。」
「戦友。ですか?しかし。」
その時扉が開く。
「あっ!藤堂さんと卜部さん!ちょっと!間食はダメですよ。」
「たまには良かろう。食べたい気分だったんだ。」
「まぁ、藤堂さんがそう言うなら・・・。」
俺は煎餅を手に持って朝比奈に差し出す。
「お前も食え。結局炒飯食えなかっただろう。」
「え?僕は食べましたよ。作りながらですけど。」
こういったところはちゃっかりしてるな。
「でもまあ、煎餅は久しぶりだね。醤油菓子の究極系。ってね。」
そう言いながら朝比奈は煎餅を齧るが・・・。
「うーん。やっぱりちょっと醤油が足りないかなぁ・・・。」
懐から醤油を取り出してかけ始めたではないか。
「やっぱ、これだよこれ。」
やはりいつもの朝比奈だ。
「そう言えば卜部。新しい役職はどうだ。確か、技術開発部の。」
「やっていけそうです。それに楽しそうですよ。」
「そうか。」
「しかし僕達四聖剣の連携はもう殆ど無いかな。みんな隊長になっちゃったし。」
「しかし我々の心は一つだ。」
「ま、藤堂さんのいる場所が僕の居場所だから。」
「寂しい事を言ってくれるな。朝比奈。まあ、一人だけ突出するお前に合わせるのは大変だったが。」
「卜部さんや他のメンバーなら着いて来れるって信じてるからね。」
「物は言いようだな。」
穏やかな時間が流れる。
久々だ。こんなに落ち着いていられるのは。
「あっ、中佐。」
「千葉か。隊員への挨拶はもういいのか。」
朝比奈と話しているうちに千葉が来たようだ。
「ええ。それと仙波さんは遅くなるから先に始めてていい。との事らしいです。」
「どうせ説教紛いの事でもしているのだろう。後で言っておかねばな。」
「じゃ、一足先に始めちゃおうよ!僕が乾杯の音頭を。」
その時艦内の電気が消える。
「何事?」
すぐに明かりが復旧する。
「すまないねぇ。ちょっと電力使いすぎちゃった。」
艦内放送で例の気怠そうな声が聞こえる。
ラクシャータ・・・。
「では、気を取り直しまして。」
「これから本艦はヨコハマの港に入港します。」
藤堂中佐が微笑む。
「折角だ。地上で呑み直すとしようじゃないか。」
「ですが我々は。」
「気にするな。ヨコハマ租界に知り合いの中華店があるんだ。」
「あ、あそこですか。」
「知っているのか?卜部。」
千葉が聞いてくる。
「ああ。昔に二度ほど中佐とな。」
「あの時はまだ互いに20代だったな。懐かしい。」
千葉がむすっとした表情になる。
俺は嫉妬されているのか・・・?
「しかし今でもやっていますかね?最後に行ったのはブリタニア侵攻前ですし・・・。」
「実はこの間手紙を預かってな。どうやらヨコハマ租界の中華街は中華連邦人が多かったため手が出せなかったらしい。幸運な事にな。」
「なるほど。では行けますね。」
「ちょっと待ってください!」
「どうした。千葉。」
「我々はブリタニアに追われる身。いつ通報されても・・・。」
そうか。そう言えば。
「確かにな。ほとぼりが冷めるまではやはり・・・。」
「いいんじゃないの?別に。だって僕たち黒の騎士団に合流したんでしょ?現地人達は通報しないだろうしさ。」
確かに。前よりはかなり動きやすい。
「そうだな。日本解放戦線は河口湖のホテルジャックで信頼を失った。確か藤堂中佐が捕まった時も。」
「現地人による通報。」
そうだ。あの時は中佐が俺たちを庇って。
「まあ、そう言われれば。」
「それに、次こそはもっと上手く変装して見せよう。」
確かに。捕まった時の中佐は仰々しい外套を羽織っていたな。
あの時は藤堂チョイスに任せていたが・・・。
「卜部。服選びを手伝ってくれないか。私も流石に懲りた。」
「ええ、そう言われるのなら。しかし。」
俺は千葉を見る。
「彼女ならより自然な服を選んでくれるのではないかと。」
「そうか。では千葉に頼むとしようか。」
上手くやれよ。千葉。
「は、はい!全身全霊で!」
「なに。そこまで気負わなくていい。」
「じゃ、卜部さんも僕は一回部屋に戻って私服を取ってくるよ。」
「ああ、ではまた後で落ち合おう。」
「行くよ。卜部さん。」
朝比奈に袖を引っ張られる。
「おい、あまり引っ張るな。」
多分千葉のために気を遣っているのだろう。もっとさりげなくできんのかコイツは・・・。
そうして俺たちが部屋から出ると。
「お、卜部と朝比奈じゃないか。」
「仙波さん。」
どうやら今から部屋に入ろうとしていたらしい。
「これからヨコハマ租界の中華料理店に行くんだけど、仙波さんも来る?」
「ああ。勿論。となると私服に着替えんとな。」
「流石。話が早い。」
「となると、中佐と千葉はこの部屋の中か。」
「今服を選んでいるらしくてさ、僕たちも着替えに行く所。」
「ではワシも一緒しよう。」
「じゃ、行こうか。」
そうして俺たちは外出の為の準備をするのだった。
UA2000越え達成です!皆さんのおかげです!ありがとうございます!
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