異世界卜部 〜異世界でもコードギアスの世界でも四聖剣は虚名にあらず!〜   作:シャール

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卜部 帝都に 行く

 気持ちの良い朝だ。こんな時はゆっくりと温かいコーヒーでも飲みたいものだ。

 

「卜部殿。起きておられるか!」

 

「ああ。今丁度起きたところだ。」

 

 そう言いながら俺は手袋をはめた。

 

「早速朝の鍛錬といこう。」

 

 手渡されるまま木剣を受け取るが、やはり刀が欲しいところだ。あれは良く手に馴染む。

 ここでは贅沢も言っていられないだろうが。

 

「了解した。」

 

「ではまずはウォームアップといこうか!」

 

 まずは剣で斬りかかってくるが。太刀筋がバレバレだ。俺はそれを剣で防ぐ。

 

 だが小手調べなのは分かっている。それならば!

 

 剣の上で相手の剣を滑らせて、そのまま横腹を薙ごうとする。

 

「面白い動きだ!だがッ!」

 

 剣が腹に触れると同時にアリシラが回転する。

 なるほど、面白い避け方だ。真剣ならばかすり傷に過ぎないだろう。

 

「避けるだけではないぞ!」

 

 ほう、その体制からの回転切り。だが遅い!

 

 俺は彼女の手首をつかんでそのまま捻る。もちろん勢いがついているので、自分で関節技を決めていることになる。

 

「くッ。」

 

 遂には耐えられなくなり彼女は木剣を落とした。

 

「やられたことのない技だ。ついつい剣を落としてしまったぞ。」

 

「合気という技だ。相手の力を利用する。」

 

「面白い。是非教えてもらいたいものだな。さあ。ウォームアップはこれくらいにして。行くぞッ!」

 

「望む所!!」

 

 彼女は木剣を拾い直すとそのまま剣を構えた。

 

「『身体強化』!『高速化』ッッ!!」 

 

 一度は煮え湯を飲まされたが。次はそうはいかせないッ!

 

「『身体強化』!」

 

 見えなかった彼女の動きが見えた!!

 ものすごい速さで動いているのが分かる。しかしこれならばッ!

 

「はあッ!」

 

 くっ。速い!

 やはり防御するので精一杯。ならば俺も!

 

 走って彼女の横につき、力いっぱいの斬撃を叩きこむ!

 

「くうッ!」

 

 勿論彼女は防御に成功するが、俺の斬撃の反動で吹き飛ぶ。

 

「なんて馬鹿力だ!」

 

 だが彼女はなぜか空中で跳ね返ってきた。

 

「何ッ!?」

 

「これぞ武技の応用!『足場生成』!!」

 

 そんな非常識な!

 

「うおおおおおッッ!」

 

 再び返り討ちにしてくれる!

 

「アイシクルスパイクッ!」

 

 あの時に撃ち出された氷の弾丸。だが今の俺ならもう驚きはしない!

 

 剣で次々と飛んでくる氷の弾丸を叩き落とす。 

 

「隙ありッ!」

 

 氷の弾丸に紛れて彼女自身が飛び込んでくる。だがそれは読んでいた。

 

「せいッッ!!」

 

 まるで蚊を振り払うかのような動。ただ違うのはそれに『気』を込めたこと。

 

 俺の振り払いは風の壁を形成し、彼女自身を吹き飛ばす。

 

「よくぞ一日でここまで!」

 

 彼女自身もあの足場のようなものを生成し、吹き飛ばされるのを防いだ。

 

「アイシクルピラー!!」

 

 彼女は空中で片手をあげて巨大な氷の柱を形成した。

 

 で、でかい!30メートルほどはあるか!?

 

「ブレイズキャノン!!」

 

 横で他の声がした。それと同時に巨大な火の玉が氷の柱へと飛んでいく。

 まるで太陽の輝きのようにまばゆい光を放ちながらそれは氷の柱と共に爆散した。

 

 俺は呆気に取られて声の主を見た。

 

 見覚えのある紅い髪。そしてその顔。見間違えようもない。

 

「紅月か!?」

 

「え?紅月?って私のことかしら。」

 

 確かに顔は紅月カレンそのものだった。だが身なりはこの世界の物だった。

 

「え、ええと。知り合いだったかな?私たち。」

 

「い、いや。何でもない。」

 

 他人の空似。という言葉があるが、これほど似ているとはな。

 

「カルメン!決闘に水を差すな!」

 

 アリシラは不満そうにカルメンという少女に叫んだ。

 

「アリシラ!あなたここが戦場って忘れてない?あんなに目立つ魔法放っちゃったら魔族たちに見つかっちゃうでしょ!」

 

「う、うう・・・。」

 

 アリシラが俯いた。

 

「で、貴方も貴方よ。それで誰なの?」

 

 警戒。もするだろう。見知らぬものが野営地の中にいるのだから。

 

「カルメン。こちらは客人の卜部殿だ。そのこの決闘も私が勝手にヒートアップして。」

 

「客人。ね。まあヒートアップしたのはあなたの方って予想はできたけどね。」

 

 俺が黙って見ていると。

 

「あのね。寡黙なのはいいけど自己紹介とかしたらどうなの?」

 

「あ、ああ。卜部巧雪という。流れの旅人でここで世話になっている。」

 

 この苛烈な性格も似ているな。

 

「ふーん。私はカルメン・ソードライン。ここの団長の妹で分隊長の一人をやっています。」

 

 隊長の妹。確かにあの人も紅髪だったな。今思えば。

 

「で、貴方本当に流れの旅人?それにしてはあの技量。戦場から来たみたいな隙のなさ。まるで百戦錬磨の兵士みたい。」

 

 鋭いな。紅月。いやそれ以上に研ぎ澄まされている。

 

「まあな。森の中で修行していたんだが。遂に出ることにしたんだ。」

 

「ふうん。」

 

 訝しげな表情でカルメンは俺の顔を覗き込んでくる。

 

「ま、いいわ。そのうち分かるだろうし。」

 

 これは中々。

 

「お、おお!もう打ち解けたか!良かった良かった。」

 

 こいつ。こんなに能天気だったか?

 

「う、うわ。何してくれちゃってんの卜部くん!」

 

 また新しい声が。

 

「あ、カルメン!説明してよ!」

 

「ええ?私だって到着したばっかりなのに!聞くならアリシラに。」

 

「アリシラ!?」

 

 あ、逃げようとしていた。

 

「あ!ま、待てーーー!」

 

 アリシラは逃げ、エーリカはそれを追って森の中に消えていった。

 

「はー。ったく。卜部さんだっけ。これから帝都に行くんだけど着いてこない?」

 

 ほうそれは。

 

「是非行ってみたいものだ。」

 

「了解。準備するから待っててね。」

 

 しかしどういった風の吹き回しだ?先ほどはあんなに疑われていたのに。

 

 しかし帝都か。そこに行けば少しは状況が分かるのだろうか。

 

 

 

 

「お待たせ!」

 

「あ、ああ。」

 

 見れば見る紅月そのものだ。時に私服に着替えたとなるとそのままだ。

 赤のノースリーブニットにパンツスタイルか。悪くない。

 

「では、行きましょうか。」

 

「頼んだ。ところで荷物は・・・。」

 

「『転移』」

 

 彼女がそう言ったとたんに視界が白く染まった。そして体が宙へと浮かぶ感覚。

 

 眩しい!

 

「串焼きはいかが!」

 

「今ならなんと銅貨5枚!」

 

「お嬢さんのプレゼントにどうですか!」

 

 いったい何が起きたというのだ。

 

「終わったわよ。さあ行きましょう。」

 

「ちょ、ちょっと待ってくれ!さっきまで俺たちは森の中にいたよな?」

 

 そう。俺たちは確かに森にいたはずなのだ。

 

「ええそうだけど。あ。」

 

 この笑みは知っている。悪い笑みだ。

 

「卜部さん知らないのぉ?有名な『転移』魔法を。」

 

「あ、いや。もちろん知っていたさ。はは。」 

 

 我ながらいい演技だ。

 

「あっそ。行くわよ。」

 

「ま、待ってくれ!」

 

 人ごみの中に行ってしまったカルメンを追いかける。

 

「卜部さん。後ろ。」

 

 俺は振り返ろうとするが。

 

「振り返らないで。7人。」

 

 確かに人ごみの中でも鈍い殺気を感じる。7人。いや。もう一人屋根の上にいる。

 

「もう一人だ。屋根の上。」

 

「ええ。今感じ取った。」

 

「やるか。」

 

「いいえ。ここじゃ目立つ。でも早く処理しないと。」

 

「あそこなんかいいんじゃないか?」

 

 誰も入ってこなさそうな路地裏を見る。

 

「ええ。いいんじゃない?」

 

 そして俺たちは路地裏の中に入る。

 

「その首貰った!!」

 

 やはり来た!

 

 俺は気を集中させ、屋根から降ってきた敵を風で薙ぎ払う。

 

「がッ・・・!」

 

 それは壁に叩きつけられた。

 

「やるじゃない!でも!」

 

「ぐあッ!」

 

 耳元で声がした。

 

「まだまだね。『隠密』に気付けないなんて。」

 

 後ろにいた男の額にはナイフが刺さっていた。

 

「やるわよ!」

 

「ああ。」

 

 物陰から黒い影たちが飛び出してくる。

 いきなりの実戦だ。だが。

 

「『身体強化』!」

 

 確かに見える!黒い影たちが動いている!

 見えればどうという事はない!

 

 黒い影に蹴りを喰らわせた。それは見事に顎に当たった。

 黒い影は宙を回って地面へと落ちた。

 

「やるわねっ!」

 

 カルメンの方も剣で次々と敵を斬っている。

 そしてあっという間に1人になった。

 

「もう残りはあなただけよ!諦めなさいっ!」

 

「く、くそっ!」

 

 黒い影が壁を登った。そして逃げていく。

 

「追うわよッ!」

 

「ああっ!」

 

 俺たちも壁を蹴って登る。

 

「いた!」

 

 カルメンが指を指した方向を見る。

 

「はっ!!」

 

 風を起こしてそれにぶつけようとするがすんでのところで避けられてしまう。

 

「クソッ。当たらないか。」

 

「私を甘く見ないでッ!!」

 

 カルメンはまるで火の塊になる。

 

「はああああぁああッッッッ!!」

 

 速いッ!身体強化をかけていても余りあるほどに。

 

「おりゃああああッッ!!」

 

 火の塊に黒い影が飲まれる。

 まるで神速。

 

 俺は屋根伝いに走って急いで向かう。

 

「カルメン!!」

 

 そこには2人の裸の少女が寝っ転がっていた。

 

「裸ッ!?」

 

「ちょっと!見ないでよ!」

 

 カルメンは急いで両腕で胸を隠す。

 

「す、すまん!」

 

 俺は急いで目を逸らし、上着を脱いで彼女に覆いかける。

 

「あ、ありがとう。」

 

 少し気まずい時間が流れる。

 

「ところでこの女の子。何者かしら。とりあえず着替えと同時に一回戻るわね。広場で待ってて。」

 

「分かった。」

 

 俺は一番最初に転移してきた広場に戻ってきた。

 ベンチに座ってぼんやりしていると偶に光の玉が現れてそこから人が歩いて出てくる。どうやらこれが『転移』という魔法らしい。便利なものだな。

 

「兄ちゃん。暇そうにしてるけど何かあったんか?」

 

 突然声をかけられたので驚く。

 

「ただの待ち人だ。気にしないでくれ。」

 

「そうかい。ところで女に興味はないかい。」

 

 やはり客引きか。

 待ち人だと言っているのだが。あくまでも諦めるつもりはないらしい。

 

「すまないが今はそんなに余裕がない。別の者に訪ねてくれ。」

 

「そんなー。見るだけでも。ね?ね?」

 

 しつこい奴だな。

 

「おーい。ここ。客引き禁止なんだけど?」

 

「うるっせえな!あ、おまわりさん!」

 

 そこに立っていたのは金髪碧眼の好青年だった。ただ普通の好青年と違うところは銀の鎧を身に纏っていたことだった。

 

「すんません。へへ。魔が差しちまって。」

 

「行きなよ。こんな大っぴらなところで騒ぎなんか起こしたくないし。」

 

「すんません!」

 

「次は無いよ!」

 

 随分と優しいことだ。

 

「で、君の方だけど。どうやら帝都は初めてみたいだね。」

 

 とりあえず合わせておくか。

 

「ああ。先ほど到着したばかりだ。」

 

「なるほどね。じゃあこれ、どうぞ。」

 

 手渡されたのは、何かの紙?

 

「地図だよ。まあ困っている人用の簡易的な物だけど。役立ててね!んじゃっ。」

 

 青年は手を上げると人ごみの中に消えていった。

 

 中々の好青年だったな。その態度は見上げたものだ。

 

「卜部さん。ゴメーン!待たせた?」

 

 お、来たか。

 

「ああ。待ったぞ。」

 

 今度は純白のワンピースだ。爽やかな装いだな。

 

「これ。ありがとう。色々と手こずっちゃて。じゃあ次こそ行きましょ。」

 

「ああ。」

 

 俺は上着を受け取る。やっと帝都を見て回れるようだ。

 

「その『転移』だったか。便利なものだな。」

 

 上着に袖を通しながらカルメンに向かって話しかける。

 

「うーん。それがね、この帝都にしか来れないし帰りも元居た位置にしか行けないからそうでもないわよ。」

 

 制限付きだったか。だがそれを差し置いてもどんな田舎からでもここに来れるのは便利には変わらないな。

 

「あっ。それとこれが一番面倒くさいけど、この石が必要なのよ。」

 

 その手には、紋章と小さな文字がびっしり書かれていた手のひらサイズの石があった。

 

「これ一個で金貨20枚よ!隊のみんなで費用を折半して買ったんだから。」

 

 どうやら少しは打ち解けてくれたようだな。先ほど感じた居所の悪さももう然程無い。

 

「で、卜部さんは何か欲しいものはあるの?」

 

「俺か?そうだな。願わくば刀が欲しいな。今はナイフを持っているとはいえ、丸腰だからな。」

 

「刀?何それ?」

 

 刀を知らないのか。

 

「こう、浅く反った剣のようなもので。」

 

「何それ、曲剣じゃない。それなら安いのが武器屋に売ってるけど。」

 

「是非行ってみたい!!」

 

 武人としては気になる!!

 

「え、ええ。いいけど。じゃあ行きましょうか。」

 

 俺たちは大通りを歩いていく。

 

「帝都には何でも揃ってるのよ。武器や防具。食事に宿!まあ男連中はもっぱら。」

 

 カルメンが目で見た方向を見る。

 まるでネオンのように怪しげに輝く看板。その下では肌色の面積が多い服の女性が通りかかる男にウインクや投げキスをしていた。

 

「へー。卜部さんも興味あるわけ?」

 

 なんとも返答に困るな。だが。

 

「俺は買わんな。第一男女の関係は・・・。」

 

「着いたわよ!ここが武器屋さん!」

 

 まあいいか。

 ほう中々立派なレンガ造りの建物だ。ところどころにヒビが入っているがそれもまた味を感じさせる。

 

 煙突からはモクモクと煙が出ていて、その仕事ぶりが伺える。

 

 カルメンは躊躇なくその扉を開いた。

 

「おう!らっしゃい!カルメンの嬢ちゃんか!そっちのおっさんは?」

 

 白いひげを蓄えた老人が椅子に座っていた。

 というかお前もおっさんだろう。

 

「この人は卜部さん。ここのお得意さんになるかもよ!」

 

「ほう。武器に興味があるのか。」

 

 老人がにやりと笑う。

 

「俺はガルダン。よろしくな卜部。」

 

「ああ。よろしく頼む。」

 

 どうやら悪い人ではなさそうだ。

 

「早速だが用は何だ。」

 

「刀っていうのを探しているらしいわよ。私には何の事だかさっぱりだけど。」

 

「刀・・・か。すまんが俺も聞いたことが無いな。」

 

 ガルダンはその立派な顎髭に手を添えている。

 

「やっぱり曲剣を見せてちょうだい。その中から似ているものがあれば良いんだけど。」

 

「ああ。少し待ってろ。」

 

 老人はそのまま店の奥に行った。

 

「すまないな。カルメン。」

 

 これだけ探してくれるとなんだか申し訳なくなる。

 

「いいのよ。一緒に死線を潜り抜けた仲でしょう?」

 

 まあ確かに背中を合わせて戦ったがこれだけ打ち解けられるものだろうか?

 まあ確かに四聖剣の面々とはスグに打ち解けたからな。そんなものだろう。

 

 それは置いといて。俺は店の中を見渡す。

 

 まるで騎士のような甲冑に人の手では扱えそうにない巨大な剣。それに装飾が施された剣。

 

 自分の世界ではないのだなと実感が湧いてくる。

 

「おう。待たせたな。」

 

 ガルダンは古布で巻かれた何かの束を持ってきた。

 

「在庫処分しようと思ってたんだ。曲剣は人気が無いからな。」

 

 ヨイショ。という声と共に机の上に曲剣がぶちまけられる。

 

「どれも古いものだな。」

 

「確かに。だが切れ味は抜群。そこはこのガルダン印だぜ。」

 

 俺はところどころ錆びている曲剣を一つ一つ丁寧に見ていく。

 

 どれも確かに切れ味は良さそうなのだが反りが深すぎる。これでは突きを交えた攻撃ができない。

 

「どうやらこだわりがあるようだな。」

 

「もっと反りが浅い物はないか?」

 

「反りが浅い。ううむ。そうだ!待っとけ!」

 

 ガルダンは再び店の奥に消えた。

 

「ふーん。卜部さんって結構こだわる人なんだ。」

 

「まあな。武を志す身。命を預ける相棒は慎重に選ばないとな。」

 

「その気持ち分かるかも。私もずっと同じ武器使ってるし。」

 

 カルメンは肩掛けの鞄から、短剣を取り出す。

 

「入隊した時からずっとこれを使っているの。まあ今となってはお古なんだけどなんか愛着湧いちゃって。」

 

 その短剣は古いものの見事に磨かれていて大事に手入れされているのが目に見て取れる。

 

「これでどうだ!」

 

 ガルダンが次に持ってきたのは、まるで軍刀そのものだった。

 

「このサーベルでどうよ。まあ条件に合うのがこれくらいしか無かったんだが。」

 

 俺は剣を鞘から抜く。確かにこれは業物だ。

 

「考えたわね。」

 

「いくらになる?」

 

「ああん?ダダでいいぞ!」

 

 この業物を無料で。だと?

 

「まあ武器っていうのは最初の購入より維持費の方が金がかかる。俺も損はしない。それにこのまま店に置いてたって売れなかっただろうしな。まあお近づきの印にって事にしておいてくれや。」

 

「かたじけない。」

 

「いいって事よ!」

 

「良かったわね!ま、私もこの短剣はここで貰った物だけど。」

 

「ええと。今のところお前さんの短剣のメンテナンス料はざっと。」

 

「言わないでよ!気にしたら気になるんだから!」

 

 気にしたら気になる。言い得て妙だな。

 

「で、お前さんたち。どうするんだ。もう今日の分の転移最終便が終わっちまうぞ。」

 

「えッ!もうそんな時間!?」

 

 その瞬間鐘が鳴る。

 

「あーもう!」

 

「これは一体?」

 

「卜部は知らないのか。これは終転の鐘だな。今日の転移はもう終わり。つまり防犯対策だな。見通しの悪い夜は何かと悪い奴が『転移』で悪さをするのさ。それに転移の魔素は帝都の魔術師協会にある巨大魔石が肩代わりしてるのさ。それがな。一晩置いとかなきゃ魔素が回復しないモンなんだ。」

 

 なるほど。確かに人を遠距離から移動させるにはそれ相応の対価が必要という訳だな。

 

「で、どうすんだ。お前たち。」

 

「どうにもこうにも明日の始転の鐘まで待つしかないでしょう。」

 

 つまりは日本でいう終電を逃したという事だろう。

 

「もう!卜部さんが時間をかけるから!」

 

「すまん。」

 

「もう!」

 

「ま、そうなったら仕方がねえ。」

 

「ガルダンさーん。泊めてくれないかな?」

 

 しかし。

 

「ダメだ。ウチは狭いんだ。それに孫娘たちがいる。」

 

「そこをなんとか!」

 

「ダメったらダメだ!それにカルメンお前は実家があるじゃねえか!」

 

「・・・嫌よ。あんな家なんか。」

 

「じゃあ宿を借りるこったな。」

 

「卜部さんはどう思う?」

 

 俺は。

 

「カルメンの決定に任せる。」

 

「もうっ!分かったわよ!分かりました!宿に泊まるには軍人の給料も心許ないし実家に帰るわよ!」

 

「親父さん心配してたぜ!」

 

「うるさい!」

 

 そう言うとカルメンは怒って店から出ていった。

 

「卜部。またな。」

 

 ガルダンはその筋骨隆々な手を振った。

 

「ああ。また頼む。」

 

 俺はカルメンを追って店を出るのだった。

 

 

 

 

「ああもう!やってらんないわ!」

 

「まあ落ち着いてくれ。」

 

「落ち着けないわよ!」

 

 先ほどの彼女の態度から分かる。恐らく実家とは何らかの事情で疎遠になっているのだろう。

 

「はあ。ゴメンなさい。貴方とは関係無いのにね。」

 

 カルメンは深呼吸する。

 

「嫌なことの前には英気を養うに限るわ!行きつけのお店があるのよ!」

 

「お、メシか!」

 

「そうよ!行きましょう!」

 

 空はもう既に茜色だ。後数十分も経たないうちに暗くなるだろう。

 それに呼応してか、それぞれの店や窓に明かりが灯り始める。夜はこれからだと言わんばかりだ。

 

 それと同時に気になるのは。

 

 一体この世界の料理はどんなものか楽しみ。ということだった。




最近中々忙しくて投稿が滞っています・・・。

作品どんな感じですか、もしお暇があったら教えていただきたいです!

読んでくださりありがとうございました!
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