異世界卜部 〜異世界でもコードギアスの世界でも四聖剣は虚名にあらず!〜   作:シャール

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卜部 虚しい 失敗

 ・・・身体が重い。頭が割れるようだ。俺は一体・・・。

 

「やっと目が覚めたのかい。」

 

「・・・ラクシャータか。」

 

 俺は頭を押さえながら起き上がる。

 

「教えてくれ。あらからどれぐらい経った。」

 

「4時間ってところかね。」

 

 4時間・・・。そういえばゼロは!!

 

「ゼロはあの爆撃で行方不明。エースパイロットの紅月カレンも同様。」

 

 俺の考えを読んだかのようにそう言う。

 

「スーーーッ。ふぅ。まあ散々な失敗。ってワケ。」

 

 顔に煙が当たる。

 

「今は扇が指揮を?」

 

「まあね。さっき会議が終わったトコ。まあ、明日までゼロを待つって感じだけどね〜。」

 

 前と変わっていない・・・?あの時確かにゼロは避難できた筈だ。

 

 何かワケがあるのか?

 

「とにかく、アンタ今日は休みな。酷く頭打っちゃってさ。月下乙式は廃棄せざるを得ない損傷だったし。」

 

 頭に巻かれた包帯を触る。

 

「それと・・・。」

 

 ラクシャータが俺の横に視線を移す。

 

「仙波さん!!」

 

 未だ意識がなく、体中に包帯が巻かれている男が横になっていた。

 だがこの体型で分かる。この見慣れた姿形で・・・。

 

「アンタ程運が良くなかったのさ。生身であんな爆撃を受けちゃってね。全身傷まみれ。」

 

「そんな・・・!」

 

 俺が無理矢理!無理矢理歴史を捻じ曲げた結果がこれか!?

 歴史を捻じ曲げるとしっぺ返しを喰らうのか?

 

 俺が介入しない方がまだ良い結果だった・・・。俺は余計なことをしてはいけないのか・・・?

 

「そうだ。」

 

 そうだ!朝比奈は!?あの時仙波さんと一緒に。

 

「あー。あのメガネの坊やかい。無事だよ。傷一つ無いわ。そのおじいちゃんが盾になってね。」

 

 仙波さんが・・・。

 

「ま、ゆっくり休みな。アンタには月下乙式に代わる何かを用意しておくから。」

 

 そう言うとラクシャータは医務室から出て行く。

 

「ああ・・・すまない・・・。」

 

 俺は。俺の行動でこんなにも・・・。

 

「くっ!!」

 

 俺はベッドに拳を叩きつける。

 

 己の無力さに虫唾が走る。

 俺に!俺にもっと力があれば・・・。

 

 扉が開く音がする。

 

「卜部さん。どう?体調は。」

 

「・・・朝比奈か。」

 

 珍しくその顔には笑みが浮かんでなかった。

 

「僕のせいだ。あの時僕がしっかりと枢木スザクを押さえられていれば。」

 

 そんなことない!

 

「そんな事はない!あれは俺が!」

 

「ううん。結果的に僕がしっかりとしていれば仙波さんが僕を庇う必要は無かった・・・。あの時の慢心が仇になったんだよ。」

 

 仙波さんに繋がれた呼吸器からの音が個室の中に響く。

 

「あの時以来だよね。こんな、ドジ踏むなんてさ。」

 

「ヤマグチの・・・。」

 

「ねえ。卜部さん。僕は。僕はどうしたらいい?」

 

 本当は俺のせいなのに、朝比奈はそれを知る由がない。

 説明できる筈もない。

 

「・・・気にせんでいい。」

 

「「仙波さん!!」」

 

 仙波さんの意識が戻ったようだ。

 

「・・・ワシの事は気にするな。ただのかすり傷よ・・・。」

 

「でも!」

 

「・・・朝比奈ッ!」

 

 おおよそ怪我人とは思えない声だ。

 

「はいッ!」

 

「・・・くよくよするな!お主は日本男児だろう。」

 

「・・・はいっ!!」

 

 朝比奈の目から涙が溢れる。

 

「その意気やよし・・・。」

 

 仙波さんはそこまで言うと力尽きたのか眠ってしまったみたいだ。

 寝息が聞こえる。

 

「僕もらしく無かった、ね!」

 

 朝比奈はゴシゴシと袖で涙を拭いパンっと両腕で頰を叩いた。

 

「よし!仙波さんに見せなきゃね。健康優良日本男児をね!」

 

「どうやらいつものお前に戻ったようだな。」

 

 涙を流すなんて朝比奈らしくない。

 

「卜部さんもいつまでそこにいる気?ま、明日までは待ってあげるけどさ。」

 

「フ。言ってくれるな。」

 

 そうだそれでこそ朝比奈だ。

 

「でもさ、卜部さん。正直どう思う?」

 

「どう思う。とは?」

 

 この顔は真面目な話をするときの顔だ。

 

「あの時ゼロは卜部さんのあの言葉があったとはいえ、すぐに発砲指示を出した。やっぱり駒としてしか・・・。」

 

「それは違うな。」

 

「・・・え?」

 

 そうだ。違う。彼は俺を駒として見ていたのではない。

 

「ゼロは天秤にかけたと思う。俺と枢木の死と奴を生かした場合のリスクをな。」

 

「でも卜部さんはそれで良かったの?ひょっとしたら死んでいたかも。」

 

「バカ言え。俺一人の命よりも日本だろう。」

 

 そう。ゼロがいなければ日本は取り戻せない。それに奴はこの後何度でも現れる。ゼロを邪魔する。

 

 朝比奈が呆れる。

 

「卜部さん。それ本気で言ってる?」

 

「ああ。あそこで死んだならばそれが俺の死に場所だった。」

 

 そう。俺は既に一度死んだ身。だが一度殉じただけでは足りない。祖国日本の為には・・・。

 

「馬鹿野郎ッッ!!!!」

 

 頬に痛みが広がる。

 これは。殴られた・・・?

 

「卜部さん!あなたには分からないの!?残された人の苦痛が!!僕にとってあなたは本当の家族以上に家族で!それに仙波さんも!!」

 

 朝比奈がまた握り拳を握る。

 そうだな。そうだ。俺は考えていなかった。

 

 日本の為と言いながら、カッコよく殉じたかっただけ。生き残った者に全てを押し付けて・・・。

 

「そうやってあなたはいつも!!」

 

「朝比奈!やめろ!!」

 

 怒鳴り声を聞きつけたのか部屋に入ってきた千葉が朝比奈の脇の下に腕を差し込んで止める。

 

「やめるんだ・・・。朝比奈・・・!」

 

 千葉の悲痛な声に朝比奈の体は脱力する。

 

「卜部・・・。私も聞いていた。お前はそこまで死にたがりだったのか・・・?」

 

 外で聞いていたか。

 

「俺は・・・。俺は死にたがりだったのかもしれない・・・。お前を助けた時だって、今ここで死んだらカッコいいかもなって心の底ではそう思っていたかもしれん・・・。」

 

「そうか・・・。そうなんだな・・・。」

 

 部屋の中を沈黙が包み込む。きっと誰もが考えているのだろう。次に口から出す言葉を。

 

「卜部さんはさ、ヒーロー願望ありすぎだよ。一見寡黙そうに見えてもさ、熱すぎだっての。」

 

「ふ。俺も知らなかった。だが腑に落ちた。」

 

 そうだ。一貫して俺が追い求めていた理想像。それはヒーローだった・・・。

 

 覚悟を見せ散るヒーロー。誰の目にもカッコよく映るそれに憧れていたのかもしれない。

 

「卜部。これからは一人で背負い込むな。何の為の我々四聖剣だ?そんなに重い荷物なら喜んでみんな一緒に持ってくれるぞ。それに。中佐もきっとそう思っている筈だ。」

 

 そうだな・・・。長年共にいるから分かる。

 家族以上に濃密な時を過ごしてきた第二の家族。

 

 いいところを見せたかったんだな。俺は。コイツらに。中佐に。

 

「すまなかった。」

 

 俺は頭を下げる。

 

「これからは日本と。それとお前達のためにな。生きてこそ。だったんだな。」

 

 俺は遂に・・・!

 

 

 

 

「卜部。無事だったか。」

 

「お陰様で。これも軽い脳震盪らしいですし。」

 

「そうか。」

 

 俺は今中佐の前に立っている。

 

「しかし良かったのか?確か安静にするようにと。」

 

「こんな事で寝ていては鈍ってしまいますよ。動けるなら動かないと。」

 

「フ。どうやら何かを掴んだみたいだな。卜部。」

 

「え?」

 

「顔つきが変わった。前の顔も良かったが今の方がもっと良い。」

 

 やはり中佐には全てお見通しか。

 

「おい!ゼロが!ゼロが戻ってきたぞ!」

 

「マジかよ!流石ゼロだぜ!」

 

「紅月も一緒だ!」

 

 周りがざわめき出す。そうだ丁度これぐらいの時間だったな。

 

「行くぞ。卜部。」

 

「ええ。」

 

 俺たちは走って格納庫へと向かう。

 途中で扇や朝比奈、千葉と合流する。

 

 すると丁度ガウェインから降りてくるゼロの姿が。

 

「私は戻った!!」

 

「「「「おお!!」」」」

 

 団員達からは歓声が起こる。

 

「ゼロ!それにカレン!無事で良かった・・・。」

 

 扇が涙目で喜ぶ。

 

「そんなに喜ぶほどじゃねーよ!俺は信じてたんだ!ゼロはきっと無事な筈だってな!」

 

「確かお前は最初。もう終わりだーとか言ってただろう。」

 

 南が玉城にツッコミを入れる。

 

「うるせー!!終わった事は終わった事なんだよ!結果ゼロが無事で良かったじゃねえか!」

 

 逆ギレか全く。

 

「それにしてもなんだこのデッカいナイトメアは。それに空を。」

 

 これには見覚えがある。

 ゼロの専用機ガウェイン。元々はブリタニアが所持していたようだが、ゼロが鹵獲。それ以降は彼の象徴だった。

 

「やっぱりね。フロートシステム・・・。」

 

 ラクシャータが不気味に笑む。

 

「ラクシャータ。解析を頼む。」

 

「当然。」

 

「扇。私の留守の間に何か動きはあったか。」

 

「それが、キュウシュウに・・・。」

 

 扇は澤崎の件について話す。

 

「ほう。なるほどな。しかし少し時間を貰おう。こればかりは我々黒の騎士団も慎重にならなければならない。後日追って連絡する。それでは私は自室に戻らせて頂くとしよう。」

 

 堂々と歩くゼロを皆んなで見送る。

 そして彼がいなくなった途端。

 

「良かったぜ!!カレンが生きていてよ!」

 

「ああ。大変だったろう。」

 

「いえ、私はそんな。あっ!」

 

 紅月は千葉と朝比奈の元へと駆け寄る。

 

「ありがとうございます!その。紅蓮弐式を回収してくれたってゼロから聞きました。」

 

「それで、わざわざ礼を言いに?」

 

「ははっ。イマドキの子にしてはしっかりしてるじゃないか。」

 

「茶化すな、朝比奈。それに紅蓮を回収しようって言ったのはお前じゃないか。」

 

「そうだっけ。」

 

 朝比奈はおちゃらける。

 

「すまんな。コイツは照れ屋で捻くれてる男なんだ。大目に見てくれ。」

 

「ちょ、ちょっと!余計な事教えないでよ。」

 

 どっと周囲に笑いが起こる。

 そうだ。ここらへんでやっと俺たちは周囲と馴染めたんだ。

 

 すると扇が手を叩く。

 

「よし、皆んな無事だったって事で今日はもう解散しよう!明日の朝一番にヨコハマに入港するから皆んな準備を怠らないように。」

 

「やっと副司令らしくなってきたじゃないか。扇。」

 

「南も茶化すな。では解散!!」

 

「「「「はい!!」」」」

 

 蜘蛛の子を散らしたように部屋から団員達も^_^出ていく。そうだ。やっと黒の騎士団がまとまりを得てきている。

 

「では我々も。」

 

 中佐がそう言うと。

 

「ストーップ。卜部チャンはここに残りな。」

 

 ラクシャータが言った。

 

「俺の事には構わず行ってください。後で合流します。」

 

「む。そうか。ではな。」

 

「ラクシャータさん。あんまり虐めないであげてね。」

 

「バカだな朝比奈。お前って奴は。」

 

 千葉が朝比奈の後頭部をはたく。

 

「へへ。」

 

 そう言うと三人は部屋から出て行った。

 

「・・・で。アンタの言う通りフロートユニットを備えた機体があったってワケ。アンタはどこまで知ってるの?」

 

 俺だけの干渉では世界は変わらない。ならば他人の手も借りよう。

 

「技術関係の事なら知っているだけ話そう。あまり専門知識は知らないが・・・。だがそれ以上は。」

 

「機密事項ってワケ?まあいいさね。私はそれが知れれば。」

 

 何かを察してくれたようだ。助かる。

 

「お前も見ただろう。あの航空艦を。」

 

「ええ。やっぱホンモノは迫力が凄かったわ。でもあの時のエネルギー砲。」

 

「これのものだ。」

 

 今は静かに佇んでいるガウェインを指差す。

 

「でもまだ収束はできていないようね。あれだけ拡散してたって事はまだ未完成。」

 

「それをお前が完成させるんだ。」

 

 ラクシャータは目を見開く。

 

「ハッ。無理言ってくれるじゃないの。」

 

「お前にはできる。知っているんだ。」

 

「へぇ。まるで私の行動を知っているかのような口ぶりだね。」

 

 鋭い。だが変に隠すのはもうやめだ。

 

「でもまぁ、できない事は無いね。エネルギー砲っていっても要は熱エネルギー。収束レンズプリズム機構を応用すればまあ可能だろうね。」

 

 ・・・・何を言っているかは分からないが・・・。

 

「そうそう。アンタが教えてくれたフロートシステムだけどさ。アレ。もう試験段階に入れそう。やっぱ現物があると違うわ〜。」

 

 ガウェイン。この機体は俺たちの技術を躍進させる!

 

「あっ!忘れてた。月下乙式に代わる機体だけど。」

 

 そういえば俺の機体。月下乙式は大破したと聞いてきたな。

 

「まあ、本当の本当に試験機なんだけどさ。新境地の流水型フレーム。」

 

 流水型・・・?初めて聞いたな。

 

「コレよ。」

 

 パソコンの画面を見せられる。

 

 パッと見た感じは全体的なフォルムは紅蓮や月下と似ている。ただ。

 

「少しゴツく無いか?」

 

 角が取れてこう。少し大きくなった?という感じで。

 

「しょうがないでしょ。重武装。対実弾、対エネルギー兵器にコンセプトを置いた機体なんだらから。」

 

 このゴツさ。それと何か関係が?

 

「ま、この鎧部分は緊急時にパージ出来るようにはなってるけどね。でもこれには爆発反応装甲が詰まってんのよ。」

 

「爆発反応装甲?」

 

 一体何だ?それは。

 

「簡単に言えば火薬の力を使って敵の砲弾の威力を相殺させるってワケ。それに表面は特殊塗料でコーティングされてるからまあ、極至近距離で喰らわなければあのハドロン砲だってヘッチャラよ。」

 

 それは凄い!

 

「ま、重武装だからスピードには劣るけどね〜。私の作るスピード型のタイプには合わないけどたまには違う事してみなきゃね。」

 

 さながら実験用のモルモットだな。

 だがいいだろう。これならもっと有利にブリタニアと戦えそうだ。

 

「あと、榴散弾砲はオミットしておいたわ。アレ。電撃戦では使えないもの。やっぱ自走砲的な運用は雷光が一番なのよね〜。」

 

「確かに。これまでは上手く戦況と噛み合っていたが、これからは敵味方入り混じる市街戦になるだろう。味方も倒してしまっては敵わん。」

 

「その代わりだけど両腕にハドロン砲を搭載予定!今のところはエネルギー効率的に両腕一発ずつしか撃てないけど、本陣を守る想定のこの子だと、再装填も容易ってワケよ。」

 

 ふむ。つまり俺は守護部隊の穴埋めになったと言うことか。

 確かに仙波さんがあの状態ではな。

 

「制動槍もまあ、何とかもう一本用意できそうだから武装面では問題なしね。」

 

「しかし俺がそんな機体に乗っていいのか?」

 

「アンタねぇ。もう黒の騎士団ではエースパイロットの双翼の一人なのよ〜?確か裏では『紅い稲妻のカレン』んでアンタが『不動の卜部』だっけ?」

 

 いつの間にそんな二つ名が・・・。

 

「つまりアンタ向けの機体作ったってワケ。うまく生かしなさいよ?」

 

「ああ。ありがとう。」

 

「じゃ、私はこれからハドロン砲の収束作業とドルイドシステムの解析に入るから。ま、アンタは好きにしてな。じゃあね〜。」

 

 前以上に世話になってるな。

 

 しかしこの後は確かゼロによるガウェインの初陣。

 

 澤崎の傀儡政権、打倒。ゼロと枢木による共同戦線・・・。

 

 この時、俺たちは出陣しなかった。ならば今のうちに考えておかなければならないな。

 『行政特区日本』ユーフェミアによる日本人虐殺を・・・!

 

 

 

 

「カレン!話聞いてる〜?」

 

「え、ええ。」

 

 紅髪の女。カルメン・ソードライン。20歳にして学園に通っている。

 紅月カレンの影武者として・・・。

 

「っていうかカレンなんか成長した?こう色々デッカくなったような。」

 

「あーリヴァル!それセクハラだよ!」

 

 柄にも無い病弱を装わなければならず、この任務は中々の困難を極めていた。

 

「カレンも嫌なら嫌って言わなきゃダメだよ!」

 

 シャーリー・フェネット。活発な子で水泳部所属。同じ生徒会メンバーであるルルーシュが好き。

 きちんとプロファイルは頭の中に叩き込まれている。

 

「え〜?世間話じゃないですか?ね?会長。」

 

 リヴァル・カルデモンド。生徒会メンバー。ルルーシュの悪友。裏でバイクを乗り回していたり、賭けチェスを行うイタズラ坊主。

 

「ちゃんと認めなさい。このエロガキめ〜。」

 

 そのリヴァルの頭に拳骨をぐりぐりとしているこの少女は。

 ミレイ・アッシュフォード。この学校の理事長の娘であり、生徒会長特権を使ってやりたい放題。だが学生みんなから愛されるトラブルメーカー。らしい。

 

「うふふっ。」

 

 この少女は普段は寡黙で何をしているか分からない。それに板のような物に向き合って・・・。確かニーナ・アインシュタインだった。気がする。

 

「皆んなゴメン!途中で参加する事になっちゃって!」

 

 枢木スザク。どうやら卜部の敵らしい。いかにも優男といった風だが悪の大帝国ブリタニアに恭順する日本人。

 

「もー。スザク君は軍務で忙しいんでしょ?大丈夫よ!」

 

「ありがとう。でも僕もできるだけ参加しなきゃ。」

 

 カルメン・ソードラインの任務は単純。ただ学生として過ごす事。

 これが卜部の為になるならと彼女は引き受けたが、学校という物に行った事がない身としては毎日が新鮮だった。

 

 元の世界ではあり得ないほどの平和。だがその平和が心地よい。

 貴族同士の政治的駆け引き。目も背けたくなるような魔物による蛮行。そして同じ人同士の無駄な争い。

 

 ここにいれば全てから目が逸らせる。本人が望むまいと。嫌でも分からされる。

 

「カレン?そこの資料取ってくれない?」

 

「あ、こ、これ?」

 

「ん、そーそー。アリガトねっ!」

 

 でも卜部の為と割り切り、今日もカルメンは学生を全力で演じるのだった。

 

 

 

 

「退屈だ。」

 

 一通りシミュレーションも鍛錬もしたがやる事がない。

 

 いかに自分が軍人として長く過ごしてきたかを実感する。こんなに命令されていない時間があるなんて学生の時以来だろうか。

 

 何か娯楽になるような物があると良いが。

 

 そうだ。

 

 俺はある実験をしようとその場所へと向かった。

 

 

 

 

「あ?卜部さん。何故ここに!?」

 

 かしこまる女団員。確か井上直美と言ったか?だが。

 

「そんなに堅苦しくしないでくれ。俺たちは同じ仲間だろう。」

 

「あ、は、はい。しかし何故厨房に?」

 

「決まっているだろう!厨房。男一人。それが意味するものは?」

 

「お腹が空いたんですか?」

 

 そんなものなのか?男が厨房を訪れるという事は。

 

「料理をしに来たんだ。このままでは腕が鈍ってしまう。」

 

「あ、そう言えばこの間は炒飯を。」

 

「覚えていたか。今日は代わりに俺が作ろう。」

 

「え。でも・・・。」

 

「まあまあ、任せておけ。」

 

 俺は冷蔵庫を開く。

 

「・・・なるほどな。」

 

 中には牛ひき肉、ほうれん草に、レタス、トマトあと各種調味料とパンを作る材料・・・。

 

 これはもうアレしか思い浮かばんな。

 

「あの。何か手伝いましょうか?」

 

「助かる。ではお願いするとしよう。」

 

 まずひき肉を取り出す。これだけの数だ。ざっと10キロ以上はあるな。

 

「まず肉をこねてくれ。あ、このヘラで頼む。」

 

「え?ヘラですか?手じゃ無くて。」

 

「手でこねると脂が溶けてパサついてしまう。だから体温が伝わらないようにヘラでな。」

 

「へ〜そうなんですね。」

 

 さて、俺は俺で主役を引き立てる脇役の準備でもしようか。

 

 まずは、巨大なボウルに強力粉、薄力粉、砂糖、ドライイーストを入れてよく混ぜる。この時はしっかりと手でな。体温が発酵を早める。

 

 塩と水を混ぜる。そして体重をかけながらゆっくりとこねる。

 

 中々手強いな。これは良い鍛錬相手になりそうだ。

 

「卜部。お前が厨房に入ったって噂を聞いてな。」

 

「お、千葉か!手伝ってくれ!」

 

「お前は本当にお人好しだな。ちゃんと糧食班だってあるものを。」

 

「たまにはいいだろう。彼らとて毎日は辛い。少し手伝えるならそれでいい。お互い様だ。」

 

 千葉は上着を脱ぐと慣れた手つきでエプロンを身につける。

 

「全くしょうがないな。お前というやつは。さ、私は何をやったらいい?」

 

「ではそこのトマトを輪切りにしてくれないか。それとレタスを洗って良い感じに切ってくれ。」

 

「まさかアレを作るのか?」

 

「ふ。もう分かったか。」

 

「どれだけお前と厨房を共にしたと思ってる。お前の考えなどお見通しだ。」

 

「これは参ったな。」

 

 俺はできた生地を台に乗せ、台に擦り付けるようにこねる。

 

 よし、もう手につきにくくなってきたら頃合いだ。

 

 上からラップを被せてしばらく放置する。

 

「どうだ。井上。」

 

「なんとか混ざってきました。」

 

 俺は予め茹でておいたほうれん草を冷水で締めて、水を切って絞る。そしてそのひき肉の中へと投入する。

 

「もう一息だ。あと塩胡椒とすりおろしニンニクを入れておいてくれ。」

 

「はい。分かりました。」

 

 これで少し暇ができた。

 

「で、最近中佐とはどうなんだ。会話はできているのか?」

 

 千葉に世間話を持ちかける。

 

「それが、あまり会えてない。それに。」

 

「それに?」

 

「な、何でもないッ!」

 

 千葉はそっぽを向いて作業する。

 俺、何か変な事を言ったか?

 

「もー。卜部さん。女心が分かってませんね!」

 

「井上?」

 

「そういう話は軽くするものじゃないですよ?」

 

 そうなのか。確かにそうなのかもな。

 

「すまないな千葉。」

 

「い、いいんだ。別に。分かればな。」

 

 だが普段はあまりこんなに気まずくならないが・・・。

 

「でもまあ、藤堂さんは女性隊員達から人気ですよ。寡黙な感じがカッコいいって。」

 

「そうなのか!?」

 

 まあ、納得だな。中佐は女ウケも良いからな。

 

「千葉さん。あんまりモタモタしてると取られちゃいますよっ。」

 

 ・・・なるほど。さっきのアレは彼女なりの援護射撃か。素晴らしい。

 

 対して千葉は。

 

「ん、そうなのか。そうかもしれんな。」

 

 思ったより反応が薄かった。いつもの千葉なら飛びつく話なのだろうが一体どうしたのだろう。

 

 仕方がない。ここは一旦話題を変えるか。

 

「そう言えばゼロはどうするつもりだろうか。フクオカ基地の件。」

 

「やはり黒の騎士団は参加するのだろうか。しかしアレが成功したとあっては。」

 

「中華連邦にキュウシュウを取られたも同然。傀儡政権だからな。」

 

「しかし日本を名乗っている。」

 

「アレは建前に過ぎんよ。それに。」

 

 ゼロとブリタニアの協力。それは恭順派を独立派に取り込むいわばパフォーマンス。ブラックリベリオン時の戦力に関わる。

 だから澤崎政権は滅びなければならない。

 

「恐らくゼロなら参加しないはずだ。」

 

 そう。俺は知っているのだ。

 

「お前はゼロを高く買ってるんだな。私はイマイチまだ信用しきれていない・・・。」

 

「千葉。信用はしないで良い。だが信頼はしてやって欲しい。彼の手腕はホンモノだからな。」

 

「そうだな。確かにそれは目を見張る物がある。」

 

「日本人が日本を取り戻す為には、やはり彼の手がいる。だから信頼はしてやってくれ。」

 

「うん。そうだな・・・。そうだな!信頼してみる事にしよう。」

 

「ほら、手が止まっているぞ。」

 

「もう、お前が話しかけるから。」

 

「ははは。」

 

「何か微笑ましいですね。何か友達以上って感じ。」

 

「んなっ!私が卜部と?無い無い無い!!」

 

 千葉が必死に否定する。

 

「そこまで言われると俺も傷つくんだが・・・。」

 

「それはすまない。けど。井上〜!」

 

 こうして俺たちの昼飯作りは続いていく。

 

 




今回はちょい長めです。

最近は会話に重きを置きすぎて、あまり描写が深くできてません。反省しなければ・・・。

やはり神根島での事件はコードギアスの根幹に関わるのでゼロとカレンに行方不明になってもらいました。

しかし、スザクとユーフェミアは逃げおおせたのでスザクはカレンの正体を知らない事になりますね。

あと『生きろ』というギアスにかかってません!

これがこの先どんな波紋を起こすか楽しみにしててください!

あ!あとお気に入りは10件超えて11件になってました!本当にありがたいです!こんな作品でも読んでいただけて幸せです。

ではまた次回お会いしましょう。
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