異世界卜部 〜異世界でもコードギアスの世界でも四聖剣は虚名にあらず!〜   作:シャール

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誇り と 意地

「皆を突撃させなさい!この政庁に近づかせてはなりません!」

 

 ユーフェミアが力強く叫ぶ。

 

 姉を差し置いてのこの所業は父親に許可されたものだった。

 しかし皇女よりも軍人として長年過ごして来たコーネリアは。

 

「それでは政庁の守りが薄くなってしまう!ここが陥落すれば・・・!!」

 

 しかし。

 

「総督。最高指揮官はわたくしですよ?それとも逆らうのですか?わたくしに逆らう事はゼロに与する事になりますが・・・。」

 

 柔和な笑みから放たれる恐ろしい言葉。

 

 父に指名されたとはいえ、戦略についてはドが付くほどの素人。そのような者が最適な采配などできるはずもない。

 

 コーネリアは唇を噛み締めて黙る。

 

(これでは兵達を犬死させるだけじゃないか。)

 

 モニターに映される惨状。味方が突撃して行ってはすぐに各個撃破されていく。

 コーネリアにとっては耐え難い地獄。

 

 我が妹の愚行。死んでいく兵士たちが不憫でならない。

 コーネリアは己の無力さに虫唾が走っていた。

 

 何が妹を狂わせたのか。どうしてこんな事に。あるはずの無い心当たりを探りながら彼女は自己嫌悪に陥っていった。

 

 

 

 

 ゼロの足場崩しは成功したものの、未だブリタニアの残存戦力は黒の騎士団と互角である。

 しかしその中でも両軍では激しい衝突が続いていた。

 

「やはり敵の抵抗が激しい!朝比奈!一点突破を敢行する。先槍を任せても良いか?」

 

「藤堂さんの、命令ならっ!!」

 

 突撃して来た敵機を斬りながら朝比奈が答えた。

 

「皆んな!聞いたね!」

 

 朝比奈が自分の部下。壱番隊の隊員達に訊く。

 

「勿論です!俺たちは壱番隊!斬り込み部隊ですよ!」

 

「望月・・・!じゃあ行くよッ!!突撃!!」

 

 朝比奈省吾以下16名が敵の戦列へと突っ込んで行く。

 

「てぇやあああっ!!!」

 

 まさに鬼神の如き暴れっぷり。朝比奈省吾の漢が発揮される。

 

「流石だ。」

 

 藤堂は感心する。

 

「我々も行きます!!」

 

 それに千葉が乗り、四番隊隊長として朝比奈に続く。

 

「では私も!!」

 

 千葉の後ろに藤堂が続いて行く。

 

 しかし物陰に隠れていた何者かが藤堂に襲いかかる。

 

「なっ!?」

 

 見事な剣捌きで槍の攻撃を防ぐ。そしてその襲撃者と対峙した。

 

「藤堂鏡志郎。黒の騎士団軍事責任者とお見受けする。」

 

 そのナイトメアは槍を捨て、背中からMVSを取り出す。

 その剣は赤く輝く。

 

「中佐!!」

 

 千葉が戻ってこようとするが。

 

「これは私が受けた決闘だ。それに朝比奈が待っている。早く行け。」

 

「し、承知!!」

 

 千葉が引き返す。

 

「私はギルバート・G・P・ギルフォード。貴殿とは一度ナリタで刃を交えたな。」

 

「ふっ。なるほどな。では決着の続きと行こうか。」

 

 藤堂は制動刀を中段で構える。

 

 爆炎が響く戦場の中二人の間には奇妙な空気が流れる。

 

「かぁっ!!」

 

 先に動いたのはギルフォードだった。上から剣を振り下ろすが藤堂はそれを刀身で受け流す。

 

「隙ありッ!!」

 

 右下方からの斬り上げ。

 

 見事に決まれば機体は二分される!!筈だった・・・。

 

 しかしギルフォードは先程捨てた槍を脚部で蹴り上げ、それを斬らせる事によって太刀筋をずらし、かわす事に成功する。

 

「流石手強いな。」

 

「日本のケンドースタイルはナリタの時から分析してある。私はもう藤堂。君よりも上にいる。」

 

 藤堂は。

 

(大見得を切ったものだ。)

 

 と心の中で思うが油断はしない。

 

「これならばどうかなッ!!」

 

 藤堂は左手に付いているハンドガンでギルフォードの地面付近を撃つ。

 土埃が巻き上がる。これで目は失われた!!

 

「くっ、卑怯な。だが!」

 

 グロースターがファクトスフィアを展開しようとしたその時。

 

「ぐあっ!!」

 

 グロースターの左腕部が肩から斬り落とされる。

 

 ギルフォードは急いでランドスピナーで距離を取ろうとするが。

 

「てやぁ!!!」

 

 土煙から出た刹那。空から藤堂が剣を上段で構えながらそれを振り下ろそうとしている。

 

(まずい!このままでは!!)

 

 そう。そのままでは機体ごと真っ二つになってしまうと思ったその矢先。

 

 藤堂の剣に手応えが感じられなかった。

 

 その刀身が捉えたのはランス。それも制動刀でも切断できない特注の品だった。

 

「ギルフォード。下がれ!後は私が引き受ける!!」

 

「ひ、姫様!!」

 

 そう。ギルフォードの窮地を救ったのはコーネリアだった。

 

 総指揮官という任を解かれ、身軽な身分になった彼女は司令部に居場所を無くし最前線へとやって来たのだった。

 

「何ッ!?だが大将首自ら出てくるとは好機っ!!」

 

 藤堂はバックステップをして距離を取る。

 

「しかし姫様。私は姫様の騎士!」

 

 ギルフォードが前に出ようとするも。

 

「私の騎士ならば後方に下がれ。ここで犬死することは許さん。体勢を整えてまた来い!!」

 

「姫様・・・!」

 

 そう。コーネリアは一度言い出したら聞かない頑固者だった。

 

「すぐに戻ってきます!それまではッ・・・!!」

 

 ギルフォードが下がろうとするが。

 

「みすみす逃してなるものか!!」

 

 藤堂が逃げようとするギルフォード斬りかかるが、またしてもランスでその斬撃は防がれる。

 

「藤堂!過去の亡霊め!貴様の相手はこの私だ!!」

 

「くっ!!」

 

 その勢いで斬月は弾き飛ばされる。

 そしてギルフォードは後退に成功した。

 

「ならばコーネリア!その首貰い受ける!」

 

「やれるものならやってみろ!」

 

 藤堂の刀とコーネリアのランスが火花を散らす。

 

 

 

 

「てぇやあああああ!!!」

 

 胴体部を横薙ぎに切り裂かれたサザーランドが爆散した。

 

「流石です!朝比奈隊長!」

 

「望月もやるじゃない。元一般人とは思えないよ。」

 

 これで前線に穴が空いた。

 

「おっ、千葉!少し遅かったね!」

 

 その時丁度後続の千葉とその部隊がやってくる。

 

「立ち止まってる暇は無いぞ!行くぞ!」

 

 朝比奈を追い抜くように彼女は前線へと進んで行った。

 

「一息ぐらいつきたいんだけどなぁ。」

 

 朝比奈はやれやれと言った感じで進むが。

 

「前方!!敵狙撃手ッ!ぐあああ!!」

 

 悲痛な叫び声が無線を通して響く。

 

「皆んな!!遮蔽物の後ろに隠れて!!」

 

「隊長危ないッ!!」

 

 衝撃を感じ、そして視界が動く。

 どうやら機体に何かが衝突したらしい。

 

 朝比奈は状況を飲み込む。

 彼の機体の上にはコックピットブロックだけ撃ち抜かれた物言わぬ無頼が折り重なっていた。

 

「も、望月!?」

 

 その機体の肩にペイントしてあった『壱』の字から察する。

 

「ごめん望月。仇は討つ!!」

 

 朝比奈は這うようにしてすでに廃墟となったビル影に身を隠す。

 

「千葉!聞こえる!?」

 

「ああ、どうやら狙撃手がいるらしい。腕が立つようだ。」

 

 物陰から状況を確認するために頭部を出すも、すぐに弾が機体横を掠める。

 

「危なっ!!参ったなぁ。」

 

「朝比奈!こちらの部隊で制圧射撃をする。その間に前進するんだ!こちらの合図を待ってくれ!」

 

「了解!命預けたよ!」

 

「聞いたね皆んな!千葉の合図で前進するよッ!!」

 

「「「はい!!」」」

 

 残った自身の部下8名が一斉に返事をする。

 

「今だっ!!!」

 

 銃声が聞こえる。千葉の部隊が狙撃手がいるであろう場所に射撃を行っているはずだ。

 

「前進ッ!!」

 

「「「応ッ!!!」」」

 

 隊員と共にビル影から飛び出す。

 そしてこちらも射撃をしながら前進する。

 

「撃ちまくれぇ!!」

 

「うおおおおおおおッッッッ!!!」

 

 しかし。

 

「うわあああああああっっっっ!?」

 

「被弾しまし・・・。」

 

「別の方向から・・・。」

 

 次々と隊員が撃破されていく。

 

「身を隠して!!狙撃手は複数いる!!」

 

 しかし生き残ったのは自分含めて5機。3機が無惨にも撃ち抜かれた。

 

「千葉。これは厄介だよ。こちらも敵の正確な位置を見抜く必要がある。」

 

「ああ、私が甘かった。少し様子見だな。」

 

「しかしこれほどの射撃精度。おそらく敵の精鋭部隊だね。」

 

 戦場で一番恐るべき瞬間である。

 一瞬の油断も許されない状況。朝比奈は額に流れる汗を袖で拭う。

 

 一方狙撃手側は。

 

「敵はB4地区の旧商業ビルの後方に隠れている。隊長機を目視で確認した。こっちはそこをマークする。」

 

 栗色の髪をした青年が呟く。

 

「アルフレッド了解。敵の制圧射撃から正確な位置を割り出した。デヴィッド。射線が通る場所まで移動できるかい?」

 

 こちらは金髪の優男といった風体の青年だ。

 

「ああ。問題ない。」

 

 寡黙な赤髪の好青年がそれに呼応する。

 

 『グラストンナイツ』。コーネリアの騎士にして将軍。ダールトンの息子。

 

 養子で構成されたいわゆる『血の繋がり』は無いが兄弟の絆で構成されたブリタニアの精鋭部隊。

 あらゆる困難な任務を手を差し伸べ合う事によって乗り越えてきた精鋭とも言えよう。

 絶対に諦めないその姿勢は狩り成功率が高いリカオンから取られ。

 『ブリタニアのリカオン』とも形容される程である。

 

「敵の機体に動きがあった。次顔を出したら隊長機を撃ち抜ける。」

 

「バート。油断はするなよ。」

 

 その中でも部隊長であり長兄でもあるクラウディオ・S・ダールトンが注意を促す。

 

 実際彼の存在のお陰でこの部隊は上手くまとまっている。

 

 そしてその時。

 

「お前達。聞こえるか。私も前に出る。崩れた戦列を整えに行く。」

 

 厳しくも優しく育ててくれた父の声。

 アンドレアス・ダールトンの声が聞こえた。

 

 戦争や飢饉などによって親を失った子供を率先して育ててきた父。兄弟は皆その父の背中を追って今日まで戦ってきた。

 

「父上が出られるほど戦況はまだ!」

 

 エドガーが叫ぶ。

 

「ユーフェミア様より直々の命令だ。」

 

 ブリタニアでは皇族が全て。たとえ父であったとしても優先度は違う。

 

「皆んな。父上を援護するぞ。何。俺たちが頑張ればいい。」

 

 クラウディオが発破をかける。昔から兄弟を束ねることには優れていた。

 

「分かったよ兄上。絶対に父上を死なせない。」

 

 ダールトンは静かに微笑む。

 

「すまないな。お前達・・・。では行くぞッ!!!」

 

 G1ベースからダールトンが出撃した。

 

 そして狙撃銃を構えたグラストンナイツの横を通り過ぎて行く。

 

「父上を援護するぞ!」

 

「「「「了解!!」」」」

 

 そしてその銃口が火を噴く。

 

「敵の火力がこちらに向かってるね。恐らく後詰が来たんじゃないかな。」

 

「ああ、偵察ドローンからの映像だと、もうそろそろ突撃部隊が来る。」

 

「それじゃあさ、乱戦に持ち込めば狙撃手もそう簡単には撃てなくなるよね。」

 

「・・・!お前にしては名案だな。」

 

 朝比奈が肩をすくめる。

 

「じゃあさ、僕たちが気を逸らしてる間。」

 

「ああ、狙撃手は任せろ。」

 

「流石理解が早い!」

 

「お前と何年一緒に戦っていると思うんだ。お見通しだ。」

 

「じゃあ、頼んだよッ!!」

 

 朝比奈が物陰から飛び出した。

 

 しかしその時丁度敵のグロースターと接敵する。

 

「マント付き!?カモがネギを背負って来たよ!!」

 

 廻転刃刀で斬りつけるがランスで防がれる。

 

「へぇ、やるじゃない。でもさっ!!」

 

 左腕のマシンガンをゼロ距離で発射しようとする。しかし。

 

「えっ!?」

 

 機体に強い衝撃。そしてモニターには警告文が表示される。

 

 左腕部の消失。恐らくは狙撃手によるものだろう。

 

「ぐっ、やるねっ!!」

 

 鍔迫り合いになっていたもののその隙を突かれて押し返されてしまう。

 

「私はアンドレアス・ダールトン将軍だ。恨みはないがその命頂戴する!!」

 

 右手で刀を持っているものの、ランスの攻撃を防御するにはやはり分が悪い。

 

「くっ、中々キツイ!!」

 

「隊長!!」

 

 ダールトンの機体に横から部下が突撃する。

 しかし跳ね返されてそのまま狙撃手に撃ち抜かれる。

 

「ごめんッ!竹崎!!」

 

 しかし一瞬できたこの刹那を朝比奈は見逃さない。

 

「てやぁッッッッ!!!」

 

 グロースターの右腕部の破壊。これで状況は五分五分だ。

 そしてその衝撃かその機体は大きく態勢を崩す。

 

「父上ッ!!」

 

「バカッ!バート!よく狙えッ!!」

 

 パニック状態のバートが焦ってよく狙わずに射撃を行ってしまった。

 そしてその弾丸は父の機体の脚部を撃ち抜いてしまう。

 

「ぐっ!!」

 

 ダールトンの負けは濃厚になった。腕と足が使えないのでは戦いにもならない。

 

「その首貰うよッ!!」

 

 朝比奈が刀を振り下ろしたその瞬間。

 

 特殊な塗装をされたグロースターが死角から突っ込んできた。

 

「ッ!?デヴィッドか!!」

 

「間に合った・・・!!」

 

 どうやらデヴィッドだけ狙撃をやめ、救援に駆けつけたようだ。

 もちろんグラストンナイツの方針から離れた行動ではあるが、気の利いたアドリヴだった。

 

「邪魔ばっかりされてもさッ!!」

 

 朝比奈が新しく到着した機体に斬りかかるが。

 

「死ねっ・・・!!」

 

 操縦席の左右に装備してあったザッテルヴァッフェから一斉にミサイルが発射される。

 

「嘘ッ!!」

 

 多数のミサイルを浴びて朝比奈の月下が崩壊していく。

 

「ごめんッ!!藤堂さん!!」

 

 なんとか脱出装置が作動し、操縦席が後方に飛んでいく。

 

 そして難を逃れたダールトンが。

 

「良くやった。デヴィッド。」

 

 と彼を褒めた。

 

「いえ。父上。俺は当たり前の事を。」

 

「敵が死角から来たッ!!救援を頼む!!」

 

 エドガーの叫び声が無線を通して響く。

 どうやらあの隊長を相手していた間に別方向から他の隊長が攻めて来たようだ。

 

「行け!デヴィッド。私は自力で脱出するッ!!」

 

「は、はいっ!!」

 

 ダールトンなりの気遣い。

 そして愛を注いだ息子が自らのそばを離れていく。

 

「ふっ。息子達の為ならば本望よ。」

 

 血が流れる腹に手を当てていたが、遂にはその手から力が抜け、まるで振り子のように宙でぶらぶらと垂れ下がった。その指先からはポタポタと血が一滴一滴滴っている。

 そして父は物言わぬ屍になった。

 

 実は彼の息子。バートの誤射により機体に強い衝撃が加わり、不運な事にコックピットブロック内が損傷。

 弾け飛んだ鉄片が彼の腹を貫いたのだ。

 

 しかしそれは誰も知る事がなかった。ただ息子を恨む事も無く、父として最期に息子達に託したのだった。次の世代に託す希望を。

 

 

 

 

「うおおおおおッッ!!!」

 

 千葉は射撃しながら狙撃兵と思われるグロースターに斬りかかる。

 しかし、次々と敵の一般兵が後ろから湧いて出てくる為。中々致命的な打撃を与えられない。

 

「私が行きますッ!!」

 

 隊員が前に出て敵の足止めを行う。

 

「すまないっ!!」

 

 地面に廻転刃刀を滑らせ、火花を散らせながら下方からグロースターに斬撃を行う。

 キュイーンという音と共にその胴体を切り裂いて行く。

 

「食らえッー!!!」

 

 しかしコックピットブロックを両断する前に脱出装置が作動したのか逃げられてしまった。

 

「クソッ!!」

 

 そして他の精鋭機も到着する。

 肩のザッテルヴァッフェから次々にロケット弾が発射される。

 

 ハンドガンを連射してそれらを撃墜するも、間に合わず2発被弾してしまった。

 

 左肘関節部がかろうじて繋がっているが、信号が届かない。もう動かないだろう。

 

「それならばッ!!」

 

 胴体部をよじりながら飛び上がる。機体は回転する。

 そしてその遠心力で肘関節部が完全に断裂。それを敵機の方へと飛ばす。

 

 咄嗟に防御したその隙を千葉は見逃さない。

 

「うおおおおおおッッ!!!」

 

 刀で斬りかかろうとするが。

 

「な・・・に・・・・!?」

 

 それまでモニターに囲まれていた筈が、目の前には外の光景が広がっている。

 

 そして剥き出しになった回路がスパーク。そのままコックピットが爆発する。

 

「うああああああッッッ!!!」

 

 千葉は爆発に飲み込まれた。

 

「危なかったな。クラウディオ兄さん。」

 

「デヴィッド。助かる。しかしバートは無事か?」

 

「いま無事が確認できた。無傷。では無いけど大丈夫みたいだ。」

 

「そうか。良かった。では配置に戻れ!」

 

「「「了解!」」」

 

 しかし彼らはまだ気付いていなかった。自らが慕った父の死に。

 

 

 

 

「もうそろそろだ!!」

 

 俺はフロートユニットを冷却するために走って戦場に向かっていた。

 

 少し遠くの空は赤色に染まっている。そしてその中から現れる天を貫く赤黒い光線。アレはガウェインのハドロン砲の光に違いない。

 

 もうそろそろフロートユニットの冷却完了だ。

 ひとまず鹵獲したG1ベースに向かい、エナジーフィラーを交換せねば。

 

 このままでは間に合わん!!

 

「持ってくれよ!!」

 

 祈りながらフロートを起動。時速240キロで空を飛行する。

 コックピット内が赤く染まる。これは残り燃料が一割を切った証だ。

 

 そして、神楽耶様がいるG1ベースが見えてくる。

 

「卜部巧雪さんですか。替えの燃料は用意してあります。」

 

 通信から神楽耶様の声が聞こえる。

 どうやら俺の為に用意して待ってくれていたらしい。

 

 俺は空中で速度を緩め、ベースの横に着陸する。

 そしてコックピットから降りる。

 

「5分かかります!少しお待ちください!」

 

「ありがとう。頼んだぞ。」

 

 俺は隊員にそう言うと、袖で額の汗を拭う。

 

「卜部巧雪さんですね。お初にお目にかかります。」

 

 丁寧なお辞儀をした少女。その方はキョウトのトップ。皇神楽耶その人だった。

 

「そんな畏れ多い!覚えていただいてるだけでも光栄です!」

 

 すかさず俺もお辞儀する。

 俺たちは今日まで彼女含めたキョウトの力で存続する事ができたのだ。俺たちは彼女に深い恩がある。

 

「最近あなたは目覚ましい活躍をしていると聞き及びます。そのお力でわたくしの夫ゼロをお支えください。」

 

「ええっ!?夫!?」

 

 この短時間でゼロは婚約したというのか!?

 いや、しかしそんな。やはりブリタニアの学生は手が早いのだろうか。なっとらん。なっとらんなぁ!

 

「ふふっ。『顔』を持たないゼロに必要でしょう?代わりに表に立てる人間が。」

 

「あっ、そういう・・・。」

 

 政治的思惑か。

 先程のみっともない嫉妬はそう!冗談だ。ただの冗談。

 

「ここから戦況を確認しておりましたがどうも芳しくないようです。どうかお力添えをお願いします。」

 

「ええ。この卜部巧雪。力の限り!」

 

「頼もしいですね。あら、ディートハルトさん。」

 

 このブリタニア人。いつの間に。

 

「卜部巧雪さん。こうやってあなたと面と向かって話すのは初めてですね。」

 

 前からなんとなく信用できなかった。あの逃亡中の会話も定時連絡のみ。

 彼から感じた違和感はなんと形容したら良いのだろうか。

 

 壊れてる?が正しいのだろうか。どこか危うげな感じがする。

 

「ああ、こちらこそ。で、何の用だ。」

 

「いえ、ただの興味本位ですよ。ただあなたの行動は私の情報網をも上回っている。その先取りの行動。そのエビデンスを知りたい。」

 

 エビ?が何かは分からんが。

 

「ただ、俺は精一杯やっていただけだ。たまたま運が良かっただけだ。」

 

「運・・・ですか。今はそれを信じましょう。今はね。」

 

 そういうとディートハルトは立ち去っていった。不気味な奴だ。ああいった男にはやはり命を預ける事はできんな。

 

「エナジーフィラー!交換終了しました!」

 

 良し。終わったようだな。

 

「では神楽耶様。俺はこれで。」

 

「ええ。お気をつけて。」

 

 皇神楽耶。俺のような末端の隊員に対しても礼節を忘れない。

 日本人より日本人らしい素晴らしいお方だ。あの方は裏で暗躍する『キョウト』の器では無い。きっと表舞台の光当たる場所でこそ輝くお方だろう。

 

 俺はジャンプをしてコックピットに飛び乗る。

 

「あら!」

 

 何かに驚いていたようだがまあ、いい。早く戦場に向かわねば!!

 

 俺はフロートユニットを展開して政庁の方へと飛ぶのだった。




はい!今回は卜部以外のメンバーに主眼を置いて描写してみました。

ダールトン将軍生還ならず・・・。好きな方は申し訳ないです。
本編よりは報われたかな・・・?

さて、何度も言ってますがここから最終決戦です!
何もかも歪んでしまった歴史で卜部はどう活躍するのかお楽しみにお待ちください。

そういえばまたコメント頂けました!本当にありがたいです。
コメント頂けるとグーッと創作意欲が高まるのでもう一言でもいいので是非してください!!

またUAの方もかなり伸びてきてます。沢山の方々の目にこの作品が触れる事ができて幸いです!

それでは次回もよろしくお願いします!
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