異世界卜部 〜異世界でもコードギアスの世界でも四聖剣は虚名にあらず!〜 作:シャール
「ユフィ!!なんて事をしたんだ!!公衆の面前であのような騙し打ち!」
コーネリアがユーフェミアに怒りをぶつける。
「皆の前では『副総督』とお呼びください。」
しかしユーフェミアはにこやかな笑みでそれに返す。
「くっ。」
まさか自分が言った言葉を返されるとは露ほどに思っていなかったコーネリアは狼狽する。
「ニイガタブロックで反乱です!続いてフクシマでも!」
「センダイ租界防衛隊壊滅!!」
「黒の騎士団は民兵を吸収しつつこのトウキョウ租界に迫ってきています!」
ユーフェミアによるゼロに対する騙し討ちは全国の日本人を震撼させた。
何者かの手によって公開された映像には日本人に対する虐殺が鮮明に記録されていた。
ブリタニア人ですら怒りを覚えるその光景。『イレヴン』と呼ばれる日本人は更に怒りに燃えた。
「ニイガタとフクシマは放棄しろ!防衛隊は4割をウツノミヤに残存させ残りはトウキョウ租界周辺に。」
しかしゼロが死んでいることは幸いだったとコーネリアは胸をなでおろす。もしも彼が生きていたとしたら、反乱の象徴にされてしまう。
それだけは何としても避けられた。
「姫様。」
「ダールトンか。」
ユーフェミアに着いていったコーネリアの騎士。ダールトン。
しかし彼の顔は困惑していた。
彼はコーネリアの耳元に口を寄せる。
「姫様。やはり納得できません。ユーフェミア様は確かに『行政特区日本』に対して前向きでした。」
一方のユーフェミアはにこやかに戦術地図を見ている。
「しかしユフィはその口で。」
「イレヴンの虐殺を命じました。」
あの穏やかな表情のまま。
姉としてずっと見てきたユーフェミア。しかし彼女の知らない場所で何があったのだろうか。
あれ程大それた計画を立ててまでもゼロを討ちたかった理由とは。
クロヴィスの為?しかし兄弟としての情があっても彼女にそこまでできるはずがない。
コーネリアの頭の中ではいくつもの思い当たりが浮かぶが、彼女の優しい気質によってそのすべてが否定されてしまう。
「私には分からないよ・・・ユフィ・・・。」
どうすることもできずコーネリアが呟く。
「コーネリア総督殿下。」
「どうした。」
「シュナイゼル宰相殿下より。」
「繋げ。」
すると正面モニターに優しい兄の顔が現れる。
「コーネリア。これは一体どういう事かな?」
「兄上。これは・・・。」
コーネリアがそう言いかけた瞬間。
「シュナイゼルお兄様!!」
ユーフェミアが嬉々としてコーネリアの横に現れる。
「ユーフェミア。君は自分が何をしたか分かっているのかい?」
シュナイゼルは一瞬驚くもののすぐに冷静さを取り戻し、優しく問いかける。こんな時であるのにも関わらずだ。
「ええ!ゼロを討ちました!ゼロは敵でしたので!」
「・・・確かにエリア11でのゼロの行動は我々の目に余った。しかし。」
「え?いけないことでしたか?それにこれで『行政特区日本』も成功しますし。」
コーネリアは絶句する。
「ユーフェミア。君は自分が言っていることの支離滅裂さに気が付いているのかい?」
シュナイゼルは的確に突っ込む。しかし。
「何故ですか?シュナイゼルお兄様も、目に余ると言われたではないですか?わたくし、何かおかしいことでもしましたか?」
「やめろ、ユフィ・・・!」
見るに堪えなくなったのかコーネリアがユーフェミアを抱きしめる。
「こうなってしまった以上。ユーフェミア。君は・・・。」
しかしコーネリアがそれを遮る。
「兄上!それではユフィは!」
誰もが悟る。
恐らくは体のいい厄介払い。どこかの離宮で一生を一人寂しく過ごすことになる。
隠居という名の軟禁。
「どうか!どうかそれだけは!」
「分かっているのかい?コーネリア。それは我侭だよ。第二皇女がするものでは。」
「それだけは・・・!それだけは・・・!」
部下たちも初めて見るコーネリアの無様な姿。常に凛とした武人でさえこのようになるとは。
それほど彼女にとって譲れないものなのだろう。
「コーネリア。」
シュナイゼルがそれを嗜めようとすると。
「良いではないか。」
通信チャンネルに突如、第98代皇帝。シャルル・ジ・ブリタニアが現れる。
「ユーフェミアよ。その腹の内に宿していた獣。解き放ったか。」
「父上・・・。」
「この件。皇帝の権限で不問としよう。しかし自分で始めたことの始末は自分でつけてもらう。分かっておるな?」
「はい!お父様!このわたくしが『ゼロの味方』をするイレヴン達を討ち滅ぼして見せます!『行政特区日本』の為にイレヴンの目を醒まさせます!」
コーネリアは耳を疑う。
「フフフ、フハハハハハハハハハッ!!!!」
「ウフフ」
父と娘。お互いが顔を合わせて笑いあっている。この異常な状況でなければ微笑ましい姿。
しかし今は、誰もが戦慄した。コーネリアを含めて。
・
・
・
「お・め・で・と~~!!」
能天気なこの声。それはプリンことロイド・アスプルンド伯爵の口から出たものだった。
「・・・自分は。」
全身に包帯を巻いた少年。枢木スザクが呟いた。
「どうやらうまく市民プールに落下したみたいだよ。運がいいね!キミは。」
どうやら卜部に撃墜された後に、ランスロットは地面へと激突。しかしコックピットブロックが損傷していたために、そこから放り出されてプールに着水したらしい。
しかし凄まじい速度であったがために、いくら水とはいえ全身に傷を負ってしまったようだ。
ゴテンバの中心街から少し離れた場所であったため、何とか回収できたという。
それに当のランスロットも大破。少しの間は使えない状況であるという。
「スザク君。無事みたいで良かった。」
その時丁度セシルが部屋に入ってくる。
「ユフィは!?」
スザクは起き上がるが、その顔は苦痛に歪む。
「どうやら政庁にいるみたいだよ。コーネリア殿下と一緒にいるみたいだけど。」
「では自分も!うッ・・・。」
スザクは無理やり起き上がろうとするが。
「いくら再生治療をしたといっても無理よ!全身の骨が骨折していたのよ?少なくとも2日は安静にしとかないと。」
「でも!」
「ま、いくらスザク君が治ったとはいえランスロットがあの状態ではねえ。」
「もう!ロイドさん!今はランスロットの事は良いでしょう?」
「あーそうだ!スザク君の無事を確認したところでランスロットを早く治さないと!」
逃げるようにロイドが部屋を出ていく。
「もう!また逃げて!ごめんねスザク君。」
「いえ。自分は、大丈夫ですから・・・。」
そう言うとセシルも部屋を出ていった。
「ユフィ。キミは何故あんなことをしたんだい。あれじゃあゼロと何も・・・!」
スザクは己の拳を見つめながら呟いた。
・
・
・
「卜部チャン。アンタさ、何でハドロン砲使わないワケ?」
ゼロが俺にかけたギアス。『撃つな』それは戦闘においてかなりの支障だ。
「銃を使おうとすると指が動かないんだ。」
「ハア?アンタ冗談言ってる場合じゃ・・・。」
俺の真剣な顔を見てラクシャータは何かを察したようだった。
「ちょっとアンタ今から検査するよ。」
「え?」
謎の機械を頭に着けられる。
「アンタちょっとこれ撃ってみて。」
手渡された銃の引き金を引こうとするが、やはり指が動かない。
「運動機能は正常のようね。ん?前頭葉に強い反応。」
ラクシャータはモニターに映った謎の波を見ながら言う。
前頭葉?こう、脳の前側の部分か?
「うーん。何か最近強いショックあった?物理的でも精神的にでもさ。」
「・・・特には。」
ギアスの事は信じられるはずも無いだろう。
「ま、アンタが気付いてようが気付いて無かろうが何かあったんだろうね。この意思決定を行う前頭葉って部分だけどさ、何かが原因で強い思い込み状態に陥ってるかも。推測だけどね~。」
ゼロのギアスはそこに干渉する?
「でも困ったね~。ハドロン砲が使えないとなると、あんまり大した武装は無いねえ。」
こんな状況でもラクシャータは。
「切り捨てないのだな。俺を。」
「自惚れちゃダメよ〜。今こっちは人手不足なの。でもま、アンタは貴重なテストパイロットだからね。それに起こった事はもう仕方がないのよ。前向きに捉えなきゃ。」
全く。俺よりも若いのに達観しているな。
この考え方も日本人と違うが故かもしれんな。少しは見習いたいものだ。
「幸い『制動槍』が一本あるわ。それを使いなさい。」
「助かる。」
良かった。どうやら生産が間に合ったようだ。
「じゃ、私は紅蓮の調整に入るから。ユスク。後は頼んだよ。」
「ええ。分かりました。」
丁度エナジーフィラーを交換するため、藤堂中佐が斬月から降りて来た。
「卜部。どうやらゼロは無事らしい。」
その言葉を聞いて安心した。
「そうですか!これで。」
「ああ。我々は気兼ね無くトウキョウ租界に攻め入れる。」
「中佐。ついに我々の悲願を。」
中佐は目を閉じる。
「ああ。散って行った同士達の為に。」
・
・
・
「私は蘇った!!これは天命だ!」
ゼロが放った第一声。全員がその言葉に酔いしれた。
ゼロを中心にNACもといキョウトのメンバーがみんなの前へと姿を現す。
「ユーフェミアは丸腰の私を撃った。平和的に歩み寄ろうとした結果。信用は裏切られたのだ!」
「ユーフェミアを許すな!!」
「日本人の仇だ!!」
「ブリキの野郎共め!!」
ゼロが手を挙げる。すると周囲が静まりかえる。誰もがゼロの言葉を待っている。
「日本人よ!ブリタニアに虐げられた全ての民よ!私は待っていた。ブリタニアの不正を影から正しつつ、彼らが自らを省みる時が来るのを。」
全ての日本人が固唾を飲んでそれを見守る。
「その時はこのままでは未来永劫無いだろう!!虐殺という返礼をしたブリタニアには!!」
「ブリタニアを許すな!」
「卑怯者!!」
「嘘つき!!」
日本人の感情が溢れ出す。ゼロという理解者を得た事で遂にそのダムは崩壊した。
「そう!ユーフェミアこそブリタニアの偽善の象徴!国家という体裁を取り繕った人殺しだ!」
「魔女め!!」
「絶対に許さない!」
「裏切り者!!」
会場内の熱気はピークに達する。
「私は今ここに!!」
会場内はまたもや静まりかえる。
「ブリタニアからの独立を宣言する!だがそれはかつての日本の復活を意味しない。歴史の針を戻す愚を私は犯さない!我らがこれから創る新しい日本は、あらゆる人種、歴史、主義を受け入れる広さと、強者が弱者を虐げない享受を持つ国家だ!」
皆がゼロならばできると確信した。
「その名は合衆国日本!!」
会場内に歓声が広がる。
ある者は叫び、ある者は涙を流し、ある者は感嘆している。
「「「「「ゼロ!ゼロ!ゼロ!ゼロ!ゼロ!」」」」」
黒の騎士団は遂にブリタニアとの決戦に臨む。
・
・
・
「卜部よ。」
「仙波さん!」
遂に仙波さんの怪我が治ったようだ。これならば戦線に参加できそうだ。
「我々は遂にやるのだな。」
本来の歴史では失敗する。ゼロの戦線離脱によって。
だが俺には俺のできる精一杯を行う。
「ええ。」
「あっ、仙波さん!もう大丈夫?」
朝比奈が駆け寄ってくる。
「ああ、この通りピンピンしておる。」
「そっか。良かった。でもさ、もう歳なんだから無理しないようにね。」
相変わらず朝比奈は一言多いな。
「失礼な奴め。この老いぼれでもブリタニアに一矢報いる事はできる。」
「お互い頑張ろう!」
確か。
「確か朝比奈は斬り込み隊長だろう。お前こそ気をつけろよ。」
「僕はほら、最強だからさ。」
「相変わらずの自信家だな。お前は。」
「それではいつか足を掬われかねんぞ?」
すると朝比奈は。
「げっ、おじさん二人の説教が始まる前に僕はもう行くよ。」
そう言うと朝比奈は足早にその場を去った。
生き残ると信じてこその別れ方。やはり戦友に勝る絆は無いな。
「ではワシもこの辺りで。」
「ええ。お気をつけて。」
「ああ、ワシは死んでも死なんからな!」
仙波さんは腹を叩いてガハハと笑いながらその場を去った。
あの調子では後20年は戦えるだろう。
さて、俺も行くとしよう。なあに、元の歴史では俺は死なんからな。
思う存分暴れ回るとしよう。
・
・
・
「て、敵の!うわぁ!!」
袈裟斬りされたグロースターが爆発する。
そしてその爆炎の中から藤堂操る斬月が現れる。
「前進!各機一騎当千の気構えであたれ!!」
「「「「承知!!」」」」
サガミハラゲットーでの戦い。この戦いを制すればトウキョウ租界への道が開かれる!!
「朝比奈ッ!!」
ビルの影から朝比奈に襲いかかったサザーランドを千葉がハンドガンで撃ち抜く。
「ごめん!助かる!」
「次は気をつけろ!」
千葉はそう言った後、藤堂中佐を支援すべくその場を離脱した。
「分かった、よ!!」
廻転刃刀で朝比奈が敵機を斬りながら返事した。
さて、俺も行くか!
俺は『飛燕分離爪』を展開させる。
目視で捉えた敵機を次々とハーケンで貫いて破壊する。
「流石卜部さん!僕も負けてられない、ねっ!!」
朝比奈がランスの突きをギリギリで躱してそのまま背中の方からコックピットごと廻転刃刀で一刀両断した。
流石朝比奈。見事な太刀筋だ。
「僕はあっち行くからそっちは任せた!」
朝比奈はそう言うとさっさと敵がいる方へと移動して行った。
「全く。勝手な奴だな。」
しかし任された!!
「きゃあっ!?」
「何!?」
崩壊しかけたビルから女性が落ちていく。
「間に合ってくれよ!」
俺はフロートを展開。一気に女性との距離を詰める。
そして水を掬うように手を椀状にして女性を受け止める。
よし、なんとか間に合った。
俺は少し離れた場所で地面に着地。慎重に女性を地面に下ろす。
「あ、ありがとうございます!」
「無事で何よりだ。さあ、早く逃げるんだ。」
「は、はい!」
女性はそう言うと走ってその場を去っていった。
よし、これで。
「貴様。黒の騎士団のエースパイロットだな。」
「くっ・・・。」
不覚をとったか。
振り向くとそこには3機のグロースターがいた。その先頭に立っている機体にはマントが付いていた。おそらくは階級が高いのだろう。
「私はベネディクト・ウィンザー男爵だ。数の利は私にある。こちらの指示に従うのが、賢明だと思われるが?」
「まさか貴族直々に首を取られに来てくれるとはな。手間が省けた。」
探す手間がな!!
背中に背負っていた制動槍を取り出す。
「馬鹿め!!撃てッ!」
俺は石突の輻射波動を起動させ、弾丸を受け止める。
流石ラクシャータ。この短期間で強度を上げている。これならば複数回は使えるだろう!
俺はそのままウィンザーと名乗った男のグロースターに駆け寄る。
「ひいっ!!」
ウィンザーは横で銃を撃っていた部下を自分の前へと突き出す。
奴め!己の部下を盾に!!
部下のナイトメアに気泡が浮かび、そのまま爆散する。
「やはり腐っている!!」
俺は爆炎に紛れ込み槍を下方から突き上げ、もう一人の部下を仕留めた。
しかしそこにはもうウィンザーの姿は無かった。
「クソっ!!」
俺はフロートを展開させ、上空に移動する。
奴は・・・。いた!一直線で逃げている。寧ろ分かりやすい。
「くたばれっ!」
俺は槍を投擲する。
槍はまるで稲妻のように一直線にウィンザーのグロースターへと吸い込まれていく。
それは肩から腹部を貫き、地面へと突き刺さる。
俺は飛びながらそこへと向かうが。
突然コックピットブロックがぐるぐると地面を刺さっている槍を軸に回り出す。どうやらウィンザーは生きていたようだが、慌てて脱出装置を作動させてしまったようだ。
まるで鼠花火だ。
「これではな。」
おそらく中には遠心力で大変な圧がかかっているだろう。
俺はその横に着陸して槍を引き抜く。
コックピットからはもちろんウィンザーは出てこない。おそらくは既に。
「下衆には似合いの最期だ。」
すると四聖剣専用のプライベート回線で通信が入る。
「卜部。こちらは制圧した。」
「仙波さんか。敵の後詰は?」
「既に退路は絶ってある。あとに残るのは残党狩りのみよ。」
「そちらは頼みました。」
「ああ。」
どうやら敵の防衛戦が崩れたみたいだ。
「この勝負。決したな。」
中佐からも連絡が入る。
「後に残るのはさ、もちろん。」
朝比奈の軽い声が聞こえる。
「トウキョウ租界。遂に攻め入るんだな。」
そう、俺たちは。
「あまり逸るな。ここで油断すれば全て水の泡に。」
「もう、千葉は硬すぎるよ。」
「私は!ただ気をつけるように!」
このメンバーで生き残るのは何度目だろうか、これからも我々は戦う。
俺は俺にできる全力を賭けて、この決戦。悔いがないように・・・。
投稿まで間が空いちゃいました・・・。
本当に申し訳ないです!!
さあ遂に次回、トウキョウ決戦ですよ!
最近の各話のサブタイトルで気づかれていると思われますが、卜部が頭に入っていないものは卜部の手から物語が離れていっているって事ですね。
やっぱりコードギアスという奥深い世界を描く上で卜部視点だけっていうのも勿体無いと感じてしまい、ちょっと変えさせていただきました。
これからも見てくれると幸いです。まとまった時間ができたため次回はすぐにアップできると思います。少々お待ちください!