異世界卜部 〜異世界でもコードギアスの世界でも四聖剣は虚名にあらず!〜 作:シャール
「フジサン周辺に『行政特区日本』を設立する事を宣言いたします!」
少し遅かったか・・・!
旧い世代のナイトメアの両手の上で宣言した彼女は第三皇女ユーフェミア。そしてこのまま同じ歴史を辿れば・・・。
虐殺皇女と化す。
「この行政特区日本では『イレヴン』は『日本人』という名前を取り戻すことになります。イレヴンへの規制ならびにブリタニア人の特権は特区日本には存在しません!」
耳触りのいい言葉。だがこの先の未来を知っている俺からすると・・・。
「欺瞞だな。」
「ブリタニア人にもイレヴンにも平等の世界なのです!」
しかしこれはただの夢物語。
「聞こえていますか?ゼロ!あなたの過去も、その仮面の下も。わたしくしは問いません!ですから、あなたも特区日本に参加してください。」
「ゼロ?」
「しかしクロヴィス殿下はどうなる?」
そう。奴はブリタニアにとってゼロは皇族殺し。重罪人。
ひょっとしてその重罪人に同調した時点で我らも彼女の虐殺対象になったのだろうか。日本人という括りの中で。
「ゼロ!わたくしと一緒に、ブリタニアの中に新しい未来を作りましょう!」
「「「「ユーフェミア様万歳!!」」」」
今こそ彼女の虐殺を止める!!
「『身体強化』!」
周りの時間が遅くなる。最早誰も俺にはついてこれまい。
人混みの中を飛びながら移動する。
しかし、ユーフェミアのこの顔・・・。嘘をつくような人間には見えん。
いや、曲がりにもあのブリタニア皇帝の娘。演技が上手いようだな。
俺は彼女を抱き抱える。
枢木スザク。少し借りるぞ。
やはり彼は俺のことを目で追えているようだが、その動きに体がついていかないようだ。
流石にこの手に入れた力には敵うまい。
しかし、ナイトメアの腕が俺を追いかけてくる!!
「なっ!!」
機械を通せば反応できるというのか!?
確かにあのランスロットに載っている時は身体強化が効かなかった。
「くそっ!!」
俺は彼が追ってこれないように人混みの中に紛れる。
これで、多少は大丈夫な筈だ。
先程の倉庫まで移動する。
そして全身の力を抜いて、身体強化を解除する。
「・・・!?」
驚くのも無理はあるまい。先程の上から見渡した光景では無く、無機質な倉庫の中なのだからな。
「どなたです?」
後ろに立っていた俺に気がついたようだ。
「真意を問おう。」
「・・・『日本人』の方ですか?」
ほう、まだ仮面は外れないか。
「『行政特区日本』。そこで貴様がする事は既にバレている。」
俺は銃を彼女に向ける。
「何の事ですか?それにわたくしがする事?」
「そうだ。貴様は日本人を集め、そこで虐殺を!!」
彼女は驚いた顔をする。
そんなことをする筈ないと、顔だけで訴えている。
しかし俺は知っているのだ。それに見てもいる。あの時彼女は嬉しそうに日本人を・・・!!
「そんな・・・有り得ません!」
それでもなお演技を続けるのか。
ならばここで討つ!!
引き金に指をかけた瞬間。
「どなたですか?ここは立ち入り禁止ですよ。」
この声は。
「ルルーシュ!ここです!!」
くっ、だが。
あの時殺された日本人の恨み!!
「死ね!虐殺皇女ユーフェミア!!」
その時。目の前にルルーシュが。
「撃つな!!」
ん?引き金が引けん!!
指が!
「ギアスに逆らっているだと!?」
「ギアス・・・だと!?」
ギアス。俺の力の一つ。異世界を渡るギアス。
「貴様!なぜギアスを!」
それをルルーシュ。いや、ゼロが!?
そしてこの力。まさか・・・!!
「そこまでだ!!」
枢木スザク!!
「ユーフェミア様を誘拐した罪で逮捕する!!」
一旦ここは!
「『身体強化』!!」
先ほど出た窓から外へと逃げる。
もう機会は一度しか無い。あの式典会場で・・・。
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「スザク。助かりました!」
ユーフェミアがスザクに抱きつく。
「お怪我はありませんか?」
「ええ。大丈夫です!それにルルーシュが・・・いない?」
ユーフェミアはふと考える。
(おかしいわ。ルルーシュが命令したらあの日本人の指が止まった。それに確か・・・。『ギアス』って言ってたのかしら?)
「ルルーシュならさっき。」
再び周囲に人が集まってくる。
「ユーフェミア様!『行政特区日本』!それはどういった計画なのでしょう!?やはり我々ブリタニアに利益をもたらすものなのでしょうか?」
「なぜ『イレヴン』を『日本人』として扱うのですか?」
ユーフェミアの顔はますます曇っていくのだった。
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指の痺れが取れた。
今はもう引き金に指をかける事ができるだろう。
しかしゼロがギアスを持っているとは・・・。
そしてこの感覚。確かC.C.からも似たような・・・。
「卜部さん。千葉が怒ってるみたいですよ!!」
あの後朝比奈と合流し、今は帰路に着いている。
「え?」
ポケットから携帯電話を取り出してメールを確認する。
『卜部!大切な会議を放っておいて何処に行っている!今すぐ戻ってこい!』
『どうした。何かトラブルにでも遭ったか?』
『なあ、見ていたら返事してれ!』
送信時間を見ると、最後のメールが送られてから既に3時間が経っている。
「あちゃあ、そういえばトウキョウ租界を攻める時に叩くべき需要拠点を決めるための作戦会議があったっけ・・・。」
「これはまずいな・・・。すっかり忘れていたぞ。」
これでは千葉に殺されかねん。
「取り敢えず急ぐ?」
「同感だ。」
俺たちは歩くのをやめ、走って帰るのだった。
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「・・・で?お前達は悠々とトウキョウ租界。それもブリタニアの学校に行っていたと?」
「はい。」
「言い訳もない。」
すると千葉は深くため息をつく。
「しかし丁度お前達がその場にいて良かった。あのユーフェミアが言っていた事は確かか?」
「あ、それ僕も聞きそびれたんだけどさ。どうなの?生で見た身としては。」
一言で言うならば本心だったと感じた。
だがエリア11の副総督とは看板役者。信じられるはずもない。
「今はまだ分からん。しかしこのままでは・・・。」
「我々黒の騎士団は瓦解する。参加してもしなくてもな。」
そう。結果的には虐殺で終わったおかげで我々黒の騎士団は立ち上がれた。あれ程の人数を連れ、トウキョウ租界に攻め入る事ができた。
しかし敵の懐にいながらみすみす殺される日本人を見捨てるかもできない。
「・・・俺は『行政特区日本』の式典会場に潜り込む。もしもの時は・・・。」
「それってゼロの意思に背くって事だよね?大丈夫なの?」
大丈夫な筈がない。だが救える命を救わないとは、何が日本を守るため立ち上がった義士だ。何が四聖剣だ。
「俺は。日本の為に。」
「そう。僕は一応隊長の立場だしそれに参加はできないけどさ、応援してるよ。最近の卜部さんは何か信頼できるからね。」
俺は千葉を見る。
「何だっ。好きにすればいいだろう。悔しいが朝比奈の言う通りだ。最近の卜部は、その・・・。頼れるしな!」
「二人とも、ありがとう。できればここだけの話にしたいのだが・・・。」
朝比奈が顎に手を当てる。
「でもさ、藤堂さんだけには言ったほうが良いんじゃないかな?やっぱり何も言わずにやるってそれ、ゼロと変わらないしさ。最低限僕たちだけでも。」
・・・確かにそうだな。いつの間にか俺はたくさんの秘密を変え込んでしまったものだな。
あのルルーシュ。ゼロと似たような立場になってしまったが故に仲間に嘘をつかなくてはならんとはな。
しかしゼロは嘘をつきたくてついているわけではないと分かった。
誰かのためにつく嘘は優しい嘘なのだろう。
だが俺は筋を通させて貰おう。
「その通りだな。では俺はこれから中佐に。」
「まあ頑張りなよ。何が起こるか分からないけどさ、卜部さんが全力を出した結果なら、いいんじゃない?」
「・・・いつか話してくれよ。訳を。」
千葉も疑いたくないのだろう。
何かがある前に芽を潰す。何かがあっては遅いのだから。
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「・・・そうか。」
藤堂中佐は腕を組んで目を閉じている。
まさに熟考といった風だが・・・。
「お前にも深い訳があるのだろう。だが我々は組織。黒の騎士団の団員だ。上官の指示に従うのが部下。勝手な行動は謹んだ方がいい。」
確かにそうだ。俺はゼロの意向に逆らうのだから。
「このままでは我々の立場が危ういのは重々承知している。だからゼロが・・・。」
「中佐。お言葉ですが、中佐こそゼロの奇跡に縋っていませんか?」
「何・・・?」
「『奇跡の藤堂』。そうやって縋られてきた中佐はその辛さがお分かりでしょう?」
「・・・。」
戦後7年間常にそばに居た。だから分かる。
『厳島の奇跡』
あれは奇跡では無く計算された戦略だった。しかし過剰な期待が彼にのしかかった。日本全土いや、日本人のものだった。
それは重荷だっただろう。そしていかに今の状況が彼にとって良いものだろうか。
皆が縋るのが『奇跡の藤堂』ではなく『救世主ゼロ』なのだから。
だから自主的に考えられなくなってしまったのだろうか。いまや彼は片瀬少将と同じに成り果ててしまった。
奇跡を信じる者に。
「中佐。ただ俺は筋を通したかったからこの話をしているんです。認めろとは言いません。ですが。あなたには『ゼロの部下』としてではなく『藤堂将軍』としての責務があるでしょう?」
「・・・そうか。私も甘えていたようだな。ゼロが起こす『奇跡』に。」
「・・・。」
「お前はゼロを信頼していないのか?」
俺は。
「ゼロを信頼しています。だからこそです。彼も言ったでしょう。『誰かがやってくれるのを待つのか。』と。」
「ふっ。お前はやる側になるという事か。」
「はい。」
中佐は立ち上がり、部屋の入り口まで歩いていく。
「私が認めよう。だが卜部、約束しろ。」
約束?
「死ぬな。」
そう言うと中佐は部屋から出て行った。
俺はもう二度と死ぬつもりはないというのにな。だか今の中佐の言葉は願いなのだろう。ならば俺は中佐の願いを叶えるとしようか。
・
・
・
「すまない。ラクシャータ。」
「・・・ま、いいケドさ。アンタそれなりの覚悟はあるのでしょう?」
覚悟など当の昔に決めている。
「・・・はあ、アンタの機体、使いなさい。いざという時にね。」
俺は中華街の時に使ったスイッチを手渡される。
「そのボタン押すと緊急時に無人機がアンタの機体を届けてくれるからさ、ちゃーんと有効に使いな。」
「ありがとう。」
ラクシャータはキセルを咥えたまま頭を掻く。
「まぁ、死なれたら困るからね〜。一応私専用のパイロットなんだからさ。」
「ふっ。もちろん死ぬ気はないさ。」
俺は絶対に今度こそ!
「あ!っていうか紹介するの忘れてた〜。アンタの機体。丁度できたのよ!」
それは俺も気になっていた。奥に見えるデカい影が。
「確か『流水型フレーム』の。」
「そうそう。名付けて『金剛』よ!」
ラクシャータがそう言った途端、新機体がライトアップされる。
「これが!!」
月下の1.5倍はあるかというその巨躯。
関節部には追加装甲があり、そうそう致命傷は喰らいそうには無い。それに。
「背中のアレは?」
まるでガウェインに付いている・・・。
「ま、ガウェインのパクりだけどね。簡易的なフロートシステムよ。すぐオーバーヒートするから冷却に5秒ほどかかるけどね。あと、エネルギー効率を良くする為にランドスピナーを取ってるから。」
つまりは基本徒歩で移動。機動力が必要になった時はフロートで移動するといったところか。
「まるで『金剛』の如く本陣を守るという事か。」
「防衛には最適のナイトメアね。ま、私はあんまり好きなコンセプトじゃないけど、もっとこう速いのが好きなんだけどねぇ。」
ラクシャータは気に入ってないようだが、俺は気に入った。
「ま、『流水型』っていうのは皮肉なんだけどね。」
せめて名前だけでも趣味を出してきたか。
しかし、月下乙式と比べると戦力は格段に違うだろう。
それとこの間付けると言っていたハドロン砲も両腕に付いている。
「さっすが〜。分かってるじゃない。」
ラクシャータが俺の視線に気がつく。
「これもパクり。ガウェインの出力の70%程しか出ないけど十分な火力よ。」
確かブラックリベリオン時にゼロはこのハドロン砲で敵の航空戦力を一気に叩いていた。
それがこちらに二機あるとすると。
「少しは感謝しなさいよ。この子を作り上げる為にどれだけの苦労があったか・・・。」
本当にラクシャータには頭が上がらない。彼女がいなければ黒の騎士団はここまで強くなっていなかっただろう。
尚更負けられんな。
すみません!今回は短めです。
中々展開が思いつかず、時間がかかってしまいました・・・。
さあ、ここから前半最後のクライマックスに・・・!?
UA3000突破とお気に入りもたくさんの方々にしていただいてます!本当に感謝の言葉しかないです!
これからもこの拙い小説にお付き合いください!