異世界卜部 〜異世界でもコードギアスの世界でも四聖剣は虚名にあらず!〜   作:シャール

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㊟ロストカラーズの設定を基にしていますが、かなり独自解釈入ってます!


卜部 奇跡の 厳島

 蒸し暑い夜。こんな時はいつもあの夏を思い出す。

 

 皇歴2010年8月10日。

 ブリタニアによる日本侵攻。第二次太平洋戦争勃発。

 

 圧倒的な物量とナイトメアフレームの実践投入。そして相次ぐ枢木ゲンブ首相の自決。

 

 我々は敗北した。

 

 

 

 

 

 当時俺は28歳だった。帝国陸軍大学を出てからまだ6年。幹部候補としてはまだまだ一般兵に毛が生えた程度だった。ただ他の者よりは剣術に自信があった。

 

「刀を握る手が甘い。」

 

「はい!」

 

 なぜ俺は2,3歳程の歳の近い者に教えられなければならんのだ。と当時の俺は思っていた。

 その時の彼。その人こそ藤堂中佐。いや、当時は藤堂鏡志郎大尉だった。

 

「今日はもう終わりにする。卜部。お前は何のために軍に入った。」

 

「日本国の手となり足となり。その敵を排除するためです!」

 

「ふむ。模範解答だな。」

 

 当時の俺はまだ子供だったなと振り返って思う。

 

「お言葉ですが藤堂大尉。その言葉。取り消して頂きたい。」

 

「・・・。」

 

 愚かにも俺は木刀を手に藤堂大尉に斬りかかってしまった。

 

 彼は無言で俺の攻撃を避け、手から木刀を弾き飛ばした。

 

 生涯で初めて経験した負け。それも言い訳のできないような完膚なきまでの敗北だった。

 

「今一度考えておくことだ。私はここで失礼する。少し息抜きをしてくる。」

 

 俺は知っていた。時々彼は軍隊の仕事を抜けて道場らしきものを行っている。だが誰も咎めはしなかった。答えは簡単。優秀だったからだ。

 誰にでも対等に接するその性格。個人個人に合わせた的確な指示。優れた洞察力による戦術の立案施行に至るまで。そして誰も及ばぬ武術の才。

 

 全てを兼ね備えた完璧人間だった。

 

「卜部。お前は少々熱くなりすぎだ。」

 

「仙波中尉!」

 

「藤堂大尉の言の意味を考えてから斬りかかったのか。」

 

「それは・・・。」

 

「ブリタニアとの戦争がありえる今だからこそ信念は大切。ということだ。中身のない信念程すぐに折れる。」

 

 俺自身でも中身がないのは分かっていた。

 的確に突かれた俺の弱点。それを刺激されて反射で怒ってしまったことも理解できる。

 

「仙波中尉はどうして軍に。」

 

「私か。私は父の言いなりでな。幼いころから軍人になるのだと言い聞かされて育った。まあ今となってはここにいるのが当たり前になった。というところだな。強いて言うならば隣に立つ者の為。とでも言おうか。」

 

「隣に立つ者の為?」

 

「そうだ。軍人としては失格なのだろうが、私は国の為だとか政府の為だとかそういったものに興味はない。ただ、戦友と共に。そういう想いだ。」

 

「それで良いのでしょうか・・・。」

 

 仙波中尉がほほ笑む。

 

「少なくとも私はそこで納得している。鯛も一人は旨からず。戦友あってこそよ。では軍務がある故ここでな。」

 

 俺は頭を下げる。

 

 日本。確かに俺はこの国を愛している。日本人の奥ゆかしさ。文化。美しい景色。食事。

 

 俺は日本を愛しているわけで日本国を心から愛しているのかと言われれば、それは違うのかもしれない。

 

 俺は頭に巻いていた手拭いを取る。

 

 この美しい『染』の技術も日本の物。手で畳を撫でる。

 どうしてこのように草を編んだものが心を落ち着かせるのだろうと。

 

「卜部!!」

 

 先ほど去った筈の仙波中尉が慌てた様子で道場に戻ってきた。

 

「仙波中尉!?どうされたのですか!」

 

「悪い報せだ。」

 

 携帯式のラジオからは耳を疑う言葉が流れてきた。

 

『・・・繰り返します。只今神聖ブリタニア帝国による宣戦布告が我が日本国に行われたとの声明が・・・。』

 

「な、何故・・・!?」

 

「・・・分からぬ。だが我々軍人が為さねばならぬのはただ一つ。」

 

 戦争。その二文字が頭の中によぎる。

 心のどこかでは戦争が起きるはずないと胡坐をかいている自分がいた。認めたくなかった。

 

「卜部。どうやらもう信念云々で考えている暇は無さそうだ。いつでも対応できるよう急いで支度をしろ。」

 

「承知!」

 

 

 

 

「ですが大佐!我々は東京を守らねばならないのでは!?」

 

「仕方あるまい。上からの命令なのだ。我々陸軍総力を以てブリタニアを水際で押し返さなければならない。」

 

 大佐と藤堂大尉が言い合っていた。

 無理もない。軍部上層部からの命令は徹底抗戦。

 

 何をトチ狂ったのかは分からないが戦術的優位を捨て、本土に上陸する前に迎え撃つとのこと。

 日本の山間部に潜み、ゲリラ戦を仕掛け長期戦に持ち込んだ方が我々も優勢である事はだれが見ても明らかだった。それほどブリタニアには資源もあるし人も沢山いた。

 

 その上でユーロピアや中華連邦に仲介を求めれば良い物を。軍部はメンツを優先したのだ。

 

「大佐。それでは!」

 

「貴様も軍人だろう!分かっているな。命令違反は重い罪だぞ!」

 

 そう。最終的に軍人は命令に従わなければならない。

 

「承知。」

 

 我々熱海駐屯地より第28機械化旅団は九州の熊本地区でブリタニアによる揚陸を阻止するべく出立した。

 

 戦力は機械化歩兵3個大隊、自走榴弾砲2個大隊、戦車2個大隊。兵力は約3500人ほどだった。

 

 まずは箱根に移動し、そこから東海道へと合流。そこからは西方に移動する。

 

 俺達幹部候補生には戦時による臨時の階級が与えられた。俺はこの時より卜部少尉になった。

 だが部隊を任せてもらえるはずもなく、他の幹部候補生を合わせた小隊に編成された。

 

 その分隊長は藤堂大尉その人だった。

 

「皆。この戦役では気構えがとても大切となる。各々覚悟を決めて事にかかるように。それと、もし皆が危険な目に遭った時は私が全力を以て助けよう。」

 

「藤堂大尉!そんな!畏れ多い!」

 

 責任感が人一倍強い彼のことだ。全てを背負おうとしていたのだろう。

 当の俺はといえば、あの時に斬りかかってしまったことを気にしてか、彼に話しかけることができなくなってしまっていた。

 

 そしてそのまま3日が経ち、東海道の終着点。京都の三条大橋へとたどり着いた。

 

 各車両の整備や補給のため、俺達歩兵大隊には1日だけ余暇が与えられた。

 

 俺がその余暇を使って刀の素振りをしていると。

 

「卜部。付き合ってくれ。」

 

「藤堂大尉。」

 

 その手には木刀が二つ握られていた。

 

 

 

 

「中々やるな。」

 

 いくら攻撃を叩きこんでもそれを防御或いは躱されてしまう。

 

「隙あり!」

 

 この剣捌き!

 

「くっ!」

 

 新選組。沖田総司が操る技。必殺の太刀筋。

 突きに特化したという『平正眼』の構えより派生するという技。無明剣『三段突き』。

 

 それをこの方は普通の中段の構えより行った。

 

 かろうじて二段を防御するが三段目が見事に胸を捉えた。真剣ならば心臓を貫かれていた。致命傷は免れないだろう。

 

 やはり天才という他ない。あの沖田総司をも超えているだろう。

 

「参りました。」

 

「見つけたようだな。お前の信念。」

 

「え?」

 

「前のお前ならば一段目の突きで致命傷を食らっていただろう。それに。」

 

 自分でも驚いた。

 なんと俺の木刀は藤堂大尉の腹。鳩尾の部分に突き立っていた。

 

「この執念、私は覚悟と受け取った。ただではやられん。次の手に繋げて見せる。というな。」

 

「気づいたんです。俺はこの美しい日本を守りたいと。」

 

「そうか。それは私とて同じことだ。共に同じ志を抱いた同志。どうだ。お互いの背を守るというのは。」

 

 俺は驚いた。その言葉は本来部下であるはずの俺を盾としてではなく、対等な。それでいて背中を任せる戦友でいてくれという意味で発せられたのだ。

 

「卜部。単糸線を為さず。という諺を知っているか?」

 

 単糸とはより合わせる前の一本の糸。それはとても脆く千切れやすい。

 そこでほかの糸とより合う事で強靭な糸が生まれるのだ。誰にも千切れないような。

 

「私は皆が思っているほど完璧ではないし万能でもない。気づけないことが沢山ある。そこで違う意見も取り入れたいのだ。」

 

「何故俺を?」

 

「さあ。分からない。だが直感で感じた。将来有望だと。」

 

「曖昧なんですね。」

 

「私の直感は当たる方でな。お前からは何かを為す。そんな感じがするのだ。」

 

 正直俺にも何のことだか分らなかった。ただ俺はこの時惚れたのだと思う。藤堂鏡士郎という男に。

 

「何か面白そうなことをしているな。私も混ぜてくれ!」

 

「仙波中尉!?」

 

 どこから現れたのか仙波中尉がそこにいた。

 

「ああ。仙波も頼む。」

 

「どれ。ここは年長者の。」

 

 この後、仙波中尉のことわざ口座が一日中続いたのは言うまでもないだろう。

 

 

 

 

 衝撃の報せが届いたのはその翌朝だった。

 

『九州陥落』

 

 耳と目を疑った。開戦してまだ一週間も経っていないというのに。

 

 九州。そこは要塞都市熊本が防衛の要だったはず。あの設備は昔一度見たことがある。

 大小延べ1200門による大砲の一斉掃射によって海からの進行を寄せ付けない。もし上陸を許してしまったとしても待ち構えているのは複雑に入り組んだ市街地。

 当時その場所を訪ねた俺も迷子になった。

 そして極めつけは最新戦車。去年開発された9年式戦車が20台配備されていたはずだ。1台で0.5戦車大隊分の戦力があるというそれをいとも簡単に打ち破ったというのか。

 それも熊本だけではなく九州全土が陥落するとは。

 

「藤堂大尉。これは。」

 

「ああ。大佐と話してくる。」

 

 あまりにも早い陥落。いったい何があったというのだろうか。

 

「仙波中尉。これは。」

 

「新兵器と見るのが妥当だろう。それも既存の物ではない。」

 

 新兵器。既存の物ではない。一体何だというんだ。

 

「噂はあったが。まさかな。」

 

「まさか?教えてください。」

 

 彼は、目を瞑りながら静かに語りだす。

 

「その存在は少し前に雑誌で読んだ。『ナイトメアフレーム』。通称『KMF』。まだ試作機段階で工業の場で役に立つという話だったが。」

 

「それなら俺も前にテレビで。」

 

 技術の進歩が真っ先に試される場。それは戦場。もしもそれが本当というのならブリタニアはあれからのごく短期間で技術を完成。実戦投入したということになる。

 

 ありえない。だが合点がいくのも確か。

 それならばあの迷路都市熊本の市街攻略も容易であるといえよう。人型であるが故に戦場の地形を選ばない汎用性。戦車などの陸戦兵器等の弱点。ごく至近距離の戦闘も見事にカバーができるといえよう。

 

「万能兵器・・・。」

 

「卜部。これはまずいことになったな。」

 

 もしもこれが本当だとしたら戦争の歴史はここで変革点を迎えたということだ。

 

「ですがまだ仮の話ですよね?そんな事が。」

 

「・・・。あくまでも可能性の一つだ。しかし私はほぼそれで確定とみている。奴らは国同士の緊張状態でも虎視眈々と我らの喉笛を狙っていた。」

 

「・・・。」

 

「今我々が考えるべきなのはそれに対する対策。情報が伝達する前に殲滅が完了してしまう程の兵器。だがそれとて人間が考えた物。何か弱点があるに違いない。」

 

 正直思いつかない。見たことがない兵器の弱点など。

 

「卜部。仙波。」

 

 俺が考え込んでいると、藤堂大尉が戻ってきていた。どうやら大佐との話を終えたようだ。

 

「我々はこれより中国地方の山口で福岡より来る敵を迎え撃つことになった。」

 

「藤堂大尉。その。」

 

 俺は例の話をするべく声をかけようとする。

 

「『ナイトメアフレーム』。その存在が確認された。」

 

 俺と仙波中尉は目を見合わせる。

 やはり懸念は確信へと変わった。

 

「逃げおおせた防衛隊の一部が話していたようだ。あれは悪夢(ナイトメア)だと。」

 

「・・・勝算はあるのでしょうか?」

 

「私たちがそんな調子でどうする。必要なのは相手がどのような兵器を使おうとも次の一手へと繋げること。」

 

 確かにそうだ。国の。日本の要である俺たちが弱気でどうするのだ。

 

「対策を考えよう。今持っている情報で。現実的にな。」

 

 

 

 

 2日後。またもや悪い報せ。山口地区が陥落。我々はまだ広島に着いたばかりだった。

 刻一刻と近づいてくる決戦に胸がざわついていた。

 

「大佐が厳島に陣を張るとの事だ。山口防衛隊の生き残った隊員と合流。再編を図る。」

 

 決戦は厳島で行われるようだ。宗像三女神の加護があれば良いのだが。

 

「厳しい戦いになるだろう。だが我々は負けない。皆で日本を守ろう。」

 

「「承知!!」」

 

「おーい。山口防衛隊の生き残りが来たぞ!」

 

 その時、丁度生き残りたちが合流する。

 

 だが。

 

「これだけか・・・。」

 

 生き残った兵士はおおよそ20人程。戦力の増強にすらならない。

 

「千葉凪沙3等陸曹以下19名。これより藤堂大尉の指揮下に入ります。」

 

 日本陸軍では珍しい女性兵士が敬礼しながら藤堂大尉に対して報告を行う。

 

「辛かっただろう。今はゆっくり休んでくれ。」

 

「い、いえ。そのような。」

 

 勿論生き残った兵士達も五体満足とはいかず誰もが大小の傷を抱えていた。

 

「卜部。医務班まで案内してやってくれ。」

 

「承知。こっちだ。」

 

「恐れ入ります。ええと。」

 

「卜部だ。卜部巧雪少尉。だが戦時故の物。本来は君の部下に当たる。気軽に接してくれて構わない。」

 

 本来幹部候補生は階級がついていない。一応二等兵ほどの扱いではあるが。

 

「ところで怪我人達をこちらに。」

 

「あのさあ。もう話終わったかな?早く休みたいんだけど。」

 

 顔の右半分に包帯を巻いた若い兵士が千葉3曹に対して気軽に話しかける。

 

「こら朝比奈!上官の前だぞ!」

 

「あのさあ。分かってないなあ。こちとら休みなしで山口から走ってきたわけ。もちろん怪我を抱えながらね。正直今にも倒れそうなんだけど。」

 

 確かにそうだ。

 

「確かに俺の配慮が足らなかった。さあこっちだ。」

 

「申し訳ありません。朝比奈には後で。」

 

「大丈夫だ。それより。」

 

 武道をやっている俺だからこそ分かる。右腕を庇うような妙な癖。恐らく彼女の腕は骨折している。

 

「腕をちゃんと診てもらったほうが良い。」

 

「ばれていましたか・・・。その場の一番の上官である手前皆に弱みを見せる訳には。」

 

 よくぞここまで。並の男にはできる覚悟では無い。だからこそこの若さで3等陸曹に昇進できたのだと感心する。

 

「ここだ。治療に専念してくれ。」

 

「ありがとうございます。卜部少尉!」

 

 千葉はその腕で敬礼を行おうとするが、遂に限界を迎えたのであろう。腕が上がらなかったみたいだ。

 

「無理はしないで良いからな。ではな。」

 

 俺がその場を後にすると、後ろから例の男の声が聞こえた。

 

「あー。やっと休める。」

 

「朝比奈!」

 

「はいはい。」

 

 面白い奴が来たものだな。

 

 

 

「遂にブリタニアとの交戦か・・・。」

 

 山口防衛隊組に聞いた話ではやはりブリタニアはナイトメアの力を遺憾無く発揮。それにほぼ一方的に殲滅されたとの事だ。

 最早勝利は絶望的・・・か。

 

 その時轟音が鳴り響く。

 

「空襲だ!!!」

 

 俺は急いで塹壕に飛び込む。

 

 それは容赦無く厳島の神社を破壊し尽くす。あそこには確か本部があったはずだ!!

 

「藤堂大尉!」

 

 俺は走って神社跡へと向かう。

 

「藤堂大尉!!」

 

「卜部か。」

 

「ご無事で。大佐は!?」

 

 藤堂大尉は無言で横に首を振った。今この状況での指揮官不在は士気に響く。それはなんとしても。

 

「私が指揮を執る。」

 

 大尉が声を上げる。

 

「なんとしてもこの厳島を死守する!!」

 

 俺たちはまず森に隠れた。部隊内ではブリタニアの上陸を許すのかといった反対意見があったが、その上陸こそ防衛の要なのだ。

 

 そして、その時は刻一刻と近づいてきた。

 

「用意はいいか。」

 

 藤堂大尉のその声に兵士たちはドーランを塗った顔で一斉に頷く。

 

 ここからは神の領域。運命は彼女らに委ねる!

 

 ブリタニアはすでに海を渡ってきていた。勿論ナイトメアと随伴歩兵を連れてだ。だが彼らも思っただろう。

 やけに簡単すぎると。俺たちはその甘えを許さない。

 

「てー!!」

 

 掛け声と共に火砲が火を吹く。

 

 それと同時に我ら歩兵も小銃で海岸の敵に一斉掃射を行う。

 

「奴らを1人残らず殺せ!!」

 

「うおおおぉおおぉおおッッッ!!!」

 

もちろん有効な打撃は与えられない。しかし。

 

「退却だ!退却しろ!」

 

 歩兵たちや戦車は命令に従い後方へと下がる。それを好機と見たのかブリタニアは進軍を開始した。

 

 奴らめ、今頃は勝ったと勘違いしている頃だろう。

 

 

 

 

「おい!サルどもが逃げたぞ!追え!」

 

「一匹たりとも逃すな!」

 

 兵士たちが我先にと森の中へと走る。

 有効打が与えられないから逃げた。誰もがそう確信していた。

 

 しかし追えども追えどもそこは鬱蒼とした森の中。日本兵たちは影も形もなった。

 

「お、おい。」

 

 不気味に静まり返った森。気づいた時にはもう遅かった。

 段々と細くなっていく道故気付くのが遅れた。

 

「罠だ!」

 

 両サイドを挟んだ崖上から兵士たちが現れる。

 

「逃げ・・・!」

 

 グラスゴーのコックピットが爆散した。恐らくはロケットランチャー弾頭の直撃。

 しかし今。KMFの不敗神話は打ち破られた。

 

「アルトリア卿がやられ!うわああああぁぁぁぁッ!!!」

 

 次々にKMFが破壊されていく。

 その頃後方では。

 

「アルトリア隊の通信が途絶しました!」

 

「ええい。ケルビン辺境伯の部隊を向かわせろ。これ以上被害は許さん。森ごと焼き払え!」

 

 しかし前線では無慈悲に日本兵によるKMF狩りが行われていた。

 

「に、逃げ!があッッ!!」

 

 次々にKMFが破壊されていく様子を見て前線の歩兵。KMF隊共にパニックに陥っていた。

 

「どこだ!そこかッ!?」

 

「バカッ!それは味方だ!」

 

 KMFのパイロットは味方歩兵を敵歩兵と勘違いし射撃してしまう始末だった。

 

「ッ!?脚部損傷!動けない!」

 

 あるグラスゴーの脚部が火花を上げながら爆散した。

 

「ロザリア!!」

 

「や、やめて!!助けて!!嫌ああああああッッ!!」

 

 容赦なくコックピットごと火炎放射器で焼かれる。

 

「嫌ああああぁぁあぁぁ・・・。」

 

 悲痛な叫びを聞くと同時に戦線は崩壊した。

 

 

 

 

「奴らが退いていくぞ!」

 

「俺達はやったんだ!」

 

「日本万歳!藤堂大尉万歳!!」

 

 しかしここで驕る大尉ではなかった。

 

「前進!一人でも多く討ち取れ!」

 

「「「承知!!」」」

 

 俺は刀を抜き、怯んでいる敵歩兵の元へと走る。

 

「た、助け・・・!」

 

 一刀のもとにそれを屠る。

 

 だが敵の歩兵もタダではやられないと奮起。皮肉にも鉄に覆われた貴族は逃げおおせ、戦場には勇敢な生身の歩兵が残された。

 

 コンバットナイフによる突きを刀で受け止め、左手に持っていた拳銃で敵の頭を撃ち抜いた。

 

 藤堂大尉も戦闘に参加していて、見事な剣技で次々と敵を屠っている。

 

「危ないッ!」

 

「千葉!」

 

 どうやら藤堂大尉を見ている隙に後ろから敵に襲われていたようで、それを千葉が防ぎ、その胸にナイフを突き立てていた。

 

「油断大敵!いつ死んでもおかしくないぞ!もっと気をつけろ!」

 

「お、おう。」

 

 実際怒られると迫力が凄いな。

 

「行くぞ!卜部!」

 

 戦場においては皆が平等。千葉の物言いに対する怒りなど一切浮かぶはずもなかった。

 

「秘技!八艘飛び!ってね。」

 

 あれは朝比奈!ああ見えて彼も武勇が優れているようだ。あの態度は自信の表れだったのだなと感心する。

 

「あいつ。また調子に乗って!」

 

「どうやら、こちらもよそ見している暇はないらしい。」

 

 3人の敵兵によって囲まれる。

 

「どうする。千葉。」

 

「決まっている。倒すだけだ!」

 

「このサルどもめらがッ・・・?」

 

 一人の敵兵が倒れた。その後ろにいたのは。

 

「仙波中尉!?」

 

「敬称不要!それに機は今ぞ!」

 

 呆気にとられている敵兵を千葉と二人で叩き斬る。

 

「ほう。中々見事な剣筋。」

 

「敵が逃げていくぞ!」

 

「朝比奈です追えッ!」

 

 その時藤堂大尉が声を張り上げた。

 

「追撃不要!これ以上は無駄だ!」

 

 その声に誰もが従う。

 

「この地点に野砲を配置しろ。定期的に海岸に発射。こちらに釘付けにしろ。位置を少しずつ変えて報復射撃に晒されないようにしろ。」

 

「「承知!」」

 

「歩兵隊も30分に一度、森の外へと近づき威嚇射撃。その後ここまで戻ってこい。100人交代で行うよう。編成は各分隊長に任せる。」

 

「「承知!」」

 

「戦車隊!後方に下がり待機しろ。その際偽装はしっかりと行うように。非常時は照明弾の目印を頼りに前進しろ。」

 

「「承知!」」

 

「以上だ。各隊かかれ!」

 

 明確な指示を受けた兵士たちはそれぞれの仕事にかかる。

 

「仙波、卜部、千葉。あと彼は。」

 

「朝比奈です。」

 

 千葉がそう答える。

 

「彼を呼んでくれ。」

 

 千葉は敵兵の生存確認をしていた朝比奈を呼び寄せる。

 

「で、隊長サマが何か用です?」

 

「朝比奈ッ!」

 

「構わない。」

 

 怒ろうとする千葉を大尉は手で制した。

 

「力を貸してくれ。この通りだ。」

 

 大尉が頭を下げる。

 

「え、ええっ!?」

 

 一番驚いていたのは朝比奈その人だった。

 

「君の剣技を見せてもらった。そして精鋭足りうると判断した。」

 

「い、いや。どうも。」

 

「これからはこの4人で行動してもらいたい。特にこの作戦では君たちが要になる。」

 

「俺たちが、要?」

 

 にわかには信じがたい。

 

「ああ。」

 

「いいのかな。そんな大役引き受けちゃって。」

 

 大尉は静かに頷く。

 

「で、藤堂大尉。私らは何をしたら良いのだ。」

 

 仙波中尉が訊く。

 

「それは。」

 

 

 

 

 当時のことを思い出していると、足音が近づいてくる音がした。

 

 俺は拳銃に手をかける。

 

 6。いや。7人か・・・?

 

「卜部のおっさーん!」

 

 親しげな声がした。

 

「吞まねえか?」

 

 俺が個人用のテントから出ると、先ほど料理を振舞った兵士たちが立っていた。

 

「すまんな。今夜はもう遅い。また次の機会に頼む。」

 

「ノリ悪いな。まっ、気が変わったら吞みに来てくれや。俺たちは明日非番だから朝まで呑み明かしてるからよ!!」

 

 昔話を思い出しているだけでもうこんなに時間が経ってしまったようだ。

 

 俺はテントに戻り、来るべき明日に備え明かりを消した。




遂ノリノリで描いてたら時間が経ちすぎてしまいました(泣)

仙波さん本来の一人称は『儂』なのですが設定的にまだ35歳程なので『私』に変えさせてもらいました。
あと主人公たちとの接点を持たせるために山口防衛隊なるものを登場させてもらいました。

できる限り整合性が取れるように(千葉、朝比奈の年齢に基づいた階級。朝比奈の右目の傷。なぜ厳島で迎え撃つことになったのか等)やったつもりです。不快にさせてしまったのならばゴメンなさい!!

次回からはまた異世界モノに戻ります!

次回も異世界卜部で会いましょう!
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