異世界卜部 〜異世界でもコードギアスの世界でも四聖剣は虚名にあらず!〜 作:シャール
「ほう、貴様が四聖剣が一人。卜部か。実際会ってみると思っていたより平凡そうな男だな。」
「褒め言葉として受け取っておきます。桐原公。」
『行政特区日本』その特設式典会場として選ばれたのがこのフジサンの麓。ゴテンバ租界である。
ここを中心に行政特区日本を開始するのだという。本当ならば。
「さて、訳を聞こうか。貴様の思惑をな。」
周囲に黒服の男たちが現れる。
「これは・・・脅しと受け取っても良いのでしょうか?」
「・・・ああ、構わん。」
予想はできていた。
だが俺は。
「ユーフェミアによる『行政特区日本』。それが嘘ならば。」
バッグを下ろし、そこから長いプラスチックの棒を取り出す。
組み立て式の狙撃銃。プラスチックと竹でできている為。式典会場のセンサーや探知機には引っかからない。
「貴様。それが意味する事をわかっておろうな。」
「ブリタニアとの衝突は避けられません。」
「ならば何故このような事を?」
「全ては日本の為。」
「お主も往くか。修羅の道を。」
「はい。」
その返事を聞いた桐原公は杖を持っていない方の手を挙げる。
すると俺を取り囲んでいた黒服たちが何処かへと消えて行った。
「何かがあるとは思えんが、そういった『目的』の人間も一人はいると保険になる。」
無言で桐原公は会場の傍にある塔を指差した。
どうやらブリタニア側の監視塔らしい。
「分かっておろうな。」
恐らくはあそこから。
「はい。」
「では行くがいい。」
「はい。」
俺はバッグを背負って、できるだけ目立たないように式典会場の中を歩く。
「しかし『日本人』とはな。今更どうされたというのだ?ユーフェミア様は。」
「我々ブリタニアが正当な権利で勝ち取った物を自ら手放されようとはな。」
「そう言えば、ユーフェミア様の騎士は。」
「ああ、イレヴンだろう。だからか。」
「全く。皇族の我儘には付き合えんよ。」
兵士達の話が聞こえる。もし、行政特区日本が実現したとしても当のブリタニア人がこのような意識では上手くいく筈がない。
すると式典会場内に日本人達が入ってきたようで、会場内は活気づいていく。
彼らの顔には希望が満ちている。
俺が救うべき人達だ。
これで少しは自由に動ける筈だ。
「『身体強化』」
俺は気を全身に巡らせて、身体強化をかける。
これで何かがあってもすぐに対応できる筈だ。
「ちょっと!走らないでよ!ベニオ。」
「全く。ベニオは元気だな。」
活発な親子とすれ違う。
彼らも俺が救うべき人間だ。
ユーフェミアが出てきた時、その手に銃を持っていたら俺は。
彼女を撃ち殺す!!
・
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「藤堂!!」
ゼロが珍しく叫ぶ。
「どうした。ゼロ。」
「卜部だ。卜部はどこだ!!」
藤堂は驚く。部下の事でゼロはこんなに感情を表にした事は無かったからだ。
「私も知らない。違う部署の所属だからな。」
するとゼロの仮面の左目部分が開く。
「俺の質問に答えろ!!」
すると藤堂の意識は混濁する。
「行政特区日本の式典会場に向かった。いざという時に彼女を暗殺する為に。」
「くっ。勝手な事を!」
ゼロは自身の計算が乱された事に怒りを感じる。
ユーフェミアに撃たれ、メシアとして生還するヴィジョン。
それが崩壊しつつある。
ユーフェミアには生きたまま十字架を背負ってもらわなければならない。日本人の期待を裏切った皇女として。
だからユーフェミアは殺される訳にはいかないのだ。
「今卜部はどこにいるか分かるか?」
「・・・。」
「分からないか。クソッ。このままでは。」
「どうする。これでは計画が上手くいかなくなったか。」
ゼロの後ろには緑髪の謎の美女が現れる。
「計画は変えられない。しかしこの程度のイレギュラー。誤差でしかない。」
「あまり一人の動きでどういった影響があるのかをなめないほうがいい。」
「それは忠告か?」
「経験だよ。」
ゼロは不満そうにその場を去った。
「卜部。やはり只者では無さそうだ。」
緑髪の美女。C.C.がそう呟いた。
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「がはっ!」
首筋に手刀を食らわせて兵士を気絶させる。
これでこの監視塔俺のものだ。
「こちらキンバリー。警備班。応答してくれ。」
無線?定時連絡か?
「こちら警備班。どうした。」
合わせるしかあるまい。
「イレヴン達が沢山入っている。不審な動きがあれば直ちに無線で連絡してくれ。」
「こちら警備班了解。引き続き監視を行う。」
今のところは騙せているが時間の問題だろう。しかしあの時刻。
11時24分まであと4分。それまでは持つ筈だ。
今のうちにこの狙撃銃を・・・。
「皆さん!」
「え・・・?」
この声は!?しかしまだ時間はある筈!!
「ゼロは死にました!!これで『行政特区日本』は成功します!」
「何!?」
会場に集まった日本人達がざわめき出す。
「さあ、皆さん!これから安全な『行政特区日本』が始まるのです!」
一体何が・・・!?
それにゼロは正面から現れた筈だ。まだ姿も見ていないぞ!!
・
・
・
ー2分前ー
「ルルーシュ!」
「やめろ!これ以上俺を哀れむな!!施しは受けない!俺は自分の力で手に入れて見せる!!」
ゼロことルルーシュは事前にギアスを使って用意した潜入ルートでユーフェミアと密会していた。
彼が何故このような行動を起こしたかというと、神根島での一件がなく、ルルーシュとユーフェミアの邂逅が無かった為である。
ユーフェミアはまだゼロがルルーシュである事の確信がついておらず、一方ゼロの方はまだ自分の正体がバレていないと考えていた。
もっとも、卜部が変えた歴史なのは誰も知りようが無い。
「その為にも汚れてもらうぞ!ユーフェミア・リ・ブリタニア!!」
ゼロの仮面の左目部分が開いた。
ユーフェミアが口を開く前に。ゼロは言い放つ。
「今よりゼロを敵として認識しろ!!」
ゼロのギアスがユーフェミアにかかる。
「い、嫌・・・!ルルーシュと!嫌・・・!!」
「俺のギアスに逆らっている・・・!?」
しかし抵抗虚しく。
「ゼロは・・・敵。」
ゼロは安堵する。
「さあ、この銃で私を撃ちたまえ。」
竹とセラミックで出来たニードルガン。それは一般人に対しては非常に強力な殺傷武器になり得るが、特注の防弾アラミド繊維の服を着ているゼロにとっては。
パンッ!!
銃声が鳴り響く。ゼロは胸を押さえながら倒れる。
勿論致命傷では無いが衝撃は凄まじものだった。ゼロはその場で気を失う。
しかしユーフェミアは皇女であるが故に死亡確認を怠った。そして・・・。
「ユーフェミア様が来たぞ!!」
「でも銃声が・・・!」
「祝砲じゃね?」
「うおーユーフェミア様万歳!」
ユーフェミアがマイクの前に立つと皆静まりかえった。
「ゼロは死にました!これから安全な『行政特区日本』が始まるのです!」
「え?」
「ゼロが!?」
その時会場のモニターに、ゼロが撃たれる姿が映し出される。
「これでわたくしの敵!ゼロが死にました!クロヴィス兄様の仇を討ったのです!」
その事実に気がついた観客の怒りに火がつく!
「裏切り者だ!!ゼロを誘き出して殺したんだ!!」
「この野郎!!よくも!」
「悪魔よ!!」
しかしユーフェミアは皆んなの反応に困惑する。
あれ程皆喜んでいたのに。日本人という名を取り戻せるというのに。これから始まるというのに。ただ宿敵ゼロを撃っただけなのに。
「皆さん。どうして怒られているのですか?」
ユーフェミアには理解できない。何故人々が怒っているのかを。
「殺せ!!」
「ゼロ様の仇を!!」
ある観客が投げた水筒がユーフェミアの額に当たる。そしてそこから血が流れる。
「皆さんも・・・ゼロのお味方なのですね・・・?」
会場内の観客は一瞬で暴徒と化した。
・
・
・
ゼロが撃たれた!?
まずい。今すぐユーフェミアを!!
俺は銃の引き金に指をかける。
「これで終わりだ。ユーフェミア!!」
しかし。
指が固まっ・・・!?
指が動かない。まさかあの時の。まだ効果が。
「しまっ・・・!」
会場内のスピーカーから声が響き渡る。
「ユーフェミア・リ・ブリタニアが命じさせて頂きます。ゼロの味方を殲滅しなさい。」
ま、まさか・・・!!あの時の!!
「「「イエス!!ユアハイネス!!!」」」
無線機から声が響き渡る。
「やめろぉ!!!!」
叫ぶがその声は届かない。
そして再び始まる。あの虐殺が・・・!!!
ブリタニアのナイトメアが機銃を民衆に向かって掃射する。
戦う力を持たない民衆は次々にその地に斃れていく。
「クソッ!!」
ラクシャータから貰ったスイッチを押す。
こうなってしまった以上。できるだけ犠牲者を減らさないといけない。
俺は使えない銃を投げ捨て、ブリタニア兵の警棒を拾う。無いよりマシだ。
監視塔を出ると二人のブリタニア兵がいた。
「なっ!暴徒か!」
二人が銃を構えるより前に警棒でそのヘルメットごと頭を叩き割る。
手加減している暇は無い!!
階段を降りている暇は無い。飛び降りる!!
俺は下にいた兵士をクッションにして着地する。
「暴徒だ!!」
その兵士の拳銃を蹴って遠くへと飛ばす。
「ひいっ!!」
警棒で頭部を薙ぎ払う。おそらくは即死だろう。
「皆んな!こっちだ!!」
俺は会場内で逃げ惑う人々を非常口に誘導する。
しかし。
「ここに逃げ込んでいたか!!イレヴンのゴミ共め!」
非常口から重武装の兵士たちが流れ込んでくる。
そしてアサルトライフルで次々と日本人が撃ち殺される。
「クソッ!!!」
いくら身体強化をかけて素早く動けるとは言え、銃弾を避けながら動くので精一杯だ。これだけの数は救えない・・・!!
その内弾が切れたようで、兵士たちは弾倉を銃から抜く。
俺はその隙に。
「破ァッ!!」
風の弾を拳から撃ち出す。
ブリタニアの兵士たちはボウリングのピンのように吹き飛ぶ。
「また、救えなかった・・・!!」
間に合わなかった。また死なせてしまった・・・。
日本人の死体の山ができていた。しかし。
「うっ・・・!お父さん・・・お母さん・・・!」
その中でも奇跡はあった・・・!!
俺は死体の中から一人の女の子を引きずり出す。
肩からは血が流れている。どうやら被弾したようだった。
「お父さん!!お母さん!!」
死体の山に戻ろうとする女の子を掴む。
「逃げろ!!早く!!」
「でも!!」
どこからかは分からない。だが声がした。
「逃げ・・・なさい・・・ベニオ・・・。」
「お母さん!!」
「さ・・・い・・くんだ・・。」
「お父さん!!」
その願い。受け取った!!
俺は少女を抱き抱える。
「嫌ぁ!!」
そして非常口を出て必死に走る。
飛んでくる銃弾を避け、必死に走る。
そして黒の騎士団のナイトメアとすれ違った。あの斬月は藤堂中佐のものだろう。
少女を、路地裏で下ろす。
「逃げるんだ・・・!じきここにも戦火が及ぶ。」
しかし少女は泣き続けていた。
俺は。
「もし、何かがあった時。これを。」
さっきの兵士からくすねておいた、私物のポケットナイフを置いておく。
ここまでくれば安全な筈だが・・・。一応保険だ。
「卜部ちゃん!お届け物よ!」
スイッチから声が聞こえた。
そして無人機が飛んできたようだ。
「ドッキング解除〜!」
気の抜けた声がした。そして地面が揺れる。まるで地震だ。
俺は路地裏から出る。
そこには『金剛』が立っていた。頼もしい限りだ。
「壊すんじゃ無いわよ〜。」
「分かっている!!」
俺は既に開いているコックピットに飛び込む。
何かのコンピュータが演算を行なっているようでモニターには数多の数式が現れては消えている。
そしてそれが終わると画面中央に日本の国旗と『金剛起動式』という文字が出てきた。
「行くぞ!『金剛』!!『身体強化』!!」
俺の体の気の巡りを金剛と同調させる。
俺は飛べる!!
フロートシステムを展開し、空を飛ぶ。そして一気に会場内へと入る。そして壁を破壊しながら突き進む。
「何だアレは!!」
「どけぇッ!!!」
進路を塞ぐサザーランドを体当たりして破壊する。
生きていようが死んでいようが、まずはゼロを回収しなければならない。
確かこっちにあるG1ベースの筈!
するとそこには既に紅月の紅蓮がいた。そしてその手にはゼロが横たわっている。
俺は個人用の無線を繋ぐ。
「卜部さん!ゼロが!」
「分かっている!早く連れて行くんだ!」
「はいっ!!」
紅月はゼロを抱えたまま戦線離脱する。
ゼロよ!生きていてくれ!
俺は再び会場内へと戻る。
「敵の新型機だっ!撃てッ!!」
集中砲火を浴びるが。
凄まじい装甲だ。びくともしない。これならばッ!!
俺は飛びながら、格闘で一機ずつナイトメアを破壊する。
「卜部チャン!!アンタ!ハドロン砲使いなさい!!」
「・・・使えんッ!!」
「え?でもシステムは全部オールグリーンよ!!」
俺は、撃てないのだ・・・!!
「はぁああああああッッッ!!!!」
膝蹴りで最後の一機を破壊した。
「アンタ本当滅茶苦茶ね・・・。」
「はぁ・・・はぁ・・・。」
これで・・・!!
すると後方から強い衝撃が!!
「また君か!!枢木スザク!」
どうやら例のレーザー銃で撃たれたようだが装甲には問題無いようだ。流石ラクシャータだな。
「次こそは!!」
今はもうこっちも飛べる!!
「うぉおおお!!!」
スラッシュハーケンをランスロットに向かって射出する。
「効きません!!」
甘いな!!
ハーケンの先端が五つに分離する。そう。これがラクシャータの隠し球。
『飛燕分離爪』!!
ハーケンはそれぞれ別の軌道を描きながらランスロットへと向かって行く。
枢木スザクの操るランスロットは次々とそれを避けていく。
流石の反射神経だ!
しかし!!
俺はワイヤーを掴んでフロートを起動する!!
「しまっ!!」
左拳がランスロットのコックピットブロックに直撃。するかと思ったが。
彼は見事にフロートを使ってその機体の軌道を逸らしたことで直撃を免れた。
しかしコックピットの天井部は飛び散り、彼の素顔が見える。
俺はスピーカーをオンにする。
「枢木スザク君。君はこの虐殺に加担するのか?ゼロを騙し討ちしたユーフェミアの肩を持つと・・・?」
「きっと訳があるはずです!ユーフェミア様が騙し討ちなんて・・・!」
「しかし日本人を虐殺している!!」
「きっと・・・きっと何か訳が!!」
「盲信。もはや救い難いッ!!」
後ろ回し蹴りでランスロットの翼を折る。
「うああああああッッッ!!!」
堕ちていけ。ユーフェミアの騎士よ。
良し。どうやら藤堂中佐達は会場内の制圧を終えたようだ。
俺はユーフェミアを討つために探すとしよう。
・
・
・
「それは本当か!!」
「はい、ユーフェミア様がゼロを討った・・・と。」
コーネリア総督。彼女は元より行政特区日本には反対であった。しかし彼女の愛するユフィの為ならばと苦渋の決断をした筈だが。
「そんな、ユフィが・・・。」
足元が崩れ去る感覚。
あの優しい子が騙し討ち・・・?
信じられなかった。何が彼女にそんな事をさせたのだろうか。
しかし、流石はブリタニアの魔女。彼女はすぐ正気に戻った。
ゼロが討たれた。即ち。
「ヨコハマ租界の守りを捨てろ。その分をこのトウキョウ租界に回せ!!」
そう。ゼロが討たれたという事は日本人に対する宣戦布告を意味する。
ユーフェミアはそれほどまでに重大な事を。
「ユーフェミア様!20分後にこの政庁に到着されるようです!」
「迎えの者は重武装で行け!必要ならナイトメアも出せ!」
コーネリアは直感で今は彼女を一人にしてはいけないと悟る。ここまでの悪行。庇い切れるものでは無い。
怒った人々は何をするか分からない。
騎士道を重んじてきた彼女さえも分かる。
我が妹の非行を。
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・
結局ユーフェミアは見つからなかった。
諜報班によるとどうやらあの後すぐにこの場を離脱したらしい。
「クソッ!!」
俺は、また救えなかった。そして今度はゼロまでも・・・!
やはり歴史に干渉するのは間違いだった!!
「卜部。」
個人用のチャンネルで通信があった。
「中佐。」
「一先ずこの場は勝った。しかし。」
「このままでは終わらないでしょう。我々はゼロを失っても止まれません。トウキョウ租界へ。」
「・・・ああ。」
そしてオープンチャンネルに。
「これよりトウキョウ租界へと進軍する!!ゼロを騙し討ちしたユーフェミア。そしてブリタニアを許すな!!」
「「「おおおおおおおぉぉぉぉぉ!!!」」」
ほぼ廃墟と化した式典会場には日本の旗が掲げられる。
もう何もかも違うこの状況で俺は・・・何をしたらいい・・・?
はい。ユーフェミア生存しちゃいました!!
何故生存できたかというと日本人の虐殺に固執しなかったからですね。ハイ。
この後、遂に黒の騎士団とブリタニアの総力戦に・・・!
銃を撃てなくなった卜部。撃たれてしまったゼロ。不安要素はまだまだ沢山ありますが、この先を楽しみにしていただくとありがたいです。
では次回お会いしましょう。