異世界卜部 〜異世界でもコードギアスの世界でも四聖剣は虚名にあらず!〜 作:シャール
「ゼロが政庁に対して降伏勧告したらしいよ。」
0時。その時が来れば俺たちは戦わなければならない。
「今から12時間後か。悠長なものだな。この勢いなら攻め落とせるものを。」
千葉が毒づく。やはりまだゼロを信じられないか。
「きっとゼロはゼロなりに筋を倒しているのだろう。ブリタニアと違い、自分は約束を違えないとな。」
中佐らしい意見だ。
しかしそれは間違っていない。現に日本人の感情は打倒ブリタニアへと向かっている。
見事に善の黒の騎士団と悪のブリタニアという構図が出来上がっているのだ。当のブリタニア人だって疑問に思っているに違いない。
ネットへと流れた情報は簡単には揉み消せない。あの冷酷な虐殺を。
そしてその渦中のユーフェミアはのうのうと生き延びている。
ブリタニア人にも協力者が出てくる始末だ。
「卜部。お前はどう見る。」
中佐の一言で皆の視線が俺へと向かう。
参ったな。こういうのは苦手なのだが・・・。
「概ね中佐とは同意見です。」
「概ね?」
そう。概ねだ。
「それに加えて、何らかの時間稼ぎをしているかと。何かの仕込みを行なっていると考えます。」
未来を知っているからこその意見。
実際ゼロは0時ぴったりに租界の耐震構造を逆手に取って敵の足場を崩す事に成功している。
現にゼロは今どこかへと行っているようで、恐らくはギアスで何らかの工作を行なっているのだろう。
「ふむ。勝つための仕込み。か・・・。面白い。確かにゼロは今までそういった事に余念が無かった。」
そう。ゼロは何重にも策を張り巡らせている。
いついかなる時もだ。
「しかし待っているこっちとしてはさ、何か不安なんだよね〜。少しは伝達してくれてもいいってのにさ。」
朝比奈が呟く。
確かに彼の言う事も一理ある。
しかし戦況をひっくり返すほどの作戦は出来るだけ周知されない方が良いとされている。
いくら黒の騎士団といえども足元は盤石ではなく、やはり少数の密偵が紛れ込んでいる。
ほんの1%でも作戦がバレる可能性があるならばゼロは黙っているだろう。
できる範囲ではできるだけリスクを避けるはずだ。
「卜部さん。ここですか。」
ん?扇か?
「その。ゼロが呼んでいます。できるだけ急いで欲しいと。」
ゼロが?直接?
「卜部。大丈夫か?それならば私も。」
千葉がそう言うが。
「いや、いい。俺一人だけ呼んでいるのだろう。ならば俺一人で。」
「え?でも藤堂さんに話は。」
「通っていないな。一体どういった用なのだろうか。」
中佐と四聖剣のメンバーが訝しむ。
「恐らくは新型機の動きについてだろう。俺だけ所属が特殊だからな。」
ここはゼロのフォローに回るとするか。
「あ〜。ナルホドね。」
朝比奈は納得したようだ。
「では、行くといい。ゼロも忙しいのだろう。」
中佐も。
「・・・気をつけるんだぞ。」
千葉も頑固だな。ゼロは敵では無いというのに。
俺は無言で手を振って皆に背を向ける。
「扇副司令。連れて行ってくれ。」
「あ、ああ。では行きましょうか。」
俺は扇の後について行くのだった。
・
・
・
「話してもらおうか。卜部。最近お前の行動は目に余る。」
部屋に入るや否やすぐに銃口が突きつけられた。
中央には足を組んで椅子に座っているゼロ。その手には銃が握られている。その横にはC.C.が立っている。
「何から話したら良いものか。」
全てを話すか?未来の事を?
しかし無闇矢鱈に未来のことを話すのは。歴史を歪めてしまえば歴史からのしっぺ返しを食らってしまう。
いくらゼロの知能があったとしても避けられないのでは?
やはりそういった賭けには出れん。ならばそれ以外の情報からだ。
大きな情報で小さな嘘を隠すとしよう。
「知っている。ギアスの事を。そしてルルーシュ・ランペルージの事を。」
「なっ!!何故それを!?」
彼の動揺が見てとれる。
ゼロとの知恵比べ。だが俺はズルをしている。未来を知っているというズルを。
紅月カレンから明かされた驚愕の真実。ゼロがブリタニアの学生。それもあのブリタニア皇帝の息子。皇子だという事。
俺は静かに口を開く。
・
・
・
一体どういう事だ!?
痕跡は徹底的に消して来た筈。どうやったって俺の情報に辿り着けるはずがない!!それをこの日本人。卜部は!!
「別に誰にも話しておらんよ。誰の得にもならんしな。」
「・・・一体何が目的だ?」
そう。それほどまでして調べ上げた俺の情報。何か目的があるに違いない。
「目的?そんなもの無い。ただ知っているというだけだ。」
ただ知っている?そんな事あり得るはずがない・・・!!
俺は銃を強く握りしめる。
ここで口封じをしてしまうか?しかしエースパイロットを死なせてしまったとなると士気は崩れる。
卜部巧雪。なんて男だ。
するとC.C.が。
「卜部。お前。やっぱり持っているな。ギアスを。」
何!?
卜部がギアスを!?そんな素ぶりは・・・。
しかし納得もできる。アッシュフォード学園での俺の失言。
確かに卜部は知っていた。ギアスの事を。
「誰に貰ったギアスだ。まさかC.C.!!」
しかしC.C.は肩をすくめる。
「私は知らんぞ。私の後の代だろうな。」
ギアス響団。その存在は歴史の中でほんの僅かにその存在を仄めかされている。C.C.もかつてはその嚮主だったという。
昔に響団を去ったとは言っていたが。
しかし卜部は不思議そうな顔をして。
「後の代?貰った?」
何だと?この様子では自覚がないようだ。
一切出所が不明。そして能力も不明。明らかなイレギュラーだ。このまま生かしておいても良いのものか。
「やめておけルルーシュ。少なくともこいつは私達の敵ではないらしい。」
引き金を引きかけた俺をC.C.が制止する。
「しかし。」
「現に黒の騎士団のメンバーにはお前の正体はバレていないだろう。やろうと思えばいつでも出来たはずだ。」
確かにそうだ。この男はその事実を知ってなお俺の作戦に乗ってくれている。
少なくとも今のところは敵ではないようだ。
「分かった。だが俺の正体を知っている以上は俺の計画に加担してもらうぞ。」
「構わない。お前の計画とやらになってもな。だが約束して欲しい。」
約束だと?
「ついでで構わん。日本人も拾ってやって欲しい。」
元より俺は。
「ああ、その願い聞き入れよう。」
「やはり、ゼロはゼロだな。ではこれからは共犯者だな。」
共犯者。皮肉だな。もう一人増えようとはな。
・
・
・
結局あの後何もなく、俺は無事に解放された。
俺とゼロは共犯者になった。
つまり彼が犯した罪は俺も背負わなければならないという事。だが望むところだ。あの言葉があれば充分だ。
日本人も拾うという言葉は嘘ではないと受け取った。
「お〜っす!卜部のおっさん!!」
真面目に考えている時に・・・。
「なあなあ、ゼロと何話したんだよ〜。」
全く。どこから聞きつけたのか。
「新機体についてだ。俺だけ作戦行動が別になるからな。直接命令を受けた。」
「おいおい!親友の俺には何も話さないってのによ〜!チクショオ!!」
そう言うと奴は走って去っていく。
玉城。お前という奴は。
「その様子だとどうやら大丈夫だったみたいですね。」
「扇か。」
彼は歩きながら近寄ってくる。そういえば。
「例の彼女。確か千草といったか。どうなった?」
少し気になっていた。
「しばらくは医療班が預かるみたいです。やっぱり記憶喪失となると脳神経系を検査しなくちゃいけないらしくて・・・。」
彼は彼なりに戦ったらしいな。
「ゼロの正体がまだ気になるか?」
俺は踏み込んだ質問をする。
「確かに気になります。でも俺は気にしない事にしました。たとえ彼が何者でも結果を出してくれるなら、ゼロはゼロですから。」
そうか。それがお前の答えか。
俺は扇の肩に手を置く。
「その言葉忘れるんじゃないぞ。」
「・・・はいっ!!」
凡庸な男と侮っていたがやはり・・・。
「扇。ちょっと例の件で。」
南が声を掛けてくる。
「行くといい。扇副司令。」
「ええ。では!」
さて、作戦開始前までに腹ごしらえでもするか。
腹が減っては戦はできぬと言うしな。
確か糧食班は・・・。
少し遠くに人の行列が見える。
待っていたら作戦時刻が来てしまうな・・・。
「あっ、卜部さん。」
「おっ、紅月じゃないか。」
「さっきゼロと会っていたようですけど・・・。」
その中には少し嫉妬の感情が見え隠れしていた。確かにこの頃の紅月はゼロに憧れていた節がある。
「ただの作戦伝達だよ。俺だけ所属が特殊だからな。」
すると紅月はホッとしたように。
「そうだったんですね。」
と言った。
俺は話題を変えるべく。
「しかしこれに並んでは作戦までには間に合わんな。」
と行列を指差す。
「あの、良かったらこれ。」
ん?何だこれは。
見覚えのない包装に包まれた、何だ?菓子か?
それを手渡される。
「プロテインバーです。小腹が空いた時によく食べてます。この間のハチミツのお返しってカンジで。」
気が回るな。
「ありがとう。頂くとしようか。」
俺は包装に切り込みを入れて、中から菓子を取り出す。
見た目はチョコレートだな。昔食べた羊羹を思い出す見た目だが・・・。
どれ一口。
口の中に甘すぎないビターなチョコレートの味が広がる。それに中にはザクザクとしたものが詰まっていた。
シリアルとチョコレートを混ぜて棒状にしてあるのだろう。
この口当たりはクセになるな。
確かにプロテイン。タンパク質というだけあってトレーニング後にはもってこいだろう。
このような上質な菓子。いくらするのだろうか?
「紅月。これはブリタニアの貨幣でどれぐらいするんだ?きっと高価なのだろう?」
すると紅月は吹き出したように笑う。
「ぷはっ!冗談?卜部さんが?」
何か変なことでも言っただろうか?
「1ブリタニアポンドもしないですよっ。ぷぷ」
えーと。1ブリタニアポンドといえば日本円で大体150円か。
という事は!
「なっ!!」
恥ずかしい!これでは己の無知を晒したようなものじゃないか。
大の大人がこういったものを見誤るとは・・・。無様だ。
「でも何か安心しました。こう、地に足がついた人っていうのかな?それが分かって。」
「褒めているのか?それとも貶しているのか?」
「もうっ!褒めてるって受け取ってくださいよ。最初は正直得体が知れないっていう感覚があってちょっと怖かったんですよね。やっぱり日本人だなーって。」
「フッ。そうか。」
紅月も何か思うところがあったのだろう。
「お互い頑張りましょう!ここに全てが懸かってる。」
「ああ。」
お互いの拳をぶつける。
思い出すな。逃亡の日々を。だが悪く無い日々だった。
・
・
・
「卜部。聞こえているか。」
「ああ。」
ゼロからの個人通信。後1分後に作戦は開始する。
「手筈通りに頼んだ。それと。」
「分かっている。何。俺は裏切りはしないさ。」
あの後ゼロから託された任務。それを俺はこなさないといけない。四聖剣のメンバーと藤堂中佐とはここで一旦お別れだ。
東京租界外縁部にある通信軍事基地。そこを俺は一人で攻め落とさなければならない。
敵を撹乱する為だ。
時計は丁度11:55分を指し示している。0時までの5分間しか猶予がない。
「無茶を頼んでくれたものだ。」
目を閉じる。
俺は俺にできる精一杯をするだけだ。ゼロの作戦。俺はそれに命を預ける!!
「準備は出来たかい?」
ラクシャータの気の抜けた声が聞こえた。
「いつでもいい。」
「じゃあ行くよ〜。投下〜。」
輸送機から切り離された俺の機体は高速で落下していく。
この速度なら敵のレーダーが捉えた時点でもう遅い。対空砲火は間に合わないはずだ。
今だっ!!
フロートを展開!全システム異常なし!
ちょうど離陸しようとしている輸送機を踏み潰すように着陸する。
その輸送機は爆散。辺りは煙に包まれる。
「基地内に正体不明の物体が落下!!各員至急ナイトメアに騎乗せよ!」
させるかっ!!
俺は再びフロートを展開させて格納庫と思われる建物に突っ込む。
案の定そこには人が溢れていて、今にもナイトメアに乗ろうとしていた。
俺は制動槍で次々と物言わぬ機体を破壊していく。
「オートタレット。火を吹きな。」
ラクシャータの声がすると、両肩部から機銃が展開。動く物に対して自動的機銃掃射していく。
俺の『特質』に合わせてくれた急拵えの改造だが悪く無い。
だが一機だけ起動が間に合ったようで、アサルトライフルを構えて射撃を行ってくる。しかしだ。
胴体や頭部に当たった銃弾が弾かれる。直撃したものは反応装甲の少量の爆薬と相殺され、こちらはほぼ無傷だ。
俺はハーケンを射出。それもすぐ破壊した。
「ぬるいな。」
これで敵はナイトメアという足を失った。
格納庫を出ると、そこには数台の装甲車が待機していた。
「い、今すぐ投降せよ!お前は包囲されている!!」
7年前とは真逆の構図だな。
俺は真上に飛んで射線を切り、装甲車の背後に着地する。
そして槍で地面ごと薙ぎ払う。
えぐれた地面にはもう何も残っていなかった。哀れなものだ。
あらかじめ貰っていた爆薬を腰部から取り外し、通信タワーへと取り付ける。
俺はコックピット内のボタンを押して通信チャンネルをゼロへと繋げる。
「ゼロよ。こっちの仕込みは終わったぞ。いつでも大丈夫だ。」
すると少しざざっと音がする。
「思っていたより早かったな。ではこの後は政庁攻略に向かってくれ。」
ゼロは一方的に命令を告げるとそのまま通信を切った。
「承知。」
俺はフロートを展開。ここからだと約10分で政庁に辿り着くだろう。
「待っていてくれ。中佐。皆んな!!」
遂にゼロと共犯者になってしまったぁ!!
もっと描写が難しくなる・・・。
思っていたより時間がかかってしまい申し訳ないです!
遂に次回決戦だから許してください・・・。
では次回も頑張れ卜部!!